0-5 初めてのKissは、嵐の予感。
2019年6月13日 修正
・本文冒頭のサブタイトル等を削除しました。
――― あちらでは無い何処か
誰だか分からないけど、探しに来てくれたけど、音を出せと無理難題だけを言い残し行ってしまったみたいだけど。
俺は寂しくない。
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『 オ レ キュー ニ ン キョ ウ ダ イ イ ル 』
やっぱり、犬?魔獣って多産なんだな。
『 オ レ ニ ン ゲ ン チ ガ ウ マ ジュ ウ チ ガ ウ 』
うん?魔獣じゃないのか?
『 オ レ ジャ ジュ ウ 』
へぇ~人間にも種族があるけど。魔獣にも近い物があるんだなぁ~・・・
『 チ ガ ウ 』
・・・世界は広いなぁ~・・・
そう、意識だけははっきりしているこの状況の中で、友達が2人もできたんだ。1人は恥ずかしがり屋で言葉を話さない、兄の後ろでたぶん頷いてばかりの【ロージャン】さん。今話をしているのは兄の【セリュー】さん。
俺達は、殺し合いを経て、気が付けば、各々違う何処に居ながら身の上話に花を咲かせていた。一方的に殺されかけたけど、お互い許し歩み寄る努力が必要なんだという事に気が付いたんだ。
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『 オ レ タ チ ハ ハ リ ト ル コ ロ シ タ リ ト ル イ ナ イ 』
うんうん。お母さんがリトルって人に殺されたのか・・・辛いよね。・・・敵を討たないと。
『 オ レ タ チ サ ガ シ タ 』
偉い!親の仇を探すなんて、そうそうできる事じゃないよ。
『 デ モ イ ナ イ ニ オ イ チ カ イ デ モ チ ガ ウ オ レ タ チ モ リ カ ラ ミ テ タ』
人違いだったら大変だし。偵察は確かに重要だと思う。その人はリトルって人とは別人だったの?
『 チ ガ ウ デ モ ダ メ ナ ニ オ イ ガ シ タ』
あぁ~。人間として・・・。う~ん。この場合は、生き物として価値が無いって解釈した方が良いのかな?
『 ソ ウ ダ ア レ ハ ハ メ ツ ノ ニオ イ ダ』
へぇ~
『 オ レ タ チ ジャ ジュ ウ ワ ハ メ ツ ノ ニ オ イ ワ カ ル 』
便利な力みたいだけど、それって破滅しか分からないのかな?他に分かる事ってあるの?
『 ア ル 』
おぉ~何か憧れるなぁ~。俺さ。この歳になってもまだレベルが1のままでさ、親からの独立も許して貰えなくて、1人で生き抜く事ができる力ってのに、魅力を感じるんだよね。
『 デ モ ヒ ト リ サ ビ シ イ 』
でも、兄弟が居るだろう?
『 オ ト ウ ト ダ ケ 』
あれ?あと7人はどうしたの?
『 イ ナ イ 』
あぁ~ごめん。
『 フ ウ イ ン サ レ テ ル 』
なんだ、生きてるのか。良かったよ。
『 ヒャ ク ジュ ウ イ チ ネ ン マ エ リ ト ル ノ ト ナ リ ニ イ タ オ マ エ ニ ニ タ ニ ン ゲ ン ニ リ ト ル カ ラ タ ス ケ ル タ メ フ ウ イ ン サ レ タ 』
助ける為に封印されるって、大変だったんですね。
『 オ レ タ チ ワ フ ウ イ ン ル トキ チ カッ タ 』
敵討ちを?
『 チ ガ ウ タ ス ケ テ ク レ タ ニン ゲ ン オ ツ ギ ハ タ ス ケ ル 』
良い話じゃないか・・・あれ?ちょっと待って、封印されていたのに2人は自由に動けてるよね?
『 ヨ ワ ク ナッ タ フ ウ イ ン オ レ タ チ ワ デ ラ レ タ 』
封印って弱くなったりするの?
『 リ ト ル ノ ニ オ イ ス ル オ ト コ オ カ ノ フ ウ イ ン コ ワ シ タ 』
何それ、人間が封印を破壊したって事?
『 オ レ タ チ ワ ハ ハ ノ カ タ キ ト ル 』
色々あるんだねぇ~大なり小なり悩みを抱えてる物だけど、俺の悩み何てレベルが上がらないとかって小っちゃい話で、2人の親の仇とかって話と比べ物にならないや。無事にここを出られたら手伝うから何でも言ってくれ。
『 ア リ ガ ト ウ 』
まだ、何もしてないけどね。ところで、気になったんだけど。その封印を破壊した人ってどうなったの?
『 オ ト ウ ト ガ カ ン シャ ダ ア ゲ ル 』
ん?
セリューさんが何かをくれると言った時だった。俺の身体に?身体は無いけど、そんな感じに、強い力が流れ込んできた。
何だ今のは?魔力みたいだったけど・・・。今まで感じた事の無い冷たいけど温かい不思議な力だ。
『それは、俺様の力だ』
???俺様?は?どちら様?
『フッ。俺様は、ロージャン』
あぁ~。ロージャンさんでしたか。凄いペラペラじゃないですか。
『兄者よ。この人間に力を分け与えてみてくれ』
『どうしてだ?』
『良いから』
人間の言葉でジャジュウが相談してるけど、どうしたんだろう?
≪ポワァ~ン シュ―――
ん? おわぁ。
その時だった、さっき流れ込んできた不思議な感覚の力よりも、遥かに大きな力が勢い良く、俺の中に流れ込んできた。やばい。
吐きそう・・・
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今のは何だったんだ。まだクラクラする。五感は微妙だけど、眩暈の感覚が残っている。
『俺だセリューだ分かるか?』
お?
『加減が分からなくて、多く送り過ぎたかもしれん。サービスだと思って受け取ってくれ』
セリューさん。突然、言葉が上手になってませんか?送ったって、今の不思議は感覚の力はセリューさんとロージャンさんの力なんですか?
『そうだ、俺達の力を送った』
『兄者、言った通りだろう』
『うーん。これは、なかなか面白い能力だな。お前、凄い力を持ってる』
俺は、何もしてませんが・・・
『【念話】【交信】とも違う面白い力みたいだ』
『お前、俺達の言葉話してる』
え?普通に人間の言葉を話てるつもりですが。
『そうか。俺様は人間の言葉を話してない』
・・・通じてるから良いか。ところで、ここまで確り会話ができるなら、出る方法を話合いませんか?
『賛成だ』
『今、俺達は、自然魔素の中に閉じ込められている。お前はどうだ?』
うん?初めて聞く言葉だ。あのぉ~。自然魔素って何ですか?
『俺様が教えてやる。自然魔素は魔力その物だ』
それじゃ~2人は、魔力の中に閉じ込められてるって事ですか?
『少し違う』
う~ん。もう少し魔力の勉強を、母さんから教わっておくべきだったかな。
『人間には難しいだろう』
魔術とは違うんですか?
『魔力を放出して火や水を出す人間なら沢山見てきたぞ』
やっぱり。それ魔術の事みたいです。
『なるほど。俺達は、個体の中にある魔力だけで自然属性を活用する事は無い。中の魔力が切れると気を失ってしまう。生きて行く上では致命的な事だ』
あぁ~なるほど。でも、人間も気絶するまで魔術は使いませんよ。
『それも意味が分からん。気絶するのが分かっているのに、何故個体の中にある魔力を消費する?』
魔力を使わないと魔術は発動しませんから。
『人間は不思議な事をする生き物だ』
そうですかね?
『俺様も人間に関しては同意見だな。同種で殺し合う。封印したり解除したり』
あ、そうだった。その封印を破壊した人ってどうなったんですか?
『あぁ~。リトルの臭いがする男か。破滅の臭いがしたので監視はしていたが、集落がオプスキュリテに追われた魔獣達で騒いでいた時に北の空き地で見かけたが、その後は知らん』
オプスキュリテって、セリューさんやロージャンさん達の事じゃないんですか?
『うん?ガウァハッハッハッハッハ。兄者よ、俺達をあの下等なオプスキュリテと間違えるとは・・・こいつは傑作だ。俺達と対峙した時に逃げないはずだ。ガッハッハッハッハッハ』
『お前、俺達は【邪獣】だ。【闇牙狼】や【兎耳狼】や【闇炎牙狼】の様な下等な魔獣と一緒にしてくれるな』
魔獣よりも強い2人が自然魔素の中に閉じ込められているんですよね?セリューさんもロージャンさんも桁外れに強いのに、その2人を閉じ込めた人って、いったい何ですか?
『うん?お前と会った時、俺達は111年の封印から抜け出て3日しか経って居なくてな。力が全く出ない状態だったのだが・・・』
でも、領軍私兵詰所の兵士は死んでたし・・・建物も入り口ごと吹き飛ばしたし・・・男爵邸にもあの攻撃だと被害が出ただろうし・・・
『あれか?首を喰われて亡くなっていた人間は、オプスキュリテの群れに殺られた後でな。俺様が血の匂いに誘われて建物に入ると、5・6匹いや10匹くらいはいたかもしれん』
その、オプスキュリテはどうなんったんですか?
『俺様を見るなり、まとまって飛び掛かってきたので2匹は喰ったぞ。逃げ出した連中の事まではさすがに知らん』
食べたんですね。
『俺達も腹は減るからな』
『食べ終えてから、外に出て連中の後を追おうとしたが、兄者が撃った咆哮が集落に充満した臭気を南から北へ吹き飛ばした後で、臭いで追う事もでずだ。グワァッハッハッハッハッハ』
『俺が居た集落の南の丘に、オプスキュリテが数匹脱兎の如く戻って来るのが見えた。あのオプスキュリテはロージャンに恐れをなし逃げ帰っていたものだったとはな。オプスキュリテに追われ集落に入った魔獣達は、そのオプスキュリテに追われ集落の外に大移動を初めてな。兄弟姉妹達が封印されている固定位置に近付き過ぎた。封印が弱まっている状態だ、取り返しのつかぬ事態を回避する為に俺はあれを放った』
あの時の、【風属性】じゃない風は、セリューさんの【邪属性】だったんですね。
『連中の臭いを建物の外で嗅ぎ分け探していると、お前が走って来た。俺様は、建物の入り口の直ぐ側の闇の中に飛び込み隠れた。様子を伺うつもりだったのだが、お前の匂いが、俺様達を封印し、リトルとそれに協力した聖獣から助けてくれた人間に良く似ていた。確かめようと思う好奇心に負け、闇から出てしまった』
でも、襲って来ましたよね?
『あれは、お前の側にあった人間の臭いが血の香りと混ざり合って旨そうで、お前の匂いが良く分からず近くで嗅ぎ確かめようとしたまでだ』
おれ、偶然だけど上手く交わせたと思ってましたよ・・・
『あれは・・・俺様は左利きだ。俺様の方にお前から動いた時には驚いたぞ』
それって、俺当たりに行ってたって事ですよねぇ~・・・
『その後が、俺様も反省だな。足元の人間の臭いに僅かだがリトルの臭いがしたのだ。小さな怒りが込み上げて来て、口からちょっと漏れた』
それじゃ、血が滴ってる様に見えたのは、美味しそうな臭いがするから涎が垂れてただけで、栗鼠が【邪念の咆哮】って言ってたあれは、ちょっとだけ漏れて・・・あの攻撃だったんですね。合流したセリューさんと戦っていた栗鼠。あれ?栗鼠はどうなったか分かりますか?
『あれは、栗鼠ではないぞ、あれは俺達と真逆の存在の【聖獣】だ。封印される前の100分の1でも力が戻っていたなら余裕だったと思うが、なかなか素早い奴だった』
最後は、2人とも口から咆哮を放ちましたよね?
『あれは、兄者、驚いたな』
『あぁ~』
俺は気を失っていたみたいで全く覚えてませんが・・・何かあったんですか?
『あの聖獣はな、【地属性】を【聖属性】に変換しながら【回復魔法】をお前に使い続け、究極にまで弱まった俺達の【邪念の咆哮】2発を【地属性】で受け止め平然としていた』
腰がどうこう言ってたけど。聖獣様だったのか・・・可愛いって思ったのは失礼だったかも、会う機会があったら謝っておこう。その前に、お礼が先か。で、そんな凄い状況から、どうやったら今の状況になってしまうんでしょう?
『変な梟が現れてな、弱い【邪属性】2発分の魔力の中に、何を考えていたのか・・・』
『兄者、あれは、噂に聞く【場荒らしの聖梟獣】だったと俺様は思う』
そのサビィ―って人が何かしたんですか?
『ん?サビィ―は聖獣だぞ。人間族ではない』
そのぉ~・・・。聖獣様とか邪獣とか、俺の故郷大丈夫なんでしょうか?
『それでな、その場荒らしが、飽和しかけていた【邪属性】の空間に、何をとち狂ったのか【風属性】と【闇属性】をばら撒いてな。一瞬だったぞ』
『あぁ~・・・俺達の【邪念の咆哮】で発生した【邪属性】の魔力が中央で支えられなくなってたな爆発は目前だった。ま、【闇属性】が作用しての暴走だ。威力その物は、俺が最初に放った物の4・5発分程度の規模で大した事はなさそうだったが』
『そんでもって、周囲に飛散した【邪属性】の魔力の方は、【風属性】の影響で真空の刃の様な切れ味で四方八方に飛び散ってたぞ』
・・・あのぉ~。俺の故郷は、大丈夫だったんでしょうか?
『俺様は、知らん』
『俺も分からん。本調子ではない身体だ。爆発に備え、自然魔素に意識を集中させていた。だが、爆発は起きなかった。魔力の集中を解除して、気付けばここだった』
規模が大き過ぎて分からない事ばかりなんですが。分からないなりに何か釈然としない感じがするのでが・・・。結局のところ、梟の聖獣様が今回の惨事に大きく関わっている様ですが、根本的に何も解決していませんよね?
『俺も反省している』
それもですが・・・
普通に会話ができる様になり、俺達3人は互いに親睦を深めながら、何処か分からない何処から脱出する方法を語り合った。ほぼ、回想録を・・・
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『兄者、あの梟・・・』
『お。あいつは・・・お前、ちょっと待っていてくれ。例の聖獣が魔素の中に入ってきた』
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大変な事になってるみたいだけど、大丈夫ですか?
『俺様が捕まえてみせるから、待ってろ』
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――― たぶん3日間経過・・・
『待たせたな』
終わったんですか?
『やっとな』
感覚が微妙な為、良く分からないけど、随分経過したと思うん。
『俺様の空腹時計も馬鹿になってるから正確には無理だ』
『いつも腹を空かせてるだろうが』
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あれ?どうしたんですか?
『あぁ~すまんすまん。普通に話をするだけでは、お前に聞こえないんだったな』
『場荒らしは、人間。お前を探して飛び回っていたらしい』
俺ですか?
『そうみたいだぞ。今、お前に力を送らせるから、本人から聞くと良い』
はぁ~・・・って、やっぱりこれね・・・・刺す様なそれでいて心地良い流れと、凛としそれでいて温かい流れ2つの流れが絡み合う様に入ってくる。
擽ったい。【闇属性】と事前に知識があったせいか身構えていたのだが、この2つの流れはとても気持ち良く擽ったい物だった。
『人間。やっとみつけたわ』
・・・はぁ~。この声って、音出せって言いながら何処かに消えたあの声と同じ声だ。
『人間を、探し出すだけの仕事だったのですが、邪獣も保護する事ゆえ、見つけ出すのが遅くなった』
『おい。お前は、今俺達に捕まってるって、何度言えば理解する?』
『邪獣がどうして、私が作り出した並行空間に入ってるのよ。ここは牢獄。さっさと出て行きなさい』
あの、場荒らし様。じゃなかった聖獣様。出て良いのでしたら、俺もですが、皆出て行きたいです。
『場荒らし?』
『知らねぇ~のか?場荒らしの聖梟獣って、お前、結構有名なんだぜ』
その話は出てからにしませんか?
『それもそうだな』
『おい、場荒らし、俺達をここから出してくれ』
『いやよ』
『なんでだよ』
『はぁ~?』
俺を探してくれていたんですよね?出してくれないけど、探してるって変じゃないですか?
『私自身が並行空間にいて、並行空間の物を吐き出せる訳がない』
何、言ってるんですか?
『人間、頭悪と言われないか?ここは私が作り出した私の並行空間ゆえ、並行空間にいる私が、並行空間から外に吐き出せると思うか?』
聖獣様ははどうやって自分で作り出した自分の並行空間に入ったんですか?
『魔法でヒョイよ』
その魔法で、出られないんですか?
『私は、出られるゆえ、人間を探す様に頼まれたのだ』
ごめんなさい、言っている意味が良く分からないんですが・・・それなら、魔法で外に出て、出た後、俺達を出してくれれば良いだけじゃないですか?
『いやよ』
どうしてですか?
『3日間も鬼の形相で追い駆けられ、挙句の果てに、握り掴まれて魔力を抜かれ・・・私は疲れた。暫く仕事はしとうーない』
『兄者、俺達、【邪狼獣】は、鬼に似ているのか?』
『俺は鬼を見た事がないから分からん。お前、俺達は鬼に似ているのか?』
どうなんでしょう。俺も良く分かりませんが、人間種の【魔人族】の中に角の生えた【鬼人】がいるとかって聞いた事がありますが・・・それ人間種の話ですから。それに、俺、セリューさんとロージャンさんの姿をちゃんと知りませんから。
『おい場荒らし』
『なによ』
『人間種の鬼と、【邪獣種】の俺達をどうやったら、間違える?明るいのに鳥目か?』
『鳥とは無礼な。私は鳥獣種の3聖獣聖梟獣』
聖獣なのはもう分かってますから。それでですね。まだ、出られないなら2・3お聞きしたい事があります。俺を探す様に言ったのは誰ですか?もしかして、マルアスピーって名前の女性ですか?その女性は精霊何ですか?
『・・・あっ、そうでしたわ。のんびりしていられませんでした。人間。マルアスピー様が待っています。お茶も出ない様な不躾な空間で寛ぐ事も無いでしょう。行きますよ』
話の展開が見えない人だ。あ、聖獣か。
『ちょっと待て、俺達もちゃんと出してくれるんだろうな?約束が無いなら、この手は離さないぞ』
・・・この聖獣相手だ。慎重に慎重を重ねて、心配だからもう一回位重ねて、それでも足りないだろう。だが、ここはまず先に、外に出して貰わない事には何も始まらないだろう。
ロージャンさん。聖獣様を離してあげてください。俺が責任を持って2人を外に出させますから。
『どうするよ。兄者』
『お前は信用できる。俺達を助けてくれた人間と同じ匂いがするからな。場荒らしが何仕出かすかわからないから、俺達の力をもう少しお前にやる』
『なるほど。流石兄者だ。人間。名前は何て言う?』
あれ?そういえば、名乗って無かったっけ。俺は、ロイク・シャレット。マルアスピー村の猟師だ。改めて宜しく。
『今、何て言った?』
『兄者、ロイクって聞こえたぞ』
『111年前よりも若く見えたが・・・見つけた様だ。・・・ロージャン。場荒らしを離してやれ』
『あぁ~』
『ロイク』
『ロイクよ!受け取れ』
≪ポワァ~ ホワン ピィピィ―――――――――――――――――――ン
やっぱりこれか・・・身体の中に大量の力が・・・とっても・・・
吐きそうです。
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『やっと手を放したわね。最初からそうすればいいものを』
『場荒らし、俺達も忘れずに出すんだぞ』
『分かってるわ・・・邪獣なんかに住み付かれたら私も困る。外に出たら直ぐに道端に吐き出してやる。身の回りの物をまとめておきなさい』
身の周りの物ねぇ~・・・
『待ってなさい。直ぐよ』
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おっ!引っ張られるぅ~~~~~
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――― 精霊樹の精域
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「ちゃんと戻って来たみたいね」
「そのようじゃのぉ~」
「私が見つけたゆえ」
「お前のせいで、この人間は要らぬ苦労をしたのじゃろうが、少しは反省せぬか」
とても騒がしい。微睡が台無しの空間。それでも、久々に感じる五感や身体の感覚を全身で思考で心行くまで楽しむ。もう少し感じていたい。そう、この温もりも心地良い。そうそう、この温もり・・・も?
≪ガ バァッ
俺は、慌てて上半身を起こした。
温もりの正体は、大樹の森の聖域に住む動物達だった。
猫が4匹。
「ホラ、【苺】【珊瑚】【正午】【【林檎】。どいてちょうだい」
目の前にある。ベッドの横の椅子には、綺・・・麗過ぎ・・・とても美しい女性が座っていた。薄く青く光沢のある滑らかな生地のワンピースは、胸元が大きく開き丈も短く、とても刺激的だ。
綺麗に整った二重で大きな瞳。虹彩はハピーデイ色で、髪色はラッキーグリーン色。髪は腰のあたりまであるだろうか、俗にいうスーパーロングに近いだろう。そして、白く透き通る様な白い肌に大きな胸。
目が当然の様に、胸に釘付けになって・・・
「よぉっし!」
え?ガッツポーズをしながら満面の笑みで喜んでいる様だ。男の性的な好奇心への新しい対処方か何かだろうか?俺は慌てて胸から視線を逸らし、他に居る・・・他に居る・・・栗鼠1匹と梟1羽と猫4匹と気のせいだろうか犬サイズの馬1頭・・・キョロキョロした後、諦めて彼女へ向き直った。
「貴方は、マルアスピーさんですか?」
「そう、私が大樹の森の聖域。精霊樹に宿りし精霊。マルアスピーです」
「この感じからして、本当だったんですね。疑ったりしてごめんなさい」
目覚めてこの状況に自分があれば疑う方がおかしいだろう。心地良さと安心感が安らぎを精神に与えているのだろう。気力も体内に充ち満ちた感じだ。そして、喋る貫禄のあるお爺さん栗鼠に、威厳ある風に頑張る梟のお姉さん、自動で開閉する戸に窓にカーテン。浮いてるティーセット。何より透明感のある優しく愛らしい声は、あの時の声だ。
「気にしていませんよ。旦那様を優しく包み込むのが妻の努めですから」
「どういう事でしょうか?」
そういえば、あの時、妻とかって言ってた様な・・・
「誓ってくれましたよね?」
「何をでしょう?」
「私を妻にすると」
「はい↑?」
「・・・あの時は、確かに一方的過ぎましたね。私、貴方に押し付けがましい女だと思われたくありません。分かりましたわ」
「そうですか・・・良く分からず、夫婦と言われて驚きましたが、俺はレベル1なので法律で結婚する事ができませんから、分かっていただけて良かったです」
「分かりました。もう一度誓ってください」
「は?」
「ですから、あの時は私だけが、貴方の顔を知っている状態でした。ですが、今は私の顔も見た訳ですから、断る理由は無いですよね」
凄い自信というか、押し強ぉ~。
「マルアスピー様、人間種達には、個体レベルが2になると独り立ちするという、種の独り立ち自立の儀式の様な物があると聞いた事がございます」
「私人間じゃ無いし精霊だし。人間の決めたルールより偉いし」
「ですが、結婚は相手合っての物ですからして、精霊種の仕来りだけを押し付けてしまっても良い物じゃろうか?」
「・・・確かにそうね。それなら、こうしましょう」
胸の前で腕を組み、俺の顔をじっと見つめ。何か思い付いたみたいだ。
「あのぉ~・・・どうしたんですか?俺、どうしたら良いんでしょうか?」
彼女の熱い視線に耐えかねた俺はとにかく周りに言葉を投げた。
「やっぱり、そうよね・・・貴方、順番がちょっと複雑になってしまうのだけれど、この結婚を邪魔する物は何も無いわ。責任取ってくださいね」
「結婚って、責任って、邪魔するも何も、俺がっ」
≪ チュッ!
彼女。マルアスピーの唇が、俺の唇に・・・・・・触れた。突然のKiss。
「なんと大胆な」
「私達の前でやるわね」
「おぉ~」
とても短く、それは一瞬だったけど、甘いKiss・・・このKissは、大人になって初めての・・・・・・このKissは、運命のKissだった。
「あ、え、あ、・・・な、なぁ~~↑・・・ななな。えぇぇ」
「落ち着きなさい。物足りないのも分かるけれど、我慢なさい、レベルが上がったら最後までどうせやるのだから」
「え、あ、え、い、えぇぇぇ」
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「子供じゃないのよ、Kissの1つや2つでどうしたのよ。私だってKiss初めてだったし。・・・でも、思ってたよりもあっけなかったわね。加護とかって言ってもファンファーレが鳴り響てて大騒ぎする程の事でもないし、当然と言ったら当然よね」
「マルアスピー様。声に出ていますよ。私が愛の手解きを」
≪バフゥ
枕が勝手に梟目掛けて飛び出しぶつかった。
「もう、マルアスピー様ったら照れちゃって、可愛いんだからぁ~。羽毛が口の中に入ったじゃないですかぁ~」
「人間と呼ぶのも、もう終わりじゃ。マルアスピー様の夫となったからには、儂等にとっては主人と同じ。これよりは、ロイク様と呼ばせていだきますぞ。儂は聖栗鼠獣と申します。宜しくお願いしますのじゃ」
「あっ。ビエールさん。あの時は、ありがとうございました。それと、もうあんな考えは持ちません」
「あんな考え?」
「こっちの事です」
聖獣様に可愛いって言ったら罰が当たると思うし。
「マルアスピー様の夫になるお方を助けたのじゃ。儂の武勇伝に加えるまでよ」
「夫って・・・俺、まだ結婚できないですから!それに、彼女は俺が今まで見た事も無い程に、美しくて綺麗で可憐で素晴らしい人です。・・・これ以上何て言って良いのか分かりません・・・俺とは不釣り合いだと思います」
思考回路がパニック・・・良く分からない。
「貴方。私は人ではありあません精霊ですよ。・・・もしかして、私が人ではないから、精霊だから妻にはできないと?」
「お主。人間族が精霊を差別するとは、私は初めて見たぞ」
・
・
・
「あぁぁぁ~。どうして、私は精霊に生れてしまったの・・・。」
≪チラッ
彼女は、床に膝を付き、大きな声で歌う様に語りだした。そしれ俺を横目で確認した。
・
・
・
「あぁぁぁぁ~。神はどうして・・・・」
≪チラッ
・・・
「うぅぅぅぅ~ ォィォィォィ」
≪チラッ
・
・
・
――― マルアスピーによる大袈裟で
わざとらしい芝居が続いた後―――
何か馬鹿らしくなって来た。ヘンテコな芝居は、ビエールさんが止めずにいたらいつまで続いていたことか・・・
「さて、ロイク様」
「ロイクで良いよ」
「いえ、マルアスピー様の夫は我等の主人です。なぁ~!聖袋獣に聖馬獣」
≪パチィッ パチィ
「おぉ、ぉぉ。そうじゃ。聖栗鼠獣の言う通りじゃ。私達の主人マルアスピー様の夫は同じく私達の主人じゃ」
「主人だ」
あれ、目配せのウィンクだったのっか・・・小さな身体の小さく円らな瞳・・・
・
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・
≪パンパン
「そうよね。はい。それでは、次の予定を発表しまーす。誓いのKissの後は、初めての共同作業夫婦2人でのレベル上げになりまーす。さぁ~行きましょう」
随分マイペースな精霊様だ・・・共同作業って、レベル上げの為の普通の狩りだよね?
「そんな、直ぐは無理ですよ。16歳から今まで1000匹も狩ったのにレベルはまだ1なんですから・・・」
「大丈夫ですよ。だって、私の加護があるんですもの!」
「はぁ・・・」
「ほら。 あ・な・た 行くわよ」
≪キー
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≪トコトコトコ
大樹の精霊マルアスピーと俺は、自動で空いたドアから外に出て。あぁ~本当に精霊樹の中に居たんだ・・・目の前には大樹の森の聖域と俺達が呼び、崇めたて奉り大切にしてきた奉納の為の祭壇があった。
大切な事に気付いた。レベル上げをするのに・・・
「俺、寝てた時のままなんだけど」
「大丈夫よ」
武器も何も無いけど・・・
・
・
・
≪バタン
―――※ビエール視点※―――
――― 精霊樹の精域
「さて、結婚式の準備じゃぁ~↑」
マルアスピー様とロイク様が戻ってくるまでに整えなくては・・・
「お主反対では無かったのかえ?」
「儂は常にマルアスピー様の味方じゃ。さぁ~、大樹の森よ皆手伝ってくれ」
「僕も味方・・・」
「おぉ。頼んだぞエリウス」
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≪パフ トン
窓から誰か入って来たのか?儂は振り返った。
「楽しそうねぇ~私も混ぜてよぅん」
「あら・・・」
「え?」
「誰?」
「前任様・・・」
≪パチィ ←ウィンクする音
「マルアスピーの母ミトよ。仔馬ちゃん!4055年ぶりかしら。楽しい事になりそうだから、暫く宜しくね。ビエールにサビィ―に仔馬ちゃん↑!」
ありがとうございました。