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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-65 共通点は悪気⑨ そうだ、もう一つのジャスパットへ行こう①

 ムーコン親王の口利きで東朝廷の帝と私的な空間で会うことになった俺は、神授スキル【転位召喚・極】で先に移動させていたムーコン親王の隣に、神授スキル【フリーパス】で移動した。


「転移の魔術陣も陰陽札も無しに……大叔父殿が言うように誠に移動できてしまうのですね」


 ムーコン親王が座る席の向かい側、長方形の真っ白な一枚板のテーブルを挟み腰掛けている、腰まで伸びた艶のある黒髪とレンズも淵も真っ黒な大きな眼鏡をかけた女の子に話し掛けられた。


 この子が帝? 眩しくもないに何故に眼鏡を……。


 宙から天へと視線を動かし二つの陽の位置を確認する。


「どうかなされましたか?」

「あ、いえ、眩しいのでしたら、日傘でもと思ったもので……」


 この子の声、耳に心地良い。透き通ったと言うか透明度が高いって言うか優しい声だ。あっ!そっか、マルアスピーの声にちょっと似てるんだ。


「アシュランス王よ」

「あ、はいはい」


 ムーコン親王に声を掛けられ視線を動かすと、ムーコン親王は席を立ち女の子の右隣へと移動していた。


「紹介致します。ジャスパット皇国」

「あれ、ジャスパットって公国でしたっけ?」

「ロイク陛下、ジャスパットは皇帝を頂きに三百四万七千の民が暮らす皇国です。大小四百四十九からなる豊かな自然に囲まれた島国です」


 皇帝の皇の部分を取って皇国ってことで良いのかな? それにと、豊かな自然ねぇー……物は言い様だよな。


 ムーコン新王の話では、山と森と僅かばかりの平地と遠浅の海、一年の半分は雪と氷に埋もれ温泉地の周辺だけがかろうじて機能するのがジャスパットだって……。


「申し遅れました。(わたくし)は帝、ジャスパットの頂にある者です」

「これはご丁寧に……」

 この場合、俺も、俺は国王、アシュランスの頂にある者です。とかって名乗った方が良いのか?

「……えっと、ロイクです」

「……フフ、どうぞおかけになってください。ここは内裏の内庭、帝である私以外は路傍の石とお考えください」


 周囲を確認する。


 布を体に巻いただけの男女が三十人、視界の邪魔にならないよう器用に配置されているようだ。


 取り合えずに勧められたし椅子に座るとしよう。


「アシュランス王よ。剣爾の間、鏡爾の間、玉爾の間を一足飛びし大内裏の内裏に招かれた者は、(みかど)皇家一族の者以外には未だかつておらんことになっておる」

「そうなんですね」

「あっさりしておるのぉ」


「大叔父殿よ。ロイク陛下はジャスパットに非ず、三種の神器を知らなくて当然ではなくて」

「先程お伝え致しましたが、アシュランス王は神器を多数所持されております。その内に二つを西(サイ)へと譲られております」

「そのようですね。そのことで三種の神器に問題でもあると?」

「初代皇帝エンチヨクリル神帝陛下が世界創造神様より神授されし【不治(フジ)の剣】【不時(フジ)の鏡】【不死(フジ)の玉】は、神聖不可侵なる三種の神器です。新たなる神器が並んだとして思慮する必要はございません」

「大叔父殿よ、いったい何が言いたいのです。言いたいことがあるのでしたらハッキリ仰ったらどうです」

「アシュランス王は、神器を二つ献上すると申しております」

「「え?」」


 西朝廷の天子に回復薬三本と杖二本プレゼントしたから、東朝廷の帝には回復薬五、六本プレゼントしとけば良いかなって考えてたんですけど……。


「ロイク陛下は、えっと仰ってますが……」

「あ、え、えっと……帝って杖なんかに興味ないですよね?」

「杖ですか?」

「はい、杖です」

「……そうですね。御覧の通りでこのまま息災であれば向う五、六十年は杖に頼らなくても何とかあると思いますが」


 パン。


 突然、胸の前で手を叩く帝。


「そうですわ。良い杖をお持ちなのでしたら大叔父殿にいただけないでしょうか?」

「み、帝よ。漢ムーコン、生涯現役杖などに頼る気は毛頭ありませんぬ」

「嘘です。先程、最近歳のせいか日の入り頃には腰が痛くてたまらんのです。そう仰っていたではありませんか」

「……はっ、帝の仰られる通りでございます」

「ホラごらんなさい」


 孫と祖父の団欒って感じのこの憩いの空間に割って入る方法が思いつかない。


「あれは社交辞令的なものでして本心からではありません」

「ムーコン大叔父殿は帝の前で嘘を申したと言うのですか?」

「いえ、決してそのような意味で」

「分かりました。今後はムーコン大叔父殿の話は言葉半分で聞くようにします。フフ」

「それは困りましたな。ガッハッハッハ……アァ―――……帝よ。アシュランス王の前で……」

「……場も和んだことですし、そろそろ本題に入りましょうか?」

「そう致しましょう」


 凄い。今のを、なかったことにしたよ。


「アシュランス王よ」

「……腰用に杖要りますか?」

「フフッじゃなかった。ロイク陛下。杖の件は叔父上殿と後程ゆっくり話ししてください」

「そ、そうじゃの、のうアシュランス王よ」


 からかうのはよそう。団欒を呼び戻してしまうだけになりそうだ。


「で、ムーコン親王、神器を二つって言ってましたけど、俺神器何て持ってませんよ」

「「え?」」


 え?って、意外そうな顔されても困るんですけど。


「先程……沢山持ってると……」

「ん? もしかして、半神具の魔導具のことですか?」

「もしかしなくても、その魔導具の話をしていたつもりだったのですが……」


 半神具の魔導具って俺が創造したり作ったりしただけのだたの魔導具で、半神具って言ってるけど神様とか実際余り関係ない系なんだけど……。


 もしかしてだけど、半神具、神具、神器って一緒くたに思われてる?


 確かめてみるか。杖はさっき見せちゃったし、何か違う物を見せて、反応を。何かなかったかな。


 神授スキル【タブレット】の画面を半神具の魔導具【MRアイズ】に反映させ魔導具のリストを確認する。


 おっ! これなんか面白いかも。


「これなんかどうですか?」


 神授スキル【タブレット】からメラメラと燃える炎を内に閉じ込めた直径三十cmの水晶玉を取り出し右横の宙に浮かばせる。


「あ、あ、アシュランス王よそ、そそそれは不死の玉」

「ど、どうしてここに……」

「え? これ、天球実験の時に陽の代替品をって考えて作った火属性を秘めただけのクリスタルですよ。秘めたって言いながら中の火が見えちゃってるところが面白い所なんです」

「い……いやまんま不死の玉なんじゃが」

「西に、……取り返していただい……大叔父殿、不死の玉はこんなにも大きな玉でしたでしょうか?」

「はて、あえっ!? 半分もなかったかと、するとこの不死の玉はいったい?」

「何でしょう?」


「だから、前に実験で作った火属性を秘めたクリスタルの玉ですって。これ癖があってちょっと扱い難いんですが慣れると結構使えるんですよ」

「不死の玉を使う?……神聖不可侵なる神器を今使うと申したのか? アシュランス王よ、例え王が」

「落ち着きなさい。帝の話を落ち着いて聞くのです」

「例え……!?帝よ、か畏まりました」


「ロイク陛下。その玉は不死の玉ではないのですよね?」

「えぇ、これは俺が作った物です。寧ろ、不死の玉を見たことがないんで、似てるなら見てみたいくらいですよ」

「無理です」

「無理じゃの」

「そうですか。で、これなんですけどね」


「聞かないのですか?」

「聞かぬのかの……」

貴重な時間をありがとうございました。

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