6-MS-62 ビストロ・アランギーでの昼①②③
―――アシュランス王国グランディール城
国王区・食事処『ビストロ・アランギー』
R4075年10月29日(闇)15:10―――
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「なるほどなるほどなぁ~るほどパトロン殿は、各国の代表が集まると時間を無駄にする長引くだけだと判断し、各国の王の下へ直接説明しに行くことにした」
「えぇ」
「手始めとしてララコバイア王国を選び、アウフマーレライ王城の謁見の間の玉座に座るヴィルヘルムの前へ神授スキル【フリーパス】で移動した」
「はい」
「ふむふむふむ、謁見の間には先客がいた。先客の正体はズィルパール王国のボノイズルパール公王家の当主を名乗るバリフォスターなる者で共に質の悪い男一名と少しはまともだと思われる女一名が同行していた」
攻撃的だったのは事実だけど質までちょっと……。
「あってますかなぁ~、はい」
少しはまともそうってもう一人の従者って女の人だったの?
「パトロン殿よとてもとても大事なところですぞぉー、思い出してくだされ」
「あ―――、そうですね、ズィルパール王国の王家に列なる公王家と当主の名前はバリフォスター・チューダマディソン・モイスチャーで、騒いでいたのがサイハイザーだったかパーシーだったかって感じで、もう一人は二人を止めてる感じでしたね」
「記憶は正しく心は美しく料理は愛情食べるは視覚嗅覚味覚実は聴覚と触覚も大切な要素なのですが、今は残念でなりませんが、この話は致しません」
「はい」
寧ろ有難いです。
「良いですか。パトロン殿の話を聞き私が視たところ、サイハイザーなる者の正式な名はサイハイザー・パル・イリウス、何処かの騎士団の団長とのことでしたが正式にはボノイズルパール・ル・ズィルパール・ア・リフレクト公王家が抱える自警の為の組織、平たく傭兵の集まりと言ったところでしょうか」
「そ、そうなんですね」
「因みにですが、サイハイザーはズィルパール王国の準男爵位ボノイズルパール・ル・ズィルパール・ア・リフレクト公王家の臣子爵位を兼ねておりますですぞぉー、はい」
「へぇ~」
「他の謁見を邪魔したパトロン殿も問題ですが、パトロン殿に噛み付いた犬、無礼者パーシーはサイハイザーの第三子にあたります。結婚二十年目にして正妻クラクアとの間に生まれた長男ということもあり、兎に角過保護に育てられたようですな」
「そうなんですね……」
「過保護に育てられ愚か者として独り立ちしたパーシーですが一つだけ取り柄があるようですぞぉー」
「一つだけですか?」
「人間誰しも多くを望むものです。ですが、パーシーは一つだけ持ちえた取り柄を存分に生かし、気にしなかったようです」
「……甘やかされて育ったせいでちょっと愚かなんですよね」
「愚か者パーシーがバースディーに神授された唯一の取り柄それは」
「あれ? chefアランギー様、バースディスキルとか神授でいただいたスキルは取り柄じゃなくて才能じゃ」
「その通りですぞぉー。ですが、愚か者パーシーには神授スキルその才能を発揮するだけの下地が備わっていません」
「あーなるほど」
「残念です。実に残念でなりません。世界創造神様よりこの世に二人と存在し得ない天性職【二槍聖】をバースディスキルに神授スキル【無限投槍】を神授されたというのに……」
「無限投げ遣りですか。神授スキルの方に問題があるように思えるのですが、違うんですかね?」
「投擲の両手槍版ですぞぉー、しかも無限、実現していればさぞ凄いことになっていたでしょうなぁ~」
「あぁ―――確かに凄そうですね」
片手で無限でも対して変わらない、イヤそうでもないのか、投げる間隔が変わるからそれなりに使えるのか。
「さて、もう一人の少しはまともそうな女は」
「chefアランギー様、謁見の間にいたズィルパール王国の人達って重要なんですか。もしそこまで重要じゃないんだったら、話を進めませんか?」
「……それもそうですな。彼等の持つスキルが気になっただけですので、そうしましょう」
そんな言われ方したら気になるんですけどぉー。
「パトロン殿は、場を離れたいヴィルヘルムの同行を許し、好奇心で同行を強行したナディアの同行を許し、甲板にたいルーヘンの目の前に神授スキル【フリーパス】で移動し、そして、神授スキル【転位召喚・極】でヴィルヘルムとナディアを自身の近くに召喚した」
「端的に言うとそうなりますね」
「ジャスパットには西朝の天皇と東朝の天帝、王が二人おりどっちに会うべきか悩んだパトロン殿は面識のあるムーコンにまずは会うことにした。少しだけ学習し驚かせないようムーコンからちょっとだけ離れた場所に神授スキル【フリーパス】で移動した」
「いや、最初から西朝の方に行くことにはしてたんですけどね」
「ふむ、西朝ですか」
「ガルネスに近い方からって他意は全くない感じです」
「まーそのことは今回の件には全くと言って関係ありませんのであえて気にする必要はありませんですぞぉー、はい」
「そ、そうですね……」
「ルーヘンからガルネス市周辺の状況を聞いたパトロン殿は、神授スキル【タブレット】で検索し驚愕に行きついてしまった」
「驚愕っちゃぁー驚愕なのかな」
「遥か昔数十億年前から繰り返されてきた下界と亜下界の接触と反発と圧縮と膨張の結果コルト下界よりメア亜下界へと転移してしまったコルトの民を救出すべく、パトロン殿はメアの山組跡地山城に神授スキル【フリーパス】で移動し、神授スキル【転位召喚・極】でヴィルヘルムとナディアとルーヘンとムーコンを召喚した」
「そうなりますね」
「神授スキル【タブレット】で検索した結果、コルトの民が六千十一人も暮らす場所を見つけたパトロン殿は、その場所が周囲を結界で覆った城下町スタイルの集落だと知り、門から離れた場所に神授スキル【フリーパス】と【転位召喚・極】で移動した。ここが大きなミスですな」
「確かにそうですね。ここで結界の中に入ってしまったのは失敗でしたね」
「いえ、それは誤差の範囲ですぞぉー」
「あれ?」
「敵対するもしないもパトロン殿の心気持ち次第のこの状況なのですぞぉー、遠慮する必要が何処にあるのですかなぁー、はい」
……接触するタイミングで遠慮するとかしないとか関係あるのか?
「彼等は確かに生き抜いていました。メアの地でコルトの存在が生き永らえるのは容易なことではありません。称賛に値します。代を重ね時に流れ人を加えハイエルフやハイウィザード、ハイユマン、ハイドラコなど高位種族を中心に一万年もの間集落を維持し続けていたようですからなぁ~」
「ハイユマンとか聞いたことないんですが」
「既に滅んでおりますかなぁ~、パトロン殿は聞いたことがなくて当然ですぞぉー、コルトの高位種族は前時代と呼ばれた時代よりも前の時代に半数以上が移住してしまったはずですからなっ」
「移住っ!?」
「そうですぞぉー、大地も海も空も全てが荒れ果て、あっ、荒らしたのは低位種族、現在のコルトでは比較的多く見られるユマン、ドワーフ、ギガントの地形破壊型生物達です。低位種族に明け渡す形で移住したのでしょうな」
「どこから突っ込んだら良いのかちょっと分からないんで、一つずつ質問しますね」
「構いませんですぞぉ―」
「俺、その集落の住民を全員エグルサーラのニューリートに転移で連れて来たちゃったんですけど……大丈夫ですかね?」
「彼等は元々コルトの民ですからなぁ~、帰界したいという意思を尊重せずメアに置き去りにしてくる方がどうかしてると思いますですぞぉー、何せパトロン殿はコルトの管理者なのですからなっ、はい」
「ハイユマンとかハイドラコとかハイウィザードとかハイドワーフとかハイギガントとか……どうしたら良いですかね?」
「どうしたらとはいったいどういうことですかな?」
「滅んじゃってる種族を連れて来てしまって良かったのか」
「なるほどなるほどなぁーるほど、若干の問題は生じているようですが許容範囲内です。一連の事件が許容範囲を大きく逸脱した事象によって引き起こされている以上、許容されなくては彼等の存在が理から外れてしまいます」
「それって」
「理外の民に近い彼等をコルトの民と一緒にコルトの地で生活させるのであれば注意が必要だとは思いますが現状混ざりまくってる状態のコルトでは注意する必要があるかと言われれば必要ないとも言える状況でまぁー……気にするだけ無駄というもの。私としては様子見をお奨めしますですぞぉー、はい」
「は、はぁー」
「さて、会話も弾み楽しいデジュネでしたな」
何を食べたか覚えてないや……。
「午後の書類整理は私が代行致しましょう。パトロ、陛下は回っていない国を……ララコバイア以外回っていないのでそちらを優先してくだされ」
「ありがとうございます」
「いえいえこれも副王であり友神として当然のこと、スタシオンエスティバルクリュにKANBEの優れた家畜の試験的な導入の許可を頂きたくぅ―――」
「農地と居住地を圧迫しないなら何処にでも自由にどうぞ」
「おんや、素晴らしいですぞぉー」
パンパン
chefアランギー様のパルマセコの軽快な音がビストロ・アランギーに響く。
もう手配したってことかな?
「お礼と言ってはなんですが、KANBEの高級食材を使った料理を週三回から五回に増やすことにしました。それと、ズィルパールの件はこちらで処理しておきましょう。それと、帰界した民達の件もこちらでまとめておきましょう。それと来る日にそろそろ備えた方が宜しいですぞっ」
「ありがとうございます。何か色々とやって貰っちゃはぁっ―――ッ!!!??そろそろ来る日に備えろってどういうことですか?」
「何を今更驚いているのですかな、当の昔に世界創造神様より神授されているでしょうに。良いですか、パトロン殿はジャスパットを統一させ正しい王の血を不死の山に捧げなくてはいけません」
……何、この流れ?
「初耳なんですけど」
「あぁ――――、さて私は書類やら何やら忙しい身。そろそろジィヴェ」
パンパン
chefアランギー様のパルマセコの音が響くとchefアランギー様の姿は俺の前から消えていた。
何だか良く分からないけど、感謝だな。タブン。
貴重な時間をありがとうございました。
可能な限り会話形式にしてみたところ、
話の繋がりが……。申し訳ありません。




