6-MS-59 共通点は悪気⑦ メアは広いな大きな② 一考の余地
ムーコン親王、ルーヘン王弟君、ヴィルヘルム殿、老師ナディア。この四人に手っ取り早く説明する方法。
それは、神授スキル【タブレット】の画面を見せながら一方的に話を進めてしまう方法。
という訳で、タブレットの画面を宙に展開した。
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「...... ~ ......という訳で、どうやら城下町規模の集落に住んでるみたいです。スキルで確認しましたが彼等は間違いなくコルト下界の民です。ただ何故かこっちの世界の民特有の能力が備わってるコルト下界の民みたいです」
「お兄ちゃん、こっちの民特有の能力ってまさか悪気とか………言わないよね?」
「老師、そのまさかです」
「ウッホォーイ、来たよ来たよ来ちゃったよぉー、陛下陛下ぁ~♪」
「な、何事かね老師っ!?」
「これはララコバイア強いてはコルトの為なのです。いつの世も尊い犠牲はつきも」
「ダメだ」
「のです。是……あぁーやっぱりダメですか」
「以前にも……あれは確か、国を豊かにする技術へ貢献できる機会は今しかない。魔力量の比較的多い王侯貴族の次男三男令嬢にとっては名を売る絶好の機会だからなんだと言って集まった者達に」
「あの実験は結果としては申し分なかったかな。何人か元から体が弱かったんだろうね。何十日も目が覚めないモルじゃなかった貴族のご子息やご息女がいたけど、おかげで魔導船の力が劇的に向上できた訳だし貴族に生まれた訳だし国に貢献できて良かったんじゃないかな」
「海の漢としては老師様様大いに感謝している。ただ素晴らしい技術の陰にあのような犠牲が、と考えると、流石に飛び跳ねて喜ぶまではできなかったぞ。祝砲を一日中撃ちまくったがなっ!!ガッハッハッハッハッハ」
「南の魔導船の大進化に、まさかナディア嬢が関わっていたとはのぉー」
「お爺ちゃん。老師とは仮の姿、私の本当の姿は魔導錬金技工の大々々々研究家Dr.ナディア」
「ほうぉー、ナディア嬢は凄いのぉー」
「でしょう♪」
「だが、凄いからと言って、人様を傷付けてはいかん。凄い者、強い者、力ある者は笑顔と安らぎの中心にあらねばならん」
「あぁ―――――なるほどねっ、一考の余地がありそうだから、……何人か連れて帰って実験しながら考えることにするよ。よしっ」
「よしっ、ではない老師、ムーコン殿の話を聞いていなかったのか?」
「陛下、私を誰だと思ってるのさ。私は現ララコバイアの知の至高だよ、一度聞けばだいたいの物はある程度理解できるさ」
「老師、海の漢にも破っちゃーならねぇーことが一つだけある。それは……」
「弟君、早くそれはの続きを」
「それは、人生謳歌、命を蔑ろにするな。だ」
「そっか流石に一考の余地はなさそうで良かったよ。まぁーあれだ、弟君が人生を謳歌できるようにこっちはこっちで頑張るからさ、そっちはそっちで気長に人生を謳歌しててよ」
「お、おう」
このまま老師ナディアを中心にしていてはダメだ。ちょっと様子を見ようとか思っていたちょっと前の俺よ、これが現実だ。ファルティーナ達で学習した……と、錯覚だったか。
「分った分かった分かったからさもうこの話はヤメヤメ、連れて帰る帰らないは現地で考えることにするからヤメヤメ、お兄ちゃん続けて良いよ」
「待たせたねロイク君」
「英雄殿こっちの話は終わった気にせず続けてくれ」
「アシュランス王よ。この者達はいつも斯様なのかの」
あー、続けて良いのか。
「町の中にいきなりは騒ぎになると思うんで、町から二、三百m程離れた場所から歩きましょう」
貴重な時間をありがとうございました。