6-MS-51 共通点は悪気④ おさらいの時間ですよ③
「惜しい。実に惜しいですぞぉー。あの場にモントレアプレが偶然居合わせていなければっ」
居合わせる。って、モントレアプレは人間じゃないですけど……。
「召喚の儀式は成功していたでしょうなっ、はい」
「神アランギー様。惜しいとはどういうことでしょうか? モントレアプレが原因なのですよね?」
「おんや、サンドラ君考えてもみてくださいですぞぉー。あの場にはそのモントレアプレの他にもう一つモントレアプレが存在していたはずですぞぉ~、はい」
「私の他にモントレアプレを所持していた者があの場に、ですか?」
・・・
・・
・
思い当たる人がいない。サンドラさんはそんな表情を浮かべながらchefアランギー様と話を続けていた。
「私としたことがうっかり、あの場の解釈がサンドラ君と私とでは下界コルトと亜下界メアのレベルで離れた物になっていたようですなっ、はい。...... ~」
あの場と聞いて想像する物が違うって言いたいんだよな?
・・・
・・
・
「~ ......料理と何やら他にも司ってしまってはいますが、私など所詮は料理の神程度の存在、問われる価値すらない料理を作っていれば良いだけの神。……なのかもしれませんがっ、神である以上神であり神以下には成り下がれないのもまた事実なのですぞぉー、はい。」
chefアランギー様はソファーから立ち上がると、眉間に左手の中指を当てながら、大袈裟な口調で小芝居を披露していたが。
神様だという結論に辿り着き、小芝居は終わったようだ。
「……神アランギー様…………」
質問に答えていたサンドラさんが、声を掛けて良いものかと悩むこの状況下で果敢にもchefアランギー様に声を掛けた。
「先ずは認識を合わせるとしましょう。あの場。つまりガルネス大寺院と少し行った所までのことなのですが」
「巨大な魔力陣の上ではなくガルネス大寺院全体ですか?」
おっと、もう一つのモントルアプレって言ってたから、ガルネス大寺院の庭園だった場所で野営していた竜王のモントレアプレなのは予想してたけど、chefアランギー様の言うあの場って随分広範囲だったんだな。
ほぼ全壊した広大なガルネス大寺院と大穴と四方を囲む壁を思い浮かべながら、床に施されていた詳細不明の魔力陣の影響範囲の大きさや広さを重ね、コルトにあったらダメな奴だろこれってと改めて痛感する。
「全体にプラスするところの私の歩幅七十七cmカケル七十六歩と言ったところでしょうなぁー、はい」
「畏まりました。外壁から五十八mと五十二cmまでの地点をあの場と認識すると宜しいのですね」
「その通りですぞぉー、……はいサンドラ君。質問の続きを」
「……あの場で私の他にモントレアプレを所持していた者は竜王クロージャ様のみ。召喚の儀式が失敗に終わったのは私のモントレアプレではなく竜王クロージャ様のモントレアプレが原因だったのですね」
「惜しい、惜しいですぞぉー、真相に近付きつつはありますが、実に残念ですぞぉー、はい」
「えっ? 竜王クロージャ様のモントレアプレが原因ではないのですか?」
なんだか俺も意味が分らなくなって来たんですが。chefアランギー様もう少し分かり易くお願いできませんかね?
「クロージャのモントレアプレが原因で間違いありませんですぞぉー、ですがモントレアプレが原因ではありません」
????? あ? え?
「申し訳ありません。神アランギー様の御言葉が余りにも難解な為か私にはどうしても理解することができません」
「そろそろ潮時ですかな。意地悪は止めるとしましょう。さてさてさて、モントレアプレが原因で間違いありません。ですが、正確にはモントレアプレから生じる神気ゴッズオーラが原因、アァ―――起因と言い直した方がよさそうですなっ、はい」
「モントレアプレの神気ですか」
「お分かりいただけたようでなによりですぞぉー、因みに、サンドラ君のモントルアプレは亜下界メアと下界コルトのBaiserを手助けし集団転移に一役買っているのですが、いやはやいやはや起きる時とは唐突起こる時は待ってはくれないものですなぁー。備えあれば患いなしとは良く言ったものですぞぉー、ハッハッハッハッハはい」
「「「えっ!? えぇぇぇぇ―――――えっ?」ハァ↑~~~アッ??」」
「お、お待ちください。わ、私のモントレアプレが原因で強制転移が起こってしまったのですかっ!?」
chefアランギー様が落とした爆弾に、ユーコ様は飽きてお昼寝中、ロザリークロード様は既に知っている、トゥーシェはお菓子タイム、フォルティーナは自由、マルアスピーは興味がないの五人以外、俺を含めた皆が一斉に驚きの声を上げた。
「惜しい。サンドラ君もう一声、あと一声だったのですがぁー実に惜しいですぞぉー。サンドラ君のモントレアプレの神気が起因となりBaiserに転移にと大忙しだった訳ですなっ、はい」
「神アランギー様」
「なんですかなぁー」
「復習することの大切さを身にしみて実感致しました」
「おんやそれはそれは喜ばしいことですぞぉー、生きるとは日々学び成長すること、側面の多い代物ではありますが、賢く強かに赦し償われる、そうありたいものですなぁー。料理を美味しく食べる為のコツの一つですなっ、はい」
……まぁー何て言うか。chefアランギー様もやっぱり自由だわ。
貴重な時間をありがとうございました。