6-MS-47 共通点は悪気③ 捧喚石③
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メリアさんに冒険者探検家協会の判断基準や事務処理の在り方を聞くのもどうかと思い。
全協会を行政レベルで監督下に置く協会監察庁の長官を任せているバルサさんに話を聞くことにした。
バルサさんは、冒険者探検家協会のアシュランス王国選出の理事の一人で、冒険者探検家協会アシュランス王国本部の理事長代理で、冒険者探検家協会フィーラ支部の協会(支部)長代理で、冒険者探検家協会カトムーイ支部の協会(支部)長で、カトムーイの執政官でもある。
ゼルフォーラ(聖)王国のパマリ侯爵領侯都コルト(当時は領都コルトと呼ばれていた)の冒険者探検家協会の受付嬢として働いていた経験をchefアランギー様に買われてしまい面倒事を押し付けられた面倒事に巻き込まれてしまった可哀そうな人。だと俺は思っている。
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「協会規定に則って不要な部位は随時焼却処分されていたから気付くのが遅れた。……って」
役所じゃないのに御役所仕事全開って何事。
「で、報告が上がってこなかったのは管理運営責任者の副協会長が無害だと現場判断したから。……ですか」
冒険者探検家協会って、責任者のたった一人の判断で右へ倣えが成立しちゃうのか。
官界に所属しない民間の準軍事組織(冒険・傭兵・魔術・偵察など)は柔軟性が高く臨機応変で神出鬼没で経験が豊富だから正規兵と比べ優秀な人材が多いとか言われてるけどホントにそうなのか?
冒険者探検家協会の下請け協会狩人射手協会所属の親父がトミーサスの英雄って呼ばれるくらいだかなぁ~……。
「アシュランス支部を経由しアシュランス王国王都本部に上がって来た報告の中に、【フィーラ州及びカトムーイ州において死霊系魔獣の目撃が急増。火焔の真只中(八月)に起きた前回の大行進と比較し規模は小規模と推測。微温湯共に後れをとった前回の失態を教訓とし冒険者探検家協会単独での早期解決の許可を申出】。自分達で解決するから許可をくれってあったけど、許可を貰う前に死霊系魔獣の討伐作戦を決行していた。作戦は秘匿性を考慮したのかSランク三人Aランク五人の少数精鋭で行われ、結果は全滅生還者は一人もいなかった。……ハァ~」
幸せが逃げるらしいから止めたいと思ってはいるのだが止められない。無意識に溜息が零れてしまう。
「規定と責任者の現場判断、見直した方が絶対良いですよ」
「申し訳ございません」
「あと、報告を意図的に遅らせたり、書類上の不備を利用した差し止め保留期間とか意味の分からないルールも見直すべきです」
「申し訳ございません。早急に各協会の理事を集め改善案を検討致します」
会議や話し合いばかり繰り返して、結局のところ何も進展しないとかばかりなんだよな。
もっとこう、長期で見る物と短期で見る物とを分けて効率良く物事を進めるとか、何か方法はないか?
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因みに詳細は、本部から支部へ命令書が届いたのが十月八日。
命令書の内容は、国と協力して対処するからそれまで軍や警備隊や傭兵職業軍人協会や魔術師魔導士協会と連携し被害を食い止めろ。こんな感じだった。
報告書に添える形で提出された申請書がフィーラ支部からアシュランス支部へ届いたのが九月二十九日。
不備があり差し止め保留期間三日を経て、フィーラ支部へ報告書が返送されたのが十月三日。
不備を訂正した報告書がアシュランス支部に届き王都本部で受領されたのが十月七日。ガルネス解放戦争の開戦日だ。
ガルネス解放神授回帰旧教撲滅の機運が高まり、一協会の一支部への関心や注意が弱まっていた。
フィーラ支部はそんな中準備を進め、十月五日の闇が世界を支配する時間に作戦を決行していた。
フィーラ支部の単独行動と作戦失敗を本部が知ったのは偶然だった。
討伐作戦に参加したSランク冒険者のパーティーメンバーが、メンバーの一人がフィーラの討伐クエストに行ったきり戻って来ないと所属するアシュランス支部の受付に相談し、支部間で状況の確認が行われ実態が明るみとなり本部の知るところとなった。
Sランクパーティーが相談した日が十月二十二日の昼過ぎ。
フィーラ支部が全てを吐いたのが十月二十七日の夕方。
そして、会議に出席中のバルサさんに本部から報告が届いたのが今日十月二十八日だった。
報告には、大行進の兆し、死霊系魔獣の急増、孫魔猿の紫色の石、支部単独による討伐作戦の失敗、死霊系魔獣からも紫色の石が見つかっている。と、あったそうだ。
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「それと、おかしいですよね。十月七日の時点で本部は大行進の件も孫魔猿の件も死霊系魔獣の件も把握してたのに、バルサさんへの報告が二十八日って、変じゃないですか?」
「誠に申し訳ございません。私の力不足にございます」
「バルサさんのっていうか体制そのものに問題あります。……他の国は協会とどうやってるんだ?」
各協会は独立した組織だ。国の命令に従いもするし背きもする。ゼルフォーラ(聖)王国なら戦争や討伐に拒否権無しの強制参加が義務で、その代わりに平時はクエスト報酬の税金の免除などが権利として認められていた。
「ロイク様、陛下。今更訂正したところで何も改善しませんが、訂正させていただきます。まず、フィーラ支部から王国本部へ届いた報告書と申請書の内容ですが、死霊系魔獣の大行進の報告と早期討伐のみでした」
「孫魔猿の報告は昨日でしたっけ?」
「はい。昨日二十七日の夕映え二十三時五十七ラフンにスカーレット支部より本部へと緊急の報告があり、その報告が、本日私が受け取った報告と陛下にお伝え致しました報告と同じものになります」
貴重な時間をありがとうございました。