6-MS-45 共通点は悪気③ 捧喚石①
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「会議中にホントすみませんでした。ヨランダ卿には俺の方からも後で言っておきますんで引き続き会議の方を宜しくお願いします。戻しますね」
ヨランダ卿とは、風の樹人族の武門の名家ヒース伯爵家の当主で国防大臣のことだ。
「解放戦争の論功、白光の夜の怪事件の原因究明、集団転移失踪事件の原因究明、失踪者の帰界後の国家間調整、16th Birthday Godの回帰、旧教関係者の保護と調書、旧教関係者の逃亡犯潜伏犯偽装犯の掃討撲滅、旧教支援国への制裁措置、異界メアとの仲介と調整など上げると切りがありません。陛下と神アランギー様に頼らざるを得ない案件ばかりとはいえ歯がゆく思っておりましたところ、首相を任されているはずの暇人に国防と治安の会議が舞い込みたまたま忙しくしていただけのことです」
沸き上がって来る、呼んでごめんなさいという素直な気持ち。
「ロイクさん。ダダ卿は王都の執政官として議長に選任されました。ダダ卿と王国警備隊の責任者と六州の執政官が全員席を外しているのです。何よりも会議の出席者達の中に陛下の召集を軽んずる者はおりません」
「サラの言う通りです。ロイクさんはこの国の王様なのですからもっと偉そうにしても良いと思います。寧ろもっと偉そうにするべきです。ですよね、サラ」
「言わんとするところも分かりますが、今はその話ではないでしょう。アリス」
「了解でぇーす。テレーズ、その件は少しずつってね……。ロイク様」
その件って、テレーズさんが言ってた偉そうにするべきだってことかな? 会議に戻って貰おうと思って、chefアランギー様に無理矢理神茶を進めて休憩して貰ったんだけど。何かすんなりいかないや。
「先に、ダダ卿とテレーズと私を戻していただけますか?」
安全保障と治安維持と軍の再編と警備隊の再編を見直す会議なのに俺が出席しなくても良いってなんかおかしな気もするけど、皆普通に話してるしたぶんこれが普通なんだろうな。
「ロイク様?」
「??? えっと……」
「ダダ卿とテレーズと私が先に戻ることになりました」
皆で戻って貰って構わないんだけど、何故に三人だけ?
「ルードヴィーグ卿?」
「Fiance's and wifeの皆様方がお決めになられたことですので私の方からは何もございません。会議はグランディール城の二階カレントリップズの間で開かれております。直接ですと驚き腰を抜かす者をおりますでしょうから扉の前にお願い致します」
フィアンセェズアンドォゥワイフッ? アリスさん達のことみたい、あぁあぁなるほど創造神様公認の奥さんと許嫁のことか。樹人族の言葉は速いしくっ付いてるし歌ってるみたいでホント難しいよなぁ~……って、違う違う。
「分かりました。先に三人を移動させます」
三人を【転位召喚・極】でカレントリップズの間の扉の前へと移動させた。
残ったこの人達はいったいどうするんだろうか?
「あの、サラさんとバジリアさんとメリアさんとカトリーヌさんとバルサさんは戻らなくて良いんですか?」
「戻る前に、私は人族として」
「私は樹人族として」
「私は妖精種として」
「私は獣人種として」
「うん? この流れだと私は闇樹人族としてということで良いのかな?」
「「「「話があります」」」」
「えっと、私も何か話した方が良いのか?」
サラさんとメリアさんとカトリーヌさんとバルサさんの息を合わせた言葉に、どうしたらいいのか分からないといった感じのバジリアさん。
雰囲気から察するに重い話ではなさそうだ。それに会議に戻らないといけない訳だから長くはならないよな。タブン……。
「種族を口にしたってことは同じ話ではないですよね?」
「「「「はい」」」」
「……そのようです」
「先程の説明にありました捧喚石なのですが、ゼンスタードの東地区地下貧民街の旧亜人種居住区の旧教施設獣人種保護調教センター内に設けられていた礼拝堂から同じような物を押収しています」
「あれ? 報告を受けた覚えがないような……」
「はい。王立研究所の結果をまとめた上で報告書を提出する予定でいたそうです。それと、ダカイラの鉱山内に建てられた旧教寺院からも捧喚石と思われる石が見つかっています」
「もしかして、その石も研究所の報告待ちで?」
「はい……申し訳ありません。……あともう一つありまして……」
この流れ、サラさんの表情を見なくても容易に予想が付く。
「ラクールでも見つかってたんですね」
「いえラクールではなく」
「え、あれ?」
違うの?
「フォーラムをはじめとした獣人種が多く暮らす東部の都市の比較的規模の大きな旧教施設からも捧喚石と思われる石が見つかっているそうなのです。聞きかじっただけということもありますが、ゼルフォーラ(聖)王国しかも貴族領内のことでしたので」
「立場上内政干渉になっちゃうのか」
「はい」
貴重な時間をありがとうございました。