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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-44 共通点は悪気② 負の感情石と悪理水晶

悪気(あっき)の力を秘めてはいるが元は(みず)(ゆえ)冷たくて当然じゃ」

「はぁーこれが元々水ってかぁー、カリッ、か()てなぁ-、これ本当に水だったのかよっ!!」


 リュシルが胸の谷間から取り出しテーブルの上に置いた褪せた紫色の石を奪うかのように引っ掴み何の躊躇もなく口へと運び齧った親父。


 いったい何をしたいのか、したかったのか。親父の行動原理が全く持って理解できない。


父親(てておや)殿よ」

「何だ?」


「何処かおかしなところはないか?」

「は?」


 リュシルから訝しげな目を向けられている父バイルは気にしていないというか気付いていないようだ。


 おかしなところばかりだし、そうかもな。


「その石は悪気を切らした時の為緊急時の備えとして肌身離さず持っておったお守りのような物じゃ。妾にはリカバリーアイテム故問題ないが、弱者には精神を蝕む毒アブノーマルコンディションアイテム故」

「お、おい、ちょっ、ちょっと待てよぉっ!! こ、こ、これ、ど毒とか聞いてねぇぞっ!!」

「触れるのも口にするのも止めておいた方が良いとは思うがもう済んでしまったこと故」

「お、お、おいっ何言ってくれてんだよ。もう済んだこととか済んでぇーとかダメでしょそれじゃ、ダメだってっ!! せ、せ、責任。そうだよ責任だよ。せ、責任者出せっ!!」


 勝手に手に取って勝手に口に運んで勝手に齧って好き勝手に騒いで……ハァ~~~、元気そうで何よりだよ親父。


 無視して話を進めたいけど、この五月蝿さでは流石に無理そうだし、どうしよう。


「何処かで見かけたような気がしていましたが、そうでしたか。メアででしたか」

「お、chefアランギー様。触らない方が良いらしいですよ」

「問題ありませんですぞぉー、はい。何せ私は神ですからなぁー」


 chefアランギー様は、俺が作り出したchefアランギー様命名の『負の感情石』とリュシルのお守り『悪理水晶』を右手と左手に持ち、何かを始めたようだ。


 分析してるのか? それなら俺も失礼してっと。


 神眼を意識しリュシルのお守りを視る。


「だからよぉー、見かけたとか気がするとかそんなのどぉーでもいいのよぉー、今はさぁー、俺がどぉーなるっ? とか、どうもならないとか、そっちの方が大事でしょうぉーがぁー」

「バイル、さっきから一人でうるさいね」

「あ”あ”ぁぁっ!!??」

「良いかね。例え死んでしまったとしてもだね。忘れないね」

「お、おいちょっと待て俺しし死んじゃう感じなのかよっ」

「だがしかしだね。安心するね」

「あ、安心できるわけねぇーだろがっ!! どこの世界に『お前はもう直ぐ死ぬ』『そっか俺死ぬのか』『お前のことは忘れない、だから安心しろ』『って、死ねるかぁー』つぅーか死にたくない。まだ死にたくない。寧ろ生きたいって気持ちの方が強くてごめんなさい、謝る。謝るからさっ、なっ、なっ、だから良いだろう。お願いしやぁーすっ」


 親父、頼むから言葉を話してくれ……。


・・・

・・


「超純粋な悪気から成る石と超悪水と悪気から成る石。この二つは全く別物と言って良いでしょう」

「別物とな……」


 リュシルの眼が深紅に光る。


 気になって当然か。かくいう俺も神眼で視た後だ。


「色とかも微妙に違うし。俺が作った方は悪気を凝縮しただけの百パーセント悪気なだけの石擬きで、水からできたリュシルのお守りとは根本的に違うのは間違いない訳だから、別物だって言われた方が納得ですね」


「お、お前等なぁー、お、俺が死ぬかもしれねぇーって時にな何呑気にはは話し何かしてくれちゃっくれちゃっハッ!! ハッ!! ハックション ……な、なんだおかしいぞ、妙な寒気とすすんげぇーあ頭がいてぇ―――――っ!! ぬおぉぉ」


 三人掛け用のソファーにロザリークロード様とフォルティーナに挟まれ座る父バイル。


 奇声を上げながらヘッドバンキングで自己主張し続ける父バイル。


・・・

・・


 この人の、親父の奇行はいつものことだ。死ぬ死ぬと騒いではいるが、どこからどう見ても元気そうだ。迸る命の輝きが痛々(まぶ)し過ぎて、思わず他人のふりをしたくなってしまう。


 ……フゥー。


 心の中で深く深く息を吐き出し心を落ち着かせていく。深く深く息を…… ~ ……ほんの僅かな時間で良い…… ~ ……。???


 あれ? 声が聞こえなくなった。


「助兵衛が助平を拗らせて気絶したね」

「そのようですな。食欲にしておけば良かったものを……実に残念ですぞぉー、はい」

「忙しなく奔放。真は悪神共が眷属で阿呆に名を連ねる阿呆が化現した何かだ。と、誰ぞこ奴が贋であることを我に証明して見せよ」


「限界まで体を動かし泥のように眠る。義理の父親(おとうさま)はまるで子供ね。やっと大人の時間になったのだから話を進めてしまっても構わないと思うのだけれど、どうなのかしら?」

「妾も同意見じゃ。催眠効果で夢の世界へと誘われているうちにまとめてしまった方が良いと考える。旦那様もそうは思わぬか?」


 ……好き勝手に言われてる親父に、特に何とも思わないのは息子としてどうかとも思うけど、まぁーありだよ……な。


 それにしても、催眠効果ねぇ~。()たところ、リュシルのお守りには『混乱』『催眠』『催淫』『催涙』『催笑』『宿酔』『鈍痛』『劇痛』微妙な効果を微妙に促す効果があるみたいだ。


 ……リュシルとマルアスピーに激しく同意したいと思う。親父が淫夢見ている間に全て終わらせてしまおう。


 それでは、サックと。

「はい皆さん注目してください。まずは、俺が作った負の感情石とリュシルのお守り悪理水晶と旧教の紫色の石について、chefアランギー様から説明をいただきましょう」


「なぁーロイク。バイルのお菓子……」

「寝てるみたいだし食べちゃって良いと思いますよ」

「ふっ、愚かな男なのじゃ。美味しいお菓子を前にし眠ってしまうとは、軟弱者めこの軟弱者めなのじゃー、ギャァーハッハッハッハッハ。お前のお菓子は私が貰ったのじゃぁ~~~ハッハッハッハッハ」

「トゥーシェ。お菓子そっちに移すんで静かに食べててくださいね」

「ヌーワァッハッハッハワァ、分かったのじゃ♪ フンフンフンフン♪」


 トゥーシェの心からの笑顔が眩しい。リュシルと同じ顔なのに全く違う印象を受けてしまうのは何故だろう。……まっ、今はいいや忙しいし。


 そんなに気にしてはいなかったが、いつも通りみたいで何より何よりってことで。

「それでは改めまして、chefアランギー様宜しくお願い致します」

貴重な時間をありがとうございました。

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