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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
-スタシオンエスティバルクリュ編ー
47/1227

1-34 避暑地の管理人と、家族の定義。

宜しくお願いします。

――― アンカー男爵領マルアスピー

ロイクの実家 ロイク自室

――― 6月5日 21:00


「家を建てるなら役立つからと運の神様からいただいた道具(ガラス玉)ですが、一緒に確認しますか?」


「胸の谷間から取り出していたあれね」


「はい。広い所で使った方が良いって言ってましたし、中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)で確認した方が良いですよね?」


「そうね」


 俺とマルアスピー様は1階の居間へ移動した。



――― 居間 6月5日 21:10


「母さん、道具の効果を確認したいからちょっと出かけて来る。夜になる前には戻ると思う」


「アスピーちゃんも一緒に行くのかしら?」


「はい」


「そう、行ってらっしゃい」


「杖ずっと持ってると赤ちゃんになっちゃうかもよ!」


「子供の頃の様な肌に戻れるなら嬉しいわぁ~」


「乳飲み子にはならないわ」


「言葉の綾ですよ」


「・・・そ、そうよね」


「それじゃ、行って来ます」


「気を付けてね。あっ、それと帰って来た時に、お父さん達がまだ戻って無い時は宜しくね」


「了解!」


 【フリーパス】場所:中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)の中央・移動≫



――― 東モルングレー山脈

中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ) 中央

――― 6月5日 21:15


 俺とマルアスピー様は、南北に10000m級の山々、東西に9000m級の崖。標高9000mに広がる南北6Km東西25.2Kmの高原。中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)の中央に出現した。


「ここって崖下からは見えない様になってるんですよね?」


「精霊樹の上から世界を見渡した際に中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)に気付けませんでしたから、そうなんだと思いますよ」


「精霊樹は、300m位の高さがあるんですよね?周囲に邪魔する高さの物も無いし、ここまで直線で約120Km。精霊眼や聖獣眼がある訳だし、見えない距離では無いですからね」


「この渦を巻いている風の結界が内側への侵入だけではなく視認を無効化しているのかもしれません。聖域に張られた結界よりも優れた何らかの方法があるのでしょう。精霊眼ですら視認出来ない結界ですからね」


「神様達の避暑地だった場所かぁ~・・・考えてみたら凄い所ですよね」


「そうね。さぁっ!運の神様からいただいた道具を確認しましょう」


「はい」


 可視化:運の神様からいただいた道具を表示 ≫


≪・・・表示しました。


「やっぱり、詳細が不明みたいです」


「使用してみるしか無いわね」


 取り出し ≫


≪・・・神域規制厳重管理希少道具から【résidence(レジダンス)dieu(デュー)】を取り出しました。


 俺の右手に小さなガラス玉が出現する。


「これ、レジダンスデューって道具なんですね・・・どうやって使うんだろう」


「まずは、陽に翳してみましょう」


 俺は、レジダンスデューを陽に翳す。何も起こらない。


「覗いてたり、舐めたりしてみましょう」


「そうですね」


 俺は、レジダンスデューを覗き込む。・・・


「マルアスピー。正体不明な物を舐めるのはちょっと・・・」


「大丈夫よ。ロイクは全ての状態異常呪が無効化される身体なのだから」


「身体は大丈夫だと思うんですが、精神的な方でちょっと・・・」


「大丈夫よ」


「どうしてですか?」


「ロイク。貴方の場合は基本的に問題ないわ・・・とても鈍いのだから」


「はぁ?何ですかそれ・・・」


「良いのよ。フフフッ」


「あたしも思うね。君は鈍珍だね」


「神様まで・・・って、いつの間に!って・・・それに何ですかその恰好は!」


「仕方ないね。入浴していたら君があたしの入浴を覗くからだね」


「何言ってるんですか?覗いた覚え何か無いですよ。神様なのに言い掛かり何て止めてくださいよ・・・それに、覗かれた人が全裸で人前に居たらおかしいですよ」


「君は変な所で男じゃない男だね。神だろうが精霊だろうが人間だろうが、産まれた瞬間から身に何かを纏っていた者などいないね。これこそあるべき本来の姿という物だね・・・私の身体は美しいだろうぉ~どうだね。ホラ!ホラ!触りたいかね」


「止めてくださいよ。胸で何するんですか?・・・創造神様に、痴女神様に汚されたってメールしますよぉ~!」


「何だね。あたしの入浴を覗いておいて発情しないなんて傷付くね。マルアスピー君も大変だね」


「えぇ~夫婦になったというのに、何も起こらないのも悲しい物です・・・」


「本当に鈍珍だね。君は!あたしが、その腐った軟弱な根性を叩き直してやるね。運の神遊びの女神が直々にロイク。君を官能の世界へ導いてやるね」


「そんな恰好でドヤ顔しないでください。それに、堕落の先にある世界へ導く神様ってどんな神様なんですか!」


「あたしだね」


「・・・神様って俺の親父以上のキャラです・・・」


「そうかね。褒めても何も出ないね」


「褒めてません」


「盛り上がって来たところで、君が持っているガラス玉の使い方を教えてやるね」


「良かったわねロイク」



 何なんだ、毎度のこの展開は・・・


「神授の際に教えていただけたら手間が省けた様な・・・」


「何でも直ぐに知りたがる。結論を欲しがる。結果を求める。人間の悪い癖だね」


「急に神様らしい事をどうしたんですか?」


「あたしが、神様だからだろうね!」


「・・・全裸の神様が人間の愚かさを説いてくれている訳ですね」


「欲望を抑え己に打ち勝ってこそ神に選ばれた者なんだね」


「勝手に話を作ってますよね」


「気持ちちょっとだけだね・・・それで、ガラス玉の使い方だね」


「あ、はい」


「良い立地に場所を決めたら、そのガラス玉を大地に埋めるね」


「ガラス玉をですか?」


「そうだね」


「良い立地って言われても、ここは全体的に良い場所ですよね?」


「そうだねぇ~・・・あたしとしては絶景を眺めながらが理想だね!」


「絶景ですか?」


「ここから北に1Kmの所に、少しだけ高くなっているところがあるね」


「高いって・・・少しだけ盛り上がってるあれですか?」


 俺は、見渡す限り草原が広がる北を指差した。


「20cmでも30cmで良いんだね。少しで高い事が重要なんだね。行くね」


 運の神様は少しだけ盛り上がった場所へ向かい歩き出す。俺とマルアスピー様は後に従った。


「この盛り上がってる様に見えたのって池か何かの堤防だったんですね」


「違うね。池の上の通路だったね」


「この辺りは池だったって事ですか?」


「前に教えたね。ここは左右に大きな滝があったね。滝の水はこの池から供給されていたね」


「池の水は枯れてしまったんですか?」


「避暑地ブームが下火になると神々の観光客が減ったね。池を管理していたリゾート会社が撤退したんだね」


「会社が池や滝を管理してたんですか!スケールが違い過ぎます」


「神気があれば何でも出来る誰でも可能だね。昨日、ドームココドリーロで手に入れた。水神玉と、ロイク。君が大量に作った神理石がここにあるね」


 運の神様は、直系60cm程の水色の玉を5個、俺の目の前の宙に出現させる。


「水神玉は、知ってるね?」


「先日、クロコダイアンさんから試供品を3000個いただきましたが、それと同じ物なんでしょうか?」


「試供品と御神石ではかなり違うね・・・見ていたら分かるね」


 運の神様は、直系3cm程の神理石を俺の目の前の宙に出現させる。


「君が作った神理石だね。56個あるね。今から5つの水神玉に神理石を1個ずつ融合させ、神気活性させるね。みているね」


「は、はい」


 運の神様が手を翳すと、宙に浮いた状態の56個の神理石の中から5個の神理石が、赤、黄、緑、青、紫の5色で輝き出す。暫くすると、5色で輝いていた神理石が金色の光を纏いながら青色に落ち着いた。


「君の神気は、あたしのと波長が同じだからね。実に扱い勝手が良いね」


「今は何をしてるんですか?」


「水神玉に適合する神理石を5個チョイスしたんだね。そして適合した神理石の神気を清澄水属性だけにしたんだね」


≪パチン


 運の神様が指を鳴らすと、金色の光を纏った青色の神理石が1つずつ、同じく宙に浮く水神玉の中へ飛び込む。水神玉は、水色から黄金色へ黄金色から真珠色に変化すると、物凄い水量で水の放出を開始した。


「水神珠の完成だね」


「神様。それをどうするんですか?」


「決まっているね。前に置いてあった場所に置くね」


≪パチン


 水神珠は、5つの方角に分かれ飛んで行った。



「次は、résidence(レジダンス)dieu(デュー)を広げるね。このガラス玉の中にはだね。あたしの寝室や浴室。創造神の寝殿で下界用の創神殿。それに当時の宿泊施設(神宮殿)と、来客用の迎賓殿。実験や研究をする為に整備した高さ684mのタワー型の宮殿が入ってるね」


「684mのタワー?丘や山じゃないですか?」


「大丈夫だね。540m分は地下施設だね。夜な夜な欲望のままに快楽を貪ったとしても誰にも気付かれないね」


「・・・はいはい。それで、そのガラス玉の中身を何処に出すんですか?かなり水浸しですけど・・・」


「それも大丈夫だね。当時の土台や公園や台座も全部入ってるね。ここに足りていない物は、ロイクとマルアスピーの新居となる建物だけだね」


「あのぉ~・・・家を建てるにあたって役に立つって言ってましたよね?」


「そうだね」


「神殿や神様用の宮殿の邪魔にならないところなら、何処にでも好きな様に建てて良いって事ですか?」


「違うね。それでは、あたしは、あたしの住む場所を君に渡しただけになってしまうね。まぁ~見ていると良いね」


「そのガラス玉を、大地に埋めるね!」


「埋めるって・・・全体的に水浸しで、土に埋めるとしたら、ここから離れてしまいますよ」


「それなら、目の前の水に投げ入れるね」


「結構、適当で良いんですね」


「こういう物は気分が大事なんだね」


「気分ですか・・・投げます」


≪チャポン


「かなり眩しく光るね。私の影に隠れていると良いね」


「分かりました。マルアスピー、神様の影の中に入りましょう」


「えぇ~」


 俺達は、運の神様の影の中に避難した。



『もう、大丈夫だね。以前の時よりも清潔感と神々しさが増した気がするね』


 影の中に避難して10カウンも経ってませんよ・・・


『神の力は偉大なんだね』


≪シュタッ シュタッ


「凄い・・・」


「えぇ~・・・」


「まだ、当時の中心。創造神様の離宮。池の内側しか中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)として13億年前の姿を取り戻していないがね。君達の住む場所は、今私達が立っている場所になるね」


「ここですか?」


「北に見える建物は研究所だね。あたしが話した684mの塔の上144m分の塔だね。その手前に浮いている緑の生い茂る場所は、精霊樹の幼樹や聖域に自生する植物達の為の庭園だね」


「運の神様。あの西にある物凄く大きな建物は何ですか?」


「あれは、中空の離宮の本殿だね。この池に浮く全ての建造物の中核になる場所だね」


「マルアスピーあれって、パマリ侯爵邸やブオミル侯爵邸よりも大きいですよね?」


「大きいです」


「君達は何を言っているんだね。離宮とはいえ創造神様のコルト下界唯一の別荘だった建物だね。人間達のそれと同じに考えていてはダメだね」


「はぁ~・・・」


挿絵(By みてみん)


「離宮の本殿は、南北1386m。東西3528m。面積4889808㎡延床面積21515155㎡もあるんだね。高さ52mの10階建で中庭が13個あるね」


「えっ!えぇぇぇぇ――――」


「ロイクどうしたのよ」


「本殿の延床面積が、マルアスピー村全体より広いって・・・大き過ぎますよ・・・」


「さっきのガラス玉が役立つと言ったのはだね。今、あたし達が立って居る場所の面積約448656㎡の土台が更地の状態で収納されていたからだね」


「俺、数学とか得意じゃないんで良く分かりませんが、今立ってる円形の土地が家を建てて良い場所って事ですか?」


「住むところなんだがね。創造神から3つ建物を預かって来たね。好きな物を選んで住んで欲しいそうだね」


「神様が私達に家を神授?」


「良かったね。これで建てる手間が省けたね」


≪パチン


 運の神様が指を鳴らすと、俺達の目の前の宙に、3つの建物が浮かび上がった。


「好きなのを選ぶと良いね」


「運の神様。3つとも家何ですよね?」


「あたしの寝殿や浴室がある神宮殿よりかなり小さい建物ばかりだからね。少し位小さい方が家族で過ごす空間を味わえるという物だね」


「寧ろ3つとも家としては広過ぎるというか大き過ぎると思うんですが・・・」


「なるほど・・・それなら悩む事は無いね。一番小さいが近代の人間達の建造物に近い君には住み慣れた真ん中の建物。ちょっと待つね・・・詳細情報を創造神から預かっているね」


≪パチン


「この度、中空の離宮を人間種人間族ロイク・シャレットに神授するにあたり、離宮管理の為の別荘を神授する事を決めました。本別荘は、敷地面積126872㎡延床面積872880㎡。地上5階地下3階建。家族の人数に合わせ部屋の数や配置内装を自由に変更可能な最新神界システムを採用。オプションとして、離宮や別館で働く者達が居住する建物を50個神授します。種族民族に合わせ多種多様なニーズに応える事が可能になっています。ここからが本題です。次の決まりを確り守り中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)を豊かで活気溢れる地へ導きましょう。①中空池の水上に寝泊り出来る者は神、精霊、聖邪獣、ロイクファミリィーのみとします。例外として迎賓殿及び研究所最上階宿泊施設での人間種の寝泊りは認めます。定住はダメです。②精霊樹の幼樹や聖域の植物達を確り守りましょう。③神殿『現形宮殿』へは私の呼び出しが無い限り立ち入ってはいけません。④滝から落ちない様に気を付けましょう。⑤風の結界が消滅する日は気を付けましょう」


「これって・・・」


「創造神から預かって来た文章を宙に映し出して、ついでだからあたしが読み聞かせてあげたね」



「ここ中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)を俺が管理する様に、創造神様が俺に神授したって事ですか?」


「人間達が勝手に国家だ領土だと争っている現実の中にあって、世界を創造した創造神から直接創造の地の1部を預かったね。責任重大だね」


「ロイク」


「なんですか?」


中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)を神授していただいのよね?」


「創造神が考えている事はそんな小さな事ではないね。だが、今は新制中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)の最初の管理者つまり守護者聖人としてロイクは適当に楽しむと良いね」


「適当って加減が妙に難しくないですか?」


「だから適当って言うね・・・さて、中央の小さな建物で良いんだね?」


「もう、何だか感覚がおかしくなってしまって、運の神様にお任せします」


「良い心掛けだね」


≪パチン


 運の神様が指を鳴らすと、俺達は建物の中に移動していた。



「ここは、何処ですか?」


「神気と精霊気と自然魔素(まりょく)聖属性と無属性がとても強い場所の様です」


「何を言っているんだね。ここは、君達の別荘の中、1階のロビーだね。2つの階段に挟まれた正面の扉があるね。あれは精霊界の精霊王の宮殿の宝物殿に繋がっているね。タブレットに収納してあった物を勝手に持ち出したね」


「階段が2つある意味が分からないんですが、同じ踊り場に繋がってるみたいですけど・・・」


「左右対称の美しさをここでは表現しているんだね。近代の人間達の宮殿の様式に多く用いられていると創造神から聞いたね」


「踊り場にドアが3つありますがあれは?」


「あのドアを開ける時には気を付けるね」


「危険な所と繋がってるとか言いませんよね?」


「危険は無いね。まず向かって右側のドアは、研究所の屋上にあるロイク・シャレット家専用の部屋への唯一の出入口だね。研究所の上にも部屋があるんですか?」


「世界で最も高い場所にある絶景を楽しむ事が出来る部屋だね。360度全てを見渡せる・・・まぁ~北と南は山が邪魔して景色は山だけだね。研究所の最上階は、パーティー会場と展望台と来客用の宿泊施設になっているね。創造神の眷属だがあたしの眷属でもある君がコルト下界・・・中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)の監視者になったお祝いに、あたしの温泉の源泉の湯を最上階の全ての部屋の風呂にかけ流しで設置したね。パーティー会場の休憩所には足湯も完備したね」


「運の神様は温泉が好きなんですか?」


「肌と肌で語り合う至極の時間だね。容姿を語り出すと切りがないが究極の平等の空間がそこにはあるんだね」


「運の神様は遊びの女神様なんですよね?」


「そうだね」


「エロスとか官能とか性愛とか欲望の神様だった事ってないですか?」


「・・・実に良い響きだね。今からあたしはエロスの神を自称する事にするね」


「あ、いや・・・冗談なんで、それは勘弁してください」


「なんだね詰らないね・・・」



「運の神様。精霊王様の宮殿の宝物殿に繋がっているという事は、精霊王様の宮殿と家の別荘が繋がっているという事なのでしょうか?」


「それは半分正解で半分不正解だね。あの扉は精霊王の宮殿の宝物殿とだけ繋がっているね。宝物殿から退出すると必ずここに戻って来るね」


「精霊王様の宮殿から宝物殿に精霊が入って来た時はどうしたら良いのでしょうか?」


「それも大丈夫だね。この扉から宝物殿へ君達が参入した場合。精霊界と精霊域の時間は停止するね。つまり誰も動かない会う事は無いって事だね」


「下界が精霊界よりも優先されている状態なのですか?」


「ここは下界であって下界では無いね。世界創造神の離宮であり神々の避暑地として再稼働したのだからね」


「ロイクは神に近付いたという事なのでしょうか?」


「それは違うね。マルアスピー。君もロイクと同じだね。夫婦なのだからね」


「は、はい・・・」


「それでだね。真ん中のドアは、神宮殿の中のあたしの寝殿の客間に繋がっているね」


「運の神様の宮殿に繋がってるって事ですね」


「そうだね」


「転位や空間移動で簡単に移動出来るのに、わざわざドアがあるのは何故ですか?」


「転位や空間移動が出来るのは一部の者だけだね」


「そりゃそうですけど・・・」


「不満かね?」


「不満がある訳無いじゃないですか。良く分からない今の状況に感謝してる位です」


「そうかねそうかね。うんうんだね。向かって左側のドアは、中空の離宮本殿の儀礼の間。君の執務室であり、君に謁見を求める者と挨拶をする場所へ繋がっているね」


「王様や貴族領主みたいね」


「世界創造神に直接管理を託された者に、恥ずかしい環境で貧しい生活を遅らせる訳にはいかないからね」


「・・・俺っていったいここで何をする事になったんでしょう?」


「管理だね!」


「はぁ~・・・」


「おっと、3つのドアの注意点だね。ドアを開ける時に気を付ける必要があるのはだね。向こうにはドアを開けるまで向こうではドアが見えないね。空間にドアが出現すると同時にドアが開く訳だね」


「それって、どうやって注意したらいいんですか?」


「ドアの開け方があるね」


「ドアに開け方の違いがあるんですか?」


「君はドアをどうやって開けてるね」


「そしゃ~ドアノブを掴んで引戸なら引くし押戸なら押して開けますが・・・」


「引く分には問題ないね。押したら危険だね。でも正解は、ドアノブを掴まない事だね」


「えぇ?」


「君はフリーパスの能力を持っているね」


「はい」


「あれは神界神域の最先端技術だね。2つの地点を繋ぐ存在であればそれがどんな存在であれ必ず通り抜ける事が出来る」


「はい・・・」


「結界がそうである様に、空間を仕切っているだけのドアや扉を通り抜け出来ない訳が無い」


「つまり、ドアを開けずに通り抜けろと?」


「その通り。ドアにぶつかるのはドアがそこにあるからだからだね」


「その前に、フリーパスで移動すれば良いだけですよね?」


「そうなるね。ドアは、神か精霊か聖邪獣かロイク、君の家族以外通り抜け出来ない様になっているね」


「結局、ドアについては余り気にする必要がないって事ですよね?」


「そうなってしまったね」



 運の神様から、中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)の離宮のルールを聞き、建物の配置を聞き、かなりの時間が過ぎた・・・と、思っていた。


「と、言う訳で、水神珠の神気が弱く成ったと感じた時はだね。君が直接清澄水属性を注入するか、神理石で補充するね。滝の手前に設置してある水神珠は展望台の下にある部屋と繋がっているね」


「・・・池と滝の管理をしていた業者の代わりの管理人って感じか・・・」


「フフフッ。私の旦那様は人間種だけれど、世界創造神様の眷属!」


「さて、池の水も滝の水の分も貯まった様だし、時間を動かすね」


「・・・時間を動かす?」


「水が少ないうちから滝として落ちてしまってはなね。水神珠のバランスが崩れてしまうからね。水が満たされ川の流れが落ち着くまで、水が落ちる時間と下界の時間を止めていたんだね」


≪パチン


 運の神様が指を鳴らす。


「いつから時間を止めていたんですか?」


「君があたしの入浴を覗いた時からだね」


「・・・」


「フフフッ」



――― 東モルングレー山脈

中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ) 別荘

――― 6月5日 21:18


「アランギーと妖精達。それと、エテルネルスワンを呼ぶと良いね」


「ここにですか?」


「そうだね。君は神との誓いを立てたね」


「あれですか?」


「そうだね。無料ケータリングサービスチケット悠久版で呼ぶと良いね」


「分かりました」


 可視化:無料ケータリングサービスチケット悠久版:取り出し≫


≪・・・無料ケータリングサービスチケット悠久版を取り出しました。


 俺は、無料ケータリングサービスチケット悠久版を空に翳した。無料ケータリングサービスチケット悠久版から光が零れ俺の前に流れ出す。その光は徐々に屋台の様な形になり・・・


≪ガラガラガラガラガラガラ


 キャビンの窓が上に開いた。


≪ガチャ


 キャビンのドアが開くと、料理の神様ことchef(シェフ)アランギー様と妖精達が姿を現した。


「おんやっ!契約主よ。メレンゲ、オムレット、ソイソース、アメール、スコォーチュが働く場所は、神の宮殿ですかはい」


「アランギー。昔の様に神宮殿が復活したね。君の寝殿もあるね。パーティー会場は、神宮殿と研究所の最上階と本殿にあるね。ここは、新制中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)の管理人で守護者聖人のロイク・シャレットの家族が住まう別荘だね」


「おんやぁっ!契約主は、世界創造神様の眷属であったかはい」


「創造神とあたしの眷属だね。彼等妖精は神の領域で生活する事は出来ても、眠る事は許されていない。中空池の水上から離れ、地に足を付けた場所に家を貰うと良いね。そしてそこから離宮に通うと良いね」


「おんやっ!メレンゲ、オムレット、ソイソース、アメール、スコォーチュは家を貰えるのかねはい?」


「ロイク、オプションの家を彼等に準備してやると良いね」


「分かりました」


「アランギー祝いの料理を頼むね。今日はお祝いだね」


「おんや!遊びの女神よ。お前が一番たのしそうだぞはい」


「当然じゃないかね。13億年ぶりに眺める寝殿の窓から景色だね。朝が楽しみだね」


「あれ?運の神様は、ガラス玉の中の寝殿で寝たり入浴していたんですよね?」


「そうだね」


「でも、ガラス玉は神様が持っていたんですよね?」


「そうだね」


「所持したガラス玉の中に入ってたんですよね?」


「そうだね」


「入ってる時はガラス玉はどうなってるんですか?」


「谷間に挟まってるね」


「え?」


「おんやっ!谷間といえば、遊びの女神よ。服はどうした?」


「ここにいるロイクに入浴中の霰も無い姿を覗かれてね。そのままだね」


「相変わらず滅茶苦茶だなはい」


「ハッハッハッハ。アランギー君も本当に変わらないね」


「フッ!さぁ~~お前等料理を始めるぞぉ~厨房と恋愛開始だぁ~はい」


「ウィーchef(シェフ)アランギー」(5人の妖精)


 妖精達はキャビンに戻って行った。


chef(シェフ)アランギー様」


「おんや!なんだねはい」


「厨房ですが、パーティー会場全てに準備した方が良いでしょうか?」


「契約主よ水周りの準備だけお願いしますはい」


「分かりました」



「次はエテルネルスワンだね」


「ドームココドリーロに移動して、クロコダイアンさんに話をして来ます」


「いやいやいやいや。その必要はないね。エテルネルスワンは、もう君の存在無しに存在出来ない神獣だね。呼べば来るね」


「神獣召喚って事ですか?」


「君は本当に鈍珍だね・・・神獣召喚は神獣と協力の契約を結んで始めて出来る召喚だね」


「それだと普通に召喚転位で呼べば良いって事ですか?」


「エテルネルスワンとロイク、君は神気の契りを交わし存在の意図を糸で紡いだ間柄だね」


「存在の意図の糸?」


「神気の関係だね。創造神から見て君は眷属。だが神気の関係で言うと創造された者の中にあって孫であり子であり弟子であり家族だね。あたしから見た君は子であり弟子であり家族だね。エテルネルスワンの場合は相互で家族という事になるね」


「つまりどういう事ですか?」


「君は認めないかもしれないがね。創造神もあたしもエテルネルスワンもマルアスピーも皆君の家族って事だね」


「へぇ~・・・」


「マルアスピー。君は本当に苦労しているね!」


「えぇ」


「家族は支え合い助け合うものだね。それは創造神が世界を創造した時、どの世界にも等しく与えた秩序だったね。家族は傍に居るものなんだね。エテルネルスワンの名前を君が呼ぶだけで、神域に漂う彼女は下界に姿を現すね」


「エテルネルスワンの名前を呼ぶだけでいいんですか?」


「そうだね。彼女の居場所を神気で提示するね」


「名前を呼ぶって神格の定義って意味ですね・・・」


 って、結局何をすれば良いんだ?・・・


「ヒソヒソ、コソコソは良く無いね。仕方ないね、あたしは愛憎の神ではないね。今日はお祝いの日だね特別に教えるね。あたしの後に従って心象するね」


「はい」


『良いかね?』


 あ、はい!


『神大白鳥獣エテルネルスワン』


 神大白鳥獣エテルネルスワン


『神気を放ち君を導く』


 神気を放ち君を導く


『我のもとへ、そして我と共に在れ』


 我のもとへ、そてい我と共に在れ


≪カッ


 宙が光ると、そこから大きな白鳥が現れる。大きな白鳥はスタイルの良い綺麗な女性の姿へ変化する。


「神気の御導きにより無事意図を紡ぐ事が出来ました。今この時から全てが終わるその日まで宜しくお願いします」


「え?あ?は、はい・・・」


「今日は祝いのオンパレードだねぇ~・・・」



 道具を確認しに来た中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)で、別荘を手に入れました。世界創造神様の下界の住居中空の離宮の管理人なりました。


――― 6月5日 21:40


 創造神様と運の神様と神大白鳥獣様が家族になりました。料理の神様と妖精5人の契約主になっていました・・・

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