6-MS-43 共通点は悪気① 負の感情石
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三柱様方の御話はとてもとても長かった。
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chefアランギー様とロザリークロード様とフォルティーナの話をまとめ、改めて検証と話し合いを行うことにした。
検証しながらの話し合いは長引くしちゃんとした場所が必要だ。……嘘です。本音は脱線九割とてもとてもとっても長い有難い御話を延々と聞かされ精神的に疲れたからです。こんな場所じゃ休憩って気分にもなれないからです……。
いったい何の為に大贄儀礼の間に集合したのか。は、もう気にしない。……こんな感じで振り回されるのは毎度のこと、サクッと受け入れてしまった方が頭髪に優しいはず……。
親父とフォルティーナのストレートなサーカズムには、もう慣れた。反射的に無反応で華麗にスルーできる自信がある。……ゴメンなさいホントは、いい加減にしてくれ、勘弁してくれ、と、思っていたりします……。
よしっ、兎に角一息つきたいしサクッと戻ろう。そうと決まれば。
「悪気を使った検証はちゃんとした場所でやった方が良いと思うんで、研究所に移動しましょう」
自然な流れを装い一択しかない提案をする。装えているかどうかは問題じゃない。
「まずは、ここの回収をしちゃいましょう」
横槍回避、間髪をいれず作業をと思ったが、何処を何処まで回収したら良いのかまるで見当も付かない。
悩んでいても始まらないので、大穴の上空十一メートルへ【フリーパス】で移動し【神眼】を意識しほぼ全壊しているガルネス大寺院と大穴の中を把握していく。
整備され平だった床と基本的には歪な壁と天井巨大な穴付きの地下空間。
全体プラス十メートルもあれば大丈夫そうだ。丸ごとってなると、……直方体で空間ごと回収しちゃった方が手間が無くて良いか。
≪「大贄儀礼の間全体を回収することにしたんで、皆は俺のメイン実験室で待っててください。飛ばします」
……からの回収っと。
【レソンネ】で皆に話を通し【転位召喚・極】で転移させ、【時空牢獄】で大贄儀礼の間を取り囲み空間ごと根こそぎタブレットに収納した。
タブレットで収納内容を確認し『ガルネス大寺院の大贄儀礼の間』の素材への変換をキャンセルし分析だけを実行しておく。
ここでやれることは終わったかな。
【神眼】を意識し眼下を見下ろしていると。
≪「ロイク、君に聞きたいね」
≪「どうかしたんですか? 回収が終わったんで俺もそっちに戻るところなんですけど」
≪「アタシは神だね」
≪「ですね」
≪「分っていればいいね」
≪「それで聞きたいことって何ですか? 戻ってからじゃダメなんですか?」
≪「どっちでも構わないね。だが、しかしだね。あえて今だからこそ言うね。良いかね。転移や召喚を極め頂にあったとしてもだね。神は理外だね」
≪「へぇーそうなんですね」
≪「アタシの言ってる意味が分ってないね。つまりだね」
≪「長くなりそうなんで戻ってから聞きますね」
フォルティーナからの長くなりそうな【レソンネ】を一方的に終わらせ、スタシオンエスティバルクリュの中空の離宮研究所の俺のメイン実験室へ【フリーパス】で移動した。
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「お待たせしました。悪気が負の感情石に成るのかサクッと実験しちゃいますね。あれ? 寛いでくれてて良かったのに、今神茶を出すんで適当に座ってください」
面白そうな物も興味を惹きそう物も置いてなかったはずだが、皆興味津々のようで備品やら試作の魔導具やら発表前の魔導具やらを手に取ったり眺めたりしていた。
誰が何処に座っても良いように専用の湯飲み茶碗ではなく自作した白磁の湯飲み茶碗を人数分取り出し神茶を湯飲み茶碗へ直接取り出し休憩を促す。
ここに皆を飛ばしたのは休憩が目的であって実験など二の次でしかない。念の為、気取られた時ようの賄賂としてお菓子を沢山出しておいた。
お菓子で思い出したが今日のトゥーシェは妙に静かだ。……かなり不気味だが、静かなことはとても有難いので考えないことにした。
皆が神茶と賄賂で寛ぎモードに入った頃合いを見計らい、渋々一人で実験の準備を開始する。
気分は大切、カッコ良くない? と、準備した白衣に腕を通し。
命を大切に、安全確保は必要だよ? と、拵えた実験専用強化ブースへと足を踏み入れ。
頭の中で「サクッと終わらせる」と言ってしまった少し前の自分自身に文句を言いながら、流れるように準備を整えた。
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初めから上手くいくとは考えていない。
左右の手のひらに悪気を纏わせ、手のひらの中に心象の球体を描き、悪気を圧縮していく。
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これ以上の圧縮はコルトの理では限界そうだ。これ以上圧縮したら破裂と言うか盛大に爆発しちゃいそうだ。
だが、これは初めての実験だ。反応を記録しておきたい。
爆発しそうでしなそうなギリギリのところを維持し、ワクワクと高揚する気持ちを抑え、綺麗な球体となった悪気の様子をもう少しだけ窺うことにした。
圧縮と気持ちをギリギリのところで抑え観察を続けていると、球体から薄い紫色の光が零れ始めた。
零れる光は、薄い紫色、赤紫色、紫色、濃い紫色、急速に紫を濃くしていき最終的には重く禍々しい紫黒色へと変化した。
あれ? これって、もしかして、いきなり成功しちゃった系か。
重く禍々しい紫黒色の小さな球体を右手の親指と人差し指で摘まみ。害がないことを確認してからブースをあとにした。
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「多分、出来たと思います。…………どうですかね?」
賄賂置き場となったテーブルの上に宙を固めただけの即席の台座を創造し悪気だった球体を置き、三人掛け用のソファーは二脚とも埋まっていたので、テーブルから少し離れた場所にあるカウンターチェアに腰掛け意見を求めた。
「のう、妾にはこれと同じ悪理水晶にしか見えぬのだが、何か違うのか?」
一つしかない球体を皆が順次確認していると、ソファーに腰掛け神茶を啜っていたリュシルが胸の谷間から紫色の石を取り出しテーブルの上に置いた。
「ん、どれどれ。あん? チッ何だ冷てぇーじゃねぇかよ」
貴重な時間をありがとうございました。