6-MS-42 集団転移と大贄儀礼の間の魔力陣、どうやら無関係みたいです②
「ここまで話してもまだ分からんのかね。全く、ロイク、君の頭はどうなってるね」
コ、コイツはどうしてこう…………我慢だ我慢、我慢しろ俺。……ヒッヒッフゥー、スーハァー……スゥ~ハァ~―――。よしっ! 無視して進めるぞ。
「この空間全体なのか一部なのかは分かりませんが、ここって自然の力の循環から隔離されてるみたいで隔離されてた期間もかなり長かったみたいで穢れが始まってるらしんですよ。ただ、四大属性の地属性じゃなくて精霊地属性が染み込んでるらしくてそれのおかげで浄化事態は二日もあれば終わるらしんです。それで思ったんですが、例えばですよ。例えば、『精霊地属性』とコルトで発生した『悪気』と先代バハムートの『竜気』と『神気』と贄として捧げられた『命』と『血肉』と大公会堂の参拝受付で高額な献金と引き換えに購入できたらしい『紫色の魔晶石擬き』と詳細不明な床に施されていた『巨大な魔力陣』これだけ揃ってた訳じゃないですか。何でこれとあれが反応して白光の夜の怪事件が起きたとか、それとあれとこれが反応して集団転移が起きたとか、あれとあれと魔力陣とあれが反応して暴走したとか色々考えられる訳じゃないですか」
「意志を映す鏡は理を映しているに過ぎない。熟考の果てに解き明かす意志それこそが叡智であり理。我が主の言葉だ」
ナナンフェルテリーナ様の言葉か。いしを映す鏡は理を映してるだけってどういう意味だ? 叡智が理って部分は何となく分かるんだけどなぁー。って、違う違う。今はこれじゃない。
「ナナンフェルテリーナ様は聡明な女神様なんですね。それで、ここって条件とか原因とか色々揃ってた感じじゃないですか。魔力陣が起動し暴走し消滅したのは何れかが組み合わさった結果って考えて良いと思うんですよ。いったい何と何が組み合わさったとか分かりますか?」
頻度多目で振り回されていると言えなくもないが、神頼み仕勝ちな気もしないわけでもなく、今後の為にも少しは自分で少しくらいなら家族や眷属と協力して頑張ってみる必要があるような気もしていたが、置かれている状況立場で熟考し取捨選択した結果、余り難しく考えない方が良い、禿げたくないし、微妙な気もするが叡智かもしれないし皆が笑顔になるなら何でも良いじゃん。と、考えを改めることにした。
ついさっき決意したばかりの俺の信念など安い物だ。chefアランギー様、ロザリークロード様、おまけでフォルティーナ。三柱様を前に真面目に悩んだところで腹の足しにもならない。
物事には無駄など存在しないと偉い人の本で読んだことがあるが時間に追われていたり時間厳守の昨今そんなこと言っていられない。何かに追われている訳でもないのにどうしてこうなった。
モントレアプレのせいだ。いや違う。いついつまでにとかって自らが自らに訳も分からず課し続け全部後回しにしているからじゃないか? なんてことだ。……犯人は過去の俺自身だったのか。
「聞いておるのか? 問うておいて聞かぬとは、流石の我も」
「おっと、すみません。めんどくさい奴だな俺ってって思ったらちょっと考え込んでしまいました」
「うむ。刻むとは窮愁を継続しそして了簡を維持し続けること」
「それもナナンフェルテリーナ様の御言葉ですか?」
「そうだ」
メア亜下界を勝手に創造したとか、放棄して何処かへ行ってしまったとか、眷属神の悪シリーズとか、良くない話と噂ばかりの女神様だけど……。
フォルティーナをチラ見する。
飽きたか。
どうやらここにはもう興味がないようだ。瞳に金銀財宝お金を映し指で宙を弾く姿はいつもの彼女そのもの、残念なドヤ顔から欲に塗れた瞳と緩んだ口元へといつもの顔に戻したようだ。
目の前のと比べるつもりはないが、悪い話と噂ばかりの女神様は、本当はとっても聡明な神様かもしれない、目の前のとは違って……。
「悩み許し続けることが生きることですか。深いですね」
「その通りだ。全ての邪と生と死を司りし大上神。我は我の主の眷属神として邪を司り生を知り死を知る者」
「神格位を剥奪され神でしかなくなった女神の話は面白くないね。成功秘話を聞きたいね」
「粗雑に扱われた命と血肉、負の感情を凝縮した悪気を帯びた石、そうですなぁー負の感情石とでも呼んでおきましょう。陣の起動に不必要な犠牲、誤作動して当然ですぞぉー、はい」
「生への死への冒涜は世の常だ。我が主はそれを憂いて亜下界を創造されたのだ」
あっれぇ――――、何か話しがまた違う方に流れ出しちゃったんですけど……。俺、話聞き出すの、絶対向いてない。
貴重な時間をありがとうございました。
次回、『女神が憂いて生まれたメア』




