6-MS-34 これでも一応本気の脱神頼み②
「レソンネで伝えた通りなんで、改めての説明は端折ります。サクッと終わらせてサクッと帰りましょう」
テーブルもチェアーも神茶もない。
大贄儀礼の間にあるのは、天井に開いた大穴と祭壇へと続く段差と床に散らばった瓦礫と白漆喰が剥がれ落ちた亀裂だらけの土壁だけだ。
躊躇い無く殺風景な大広間に俺の声だけが響き渡る。
皆に聞こえるようにと声を張り過ぎてしまったようだ。自分の声がはっきり言ってちょっとうざいが気を取り直して話を続ける。
「それでミュー様、ここの床の地属性はどんな感じですか?」
「この世界の物ではないってことしか分からなかったぞ」
「他には何も分からなかったんですか?」
「僕はワワイ山脈に生を受けた精霊だからこの世界のことしか分からないぞ」
「なるほど」
内容の無い話と言うこともあるだろうが、どちらかと言えば身振り手振りが大きくて多いせいだろう。内容よりも動きの方に意識がついいってしまう。
小さいのに大きく見えるのは何故だ……。
「で、でも、だけど、ここの床と同じ地属性を感じた場所なら一ヵ所だけ心当たりがあるぞ」
焦った感じも身振りが大きいと大慌てって感じなんだなぁ~……うん? ここと同じって、おいおいおいおいおい。
「何処にですかっ!! ここの床と同じ地属性を感じた場所って何処にあったんですかっ!!!!」
「中央大陸から北大陸へと抜ける地下通路だぞ」
「……そこって砂に埋もれてしまってるって話でしたよね?」
「地下通路の砂や土砂を放置したままでいるとでも? 心外だぞ。僕はこれでも真っ直ぐ歩く為の障害物なら綺麗に取り除くことにしてる。先代様はずぼらで泥パックばかりしていたから除去作業は大変だったんだぞ」
……先代様情報は必要なのだろうか?
「もしかしてですが忙しそうにしてたのって」
「そうだぞ。以前のように歩けようにしてたんだぞ」
大きなアクションで自慢気に胸を張る感じが何とも絶妙な可愛らしさを演出している。
「してたってことは、もう開通したってことですよね?」
「一ヶ月位前に北大陸の地上一歩手前の大部屋まで開通させたぞ。でも、大部屋に問題があってそこから進んでないんだ」
……これって、もしかしなくても、そうだよな。
「ここと同じ地属性を感じた場所って、問題が起きてる地下通路の大部屋のことですか?」
「おっ!! そうだぞ。どうして分かったんだ。凄いぞ」
表情と動作。ぶっちゃけるとリアクションとか流れ的にかな。ハハハ。
「後で確認しに行きましょう」
「うん、それが良いと僕も思うぞ。もしかしたら開通しちゃうかもしれないぞ。ウッシッシッシ」
「さて、話を戻しますが、ここの床の地属性について分かる人はいませんか? マルアスピー、どうかしましたか? って、アイコンタクトとかこの人数だと面倒なんで出来れば挙手とか声掛けとか身内しかいなんで普通に主張してくれると助かるんですが」
「そう、分かったわ」
返事をしたマルアスピーは、両手を中途半端に上げ中途半端な万歳の姿勢で俺の瞳をじっと見つめている。
「これで良いのかしら?」
……えっと、まぁ良いのか。
「それでマルアスピー。ここの床の地属性についてで良いんですよね?」
「ええ。隔離されてから長いのでしょうね。既に穢れが始まってしまっているわ」
「穢れですか?」
「そう。穢れよ。でも安心して良いわ。この地が穢れに覆われてしまったとしても、二日程の循環でこの地が本来あるべき姿へと戻るだけなのだから」
「そ、そうなんですね。それは良かったです」
「そうね」
元の状態に戻るのは良いことだと思う。でも、俺が聞きたいことって……。
「二日程で済むのは精霊界(プリフェスト下界)の(精霊)地属性がここの床には染み込んでいるからなの。大地の聖域の近くの砂や土が使われているのかもしれないわ」
それですそれ、マルアスピーさんやそれですよ。俺が欲しいのはそんな感じの情報なんですよ。
「聖域の傍の四大属性は精霊属性になるって凄い気になる話しですが今は我慢します。ここの床って精霊地属性ってことですか?」
「そうね」
貴重な時間をありがとうございました。




