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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
458/1227

6-MS-32 過失と故意、大贄儀礼の間の宿存

・・・・・

・・・・

・・・

・・


 畏れ多くも神様と貸し借りなし対等な立場での話し合い。chefアランギー様からの御言葉が八割強と負んぶに抱っこの状況が続く中、ふと思う。


 chefアランギー様はこの国の副王であり各種大臣職を兼任している。最近始めたばかりの働き方改革によって職務分掌が進み甘えて頼り切った体制にメスを入れたばかりだ。


 にも拘らず、率先して頼り切ってるこの状況は非常に良くない。と。


 流れを変えるべく、輓獣(ばんじゅ)車を引く時以外は大抵俺の後ろに立っているエリウスを何度言っても俺の後ろに立ち続けるエリウスにも話し合いに参加して貰い意見を求めることにした。



「ここで話をしていても埒があきません。ですのでここは一思いに現場が宜しいかと、はい。それでは」


 パンパン。


 chefアランギー様の軽快なパルマセコの音が執務室に響くと、俺達三人はガルネス大寺院の最下階大贄儀礼の間の祭壇の前に立っていた。


「パトロン殿よ、良いですかなぁー、結果があり過程があり原因がある。先程も言いましたが、これは誤りです。神界と一部の界域を除き概ね原因があり過程があり結果がある。物事は概ねこのようになっているのですぞぉー、はい」


「原因があるから結果がある。ここに来たってことはここに原因があるってことなのか? エリウスはどう思いますか?」


 chefアランギー様の御言葉を反芻しながら大贄儀礼の間を隈なく見回し、エリウスに意見を求めた。


「主殿。この大広間は意図的に斯様に造られたのでしょうか?」

「怪しい儀式をやる為に造られたみたいだし、そうなんでしょうね」

自然魔素(まりょく)の循環を意図的に遮断し大樹の統制下から強制的に切り離していた。……隠蔽には規模が多き過ぎる。なら目的は何だ?」


 問い掛けを切欠に思考の海を泳ぎ始めたエリウスを近くで見ていて気付いてしまった。


 エリウスをこのまま俺の後ろに立たせていてはダメだ。優秀な人材を俺の後ろにただ立たせていてどうする。これはもう立派な損失じゃないか。


 働き方改革の目玉の一つ、人材の適材適所。俺の後ろに物凄く優秀な人材が埋もれていたなんて、不覚過ぎるだろう。と。


「なるほどなるほど、なぁ~るほど」


 chefアランギー様は、目を細め満足気な表情で頷いていた。


「何か分かったんですか?」

「エリウスは元々馬の聖獣です。正式に神格を得たことで昇華し理の隅を突くまでになったのでしょうなぁー、実にすんばらしぃーですぞぉ、はい」

「存在が高い状態に飛躍したら以前以上に優秀になったってことですか……おっと」


 そうだった。エリウスは今神様だったんだ。適材適所だからって神様を国の運営に……chefアランギー様が副王の時点でそこまで気にする必要ってあるのか?


 国家運営に神々様方の御力を率先して御借りする。究極の負んぶに抱っこな気がしないでもないが、職務分掌や適材適所を意識してしまうと今はこれもありなんじゃないかと思えてしまう。


 俺も随分と強かになったものだ。


 そうだな。戻ったら、局とか省とか何処かの長をお願いしてみよう。後ろに居て良いって言えば引き受けてくれると思うし。


「主殿。あちらの床なのですが、この世界とは異なる地属性と、魔界の、今はメア亜下界と呼んでいるのでしたね。そのメア亜下界の主属性悪気(あっき)の忌まわしき宿存が何らかの呪詛を維持させているようなのですが、ここはこれが平常なのでしょうか?」

「うん?」


 戻ってからのことを考えていたら、今何か凄いことをエリウスが口にしたような。


「うんうん流石は元々馬の聖獣ですなぁー、馬は犬の千分の一程の嗅覚を有し、聖獣ともなると元の種の千倍とも万倍とも言われていますからなぁー。臭いでこの有様に気付いてしまうとはあっぱれですぞぉー、はい」


 パチパチパチパチ。


 chefアランギー様は話の途中からエリウスを称讃するかのように拍手を送り続けていた。


 反響や残響に天井に開いた大きな穴は影響しないようだ。



 何らかの呪詛がまだ機能してる。神眼を意識してもう一度隈なく見回してみたが、付与も魔力陣も痕跡どころか隠された形跡する見つけることができなかった。


「自然の力の循環に敏感な聖獣だったからこそ異物の臭いを嗅ぎ分けられた。ただそれだけのことですぞぉ~、はい」

「はい。悪気は少量でも広範囲に広がる悪臭を放ちます。自然の力の循環に事有る毎に悪さをしその度にマルアスピー様や先輩達と寝ずの浄化をしたものです。常に現地に赴き第一線で活躍されていた先輩達は浄化が終わり戻って来た後も元気に宴会を繰り広げていたものです。悪臭の中で楽しそうに燥ぐ先輩達を遠目に凄いなと感心するばかりでした」


 精霊樹は悪気の浄化もやってたのか。マルアスピーって前から働き者だったんだな。……臭いねぇ~、ミト様絶対やりたくなくて逃げたな。


「先輩達の話は今度聞きます。それで今の話だとなかなかの頻度で悪気が悪さをしていたことになりますが、原因は分かっているんですか?」

「はい。全てのケースに共通点があり、それが原因だと聞いたことがあります」


「おんや、やっと辿り着きましたか。それでは有益な情報をば一つ差し上げましょう。悪気の近くには必ず爾後の民が立っていた。悪気があるから爾後の民が立っていたのでしょうかそれとも爾後の民が立っていたから悪気があったのでしょうか? 何事にも原因過程結果なのですぞぉ~、はい」


 悪気もメア亜下界の民と一緒で強制転移に巻き込まれたってことになるのか……。


 chefアランギー様の話を聞き、幾つか確信に至ってしまった。


 爾後の民と一緒にやって来た悪気はここの悪気とは関係ない。循環を定期的に害する悪気の方だ。つまり、理による過失が原因の悪気ということになる。


 俺には()ることも感じることも出来なかったが、こここの悪気は、地位や富権力に溺れた悪意によって齎された物だ。つまり、未必の故意或いは確定的な故意が原因の悪気ということになる。


・・・

・・


 同じ悪気でしかない。


・・・

・・


 同じ悪気でしかないのだが、……出所の違いが明確になった。ただそれだけで、こんなにも見えて来る物が変わなんて。

貴重な時間をありがとうございました。

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