6-MS-25 聖神竜様、再び
死の淵に臨むゲンベルジュンを未決拘禁要人保護地区の矯正医官に預け、国王執務室へと移動した。
「で、御二柱様はいったいここで何を?」
「同郷の友神と神茶を飲みながら話をしてたね」
「ここでですか?」
「ここでだね」
その残念なドヤ顔、ホント止めた方が良いですよ。
と、声に出すことはない。俺が言ったところで直すようなたまじゃないし、表情を一つだけ改善したところで焼け石に水残念さを払拭できるとも思えない。
・
・
・
国王執務室では、シリュー様とフォルティーナが応接用のテーブルでティータイムを楽しんでいた。
「さっきの今で会うつもりはなかったんだ。けど、また会えて嬉しいよ。ここまで直ぐだと運命すら感じてしまうよ」
「シリュー様。お帰りになられたとばかり……」
「御茶に誘われてしまって」
・・・
・・
・
フォルティーナへは生暖かい目を、シリュー様には余所行き様の歓迎の笑顔を。器用に表情を使い分け対応していると。
・・・
・・
・
「驚いたね。二人は知り合いだったのかね」
「さっき挨さ」
「いやぁ~~~ロイクもなかなかなかなかだね。イッシッシッシッシ」
「さっき、取調し」
「若さとは時に剥き出しの刃物だね。アタシは常々思っていることがあるね」
俺が話し出すと被せる様に話し出すフォルティーナ。
さっきから何なんだ? 滅茶苦茶邪魔なんですけど……。邪魔してるって、気付いて……くれる訳ないよな。
「運の女神様。先程から雑談ばかりで一向に話が進んでいないのですが」
「そういうことも良くあるね。焦る必要はないね。アタシを見るね。ちっとも焦ってないね」
……理不尽の上に存在する更なる理不尽。決して繋がることのない行き当たりばったりの長い長い微妙な会話。は、今日はもう聞きたくない。今日はいつもよりも特に酷く疲れている。
ここは機嫌をとって早々に帰っていただこう。そうと決まれば。
「フォルティーナ。神茶のおかわりをどうぞ」
「うんうん、珍しく気が利くね。貰うね」
……我慢我慢。
流れる様に弱毒を吐かれるこの感じにもだいぶ慣れたとはいえ、流石にちょっとイラッとする。フォルティーナに言われてるってところが問題なんだろうな。
生暖かい笑顔を貼り付け、フォルティーナ専用の湯飲み茶碗に神茶を注ぐ。
一人で喋り続けるフォルティーナを自由に喋らせ、シリュー様と話をしていると。
・・・
・・
・
「世界創造神様からゴルゴ―ンの真実の調査を依頼されていたよね?」
「はい」
「白色の腕輪の成長はどんな感じなんだい?」
「えっとですね」
タブレットの収納リストをスライドさせ白色の腕輪を探す。
あれ? おっかしぃーなぁ―――。……無い。
タブレットに収納していたはずの白色の腕輪が見当たらない。
「ちょっと待ってくださいね。何処にやったかなぁー」
「ロイク、何をやってるね」
「うわぁっ、ちょっと驚かさないでくださいよ」
声を掛けられると同時に肩がぶつかり感じた温もりと甘い香り。あとほんの数ミリ近付くだけで触れ合ってしまいそうな頬。
「目が合って最初に口にする言葉がそれかね。ハァ~……アタシはいったい何処で育て方を間違ってしまったんだね。ハァ~~~」
……こいつには言いたいことが沢山ある。だが、度々の理不尽に耐え抜き、忍耐強くそして我慢強くなった俺の精神と肉体は、この程度のことでは最早挫けることはない。
「いきなり顔が顔の横に現れたら誰だって驚きますって。寧ろ、驚かない人のほうがどうかしてると思います」
「ハァ~……」
溜息が耳に近くてこそばゆい。人を小馬鹿にしたような深い溜息が耳に近くて、いつも以上に……、
「で、いったい何を探してるね?」
……ムカつく。
画面を勝手にスライドさせながら、わけの分からないことを宣うフォルティーナ。
探し物も分らずにいったいこの人は何をしたいんだろうか? 邪魔か?
貴重な時間をありがとうございました。