6-MS-24 取調中だけど神明裁判⑤
「それでは、二つ目の質問をします。処刑ってされる本人にとっては終わりってことじゃないですか? それで、ふと思ったんですよ。あれ? 処刑されずに済み方法があるじゃんってね」
「助かる? ……た、た助かる方法があるのか? 教えろっ!! さっさと教えぬかっ!!」
「頼み事をする立場としては零点です。百点満点中十点くらい取れれば良い方かなって思ってたんですが予想を遥かに超えて来ちゃいましたね」
「何をゴチャゴチャとほざいておる、さっさと言えっ!!」
殺意?
「おっ、ちょちょっと落ち着いてください。落ち着きましょう、ねっ、殺しちゃったらそれで終わりなんですよ」
三柱様の神気に明確な殺意を感じた俺は、慌てて言葉を掛け三柱様が行動を起こす前に何とか止めることに成功した。
どうして俺が……。
三柱様の冷たい視線と無表情な微笑みが俺へと向けられている。
俺は正しいことをした。間違っていない。……はずだ。こ、こいつのせいだっ!!
鋭い視線でゲンベルジュンを睨み付け。気の抜けたさっきまでの口調から低く強い口調へと切り替える。
「こっちも暇じゃないんで、遊びはここまでにしましょうか。二つ目の質問は単純明快でどれか一つたった一つだけで良いんです。真実のみを嘘偽りなく答えれるだけで、貴方は処刑されずに済むかもしれない未来を手に入れることが可能になるかもしれない。そういう質問です」
「……」
「理解してくれたようで何よりです。それでは始めましょう。まずは、これをお返しします」
タブレットからガルネス神王国の王冠に似せて創造した魔導具【真偽の王冠】を取り出し、ゲンベルジュンの前に置く。
「な、何故貴様がこれを……」
「貴方の身柄を引き渡す条件が嘘ではないことを証明する手付として貰いました。宝石をただ鏤めただけの悪趣味で芸術性の無い金でできた王冠みたいなんで潰して宝石と金にしてガルネス帝国にお返ししようとも考えたんですが、それって拒否ってことになってしまうらしんですよね」
「これは豫の王冠である」
「ですね。貴方の物だった訳だしご自由にどうぞ。……一つだけ言っておきます。貴方がそれを持っている限り貴方には処刑される未来が付き纏うことになります」
「ふんくだらん。この王冠は神王たる豫の頭上にあってこその栄冠。再び豫のもとへ戻って来たことが何よりの証拠よ」
王冠を手に取り、迷うことなく頭に乗せたゲンベルジュン。
気持ち悪い笑みを浮かべるゲンベルジュンを視界に捉えながら思う。
データ♪データ♪ 皆で仲良くデータ収集♪
完成までの経緯が走馬灯のように脳裏を過る。ノリノリな自作曲歌詞付きで。……コーラスとフルオーケストラが何かもう凄い。
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痛みレベル一から二十の【真偽の首飾り】は、どういう訳か失敗作だった。
教貴族達はメア(亜)下界の民。つまり、コルト下界の民と比べると物凄く強靭。
だが、レベル一でも皆瀕死の状態に陥ってしまった。レベル二十でもちっとも痛くなかったのに……。
順番で地べたでのたうち回る連中を、冷ややかな目で見つめながら、大袈裟で態とらしい反応だなと華麗にスルーし『「相違ない?」「相違ありません」』を続けていたら、最後の教貴族の番になって事件が起こってしまった。
何と、七転八倒した挙句の果て口から泡を吹き動かなくなってしまったのだ。たぶん少しだけ体調が芳しくなかったんだと思う。
たぶん初めて会った人だと思うが、ここで、目の前でお亡くなりになられるのは、ちょっと……流石に良い気分はしない。
慌てて心肺蘇生、胸部に強めのチョップを施し事なきを得た訳だ。
魔導具開発時の些細な事故として次に繋げる決意とともに気にしないことにした。
俺の、次へと繋げる意識の高さ、行動力手際の良さ。は、置いといて。
改良し完成したのが、そう、ゲンベルジュンの頭の上に乗ってる魔導具【真偽の王冠】だ。
頭を締め付ける強さを二十段階で調整できる斬新な機能を外し、体の中を走る痛みの強さを二十段階で調整できる斬新な機能を付けただけの挿げ替え改善。
……満足のいく出来栄えだと自画自賛しておきたいと思う。
自分自身にだが一応人体実験も済ませてある。魔導具開発には常に犠牲が伴う。危険と隣り合わせだからこそ夢溢れ心が躍る。レベル二十を試してみたが、作動中何となく体に違和感を覚えるだけで大したことがなかったので、レベル二十をレベル一に書き換え、強さはレベルが一つ上がる度に二倍くらいになるように設定してある。
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ゲンベルジュンが真実を語らず態度の改善が見られないようならレベルを一から二へ二から三へと一つずつ引き上げていく予定だ。
貴重な時間をありがとうございました。




