6-MS-22 取調中だけど神明裁判③
兎に角面倒臭いことになっている竜王クロージャと、何度も何度も何度も何度も同じ質問を繰り返すロザリークロード様。
この空気にはもう耐えられそうにない。
悪狼神様の傍まで歩み寄り耳打ちする。
「悪狼神様。つかぬことをお伺いしますが、どうしてロザリークロード様は同じ質問を繰り返しているのでしょうか?」
「そらどすなぁ、そちらはんが呪舌の恩恵言う厄介な物を持ってるさかいどすえ」
「呪舌の恩恵を持ってると厄介ですか?」
「そら当たり前どすえ。そちらはん管轄外からの転生者或いは管轄外の何処ぞの神と繋がってるってこっとす」
「コルト下界とメア(亜)下界が干渉し合うのって結構頻繁なことなんですよね?」
「メアは亜下界どすえ。プリフェスト、カンベ、コルトの裏。コルトの真裏に創られた中途半端な界どすえ。この程度の繋がりなんて誰も気にしてまへんよ。今、問題になってるのんはどすなぁ。世界創造神様の理とは別物の理から干渉されてる可能性があるってこっとす」
えっと……言ってる意味が分らないんですけど。
「創造神様の理とは別物の理ってどういう意味ですか?」
「幾億の界と幾千の域と数多の生を無に環を御創りになられた神は誰どすか?」
「創造神様です」
「その世界創造神様が御創りになられた界や域の理を御創りになられたのは誰どすか?」
「創造神様です」
「そんなんどす」
「は?」
今の会話の何処かに答えがあったのか?
「これ、ほんまは教えたらあかんことなんどすけど、仕方があらへんさかい教えるなぁ。世界を創造した神は実は結構沢山いるんどす。世界創造神と呼ばれとったり、創世神と呼ばれとったり、天地神と呼ばれとったり、原初神と呼ばれとったり結構沢山いるんどすえ。因みにどすけど、うちが知ってるだけでも左天が五柱、中天が七十四柱、右天が二百二十柱もいてはる。九億十億年も前の話なんで今はちゃうかもしれしまへんが、大きゅうは変わってへん思う」
「あー、要するに、創造神様みたいな神様が沢山いて、ゲンベルジュンは創造神様ではなくて別の創造神様が創造した理の中の神様から恩恵を授かってるから問題ってことですか?」
「その可能性もあるちゅうこっとす」
あ? あれ?
「メアって、この世界の創造神様の理の中の邪を司る神様が創造しちゃった亜下界ですよね。これって邪神様は世界を創造した神様って事にはならないんですか?」
「微妙なんどすなぁ」
微妙って……。
「亜下界ちゃいますか下界ちゃうんどすなぁ。どすさかい、創造したとも微妙にちゃうって話になってまうんどすなぁ」
「なるほど……」
「そうなんどすけど、精霊や聖邪獣なら分かるんどすけど神が恩恵を授けてるってところがまた微妙なんどすなぁ」
「と言いますと?」
「恩恵は加護の下どす。……意味分ってはりますなぁ?」
「全然」
「ここコルト下界で加護言うたら精霊や精霊の依り代でもできる簡単なお仕事どすなぁ?」
「簡単かどうかは分かりませんが、たぶんそうなんでしょうね」
「精霊や依り代でも簡単にできる加護より下の恩恵を神が授けてる。変だとは思わしまへんか?」
「……たぶん変なんでしょうね」
「変ちゅうとこから導き出せる答えは一つしかあらへんのどす。右天二百二十柱の中の一柱の理からの干渉を受けてる」
「って、ことですか」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「これって、質問の仕方を変えたら直ぐに解決するんじゃ」
「ほんまどすか?」
何処か知らない界域の環からこっちの環に紛れ込ませた魂に事前に細工をしていようが、何処かでゲンベルジュンに接触し恩恵を与えていようが結局のところ犯人は同じな訳だから、何処で恩恵をってよりも誰がもしくは誰から恩恵をの方が重要だ。
問題は、魂に細工されていた場合だ。ゲンベルジュンに聞いたところで意味がない気がする。
あ―――、知らないうちに恩恵を授かってたってことも有り得るのか。……取り合えず質問してから考えよ。
貴重な時間をありがとうございました。




