6-MS-21 取調中だけど神明裁判② 新たな神様登場
ロザリークロード様が質問する度、ゲンベルジュンの呻き声が響く大取調室B。
「アシュランス王よ。神々様方は何故先程から同じ質問を繰り返しておられるのだ?」
「さぁ~?」
竜王クロージャも俺と同じだったようだ。入室してからこの質問を八回聞いた。というかこの質問しか聞いていない。
「神明裁判を開廷すると宣告なされてからずっとこの状況なのだ」
「なるほど」
つまり、八回どころじゃないってことか。
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「少し話をしないかい?」
「おっ」
「ぬおっ」
ぬおっと声を出したのは俺じゃない。竜王クロージャだ。
竜王クロージャとコソコソと話をしながらもゲンベルジュンから視線を逸らした覚えはない。にも関わらず俺達の目の前には、一柱様が笑顔で立っていた。
いったい何時の間に。まったく分からなかったんですけど……。
「うん? クロージャ陛下いったいどうしたんですか?」
頭を垂れ跪いた竜王クロージャ。
「か、体が勝手に……」
「何か震えてるみたいですけど、体調が悪いなら部屋を準備するんで休みます?」
「い、いやだ、大丈夫だ。こ、これはそういった類のものではない畏敬畏怖」
「おや? ……君は系譜に連なる者でしたか。悪気はなかったんだ、謝るよ……これでどうだい?」
一瞬、眼に神気が集まった様に見えたけど、それだけで別段何かしたようにも思えない。うん?
何が起こっているのか全く分からないが問題なさそうなのでスルーすることにした。
竜王クロージャは何事も無かったかのように立ち上がると、一呼吸置いて再び跪いた。
竜王クロージャはいったい何がやりたいだ?
「我、私はドラゴラルシム竜王国の竜王クロージャ・ルードラゴ・ルーバーン。我々竜人種は遥か昔神代の神々様方が御隠れになられた後この世を秩序と道徳をもって制した竜が末裔で」
「おや、どこかで上位の神にでも干渉されたのかな?」
「す。干渉されたとはいったい?」
あっちでは同じ質問と呻き声が、目の前では一柱様と竜王クロージャの会話が盛り上がっている。
邪魔しちゃ悪いんでボーっとしてよ。
「竜人族は」
「たつびと族?」
「あぁ、竜人族というのは君達が竜人種と呼ばれるようになる前、下界に保養地があった頃はもっとこうー何て説明すれば分かりやすいのかな? そうそう二足歩行する蜥蜴。蜥蜴を見たことはるかい?」
「竜子の事でしょうか?」
「竜子とは少し違うかな。竜子は、蜥蜴が蛇に分岐する際、手足を失わずに後ろ脚のみで大地に立ち後ろ脚だけで歩始めた種のことだよ。君達竜人族は、保養地の近くにあった原始の湿原の森に生息していた蜥蜴や家守や井守や鯢が、客として保養地を訪れていた創造神様や数多の神々の神気の影響を受け昇華した種だね」
これって、竜人種は竜を祖に持つ種族じゃないってことだよね? 竜人種にとってこの話って結構ヤバくね?
「か、神よ。お、御言葉を返すようで誠に恐縮なのですが、蜥蜴や家守や井守や鯢如きが我々の先祖とは少しばかり冗談が過ぎると思うのですが……」
「冗談を君に話していったい何の得があるんだい? そうだろう。君はサンショウウオから昇華した鯢人族の上位種オオサンショウウオから昇華した大鯢人族と人族の姿に化けた雄の風竜との一粒種だけど、何も聞いていないのかい?」
「わ、わ、我の父は武を極めんと諸国を旅する竜人種の戦士だった……と……」
「風竜は気分屋さんだから、そうかもしれないね。おっと本来の目的を忘れていたよ。コルト下界の管理と守護を任された聖人のロイク君。噂を聞いてずっと気になっていたんだ。やっとだよ、君に会うことが出来て感激で…………たった今、心が満たされたよ。さて、満たされた今帰るとしようかな」
「え?」
流石神様、滅茶苦茶自由だこの神様。って、反射的に思ってしまったけど、違う違う。
「あのー、一柱様の御名前を」
「おっとそうだったね。聖神竜虹神竜と呼ばれることが多いみたいだけど、私はただの始竜さ。宜しくロイク君」
「宜しくお願いします。シリュー様」
俺達に近い(随分とコルト寄りの)名前で親近感を覚える。
それにしても、今の家って、凄いことになってるなぁ~。
邪属性のロザリークロード様に、聖属性のシリュー様に、亜神(半神半竜)の前バハムートに、同じく亜神(半神半竜)の前バハムートの妹バハムート。竜神様が四柱も滞在してるって凄いことだよな。
「用事も済んだことだし、帰るよ。またね。どうせ直ぐに会うことになるだろうけど」
パッ。
聖神竜のシリュー様はほんの一瞬だけ微笑み姿を消した。
「わ、わ、我はオオサンショウ……ウオ……だった……のか……わ、わ、れはわ、我等は偉大なるヴァ風竜をそ、そ、そ、祖に……」
「大丈夫……じゃなさそうですね」
シリュー様。これいったいどうしたら良いんですか?
床に両膝両手を付きブツブツと言葉にならない言葉を呪文の様に呟く放心状態の竜王クロージャの肩に手を置き、三柱様とゲンベルジュンの状況を確認する。
「ゲンベルジュンに問う。呪舌の恩恵を何処で与えらた?」
まだ続いてたのね。
それにしても……ホント、この状況いったいどうしたものか?
「ワ、ワ、ワ、オオ……サ、ンショ―――ウ……ブツブツ」
「前に、chefアランギー様から聞いたんですが、KANBE下界という下界では、オオサンショウウオは天然記念物生きた化石と呼ばれ神様のように愛され大切にされているそうです」
「ワ、ワ、ワ、ワ……我は化石……天然……」
貴重な時間をありがとうございます。