6-MS-18 教貴族達と、その背景②
教貴族達との質疑応答もそろそろ終盤だ。
事前に教わっていた質疑応答の基本、同じ質疑を何度も繰り返し行うべし、応答の微差は大差追求の手を緩めることなかれ。
回りくどくて少しばかり面倒だとは思ったが仕方が無いので俺はこれを素直に履行した。
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「それじゃ最後に確認します。俺達が黒と呼んでいる組織は旧教では暗部と呼ばれている。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
そろそろ本気で飽きて来た。この倦怠感を払拭する為には少しでも早くこれを終わらせる必要がる。
俺は気合を入れ、少しだけ明るい声で最終確認を開始した。
当初とは比べ物にならない程に真摯な姿勢で声を揃え応答する教貴族達。
最初からこんな感じだったら短い時間でもっと楽に終わったのになと思いながら最終確認を続ける。
「黒は旧教枢機卿院の直轄機関で全貌を知る者は創設者の影結魔族の男だけ。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
「創始者が影結魔族の男だということは分かっているが、その男が何者なのか何処にいるのかは一切分からない。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
「メア(亜下界)でホノクレマ一世と一緒にいた男の名はズドリンガーホードガルデンではなく、正確にはアズ・ドリンガーホード・ガルデン。このアズ・ドリンガーホード・ガルデンという名前すら嘘の可能性がある。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
「アズ・ドリンガーホード・ガルデンの顔を見た者は誰もいない。ホノクレマ一世ですら知らない可能性が高い。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
「ホノクレマ一世ですら知らない可能性が高いと判断するに至ったのは、ホノクレマ一世が度々口にしていた言葉からで、その言葉は...... ~
「豫とお前は不干渉の誓いを立てていたはず。これはどういうことか?」
「フッ、ホノクレマ、忘れたか。俺は好きなように生きる。今回も気が向いただけだ。障害の躯を持って来てやったんだ。さっさとよこせよ」
「ぐっ、この者に褒美の金を」
「お前もだいぶ話が分かるようになって来たじゃねぇか。フッハッハッハッハッハ、酒を女をまたせてあるんでな。俺は行くぜ。……おいそこの邪魔だ、何ドアの前に突っ立ってんだよ。退け」
「行ったか。いつもいつも好き勝手にやりやがって。誰かあいつを何とかできんのか? ……名前以外であいつを知っている者はおらんのか?」
~ ......だから、顔も種族も分からない。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
「ホノクレマ一世は、アズ・ドリンガーホード・ガルデンをズドリンガーホードガルデン。黒、暗部の一派の長だと供述したが、これは虚偽ではなくそう思い込んでいて本人の中では真実を語っている。自分自身の事以外には興味が薄く欲望に忠実な彼のことだからその可能性が極めて高い。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
「旧教はホノクレマ一世と枢機卿院に権力が集中しているように見えていたと思うが、実際には陰で旧教を私物化し我が物顔で動かしている者がいる。ホノクレマ一世は承認しているだけ、枢機卿院はホノクレマ一世の発言に対し首を縦に振っているだけだった。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
「これは噂でしかないが、その陰の権力者こそ黒の創始者だと言われている。このことを知っているのは上級の教貴族と建国開教の際に立ち会いその後も重責を担い続けた一部の爾後の民のみ。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
「つまり、貴方達は、旧教開教当時の布教の際に力を行使はしたが破壊したり命を奪ったりはしていない。【経典】【神聖騎士】【教会騎士】【誕生日の日の神授】【英雄の儀】【異教弾圧】【異端諮問】を管理運営するようになった頃には、役職だけで旧教からは距離を置いていた。理由は、コルト(下界)の住民達と寿命の長さに明確な違いがあったから。メア(亜下界)の民の寿命は何事もなければ数千万年を余裕で超えるから。開教百年を待たずに距離を置いたから実際にはほとんど関与していないと言って良い。相違ありませんか?」
「「「「相違ございません」」」」
貴重な時間をありがとうございました。




