6-MS-13 取調を終えて、いつもの如く。
精神を擦り減らし時間をただ浪費しただけとも言えるホノクレマの取調を終え国王執務室に移動した。
執務椅子に腰掛けつつ、壁に掛けた時計の時間を確認する。
―――14:50
タブレットとモントレアプレとMRアイズで時間はいつでも確認できるのに何故か座る時に時計を見てしまう。
ルーティン。癖になりつつあるなと苦笑しつつ席に着く。
昼食の時間までまだ四十ラフンある。午後に回してたけどこの書類処理しちゃおっと。
執務机の上に山積みされた書類をタブレットに収納し、ドアの横に置かれたテーブルの上に展開する。
うん。今日も良い感じだ。……タブレットがハハハ。
精神的には疲れているはずなのだが何だかとっても気分が良い。
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ホノクレマの身柄をどうするか。
ターンビット王国、フィンベーラ王国、マルメット王国、ベリンノック共和国、アイゼンタール王国が身柄を要求して来ている。白光の夜のことも何故か知れ渡っちゃってるし。
それにおかしな話だ。
ホノクレマを拘束したのは昨日のことだ。知っているのは立ち会った人だけのはず。それなのに、取り調べを行っている間にこの状況だ。
タブレットが選んだ協力者の中に……う~ん考えにくいな。
サザーランド陛下、吸魔公、竜魔王(竜魔侯)バハムート、前バハムート、前バハムートの妹さん、トラヤヌスさん、竜王クロージャ陛下、トゥーシェ、リュシル。
情報を他国(コルト下界)に漏らすような人はどう考えてもいない。
そうなると帰ってからってことになってしまう。……が、家の使用人や兵士達に限ってそんなことは有り得ない。
神々様方(友好関係にある)は自由に素通り出来ちゃうらしいけど、家のセキュリティーは家族や眷属隷属でも事前に登録が必要だったりとやり過ぎなくらい厳重だ。間者やスキルの線もまず有り得ない。
いったいどうなってるんだぁ―――――。
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考えても分からなそうなことは、取り合えず保留にしとこ。
次だ。次。次は、……えっと。
左手に持ったタブレットで更新したばかりの情報を確認する。思考と視線と音声での操作に未だに慣れない俺は一人でいる時はいつもタブレットを左手に持ち手動で操作している。
対話ベースのあれは操作というより誘導だ。強制的に認証させられている時が多く俺の意思はほぼ無視されている。
手動操作は自然の流れとも言える。
安心安全の手動操作で滑らかにスライドしていく情報達を眺めながら思う。検索した方が早いかも、と。
さっきの聴取の内容から黒に関する部分だけを抜粋して。
≪表示します。
実に便利な機能だ。
≪お褒めいただき有難うございます。
あっ。……た、頼る、便利な機能を活用するのは当たり前だから。そ、そう許容範囲内だから。これ、俺の意思、だか……ら。
≪次回のアップデートでは、検索速度が四の二乗倍、最大表示色が八の二乗倍、滑らかな対話システムなどを予定。貴方の快適をサポート、…………タブレット。
語り掛けて来るタブレットを無視し検索結果を確認する。
黒。あっちのは、いやあっちのもか、顔も分からし、ズドリンガーホードガルデンって名前も偽名だった。
ついでに言うと、ズドリンガーホードガルデンと名乗る輩の一派の人数も不明。
もっとついでに言うと、こっちの世界中に散ってると思われる黒に関しても一切合切不明。
整理した情報を見るまでもないこの状況、いったいどうしたら良いんだ。
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昼食の時間になったので、昼食の間へと移動した。
何も分からないままだが、今に始まったことではない。ことここに至るまでの間には色々なことがあった。そのほとんどが俺の理解を超えていて分からないままになっている。
つまりこれはいつものことだ。つまり焦る必要がないということだ。
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今日の昼食も美味しゅうございました。chefアランギー様と妖精のおしごとの皆には感謝の言葉しかありません。
貴重な時間を本当に本当にありがとうございました。




