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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-11 ホノクレマと水人の兄弟

 竜王クロージャ立ち合いによる取調が終わり、水人の兄弟立ち合いによる取調が始まった。


・・・

・・


 取調が初めってからそろそろ三十ラフン程経つ。が、はっきり言って何も進展していない。


「兄者、良いのか?」

「あぁ、漢に二言はない。殺す前に謝罪の機会を与えてやるくらい訳ないさ」

「兄者が良いならそれでいいけど、これだけは言わせて欲しいんだ」

「何だ? 言いたいことがあるならはっきり言いなさいっていつも母さんが言ってただろう」

「ホノクレマ。お前を殺す前に、お前に言っておきたいことがある。お前、ホノクレマという名前も嘘だったんだな。いつか」

「なんだとぉっ!! どういうことだ」

「……兄者、ロイク殿がさっき話していたじゃないか。ホノクレマの本当の名前はゲンベルジュンだって。聴取を始める前に宣誓させてたでしょ」

「黒い紙切れの上に手を置いたら光った奴だな」

「そうそれ、あれって魂の記憶を転写する神界由来の奇跡の神紙(かみがみ)だって」

「そんな説明だったな」

「神紙は真実のみを記す奇跡の紙」

「そうらしいな」

「神紙にはゲンベルジュンと記されていた。兄者も見たから気付いていたと思っていたよ」

「うん? あぁあぁ気付いていたぞ。ホノクレマはゲンベルジュンが真名だ。それで、ホノクレマに言っておきたいこととはいったいなんだ?」

「……分ってないみたいだから言っておきたいことを言う前に兄者に先に話をするよ」

「おぉ、そうだな。言いたいことがあるなら言った方が良い。そう母さんも言ってたしな」

「ありがとう兄者。兄者は真名が何か理解してる?」

「真名は真名だな」

「兄者、……兄者は父さんや母さんや兄者達や姉者達にはミクノと呼ばれているね」

「あぁ、気に入っているぞ。何せ良い響きだからな」

「そ、そうだね。良い響きだよね。でもミクノは本当の兄者の名前ではないよね」

「当然だ。俺には父さんと母さんから貰った素晴らしい名ハパミクノという名前があるのだからな」

「簡単に言うとゲンベルジュンはハパミクノと同じ真名で、ゲルンはミクノと同じ愛称で、チャードン家のハパエモンが」

「止めろっ!! それ以上その名を口にするんじゃない」

「どうしてだい兄者」

「その名は子供学校に通っていた頃の俺が机の引き出しから出て来る未来の水猫型人形に憧れ一時的に名乗っただけの疾うの昔に忘れ去られてしまった名だからだ」

「兄者にとっては恥名でも、ゲンベルジュンはお気に入りだったようだね。家に近付いて来た時には既にホノクレマと名乗っていた訳だからね」


「う―――ん。何だ……つまり、ホノクレマは黒歴ゲフンゲフン俺の忘れ去られてしまった過去の名と同じという訳か。あ”っ!! 何てことだ。俺はホノクレマの巧妙な嘘にまんまと騙されてしまっていたのかっ!!!! ちっがぁーう、ゲンベルジュンだゲンベルジュン。貴様はそれでも漢かっ!! 貴様は落ちるところまで落ち既にシルバーのトレイの上を無様にも這いずり蠢くゴミカスだったはず。まだ足りないか、足りないのか? まさか見下げ果てた奴に俺は……貴様は俺を憚り心の底から嘲笑っていた。……そうか。俺は、俺は貴様の謝罪などいらん。よし、当初の予定通り処刑する。首を伸ばせ」

「ちょ、ちょっと兄者ダメだよ。兄者が処刑してどうするのさ。連れて帰らないと母さんに叱られるよ」

「母さんに叱られるのか。それは不味い。小言を数十年間も聞き続けるのは流石に俺も嫌だぞ」

「だったらどうすれば良いのか兄者には分かるよね?」

「あぁ任せておけ。おいホノクレマ……おいゲンベルジュン喜べ。貴様の処刑はチャードン領に戻ってからとする」

「兄者……良かった」


 声高らかに宣言したハパミクノ・チャードンを見つめながら、満足気に頷くデパリザノ・チャードン。


「それまでの間、この俺が貴様の命を保障してやる。チャードン家の名に誓っても良い。という訳だ。ロイク殿申し訳ないがこの無様なゴミカスをそちらに処刑されては俺が母さん……処刑されてはチャードン家の恥。この無様なゴミカスを処刑したければこの俺をチャードン家を倒してからにして貰おう」

「えっ? ちょっと兄者何言ってるの?」


 チャードン家がコルト下界に宣戦布告したとも取れるハパミクノ・チャードンの力強い宣言。


「俺は本気だ。母さんに叱られるのはもう嫌なんだ」

「あ、え、で、でも……母さんは怖いよ、分かるよ、分かるけど、これ、この状況叱られるとかそんな次元では済まされない……よ。兄者、今直ぐ発言を撤回して。今直ぐロイク殿に謝罪して。今直ぐチャードン領に一人で帰ってよ」



「豫を処刑か。宣ってくれるのぉー。豫は古の世界の生き神ゲンベルジュン・ミビャユ・ザドテール・ホノクレマ、ホノクレマ一世である。偉大なるメアの裏、奈落の果てに蠢く魑魅魍魎風情が戯言をほざくでないわ。不愉快だ、豫は実に不愉快である。……だが、豫は慈悲の生き神でもある。こっちの世界と家族を思う心優しき兄弟の家が争う未来など見たくはない。そう、争いからは決して何も生まれないからです。……そうだ。豫が仲裁して差し上げましょう。全てを赦し過去の遺恨など全て忘れ輝かしい未来を目指すのです。美しい世界を共に築こうではありませんか。……豫は、ホノクレマの名の下全てを赦します」


「ゴミカス終わったか。リザノが貴様に聞きたいことがあるらしい。素直に答えろ」


「豫は、豫……は」

「いつからホノクレマを名乗っていたのか話してくれるかな。ホノクレマって母さんの実家の家名なんだよね」

「なっ!! 何だとっ!!!! 母さんがホノクレマだと!? つ、つまり、母さんこそが諸悪の根源本物のホノクレマだったと」

「兄者!! 違うから落ちるいて、父さんと結婚する前の母さんが」

「ホノクレマだった。つまりそういうことだろう。あぁあぁ―――――何てことだ。俺はまた千年前と同じダンスをダンスっちまったみたいだな。あぁ―――俺のパートナーは千年経った今でも悲劇ってことか。そうなんだな神よ」


「兄者……」


 呆れ果て絶句する弟と、常軌を逸したオーラを醸し出しながらホノクレマみたいなことを臆面もなく大声で発する兄ハパエモン。



 俺は、神紙に記された真実を熟読した後、進展しない取調を更に三十ラフン程見守り続けた。


 俺は、暗記しかける程に熟読した神紙を、兄弟に与えられた時間が終わるのを今か今かと待ち続けながら卒読し続けた。

貴重な時間をありがとうございました。

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