6-MS-02 追われる者と時空牢獄2
―――ホノクレマ視点
「ついに、ついに私も真の枢機卿か、グフッ」
「教王陛下。我々はいったい何処へ向かっているのでしょうか?」
「教王陛下。ここはいったい何処なのでしょうか?」
「教王陛下。そ、そんなはずはありませんよね?」
うるさい奴等だ。
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ドラゴラルシムの王に。
「この世界は豫の故郷。ただ豫の故郷は広大。この地を支配する者によっては問答無用で襲い掛かって来るであろう。豫に飛竜を献上せよ。さすればドラゴラルシムの侵略を不問に処そう。さすれば豫が一肌脱ぎこの地の支配者に便宜を図るよう交渉しよう」
「邪教の親玉が良く言うわ。まぁー何にせよこっちにも人間種がいるのであれば接触しておくに越したことはないのか……うむ。ローリング」
「はっ!!」
「お前の意見が聞きたい、端的に申せ」
「はっ!! 邪教徒及びガルネスの民にはこちらの世界の出身者が多くいるとの話ですので、彼等の協力は必須です。ですが民間人非戦闘員を安全の確保もままならない場所へ送り出すようなことはドラゴラルシム竜王国の栄えある竜騎士隊として看過できません。ですので不本意ではありますがここはこちらの世界出身のガルネス兵や邪教僧兵等と共闘するしかないかと……」
「相分かった。ローリングっ! ガルネスに飛竜を貸し出す。十匹だ」
「はっ!!」
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目が慣れるのに日がかかってしまったが油断させるのには丁度良かった。ズジランの頃合いを見計らい隙をついて愚民共のもとから離れることはできた。
豫と近衛だけのつもりでいたのだが……。
「教王陛下。マダーガス(元サルーカス)が言うようにここは地獄なのですか?」
飛竜を休ませる為とはいえ休憩にしたのは間違いでしたね。……殺し……イヤ相手が強者だった場合保険が必要ですね。今はまだ生かしておくことにしましょう。
「落ち着きなさい。オデスカル枢機卿それに貴方達もです」
「「「「も、申し訳ございません。教王陛下、御許しくださいませ」」」」
「私は怒っている訳ではありません。長旅で疲れているのではありませんか? 貴方達の体を心配しているのです」
「「「「おぉおぉぉ、あああぁあぁああ世界創造神様教王陛下万歳万ざ~~~い」」」」
またかよ。休憩の度に飽きもせず、ホントあっちの世界は愚か者ばかりで反吐が出る。
「オデスカル枢機卿、……」
「マダーガス(元サルーカス)です」
「マダーガス、……」
「はい、教王陛下」
「カーネギアン(元ブギーガン)です」
「カーネギアン、……」
「あぁあぁありがたや教王陛下」
「私はジュスティンヌ(元リズヘイミー)です」
「それにジャスティンヌ」
「お呼びでしょうか、教王陛下」
「私は、貴方達の揺らぐことのない信仰心を誇りに思います。ですが、今は体を休める時です。さぁ、目を閉じ心の中で祈りなさい。暫しの休息を与えん」
騒がれては計画が水の泡になってしまうからと同行を許したが、マジ、ホント、こいつらウゼェー。
・・・
・・
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ハァ~……赤茶けた大地に僅かに感じる硫黄の臭い。この地はまず間違いなく王国領だ。豫の生まれ故郷ナース市の傍であったなら良かったのだが……。
それにだ。豫だけが戻ったのか? ペーターゲッディ、ゴンギーガァン彼奴等もなのか? 救いの日をでっち上げるにしても規模が分からなくてはどこまで話して良いのか分らん。
このまま近衛(サードノーン達)を引き連れ何処か手頃な市(王国領の何処か)の庇護下に……豫以外雑魚のこの集団が飛竜で移動したところで、ナース市から無法地帯を幾つも越えて……無理があるな。
豫だけなら。……豫だけであればナース市以外でも受け入れてくれるのではないか? こっちにはフレッシュな飛竜が十匹もいる。
市が先なら飛竜以外は皆殺し。強者が先なら生きの良い悪人族だと、……この愚か者四人を贈る。その場合、近衛は、……近衛も贈るか。
飛竜を大地に下ろし円を書くように配置し休ませ、豫は円の中央赤茶けた岩肌に直接座り、近衛八人は豫を守るように周囲に立っている。
愚か者共は不届きにも豫の直ぐ傍に座り舟を漕いでいる。
ハァ~……確認するまでもないか。
ハァ~……豫がいったい何をしたというのだ。何故、豫だけがこうも苦労をしなくてはならないのだ。今になってどうして神が……いたのなら初めから出て来いよ。今頃になって……あぁ~むしゃくしゃする。
ん? 何だ? 急に周りの様子が分からなくなったぞ。……疲れもするか。
「おい」
「はっ、神王教王陛下」
「少し休む」
「はっ」
貴重な時間をありがとうございました。