1-29 使役の方法と、魔導具の存在価値。
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【タイトル】 このKissは、嵐の予感。
【第1章】(仮)このKissは、真実の中。
1-29 使役の方法と、魔導具の存在価値。
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――― 大樹の森の中
――― 6月4日 21:00
「うぉりゃっ!」
≪ボン ボフ
「せぇい」
≪ボフ ボフ
騎士リックは、拳で闇牙狼を2~3発殴っては、使役を試みていた。
「ソイヤッ」
≪ボフ バコ ボン
騎士リックは、闇牙狼の額に右手の掌を当てると、使役の言葉を発する。
「・・・ブツブツブツブツ・・・従うか?・・・・・・・まだダメかぁ・・・もう少し体力を削らせて貰うぞ。我慢してくれ!・・・せぇい」
騎士リックは、闇牙狼の額から手を離すと、攻撃を再開した。
≪バコ ドゴ
・
・
・
『ねぇロイク。これの他にまだ2匹いるのよ。終わるのかしら?』
まさか、ここまで時間がかかるなんて思ってもみませんでした。
『木の上の人間種は、キョロキョロと落ち着きが無く面白いので見ていて飽きません』
ハハハ・・・
「ロイク様。バイル様はどちらの方におられるのでしょうか?」
「分かりません。この辺りは魔獣襲撃以降獲物が減っているみたいなので、広範囲を移動しながらか、もっと奥の方に行ってるかもしれません」
「ロイクさんが英雄になった事件の際に仕留めた魔獣達は、南から領内に侵入したと報告書にあったはずですが、北の生態系にも影響が出ているのでしょうか?」
「・・・どうなんでしょうかね・・・」
邪狼獣セリューさんロージャンさんの兄弟姉妹が、ヒグマの丘を拠点にして村の安全の為、周辺の魔獣を駆逐しているからだと思うけど・・・
『邪狼獣達が食べた魔獣の、核や魔晶石だけは何故かタブレットに増えているのでしょう?』
そうなんですよ。なので、解放されてから今日までリアルタイムで、皆が食べた魔獣の数が分かります。
≪バコ ドゴォ
『獣は食べ無い様に気を付けさせているのよね?』
はい。獣まで周辺から居なくなったら、村の一大事ですからそれは守って貰っています。獣の場合は食べたところで、核や魔晶石が無いので実際俺には分かりませんけど。
『フフフッ。今のところ人間種達と見えない共存関係が成立している様ですから、問題無いのでしょうね』
皆が村の傍に居てくれるおかげで、村は安全だし、何かあったらセリューさんやロージャンさんから直ぐに連絡が来るし、本当に助かってます。
≪バコ ボコ
騎士リックは、1匹目を使役する為、必死に頑張っている。
「うぉ~っおりゃっ!」
≪ガガガガ・・・バコ
騎士リックの拳から僅かに火属性の魔素が放出される。
ん?マルアスピー。今、騎士リックの拳から、僅かですが自然魔素を感じませんでしたか?
『えぇ感じました。清澄魔力の様に純度が極めて高い自然魔素でしたので、僅かでしたが分かりました』
騎士リックからで、間違い無いですよね?
『だと思いますが・・・』
次、感じたら、騎士リックに確認してみたいと思います。
『ねぇロイク。ロイクの実験って、私達の【HP】。ステータス値を、魔獣達にも当てはめて認識出来るかって事なのよね?』
≪ガコ ドン
そうですけど、何か気になる事でもありますか?
『どうして、私の瞳にも数値化された魔獣達の情報が見えているのかしら?』
それなんですけど、もしかしたら神具過去を悔やみし者の杖の共鳴眼の影響かもしれないです。マルアスピーとのレソンネを利用して、俺が視界から介入出来るなら、マルアスピーが俺の視界から介入出来てもおかしくないと思うんです。
『ロイクの瞳に見えている魔獣の情報が、私にも見えているって事ね』
だと思います。
『どうせなら、ロイクの瞳の中に映る私を見てみたいわね』
どうしてですか?鏡があるじゃないですか・・・
≪ドゴ ペチン
『フフフッ』
また、俺をからかって遊んでますね?
『違うわよぉ~可愛いなって思っただけよ!フフフッ』
それ、誉め言葉じゃないですからね。
『知ってるわよ』
・・・
『それにしても、このままじゃ、使役終わらなわいよね?』
そうですねぇ~・・・
使役を開始するにあたり、俺は、3匹の闇牙狼を、精霊闇属性下位魔法【パァラァラァシィス】で麻痺させ動けない状態にしていた。動けない状態の闇牙狼を騎士リックは攻撃しては何度も使役を試みていた。
使役を開始してから、30ラフン以上経ったが、未だに1匹も使役に成功していない。中央騎士団第3師団遊撃部隊隊長マリアさんと、その娘で中央騎士団遊撃部隊見習いのアリスさんは、木の上から援護するべく俺達から20m程離れた左右の木に登り5m程の場所から周囲を警戒してくれていた。森に魔獣の気配がほぼ無い事に気付いた二人は援護そっちのけで、俺の父バイル・シャレットをキョロキョロと求め続けていた・・・
俺が試したかった事は、魔獣の状態を俺達と同じ感じに視認する事が出来るどうかだった。神授スキル【神眼・万物限定】と神授スキル【タブレット】とJOB・魔獣使いのスキル【使役魔獣の状態認識】を組み合わせて、神授スキル【マテリアル・クリエイト】で創造する現象の心象を鮮明にして発動させみた。結果は予想通り魔獣のSTATUSを視認する事が出来た。
騎士リックが使役を試みている闇牙狼は、3匹の中では1番生命力値が低い個体だ。だが、未だ使役に成功していない。理由はとても簡単な事で、騎士リックの大きな体から繰り出される拳による攻撃が、闇牙狼にほとんどダメージを与える事が出来ていないからだ。
***騎士マケインと闇牙狼***
≪騎士リック≫ ≪闇牙狼≫
【個体レベル】28 【個体レベル】――
【HP】224 【HP】1600
【MP】186
【STR】200 【STR】470
【DEX】224
【VIT】171 【VIT】650
【AGI】248 【AGI】630
【INT】198
【MND】201
【LUK】94
【BONUS】54
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「騎士リック。JOBに剣士があるのに、剣は使わないんですか?」
「使役する前に倒してしまては意味がありませんから」
「拳で3発攻撃してやっと魔獣にダメージを与えてる感じみたいなんですよ」
「私の攻撃が闇牙狼にどれだけ効いているのか分かるのですか?」
「俺が試したかった事って、人間みたいにSTATUSを数値化した物を、魔獣にも当て嵌める事が出来ないかって事だったんですよ」
「名誉団長殿は、そんな事まで出来るのでありますか」
「えぇ~・・・因みに、3匹の中で一番弱いこの闇牙狼の生命力値は、最大値が1600みたいです。使役を開始してからの攻撃で減りまして、現在の数値は1543です。単純計算で3~4発拳で攻撃して1減ってる感じです」
「私のパンチはそれなりに破壊力があると自負していたのですが・・・魔獣相手ではその程度の物だったのですね?」
「えぇ~。剣を装備して、剣で生命力を減らして使役を試して貰っても良いでしょうか?減ってる状態が分かるので危なくなったら止めるか回復させます」
「使役を試みている者のみで攻撃し弱らせた魔獣は、本当に使役が成功するんでしょうか?」
「STATUSを確認しながら試す事が目的だったので、断言は出来ませんが、魔獣の生命力を2分の1にした時点で、最初に使役を試みた時より成功率は2倍位に上がるんじゃないかと考えたんです。使役の成功の有無は、互いのレベル差では無く生命力が影響してる気がして・・・」
「その理屈ですと、10分の1まで生命力を減らした魔獣の使役成功確率は10倍って事ですよね?」
「単純に確立が上昇するか分かりませんが、弱らせた魔獣なら、使役出来るかなって思うんですよ」
「その弱らせる過程が、使役する本人だと予想した訳ですか」
「はい。因みに、赤くは感じているんですよね?」
「そうですね。最初の時よりもはっきりとした赤を感じる様になりました」
「それなら、やっぱり弱らせる方法は見当違いでは無いと思います」
「名誉団長殿の能力でしたら、竜や古の魔獣も使役可能な気がしてきました」
「機会があったら為してみますよ!ハハハ」
「その時は、是非見せてください」
騎士リックは攻撃を拳から剣に切り替えて、闇牙狼の使役を再開した。
・
・
・
――― 大樹の森の中
――― 6月4日 21:40
使役を開始してから、1時間と10ラフンが経過した頃には、マリアさんアリスさんは木から下りマルアスピーと3人で、ピクニックブランケットを敷いて、お菓子とお茶とお喋りを楽しんでいた。その目の前では、自由を奪われた闇牙狼が、騎士リックに剣で切り付けられる凄惨な光景が繰り広げられていた。
≪ザシュッ!
「せぇい」
≪ザザァ シュシュシュ
「やっと1000を切った様です」
「あれだけやって、まだ1000近くでありますか?」
「騎士リックも休憩にしませんか?」
「剣を振っているだけで疲れていませんので、このまま続けます」
このペースだと、あと1時間位で、100切る感じかな?
『随分時間を必要とする作業なのね』
拳でやっていたら2~3日で終わらなかったでしょうね・・・
『始めから剣を使っていたとしても、1時間30ラフン以上よ。もっと効率の良い方法はないものかしらね』
そうですねぇ~・・・
「ロイク様」
「ん?どうしました」
ロイの屋台で購入した。砂糖菓子を食べながら、アリスさんが、話掛けて来た。
「この砂糖菓子は時間が経つと萎んでしまって、フワフワした感じが無くなるお菓子のはずなのですが、今さっき買った様なフワフワ感ですね。この紅茶も朝食の後で家の厨房で煎れた物ですよね?」
「そうです。朝食の際にいただいた紅茶が美味しかったので、葉を分けて貰う際に美味しい煎れ方を聞き、水筒に移した物です」
「この水筒は魔導具では無いようですが」
「えぇ~ただの水筒です」
「ロイクさんのファルダガパオは便利ね」
「そうですね・・・」
『フフフッ。タブレットさまさまね』
・
・
・
≪ガサゴソガサゴソ ・・・ボリボリ ボリボリ
左手に持った弓で藪を払い、右手で尻を掻きながら1人の男が近付いて来る。
「良い匂いがすんと思ったらぁー。ロイクにせい、おっとぉ~マルアスピーちゃんかぁー」
「親父!」
「あら、義理の御父様」
『・・・面白くなりそうね』
えぇ、バイル信者が2人減るかもしれません。
「よぉっ!王都に行くんじゃなかったのかぁー・・・大樹の森ん中でぇー何してぇんのぉー?」
「えっ?」
マリアさんとアリスさんの声が重なった。
「ロイク様っ!こ、こちらの・・・」
「あっ!マリアさん、アリスさん。紹介します。2人が御探しのバイル・シャレット。俺の父です」
「えぇえぇえぇ――――――」
「こちらの方が、あの伝説のバイル様なのですか・・・」
「何だぁー・・・美女に囲まれてぇー羨まじゃなかったぁっ!何やってんだぁー」
「親父、こちらは、ジェルマン・パマリ子爵様の奥様マリア・パマリさんと、御令嬢のアリス・パマリさん。それで、闇牙狼を使役しようとしているのが騎士リック・マケインさん」
「へぇ~そっかそっかっ!ジェルマンの嫁さんかぁー綺麗な嫁さんだなぁっ!」
「バイル様」
「さ、様ぁ~???バイルで良いよぉー。ジェルマンの嫁さんなんだろうぉ!」
「始めまして、私は、マリア・パマリと申します。中央騎士団第3師団遊撃部隊隊長を務めております。JOBは射手です」
「バイル様。私はジェルマン・パマリの娘でアリス・パマリと申します。まだ見習いですが騎士団に所属していおります。狩人レベル5です」
「おぉ・・・そっかぁー宜しくなぁっ!」
「バ、バイル様ぁ~!」
「お、おう」
「わ、私に弓の指導をしていただけませんでしょうか?」
アリスさん。それは何でも唐突過ぎなんじゃぁ~
・
・
・
≪ボリボリ ボリボリ
父は尻を掻きながら、
「やだよぉめんどくせぇー」
「あ・・・え・・・」
アリスさんは撃沈した。
『プププ。人間種の反応って本当に面白過ぎです』
からかっちゃ駄目ですよ。
『大丈夫よ。見ている方が楽しいもの。フフフッ』
「ロイクぅー」
「何だよ親父」
「俺にもぉーお茶くれぇっ!」
『マイペースよね。義理の御父様って』
えぇ~誰かさんとそっくりです。
「良いけど、飲んだら手伝えよ」
「な、おめぇー親を使う気かぁー茶1杯の見返りがぁー労働かぁっ!この親不孝もんがぁっ!」
「何だよそれ!」
「おめぇー労働って言ったらなぁー......
......だろうがぁっ!親を何だと思ってやがんだぁまったくよぉー」
ダメだこいつ。本当に残念な人だ・・・
『フフフッ』
「マリアさん、アリスさん。分かりましたか?これが俺の親父なんですよ」
アリスさんは、まだ燃え尽きている。
「主人から聞いていた通りの方で驚いています」
マリアさんは現実を確り受け止め、この残念な男を確り理解している訳ですね。
「ジェルマンは何てぇー言ってたんだぁっ!」
「陽の様に明るく」
ん?あぁ~なるほどね。・・・あっけらかんと底抜けに明るくて・・・
「小さな事も大きな事も気にしない」
うんうん。・・・適当で無責任で面倒な事は絶対にしない・・・
「体制に縛られる事無く自由な発想で窮地を何度も救った」
・・・ただの自由奔放傍若無人で何となくうまくいった男・・・
「英雄であり仲間であり友だと言っていました」
・・・良かったな親父。仲間だ友だって言ってくれる人が居て・・・
『ロイク』
何ですか?
『義理の御父様は、無責任な人間種では無いと思いますよ』
そうですかね?
『えぇ~』
無責任じゃない事に越した事は無いので、それならそれで良いんですけど・・・
『フフフッ』
・
・
・
「はっ!ロイク様!本当にこの方が、バイル様なのですか?」
『あら、戻って来たようね。・・・まだ冒険活劇は続いていたのね』
あのねぇ~・・・
「そ、そうですけど・・・」
「御母様!」
「アリス。どうかしましたか?」
「トミーサス大行進の英雄バイル様がぁ~・・・私の憧れがぁ~・・・」
「トミーサスねぇー懐かしぃーねぇーって、トミーサスってぇー言えば、奥さぁん!ジェルマンは元気かぁっ?」
「第3師団が壊滅的な被害を受けまして、少し落ち込んでいた様ですが、身体は健康そのものですわ」
「そっかそっかぁっ!良かったなぁっ!」
「親父、第3師団が壊滅的だって話なんだぞ」
「あぁー大変だったなぁっ!」
「わ、私のバイル様がぁ~・・・」
『プププ』
「おいロイクぅーこの子大丈夫なんかぁー?風邪かぁっ!」
「いや、夢破れ、憧れが飛散してるところだから、そっとしておいてやるのが優しさだと思うぞ」
「大変だなぁーハッハッハッハ」
あぁ~親父のおかげでだけどな。
「ところでよぉー、あの騎士なんたらは、さっきからぁー何やてんのよぉー」
「魔獣の使役を試みてるんだよ」
≪ズズズズズズゥー
「へぇー」
「って、何勝手に飲んでんだよ」
「ジェルマンの奥さぁんがくれたからだなぁっ!」
「そ、そっか。良かったな親父・・・」
「このお茶うめぇーなぁっ!感動したぁっ!」
「そ、そっか・・・良かったな・・・」
「お、おう。奥さぁ~ん、もう一杯」
「粗茶ですが、どうぞどうぞ」
「いやぁーわりぃーねぇーハッハッハッハ」
・
・
・
――― 6月4日 22:30
「名誉団長殿ぉ~使役が成功しました」
「良かったですね」
『やっと終わったようね』
かかりましたね。
「なぁっ。騎士なんたらさんよぉー」
「は、はい。トミーサス大行進の英雄殿」
「拘束した状態の魔獣を使役出来るって事はよぉー今迄の魔獣使いじ使えねぇーって事だろうっ!これからの魔獣使いは剣士みてぇーによぉ!【HP】や【STR】を鍛える必要があんじゃねぇーのぉっ?」
「は、はい。今日で実感しています」
「ロイク様。あとの2匹はどうされるおつもりですか?」
「そうですねぇ~」
「あ、用事があったんだったぁーわりぃーなロイクぅー!家にけぇーるわじゃーなぁっ」
「そっか。母さんに後で寄るからって伝えておいてくれるか」
「お、おう」
「ロイク様」
「ロイクさん」
「は、はい何でしょうか。マリアさんにアリスさん」
「ロイクさんの御母様、バイル様の奥様にも御挨拶をしたいと考えております。バイル様と共に先に帰還しても宜しいでしょうか?」
「構いませんよ」
「わ、私も御挨拶をと思っていました。パフさんの事も気になりますし、先に戻らせていただきますわ」
「マルアスピーはどうします?」
「そうね。メアリーママさんともお話したいし先に戻っています」
「分かりました。それなら、転位で家の前まで移動させます」
「おぉ!あんがとよ」
「親父獲物袋はどうしたんだ?」
「これだぁっ!」
親父は、腰にぶら下げた巾着袋を自慢気に見せびらかす。
「魔導具ファルダ―ガパオ!ついに買ったのか?」
「あぁー、食い扶持が減ったからなぁっ!ハッハッハッハ」
「今迄、買えなかったの俺のせいかよ・・・」
「あったりめぇーだろうぉー」
「・・・で、それ幾らで買ったんだよ?」
「驚くなよ。500kgも収納る事出来て破格の3万NLだぁっ!」
「妙に安くないか?」
「あぁ・・・中に何か詰っててな、実際50Kgくれぇーしか入んねぇーんだわ。ハッハッハッハ」
「50kgしか獲物が入らないファルダ―ガパオを3万NLで買ったのか?」
「おかげで、1日森猪一匹って訳よぉ!小さ目のなぁっ」
「森狐が2匹も入らないファルダ―ガパオって何だよ」
「名誉団長殿。私は次の闇牙狼に取り掛かります。使役魔獣が居るので次のは直ぐ使役が成功すると思います」
「引き続き頑張ってください」
「はぁっ!」
騎士リックは、二匹目の使役を開始した。
「親父。ちょっとそれ貸してくれ。詰ってるだけで壊れてる訳じゃないなら、直せるかも」
「おっ!わりぃーなぁっ!」
俺は親父から巾着袋型のファルダ―ガパオを受け取った。
『どうするの?』
簡単な事だよ。借りた物は返すまでは俺の管理下にある訳だから、タブレットの中に収納が可能だろう。タブレットは収納した物をメンテナンスしてくれる訳だから、一度収納するだけで...
『どんな物でも直してくれるの?・・・それなら私もお願いした物があるわね。家に直接戻るからまた後で会いましょう』
マルアスピーは転位で何処かへ移動した。
「え?あのぉ~ロイク様。今、マルアスピーさん御自分で転位されませんでしたか?」
「彼女も転位魔術が使えますからね」
「そ、そうだったのですか・・・」
「えぇ~」
「シャレット家は能力の高い者が多い家の様ですわね。バイル様」
「ハッハッハッハ」
そこ笑う所じゃないと思うぞ親父・・・って、時間が勿体ないな。可視化 ≫
巾着袋を撮影っと
≪カシャッ
巾着袋が俺の手から消える。
道具・巾着袋・取り出し ≫
≪・・・道具から魔導具・巾着袋方ファルダーガパオを取り出しました。
俺の手に巾着袋が現れる。
あれ?こんなだったっけ?
「なぁロイクぅ!綺麗になってねぇーか?」
クリーニング効果で綺麗になっただけか。
「随分汚れてたんだな」
「前の持ち主がなぁっ!使い勝手がわりぃーって事でよぉ何十年もほったらかしにしてたらしぃーからなぁっ!」
その時から詰ってたんだろうなぁ~・・・
「直ったか分かんねぇ~からよぉっ!何かおっきぃー獲物狩ってくんわ」
「家に用事があるんじゃなかったのか?」
「稼ぎのねぇー夫と稼ぎのある夫!俺なら稼ぎのある美男子を選ぶからなぁっ!ハッハッハッハ」
「ロイクさん」
「ロイク様」
「は、はい」
「私達はバイル様の華麗な弓のテクニックを学んで来ます。それでは、後ほどぉっ!」
マリアさんとアリスさんは綺麗に言葉をハモらせ、父の後を追った。
「3人供行っちゃったけど、いいのかなぁ~・・・」
綺麗になった巾着袋型のファルダ―ガパオは、俺が持ったままだった。
・
・
・
残された俺と、騎士リックは、使役を続けた。
――― 6月4日 23:10
魔獣を使役している魔獣使いはなかなかどうして優秀だった。1匹目の使役にかけた時間は2時間30ラフン程だったが、2匹目3匹目は合わせて20ラフン以下で使役が完了した。
1撃で200~300のダメージは、拳で3発程殴って1。剣で切り付けて5~8とでは雲泥の差だ。
「名誉団長殿。ありがとうございます。闇牙狼を3匹も使役出来るなんて夢の様です」
「動かない魔獣を相手に使役した訳ですから、慣れるまでは無謀な事はしない様にしてくださいよ」
「はぁっ!」
「さて、俺達は家に戻りますか」
「皆さんは、結局狩りに行かれたのですよね?」
「えぇ~500Kg近い大物を狙っているんじゃないかと思います。仕留めたら帰って来るでしょうから、先に戻りましょう」
「はぁっ!」
【フリーパス】:マルアスピー村の実家 移動≫
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――― アンカー男爵領マルアスピー
ロイクの実家
――― 6月4日 23:20
俺は、実家の目の前に出現した。
表示:リック・マケイン ≫
≪・・・表示しました。
【召喚転位】:対象・表示中の者:場所・俺の目の前 発動 ≫
騎士リックが俺の前に現れる。
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「ただいま」
「お帰りなさい」
「ロイク様。お帰りなさいませ」
「自分は中央騎士団第3師団遊撃部隊所属リック・マケインです」
「あらあら、御疲れの様ね。中に入ってお茶でも飲みながら休んでください」
「名誉団長殿の御母上殿。ありがとうございます。それではお邪魔致します」
「母さん。パフさんは?」
「台所で小麦粉と格闘しているわ」
「格闘ですか・・・マルアスピーは戻ってますか?」
「アスピーちゃんは、一瞬だけ顔を見せたけれど、何か持って来るとかって出かけたわ」
「そうですか・・・」
何を持って来る気なんだろう・・・?
『色々よ』
色々ですか?
『そう色々です・・・フフフッ』