6-41 再びメア(亜)下界へ③ 転移先を見て回ろう②
「古の世界を統べし精良なる王よ。不肖私は...... ~ ......謝罪の意を敵意が無いことを伝えたのですが、言葉が通じず...... ~ ......攻撃を受けた為、第一任務の続行を断念し第二任務へ移行しました」
「悪気や各属性におかしな点は無かったんですね?」
「はっ、おかしな点はありませんでした」
メア王国十二諸侯区の一つウェードカルンドーナ帝国の南辺境中隊領境警備斥候隊に所属する悪竜族のディッギングリーグ・ゴン・ガァルゴードゥ見習い騎士の話は調査報告書とほぼ一致していた。
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「そうですね。姉上の悪気と言いますか匂いがしたと言いますか……」
「匂いですか?」
匂いねぇ~。
確か……王国領イート市の面積はコルトの総面積の百三十二パーセント位で、諸侯区ウェードカルンドーナの面積は百六十二パーセント以上。どっちにも川や海はなくてあるのは岩山と荒野のみ。ウェードカルンドーナの区都ティンニーンは区領の北西の端。
ここからだと、……コルトを一周するより遠いよな?
「竜魔族は偉大なるメアの中でも一、二を争う匂いフェ香りに敏感でグルメな種族なのです」
ふ、ふ~ん……。
前バハムートの妹、妹バハムートの話はコルトの理では図ることのできない次元の話だった。
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悪竜族の見習い騎士ディッギングリーグ・ゴン・ガァルゴードゥはウェードカルンドーナ帝国軍の斥候だ。
彼は、前バハムートの悪気と匂いを感知した妹バハムートの命を受け、ウェードカルンドーナの北西端にある区都ティンニーンから南の区領境を越えイート市領の北方、区領境から百五十キロメートル地点の荒野に基地を構えた船待機組こと北の荒野グループに接触した。
区都から北の荒野グループが建設途中の櫓までの距離は直線にして約一千七百八十キロメートル。飛行での移動時間約十一時間半。(因みに、コルト下界の外周は約一千六百六十六キロメートル)
「時速一百五十四.七キロメートルで休まずに十一時間半も飛び続けたんですか。凄」
ん、あれ、普通じゃないか? ……って、ロザリークロード様やエリウスを基準に話を進めたらおかしな奴だと思われるよな。このまま話しを続けよっと。
「凄いですね」
「ありがとうございます。ですが、所詮私は中級種です。上級種族の竜魔族様方は不肖な私より遥かに優れた...... ~ ......」
彼は、北の荒野グループが構えた基地内の建設途中の櫓に降り立ち、友好的な交渉を開始すべく第一声を発した。
が、第一声と同時に、彼の重さに耐えきれずに櫓が倒壊してしまった。
北の荒野グループは、これを敵対行為つまり攻撃を受けたと判断し、彼に攻撃を開始してしまった。
彼は謝罪の言葉とともに「必ず弁償する、敵対の意思はない」と必死に伝えたが、荒野グループは攻撃の手を緩めることはなかった。
交渉の余地なしと判断した彼は、第一任務の続行を断念、第二任務へ移行し山の中腹グループとの友好的接触を開始した。
竜種の襲撃。潰れた櫓の上で咆哮を上げ続ける竜種。
普通に話せていたから気にも留めていなかった。コルト下界の民とメア(亜)下界の民の言葉は違う。会話は成立しない。
「サザーランド陛下と王様達は会話出来てましたよね?」
「それは、儂が世界言語超越理解レベル十三のスキルを所持していたからではないか」
「なるほど。便利なスキルがあるんですね」
貰っておこう。
「もしかして、もないか。斥候のディッギングリーグさんと俺の会話、皆には通じてないですね」
「いや、これでも竜人種だ」
「へぇ~竜人種族って竜と会話出来たんですね」
「会話は不可能だ。我等竜人種は遥か昔古の時代に風竜より奇跡の進化を遂げた種族。その奇跡と引き換えに我等は言葉を失った。だがだ言葉を失ってしまたとはいえ、近い種族同士心を通い合わせることは出来る」
へぇ~。凄いな。
「だから、斥候のディッギングリーグさんと俺の会話が何となく分かるって訳ですか」
「いや」
「うん?」
「内容は分からん。だが、その者の強大な力は理解できる。その者は間違いなく強者だ」
……竜王それって、たぶんですが、本能とかそんな感じなんじゃないかなと、本能的に強い弱いが分かってるだけで、心が通い合ってるとは違う気がします。
貴重な時間をありがとうございました。
第一部を完結させ、いつか修正します。