6-40 再びメア(亜)下界へ② 転移先を見て回ろう①
――R4075年10月24日(火)18時
創生1316656489年2月26日14時――
chefアランギー様は軽快なパルマセコを響かせて、バジリアさんとサンドラさんとトゥーシェとリュシルと俺は俺の神授スキル【フリーパス】で、北の荒野グループが築いた見窄らしい基地跡地へと移動した。
基地跡地で俺達の到着を待っていたサザーランド陛下と吸魔公とバハムートの竜魔王(竜魔侯が正式らしい)と前と妹と簡単な挨拶を済ませる。
斥候のディッギングリーグさんは何処だ? 聞いてた話しよりも人数が多くて分からないや。
しっかし、でかい。
遭遇し完全解放し炉端焼き専門店海の幸が集う猟師の家で打ち解け合ったのが今月の七日。家に滞在していた時はロザリークロード様に倣って幼女姿でいることが多かった前バハムート。彼女の真の姿はなかなかになかなかだ。そのなかなかになかなかな姿、小山と言うか岡と言うか途轍もなく巨大な竜が今日は三つも並んでいる。
中央の少しだけ大きな小山が今上の竜魔王バハムートで、左の小山が前バハムートの妹さんで、右の小山が前バハムートだ。後ろの方にも何竜か控えていて遠近感がおかしなことになっている。
それにちょっと首が痛い。雄大なるバハムート三連峰を目の前至近距離で見上げ過ぎたかな。
首の骨をポキポキ鳴らすのは良くないらしいが首や肩を動かすと勝手に音を出す骨にいったいどうしろと?
首を左右に動かし肩を回し齟齬な思考を虚空に漏らしながら、グランディール城の中規模会議室で俺の神授スキル【転位召喚・極】を待つそうそうたるメンバーを召喚した。
「グぬおっ!!」
召喚されたそうそうたるメンバー達は、薄暗いメア(亜)下界にまだ目が慣れていないのか近くに立つ者同士声を掛け合い互いを確かめたり、キョロキョロと見えない周囲を見回したりしていた。召喚と同時に阿呆な声をあげていた竜王クロージャは無視しよう恥ずかしいし。
彼等には暗いよね。こんなんじゃ検証とか無理だろうから。
「ちょっと暗いんで明るくしますね」
光属性の魔術を俺はまだ扱えない。仕方がないので光属性【☆1】の精霊魔法シャインで代用っと。
コルト下界の日中と見紛うほどの輝きを放つ小魔晶石サイズの球体を指先に出現させ空へと打ち上げる。
「下級なのに眩しくてびっくりしましたね」
「「「……」」」
沈黙は肯定。その認識で間違いないようだ。
「「「ヌ、ヌオワァー、ギャァー」」」
悲鳴を上げる者、腰を抜かし地面にへたり込む者、失禁する者、気絶する者。そうそうたるメンバーはそうそうたるメンバーだ。
複雑な気分だ。そこまで驚かなくても……。地味に心が痛い。
「「「きょ、巨大なド、竜!?」」」
ああぁ、そっちね。良かった。
「この辺りはこのような感じだったのだな。荒野であることは知っておったが、ここまで何もないとは……我がメアながら清々しさが目に染みるのぉー。メアはちょいとばかり薄暗い方が良いかもしれぬ。そう思うのは儂だけだろうか?」
「旦那様。私奴も同じ考えにございます」
「そうであろう、トラヤヌスお前もそうであろう。うんうん」
赤茶けた荒野と赤茶けた岩山と星が一つそれと…………しかないみたいだし、鮮明じゃない方が諦めもつく、のか?
「陛下。光輝く眩しき世界など不要にございます。我等は闇に蠢き夜に栄えし者。帰っても宜しいでしょうか?」
「お、おう……トラヤヌス、こやつを何とかせい」
「兄さん」
「何だい弟よ」
「イート市の今後を左右する大切な日なのですよ。統治者の兄さんが確りしないでどうするのですか?」
「それなのだが、明るくなったからだろうな。眠くてしょうがないのだ」
吸魔族って吸血族の上位種だったっけ? まぁなんだ、トゥーシェやリュシルと同じ闇系の種族なら明るくない方を好んでもしかたない、のか?
「皮膚が気持ち良いですねぇ♪」
「はい。叔母上」
「邪神竜様より日向ぼっこなる高尚なる遊戯を向こうで教わったのだが。これはこれで良い具合だ♪」
「伯母上が先日話してくれた神々様の高尚なる遊戯とはこのことでありましたか」
「うむ」
うむ。って、日向ぼっこは神々の遊戯とかそんな何か凄そうなも
「素晴らしいです、心と体が癒されます。流石は神々様の高尚なる遊戯です」
「そうであろう、そうであろう」
「姉上。私あの光が欲しゅうございます」
「そうであろう、そうであろう」
のじゃ……もう良いや、スルーしとこ。