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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
404/1227

6-28 白光の夜の真相を求めて⑦ 神頼みの後の神絡み①

―――R4075年10月13日(水)17時頃

 アシュランス王国・王都スカーレット

      グランディール城・国王執務室―――


 昼食(デジュネ)とティータイムを挟み仕事を再開した俺は、chefアランギー様と回収品のリストに目を通していた。


「おかしいですなぁ~……北の地の採れたばかりの山菜の山を湯がく際に使った後から見ていないのでてっきり厨房に置き忘れて来たものだとばかり思っていたのですがぁ―――、はい」


「そのサイバシ、でしたっけ? リュニックファタリテ(装備者指定武具)の効果とかは」

「神聖不可侵なる厨房(せいち)を彩る調理器具の中にあって婉麗さではピカイチを誇ってはいるのですが、なにぶん菜箸、箸ですからなぁ―――、はい」


 調理器具は全て神具級って訳じゃないのか。


「鍋の蓋や包丁の鞘、箸置きにはリュニックファタリテとかメンテナンスフリーとか全属性耐性(全属性干渉無効)とか神具級の効果が付いてましたよね」

「その通りですぞぉー、何せ鍋の蓋に包丁の鞘に箸置きですからなぁ~、命のやり取りを旨とする厨房(せんじょう)ではいつ何時何が起こるか分かりません。危険の芽(リスク)は事前に摘んでおくに限りますからなぁ―――、はい」


「リスク回避は大切ですからね。……料理の世界も大変なんですね」

「ですが。交歓の場、未完の美、そこには愛情と探求と閃き気付き様々な思惑、心を躍らせ惑わす達成感にも似た何かが存在しているのも事実なのです。私はこれを快楽にも似た苦痛と呼んでいるのですが、今は菜箸の話に戻しましょう。はい」


 おっ! オートで脱線から戻って来た。初めてかも。……サイ箸か。ちょっと気になるし聞いてみるか。


「そのサイ箸にはどんな効果が付いていたんですか?」

「確かぁ~...... ~


***********************

【名称】料理を司りし神の菜箸39

【種類】神具・調理器具・菜箸

【品位】A2

【素材】神界大樹の枝

    虹の雫の漆

    音楽を愛する神々の奏で

【効果】水属性耐性100%(水属性干渉無効)

    火属性耐性100%(火属性干渉無効)

    重量無視(対象物の重量が0gに)

    不壊(破壊はA3以上の神具でのみ)

  ☆所持者に反映する効果☆

    体力回復補助

     ・HPが1秒間に1回復する。

    気力回復補助

     ・千年間は働いていられる。

    強制治癒

     ・健全な状態で料理が出来る。

    論理的思考力強化

     ・0=+1、1以上=+2。

    身体機能筋力強化

     ・0=+1、1以上=+2。

【所有者】指定なし

【製作者】神界の箸の名工・箸を司りし神

     リゲートクオーク・オクトゴーヌ

************************


~ ......だったかと。菜箸なんて調理場でしか使わんだろう。菜箸にはこれくらいで十分だと箸を司る友神に言われリュニックファタリテを付けなかったことがいたたまれませんですぞぉ―――、はい」


 箸の神様が創造した神具だったのね、しかもA二の。ツッコミ処が満載だな、おい。


「もっと普通に箸してるのかなって、そんな訳無かったですね。ハハハ」

「どちらかと言えば見た目に拘ってしまった節がありまして、いやはやいやはや若気の至りというものは恐ろしいものですなぁ~、ですが若気の極みにありながらもこの通りなのですぞぉ」


≪パンパン


 chefアランギー様の軽快なパルマセコの音が執務室に響くと、執務机の上に何か何となく長い箸が数本現れた。


「何かたまに使ってる物より長くないですか?」

「その通りですぞぉ~、菜箸は長さが命なのですぞぉ~。こちらの短い菜箸は三十センチメートルで、こちらの長い菜箸は三十九センチメートルあります。紛失した菜箸の名称に三十九とあるのは感謝の言葉としてではなく見たまま長さを表しているのです。と、このようにですな。新品の短い菜箸が五膳、新品の長い菜箸が三膳、愛用の短い菜箸が二膳、愛用の長い菜箸が一膳と料理に支障が出ない程度にストックがありますのでご安心くだされ。パトロン殿との契約を不履行にすることなど例えコルトが滅んだとしてもまず間違い無く有り得ません。と、断言致しましょう。はい」


 う~む……。

「……滅んだ後に食事の心配をしないで済むのは有難いですね。ハハハ」

「食とは生きる上で最も優先すべき常。当たり前であり至高。まぁー世界が滅んでしまっては身も蓋もありませんがっ」

「そこ言っちゃうんですね」

「食し楽しみ時に難題を齎す者の存在なくして料理など存在しえません」

「へぇ~」

「はい」


・・・・・

・・・・

・・・

・・


「あれっ?」


 視界に反映したタブレットの画面をスクロールすると、ララコバイア(海洋)王国の欄が終わり、ドラゴラルシム(竜王)国の竜騎士隊の欄が始まった。


 宝剣ジュエリュジスマン。魔銀鎧竜鱗強化一式。身代わりの腕輪数珠。癒しの腕輪数珠。古代竜革の軍靴。


「竜王国は歴史がありますからなぁー、国宝もそれなりに充実していてもおかしくありませんですぞぉー、その宝剣ジュエリュジスマンは数多の下界に一本しか存在しない伝説級の一品。身代わりの腕輪数珠はKANBEの京数珠を素材にしているようです。下界とはいえ界を越え存在する物は貴重、神具手前の一品として大切にするべきですな」

「貴重な品だってことは分かりました。それよりも、おかしんです」


「おかしい、ですか。ふむふむふむ。……何がおかしいのかお聞きしてもよろしいですかな?」

「ええ。無いんですよ」

「ない?」

「モントルアプレVer.撮影機能付きが無いんです」


「なるほどなるほどなぁ~るほど、クロージャには写真撮影の機能が付いた腕時計を渡していましたね。……確かに見当たりませんですなっ!」


 タブレットで半神具をソートし他がどうなっているか確認してみたが、無くなっていたのはモントルアプレVer.撮影機能付きだけだった。


「竜王に渡したモントルアプレだけ」

「回収出来ていないわけですかぁ―――、これは……ふむふむふむ、おっ。パトロン殿ではなく陛下こちらを」


 chefアランギー様に差し出された宙のモニターに視線を移す。


 どれどれ。……家の支給品の欄だな。


「ここです」


 chefアランギー様が指差した場所を見る。


「料理関連の回収品の中に士官に支給した装備が混ざってるみたいですが、これがどうかしたんですか?」

「ゼルフォーラの船の厨房に足を運ぶ士官の正体は先日話をしたアヤ少尉で間違いないでしょう。それすなわち共通点と言う訳ですぞぉ―――、はい」

「はっ?」


「先日、アヤ少尉と話をしましたな」

「えぇ」

「その際、私は、彼に弟子の証を贈りました」

「ですね」

「あれは、ただの贈り物ではなありません」

「でしょうね」

「あれは...... ~


***********************

【名称】料理を司りし神が弟子だと

    認めた者にのみ与えるマント

【種類】神具・服飾品・マント

【品位】A3

【素材】chefアランギーのコックコートの切れ端

    神界虹蚕の絹糸

【効果】メンテナンスフリー

    不壊(破壊はA4以上の神具でのみ)

    水属性耐性・撥水

    火属性耐性・不燃・耐熱

  ☆所持者に反映する効果☆

    絶対防御

    ・料理中に起こりえる

     あらゆる干渉から身を守る。

    一般衛生管理

    ・料理の環境を整える。

    湧水生成

    ・料理には不可欠な

     軟水硬水炭酸水お湯を生成する。

    chefセレクト

    ・chefアランギーが経験に基き厳選した

     料理になくてはならないスキルが7個

     本人の意思を無視して発動する。

【所有者】たぶんアヤ少尉のまま

【製作者】料理を司りし神

     アランギー・フゥファニー

***********************


~ ......も無くなっているようですなっ、はい」


「食材は鮮度がどうのこうのって話をしていた士官に」

「弟子ですぞぉ~」

「弟子にした士官に渡したあの白いマント、神具だったんですかっ!!」


「その通りですぞぉ~、【料理が関わる全てに全力であれ】。これは一昔前に私の中で響いていた言葉なのですが、時を経て今は【料理を愛し料理する者、chef】が響いています。私が後進の育成にまで興味を持ち始めてしまったのは必然だったのでしょうなぁ―――、はい」


 ……。


「……そうかもしれないですね」


・・・

・・


「お喋りとリストの確認も終わったことですし、それでは本日のメーンイベントといきましょう。今朝の話なのですが、フォルティーナ様が珍しく朝から騒いでおりました」

「確かに珍しいですね」

貴重な時間をありがとうございました。

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