6-24 メアと帰還者とコルト⑤ 神王で教王ホノクレマ心の声と妄言①
蝋燭の炎より小さな輝き六の月ズジランの下で竜王クロージャが物思いにふけている頃、ガルネス神王国の神王で世界創造神創生教の教王のホノクレマは焦っていた。
この状況は兎に角やばい。何とかしなくては。
あいつ等(同胞共とその家族)は都合良く勘違いしてくれている。ここは、ダメ押しでもう少し口八丁手八丁で押し切るとして、問題は愚民共をどうするかにゃ、おっと。
まさか本当に神がいるとは……何故今になってっ! 何故今更現れるっ! 世界創造神とか偉そうにいったい何様のつもりだっ!
辻褄を合わせなくては。…………あぁあぁあぁ―――実は絶対神と創造神は姉妹で姉の絶対神が妹の創造神に私達のことを相談し僅か百年ちょっと(メア感覚)で帰還が実現した。……こんな感じでどうだ。
そもそも何の権限があって世界創造神創生教と関係者が地上に残っている限り掟の儀式を神授しないだ。ふざけるのもいい加減にしろっ!
神の名の下儀式を整え愚民共の職業を管理し導き続けて来たのはこの豫だぞ。これではまるで豫が愚民共を欺いていたようではないか。所詮は名も無き異界の神…………あぁあぁあぁ―――そうだっ! 良いぞ良いぞぉーこれなら行けそうな気がするぞぉ~。
「ガルネス神王国の心優しき神民達よ。豫が愛する子供等よ。豫はたった今八つ目の神授を世界創造神様よりいただきました」
「なっ、なんとっ! 八つ目の戒法をいただいたのですか」
「そ、その通りだ、……枢機卿」
「あぁー我等が神、世界創造神様。父と母を我等を偉大なるメアへと御導きいただいたばかりでなく迷える我等に新たなる道標を御与えくださるとは感謝致します。さぁ~皆も世界創造神様に感謝の御祈りを」
「「「「あぁー世界創造神様」」」」
えっと……創造神が帰還させた流れに…………こ、これでどうだっ!
「私も世界創造神様へ、そして、絶対神様に感謝の御祈りを……」
「教王陛下。絶対神様とはいったい?」
「あー……枢機卿はセカンドですかな?」
「私はサードノーンでございます」
サードか。名前を知らないはずだ。ネームプレートくらい付けとけよ。
「良い機会ですから。神民の皆さんにも戒法の真実を先程神授していただいた新たな戒法と共にお話しましょう。何故豫達が教市民教神民と呼ばれているのか...... ~ ......先程いただいた神授によって豫達が何故偉大なるメアより遠く離れたガルネスへと導かれたのかを理解しました。それは貴方達ガルネス神王国の心優しき神民、豫が愛するあなた達を正しき教へと導く為に必要だったからです。...... ~ ......今までであれば先程の様に豫のみが世界創造神様より神授をいただき、愛する子供達へ世界創造神様の御言葉を伝えていました。...... ~ ......世界創造神様は世界の無秩序を混乱を御望みではありません。その為、先に起きた奇跡。世界中の愛する子供達が神授をいただきました。この地に世界創造神創生教と関係者が残っている限りレーグルリットは無い。この神授を曲解した愚か者達は正しき道を歩む我々を糾弾し無抵抗の我々に狂気の刃を向けました。世界創造神様は秩序を愛し混沌を嘆き我々に慈愛と忍耐を御望みになられました。...... ~ ......奇跡の夜の神授は、八つ目の戒法は、導きの時が終わったと、豫が我々(教市(神)民)が子供達を導く時が終わり新たな段階に入ったことを意味していたのです。そしてこの度の偉大なるメアへの帰還。導きの時が終わりを告げ新たなる導きの時が訪れたのです。愛する子供達よ。新たなステージへと更なる高見へと昇ることを赦されたのです。偉大なる世界創造神様とこの偉大なるメアの絶対神様は、先程の神授の最後にこのような御言葉を豫に残されました。世界創造神創生教の戒法を秩序を平和を愛を持って...... ~ ......この偉大なるメアには絶対神様と世界創造神様、二柱の神様がおられるのです。豫は教王としてこの奇跡の瞬間に立ち会えたことを誇りに思います。そして絶対神様と世界創造神様に心からの感謝を感謝の祈りを捧げたいと思います。あぁ~絶対神様。あぁ~世界創造神様」
……かなり雑だが押し切るしかない。帰還したことでここにいる同胞共は適当に言い包められるとして、愚民共……おっ、いっそのこと愚民共が次の導き手として選ばれたとか神の試練を先に乗り越えた我々が見守るとか。…………あぁあぁあぁ―――、これなら行けそうな気がして来たぞ。
「愛する子供達よ。帰還の時を信じ見事試練を乗り越えよ。我々ですら成し得たのです。先人として見守り続けると約束しましょう。さぁ~祈るのです。絶対神様を、世界創造神様を、試練を御与えくださった二柱の神々様へ感謝の祈りを捧げるのです」
「「「「あぁ~、ぜ、絶対神様、世界創造神様ぁ~」」」」
良い感じだ。うんうん、何とかいけそうな気がしてきたぞぉ~。
・・・
・・
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「教王陛下」
「なんですか騒々しい。枢機卿ともあろう者が、嘆かわしい」
「あ、あちらの空をごらんください」
「空? 空がいった……」
「竜の群れに見えるのですが……」
「ホノクレマ」
「ホノクレマだと。誰だ豫を」
「お前をどう呼ぼうと俺の勝手だ」
「クッ、……お前も来ていたのか。ズドリンガーホードガルデン」
「お前の世迷言がまさか事実に。何万回と言ってみるもんだな。望めば叶う。いつかは知らねぇがってか。ま、今は良いや。あれどうする」
「どうするとは?」
「竜魔族と悪竜族の群れがこっちに向かって来てんだ。何の理由も無しに竜ですら音を上げたあの山を越えて来るかねぇ―――」
「何が言いたい?」
「俺は騙されるのも騙すのも性に合わないんで、こっからは自由行動だ」
「お前はいつだってそうだったろうが」
「まっせいぜい頑張るんだな。あばよっ」
「ガハァッ ハァー ハァー 、き、消えたぁっ! きょ、教王陛下、い、今の今の無礼な男はいったいなんなんですか。声も……体が動かせなかったのですが……」
「彼は、シュヴァルツを組織した男ですよ」
「あ、あの無礼な男が伝説の影!?」
「伝説ですか。彼が伝説なら豫の周りは神話だらけですよ」
トカゲが一匹二匹なら豫一人でも何とかなったが、武装したウェードカルンドーナのトカゲ数千匹となると……逃げるか。
貴重な時間をありがとうございました。