1-27 ケータリングサービスは、止められない!
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【タイトル】 このKissは、嵐の予感。
【第1章】(仮)このKissは、真実の中。
1-27 ケータリングサービスは止められない!
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――― 東モルングレー山脈 中央部
――― 6月4日 13:30
俺と、大樹の森の聖域の精霊樹に宿りし大精霊マルアスピー様と、遊びの女神様こと運の神様の3人は、ブオミル侯爵領ロイの鉱山から北へ62Km、大樹の森の一部に含まれる、東モルングレー山脈の中央部、南と北に10000m級の山々が連なり、東と西に9000m級の断崖絶壁の谷がある、東西約25.2Km、南北約6Kmの高地に広がる草原に居る。
東の眼下には、パマリ侯爵領コルト、大樹の森の聖域、アンカー男爵領マルアスピー、サンガス、フォーラム、そしてヴァルオリティア帝国領ルフィーラが広がっていて、西の眼下には、ルーリン湖、ゼルフォーラ王国王都モルングレー、サーフィス、サス湖、大火山と一枚大岩の大陸ベリンノックが広がっていた。
「東西約25.2Kmの真ん中はだいたいこの位置だと思うんですけど、どう思いますか?」
「少し位は誤差の範囲内だね」
「ここの真上で2つの陽が重なるんですよね?」
「2つの陽がこの世界と真っ直ぐ重なり合う日は、1月1日と7月16日の15時の2回だけだね」
「はい。精霊樹と年に2回重なります」
「そうだったね。マルアスピー、君は精霊樹の精霊だったね。この辺りも年に2回2つの陽が真っ直ぐ重なる日があるはずだけど、あたしは細かい事を気にした事がないからね。うん!」
遊びの女神こと運の神は、自慢気な表情で俺を見る。
「ドヤ顔されても・・・しかし、ここは不思議な場所ですね。南北の山脈から吹き降ろす風が、東西に吹き抜ける風と合流して大きな渦になって、まるで、外界からここを隔離してるみたいです」
「ハッハッハッハ。今の季節は北の山脈から吹き降ろす風の方が強い。そして、西から東に吹き抜ける風が強い。渦は右回りだね。風属性をここで扱う時は左利きの者は加減しないと大惨事なるね」
「神様や精霊様の場合、いついかなる時でも加減の必要があると思いますよ」
「ハッハッハッハ。ロイク。君も同じ様なものじゃないかね」
「・・・」
「そうね、ロイクは魔力の統制がまだ苦手みたい。特に気を付ける必要があると思います」
「マルアスピーまで・・・」
「本当の事でしょう?フフフッ」
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「でも、季節で渦の向きや、重なるタイミングが違うって何か理由があるんですか?」
「ハッハッハッハ。向学心向上心大いに結構結構だね」
女神様は、心地良い笑い声を草原に響かせる。
「ロイク。君は、この世界の1年が390日なのは知っているね?」
「えぇ」
「その390日の間に2つの陽は少しずつ位置を変えているんだね。この世界も向こうの世界も止まる事無く動き続けているからだね。ちなみに、横陽は1月1日。精霊樹の真上、この世界の中心にあるね。98日かけ西へ少しずつ移動し97日間かけ7月16日。精霊樹の真上、この世界の中心に戻って来るね。そして98日かけ東へ少しずつ移動し97日間かけて1月1日。精霊樹の真上、この世界の中心に戻って来るね。縦陽は1月1日から北へ移動し7月16日に精霊樹の真上に戻って来るね。そして南へ移動し1月1日に戻って来るね」
「あぁ~なるほど。それで、村から大樹を見た時に、陽が大樹より奥の方に見えたり、手前に見えていたんですね」
「この陽の動きの影響だろうね。1月2日から7月15日までは、北からの風が強く西から東に風が流れる。7月17日から13月30日までは、南からの風が強く東から西に風が流れるね。渦の向きや強さが異なるのはその為だね」
「あれ?今の説明だと1月1日と7月16日は・・・」
「ロイク。1月1日は私の生まれた日です。覚えていますか?」
「村で、誕生日により相性がどうこうって、毎日聞いてましたから、自分の誕生日よりもバッチリ覚えてます」
「ハッハッハッハ。種を越えて、うんうん実に素晴らしいね。・・・・・・あぁ~1月1日と7月16日の話だったね。この2日間は15時。東西南北の風が精霊樹に向かって同じ強さで流れるね。精霊樹を中心にして、自分自身が居る場所によって風の向きが異なるって事だね。ここの場合は、精霊樹に向かって西から東に風が流れ渦が消える訳だね。・・・しかし、この世界の人間種達は、住み着いてから長いだろうに、随分と大雑把に受け継いで来たんだね」
「4075から4076年前に大分裂した前ゼルフォーラ王国期の文献はほとんど残ってないので、人がいつから居たのかは分かっていないんです。前ゼルフォーラ王国期の事も余り分かっていない状態なので、その前の世界がどうだったか、人間がどうしていたのか・・・」
「ハッハッハッハ。それでも4000年以上は、この世界に住み続けている訳なんだね。住んでいる世界の基本的な流れを全く理解していないってのもどうだろうね」
「生活魔術革命が起きて以降は、魔術に依存した暮らしが定着し、神学の自然学や古代学問の数学や物理学は、絵本や神話の時代の話みたいになってまして・・・」
「神の時代の話か言葉は遣い様だね。ハッハッハッハ!・・・・・・大方、縦陽が横陽より小さいという事も知らないね?」
「流石にそれは、見て気付けるので分かりますよ」
「目に見える物に対しての理解は周りの世界以上に目敏い文化が育った世界の様だね」
「はい、運の神様。この世界の人間種は目で見た物しか信じないところがあり、想像力や感受性に乏しいところがあり、極めて閉鎖的なところがあります。ですが、力の上下関係により上の者の言葉を無下に信じる愚かな傾向もあります。全くもって不思議な感じです」
「なるほどね。マルアスピー、君が人間に興味を持ったのは、人間だけが持つ独特な心の揺れに惹かれたからかもしれないね。長く存在し続ける宿命を持ったあたし達と違い、人間の一生はほんの一瞬だからね。あたし達では気付けない見落としてしまう、小さな心の変化や微妙な何かに人間は反応しているかもしれないと考えた訳だね?」
「感情の起伏が激しく泣いたり笑ったり怒ったり、分かり難ところはあります。ですが、他の種と同じ様に欲望には忠実なところがあり趣味趣向は非常に分かり易いです。そして、人間種達は美味しい物を沢山知っています。しょっぱいお菓子を知っていますか?」
「欲は、種の向上に繋がる欠く事の出来ない、生み出す際のエッセンスだかね。創造神もあたし達に似せて人間を創造したんだろうね。・・・しょっぱうお菓子かね。既にお菓子ではなく酒の肴と言っている様に聞こえるね。どんな物何だね!」
「あのぉ~女神様・・・話はどうなってしまったんでしょうか?」
「小っちゃい事を気にしているとハゲるね。男なら小さくまとまってはダメだね。あれまで小さくなって嘆くのは自分自身なんだね!」
「は?はぁ~・・・」
この女神様は何の話をしているんだ?
『フフフッ。あれよあれ』
「また、ヒソヒソ、コソコソと、君達は仲が良いのは、1歩譲って気にしないが、あたしを無視して楽しそうなのは気に入らないね。罰として、そのしょっぱいお菓子を今直ぐあたしに捧げるね」
遊びの女神こと運の神は、自慢気な表情で俺を見る。
「それなら、直ぐ渡せますよ」
可視化:道具・苺飴、塩味、醤油味、柚子胡椒味を取り出し ≫
≪・・・道具から、塩苺飴、醤油苺飴、柚子胡椒苺飴を取り出しました。
俺の手に、苺飴が入ったパックが現れる。
「これが、マルアスピーが話ていたしょっぱいお菓子です。苺飴という甘くないスィーツです」
女神様に、パックの蓋を開け一通り説明してから、俺は手渡した渡した。女神様は、塩苺飴を手に取り舌で一度だけ舐めた。
「なるほだね。塩と水飴だね・・・これは、昼食の後で楽しむ事にしたいね」
「昼食と言えば15時ですが、どうしてここで15時何でしょうか?」
「知ら無いのかね?・・・・・・う~ん知らなくて当然か!だね。この草原はね昔はもっと西に大きく広がっていたんだね」
「草原の話ですか?」
「そうだね。あっちに細長い山脈が見えるね」
「西モルングレー山脈ですよね」
「昔はこの山脈とあっちの山脈はくっ付いていてね。眼下に見える湖の手前まで山脈と大地が続いていてね。大きな滝があったね」
「滝ですか?」
「9000mから10000mもの高さから落ちる滝は地表面まで滝としての水量を維持出来ないね。西の眼下には虹が幾重にも架かり綺麗だったね」
「草原に滝に虹ですか・・・」
「その滝が長い年月を経て、ここまで削って今のこの地形なんだろうね。自然魔素の流れが不自然な様だし・・・」
女神さまはキョロキョロと周囲を見渡す。
「良く見ると、この世界は自然魔素の流れがおかしな事になって居る様だね。前はもっと穏やかだったと記憶しているね」
「それって、どの位前の話なんですか?」
「どうだったかね。ここに避暑地があった頃だからね・・・7・8億年。13億年位前かな。だが、ここは相変わらず眺めは良いね。東西は9000m級の断崖絶壁の崖、南北は10000m級の山々。力の及ばぬ者、資格の無い者を拒む昔と変わらず良い所だね」
「普通に来られない場所って不便じゃ無いですか?」
「中空の避暑地はね。不便では無いんだね」
「スタシオ・・・?その・・・そうなんですか?」
「ハッハッハッハ。中空の避暑地だね。神々の楽園の1つだね。まぁ~・・・石を翳すと分かるね」
遊びの女神こと運の神は、自慢気な表情で俺を見る。
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「ねぇ、ロイク。私、考えたのだけれど、ここに家を建てましょうよ」
「えっ?こんな、切り立った崖と谷に囲まれた野原にですか?」
「ここって、聖域が2つ精霊樹に一枚大岩。精霊地のコルト湖にカイライ山にヒグマの丘。王都は目の前、コルトもサーフィスも信仰の集落も竜人族の島も見えます」
「ここに家を建てるのかね?ともて良いアイデアだね。完成した時はあたしの部屋も宜しく頼むね。久々に大勢で騒げるのは楽しみだね」
「あのぉ~御二人に念の為に言いますが、コルト湖の畔もここもですが、大樹の森の中にあるので、土地の管理が王国なんです。誰でも自由に活用出来る中立地帯で、貴族領や直轄領の様に規制はありませんが、簡単に居住の許可が貰えない場所何です」
「ここって、人間種達には関係無い、大樹の地だと思うのだけれど・・・」
「神であるあたしが許可するね。何だったら創造神の許可も貰って来るね。ここにあたし達も寛げる神殿を建てるね」
「神殿って、家の話でしたよね?
「あたし達が寝泊りする寝室がある家は神殿だね」
「神獣カフェ『ドームココドリーロ』で寛いでくださいよ」
「ロイク。君は何を言ってるんだね。あれはカフェ、寝室ではないんだね。マルアスピー。君はなかなか良い瞳と感性を持っている様だね。次会う時までに頼むね!」
「はい。多種族の楽園にしてみせます」
「うんうんだね」
・・・家を建てるのって、決定?・・・みたい・・ですね・・・・・・
「ヒソヒソ話は良く無いね」
「はい、良く無いと思います。フフフッ」
「そうだ!昼食の後で嵩張って邪魔な物を渡すね。家を建てるなら使って貰いたい物だね。このコルト下界から持ち出してはいけない決まりがあってね。ずっと胸の谷間に収納ってあったね」
遊びの女神こと運の神は、胸に手を当てながら、自慢気な表情で俺を見る。
凝視・・・俺って・・・開いては女神様・・・神様だから・・・
『フフフッ』
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――― 同じ場所
――― 6月4日 14:59
「さて、そろそろ時間だね。宝玉と石を陽に翳すと良いね」
「はい」
俺は、竜の宝玉・黄を左手に、完成したばかりの精霊石を右手に持ち、腕を空へと伸ばし陽に翳す。
「4・3・2・1・0。ちょうど15時だね」
「うん?・・・何か陽の方から来ますよ」
≪ヒュー―――――――ゥ――――――
重なり合った陽を背に小さな黒い何かが近付いて来る。いや、小さいと思ったのは遠いからだ。それは、ドンドン大きくなり、あっという間に・・・
≪ピタッ
・・・俺達の目の前に停車した。
≪ガラガラガラガラガラ
キャビン?の窓が上に開いた。
≪ガチャ
ロイで見かけた苺飴屋やクレープ屋や鰻屋の屋台が4・5軒並んだ様な馬車のキャビン?のドアが開き、中から1mはあるであろう真っ白なシェフハットを被り真っ白なシェフコートに身を包み真っ赤なスカーフを首に巻いた、彫りの深い顔立ちの男が1人。後ろから可愛らしい小さな妖精が5人降りて来た。
妖精を従えている時点で、シェフハットを被った男は人間では無いだろう。
「chefアランギー。この3名で間違い無いですか?」
妖精の1人。焦げ茶色のスーツを着た髪の色も焦げ茶の妖精が、背中の羽をパタパタと動かしながら、シェフハットを被った男に話掛けた。
「おんやっ!スコォーチュ君。この3名とは何ですか大切な御客様ですよはい」
「chefアランギー。すみませんでした。謝ります」
「chefアランギー。今日のケータリングは草原でですか?」
妖精の1人。深緑色のスーツを着た髪の色も深緑色の妖精が、触覚をピクピクと動かしながら、シェフハットを被った男に話掛けた。
「おんやっ!アメール君。どんな所でも、どんな場所であっても、最高の料理を提供する。それが、本物というのですよはい」
「chefアランギー。申し訳無いです。謝ります」
「chefアランギー。黄龍の姿が見当たらないよ。何処に隠れたんだろう?」
「chefアランギー。僕も隠れて良いかな?10000数えてよ」
妖精の1人。黄色いスーツを着た髪の色も黄色の女の子の妖精は尖った耳を澄まし音を確認しながら、シェフハットを被った男に話掛ける。黄色い女の子の妖精の言葉に反応したのは、紫色のスーツを着た髪の色も紫色の紫縁眼鏡をかけた妖精だ。
「おんやっ!ソイソース君。これから仕事です。隠れても良いですが、誰も探しに行きませんよはい」
「chefアランギー。ごめんなさい」
「chefアランギー。黄龍は居ないみたいよ」
「オムレットさん。妖精のお仕事を呼んだのは、黄龍ではありませんですよはい」
「chefアランギー。そうなんですか?」
「chefアランギー。ちんちくりんな組み合わせの3人がいるよ」
妖精の1人。白色のスーツを着た髪の色も白色の妖精が泡だて器を片手に、シェフハットを被った男に話掛けた。
「おんやっ!メレンゲ君。御客様に対して失礼ですよはい!・・・・・・おんやっ!神と精霊と人間。また随分と確かにヘンテコですなぁ~はい・・・・・・あっ!えぇ~ゥオッホン。これは失礼しましたはい」
シェフハットを被った男と、5人の妖精は深々と頭を下げた。
「皆さんは、いったい?」
「おんやっ!知らずに呼んだ訳ではありますまいはい。・・・・・・おんやっ!本当に知らない様ですね。然らば、フレンチからイタリアン、トルコにアラビックにラテン、和食に中華にエスニック。コルト下界の古今東西どんな料理でもお申し付けください。精霊式会社『ケータリングサービス・妖精のお仕事』の代表アランギーと申しますはい。そして、料理の妖精達で、メレンゲ。オムレット。ソイソース。アメール。スコォーチュですはい。以後御贔屓にはい!」
「妖精のお仕事の諸君久しぶりだね」
「あれれぇ~・・・chefアランギー。黄龍で僕達を呼んだのは、遊びの神様だぁ~」
「オムレットさん。あの光は黄龍ではありませんよはい。・・・・・・おんやっ!おんやっ!運の女神様・・・おかわりなくお元気そうで何よりですはい」
「アランギー。君、忘れていたのよね?」
「・・・ノンノン最後に会ったは・・・数億年前。再会が信じられなかっただけですはい」
「まぁ~いいやね。アランギー。連れを紹介するね。人間種と精霊種の夫婦で、夫の方はロイク。妻の方はマルアスピーだね。夫は創造神とあたしの眷属だね。凄いだろう?妻の方は精霊樹の大精霊だね」
「女神様。彼等は?」
「ロイクにマルアスピー、紹介しよう。彼は、アランギーと言ってね。そうだねぇ~・・・簡単に言うと料理の神だね」
「えっ?料理にも神様は存在してるんですか!」
「おんやっ!ロイクにマルアスピー。私の事は神では無く、chefアランギーと呼ぶ様にはい!」
「は、はぁ~・・・」
「さぁ~自己紹介も終わったね。昔みたいに楽しもうじゃないかね」
「おんやっ!良い提案だはい。それなら、お前等料理を始めるぞぉ~厨房と恋愛開始だぁ~はい」
「ウィーchefアランギー」(5人の妖精)
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――― 同じ場所
――― 6月4日 15:20
俺と、マルアスピー様と、女神様は、料理の神様chefアランギー様が準備してくれた、即席とは思えない大理石の床に柱。洗練されたテーブルにカトラリーとルヴェール。宮殿さながらの優雅で上品な空間に演出されたプラスで、chefアランギー様に給仕していただきながら、料理を待っていた。
「女神様。これってどういう事でしょうか?」
「昼食を待ってる様にしか思えないが、ロイク。君は何か違う様に感じるのかね?」
「いえ、席に座って料理を待ってるって、俺も思いますが・・・どうして、ここで、こんな感じで、こんな事になってるのかなと思いまして・・・」
「昔懐かしの『ケータリングサービス・妖精のお仕事』を呼んだからだね」
「呼んだって・・・まさかですけど」
「そのまさかだね。精霊石と竜の宝玉は、中空の避暑地に幾つかあるケータリングサービスを呼ぶ道具だね」
「麒麟の角や精霊の涙で、精霊石を作って・・・創造神様からのメールに従ってこれですか・・・」
「ケータリングサービスの中でも、アランギー率いる妖精のお仕事は5つ星だね。期待を裏切らないね」
「・・・いや。そういう意味では・・・」
「フフフッ。ロイクは難しく考え過ぎなのよ。今は料理を楽しんで、次の事は次に考えましょう」
「疑問だらけで・・・」
「ロイク。君の疑問を解決してあげよう。これでもあたしは女神だからね。たまには迷える者を導いてやるとしようかね」
「はぁ~」
「竜の宝玉には、黄・蒼・紅・銀・驪の5つがあるんだね。ケータリングサービスのランクを神々は投票で何年かに1度行っていてね。コルト下界とこの世界が横陽、縦陽と呼んでいる世界。この3つの世界を中心に営業しているのが、アランギー率いる妖精のお仕事なんだね」
「はぁ~・・・」
「アランギー率いる妖精のお仕事を呼ぶには、今あげた3つの世界で、黄龍の鱗を切る必要があってね。黄龍は数億年前に姿を消してから誰も見てないね。鱗も何処かに無くしたね」
「はぁ~・・・」
「流石は創造神だね。まさか竜の宝玉・黄と、麒麟の角と精霊の涙で進化した精霊石を使って、黄龍の鱗を即席で完成させるなんてね」
「俺達って、chefアランギー様を呼び出す為に、精霊石を作ってたって事ですか?」
「創造神からの結婚の祝いだろうね。ここの料理は何度食べても飽きないね。数億年食べて無いがね」
「おんやっ!運の神よ。味は補償しますはい。しっかし、黄龍の輝きにしては、鈍い様な気がしたのはその為だったのですねはい。7億年以上もこちらの世界に呼ばれる事がありませんでしたはい。この下界ではニーズにお応えする事が出来ず呼ばれる事が無くなったのだと勘違いしておりましたはい」
「アランギー。黄龍の事を知らなかったのかね?」
「お恥ずかしい限りです。ですがこれを機に、また、この下界でも稼がせて貰いますよぉ~はい。手始めに・・・」
料理の神様chefアランギー様は草原を見回す。
「おんやっ!暫く見ないうちに自然豊かな野原になってしまった様です・・・はい」
「それは安心すると良いね。ここに居るロイクがここに家を建てるそうだね。昔みたいに賑やかになるね」
「えっ・・・あっ・・・いや・・・」
「良かったわね。こことコルト湖湖畔に家を持つなんて贅沢が出来て」
「贅沢ですか?自分自身がドンドン人から離れて行くそんな感じしかしませんが・・・」
「気のせいよ。私がいるもの」
「・・・そうですね・・・」
「フフフッ」
「中空の避暑地に家を・・・素晴らしいですはい。それでしたら、種を越えた結婚のお祝いと、元ですが中空の避暑地に家を持つ最初の人間種へのお祝いを兼ねましてはい。精霊式会社『ケータリングサービス・妖精のお仕事』の無料ケータリングサービスチケット悠久版を差し上げましょう」
「無料で悠久って、ずっと無料になっちゃいますが・・・」
「おんやっ!ずっと無料ですはい」
「良いんですか?」
「おんやっ!お祝いの品としては御不満ですかはい」
「いえ、俺には凄過ぎる物なので、寧ろ恐縮してしまって」
「そんな事はありません。無料ケータリングサービスチケット悠久版の裏をお読みくださいはい」
「裏ですか・・・」
俺は、無料ケータリングサービスチケット悠久版の裏を呼んだ。
***悠久版の説明***
【無料ケータリングサービスチケット悠久版】
発行番号【1】
≪神の誓い六か条≫
①どんな時でもお食事の御用意を致します。
②どんな時でもお茶の御用意を致します。
③どんな時でもお菓子の御用意を致します。
④どんな時でもお給仕に責任を持ちます。
⑤どんな時でも炊事場を清潔に管理致します。
⑥無料期間終了の際は事前にお知らせします。
≪神との誓い六か条≫
chefアランギーに対し、
①コルト下界での拠点の提供を誓約します。
②コルト下界の食材の提供を誓約します。
③コルト下界の進化料理の提供を誓約します。
④月に1回試食会を、拠点で催し
御客様との親睦の場の提供を誓約します。
⑤5人の妖精に住まいの提供を誓約します。
⑥主の出席の有無は気に致しません。
≪妖精達の誓い三か条≫
①居住地と敷地内の管理に責任を持ちます。
②夜仕事をしている時は覗かないでください。
③甘い物は別腹です。
尚、神の誓い六か条第六項をお読みいただき
ました時点で、【装備者指定武具】が機能致します。
***悠久版の説明おわり***
「おんやっ!はい、これからお世話になりますはい。それでは、食事の御時間ですはい」
「えっ?これって・・・」
≪パンパン
chefアランギー様は、手を二回叩いた。
俺達は、妖精達が作るコース料理を、優雅な空間と大自然に囲まれながら楽しんだ・・・俺は、状況を理解しきれず、余り味を覚えられませんでした。
・
・
・
***ケータリングサービスのランク***
五つ星:黄竜の鱗 営業場所:下界3
精霊式会社『妖精のお仕事』
四つ星:驪竜の鱗 営業場所:魔界
暴飲暴食肉料理専門『魔界のお仕事』
三ツ星:白竜の鱗 営業場所:神域神界
神の新風野菜料理専門『神界のお仕事』
三ツ星:紅竜の鱗 営業場所:下界5
精霊式会社『精霊王の食卓』
三ツ星:蒼竜の鱗 営業場所:神界魔界
神式会社『入れ食いのお仕事』
***ランクの説明おわり***
料理の神様chefアランギー様の【装備者指定武具】は、半ば強制らしい。6月4日、俺は、ケータリングサービスという名の住み込みの妖精達をGETしました。