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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-23 メアと帰還者とコルト④ 竜王クロージャ心の声①

―――――――――――――――――――――――

★メア(亜)下界★

 歴:創生1316656489年2月7日

 時:5時30分頃(午前)

☆コルト下界☆

 歴:R4075年10月12日

 時:11時30分頃(頃)

―――――――――――――――――――――――


 六の月ズジランが東の空に昇り始めてから三十分程経ったが 竜王クロージャはまだ空を眺めていた。


 もし、我々だけであったなら。もし、神王国の市民(帰還組とその子孫)がいなかったらと思うとゾっとする。


 最強の名を欲しいままにしていたはずの我々が、この世界では弱者の中の弱者とはな。


 食べる物、着る物、彼等なしでは半日ともたずに全滅していた。


 武器など不要。我々には鍛え抜かれた筋肉。竜騎士の誓い不屈の精神。そして相棒がいる。

 一騎、一師団(クロージャにとっては一万位)二師団とも恐れられていた我々が、島魔兎(アイランドバニー)程の大きさしかない獣に為す術もなく敗れ捕食されそうになるとは。


 ここが、この世界のどの辺りなのかは分からないが、我々が分隊(十騎)で挑み敗れたあの獣は、この世界では最弱の魍獣(もうじゅう)の一種で赤砂小鹿(レッドデザートレー)と呼ばれ、子供でも余裕で一人で狩れてしまえる菓子程度の獣だった。

 戦闘に特化した種族の子供達が大人達と共に食料と毛皮の調達に出かけ、両手に赤砂小鹿(レッドデザートレー)を持って笑いながら戻って来た時は言葉を失った。

 戦闘が苦手な種族の子供達が大人達と共に果実と野草と薪の調達に出かけ、赤砂小鹿(レッドデザートレー)を抱えて戻って来た時はゾっとした。

 聞けば、彼等の子供達(子孫)は神王国に居た時から一般の市民達より遥かに優れた身体能力を持っていたそうだ。


 非常に情けないこの状況。


 神王国の国民を、旧教の魔の手から救い出す、解放する。と、宣言し。一度も戦うことなく占領したことで、いつもの如く敵は恐れをなして逃げた、これが現実だ。これが我々ドラゴラルシム竜王国の竜騎士隊だ。と、信じ切っていた。


 だが、…………。


 彼等の多くがもともとこの世界の住人で、あっちの世界では能力を隠し目立たぬように暮らしていた。

 彼等はこっちの世界に戻ったことで本来の力を取り戻したと言っていたが、あっちの世界にいた時から我々より遥かに強靭だった。


 彼等に守って貰わなければ生きながらえることすらままならい。救って貰っているのは我々の方ではないか。


 あの白い光の規模がいったいどれ程のものだったのか全く分からなんが、合流した者達と市民達からの情報(「南に森が見える」我々には見えず飛翔し確認した)を推測するに、大寺院から半径四十キロメートル弱は巻き込まれた。

 ドラゴンでも越えられぬ北に聳える山脈の向こう側に本陣の兵士達は間違いなくいる。


 だが、手段がない。


 高過ぎて越えられぬ山。岩肌が剥き出しになった赤い山。食料を彼等の狩猟と採集に水を彼等の魔術に頼っている状況で山越えなど出来るはずもない。


 我々同様に彼等の近くにも市民達(帰還者達)がいてくれることを願うばかりだ。


 偵察用に、神王教王派の連中にフライングドラゴンを貸し出したが東西南聖か邪か今以上に事態が悪化しないことだけを願う。


 神フォルティーナ様よりレンタルしたフライングドラゴンを最悪潰すことになってしまうが。命あってこそ、背に腹は代えられぬ。


・・・

・・


「クロージャ様」

「なんだ」

「北の空が燃えています」

貴重な時間をありがとうございました。

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