6-15 白光の夜の真相を求めて⑥ 神様集合、そして神頼み①
―――R4075年10月13日(地)9時頃
アシュランス王国・王都スカーレット
グランディール城・国王執務室―――
記憶と調査結果を公開した日から三日が過ぎた。
公開は一部のみだったが関係各国には十二分に激震だった。
半径六十キロメートル圏内という尋常ではない範囲規模の転位移動(以後、本作では転位と表記)。
しかも対象は範囲内に存在する生命ある者全て、花も草も木も虫も魚も獣も根こそぎだ。
何処に転位したのか調べるにも、原因となった魔力陣も一緒に転位してしまい調査のしようがない。悪用していたであろう教王庁旧教の幹部や神王一族も一緒に転位してしまい聞き出すこともできない。
神授スキル【タブレット】で検索してみたが該当結果はなし、0件だった。
兵士達に支給したIDタグや装備品一式には【リュニックファタリテ】を付与してある。
登録した所有者が生きているのなら、所有者の下へ強制的に戻る。死亡したり放棄したのなら、共有する俺の下へ戻り強制的にタブレットに収納される。
だが、不思議なことにオートで戻る機能が作動した形跡はない。
市街地や船上に置き去りにされたIDタグや装備品一式をタブレットで強制回収し状態を確認した。
変更はなし。登録した名前が消えていないということは、つまり所有者達は生存しているということになる。
生きているのに戻っていない。
製作者としてこの結果には納得がいかない俺は、一つの結論を導き出した。
それは、更なる研究と精進。
だが今は、製作者としての些細な機微など気にしている時ではない。
彼等は生きている。何処かで生きている。神授スキルが生存を肯定し存在を否定しているこの状況の方が問題だ。大問題だ。納得のいく答えが欲しい。
「...... ~ ......という訳で集まっていただきました」
「……あたしは忙しいね。ロイク、ぶっても良いかね?」
「おんやパトロン殿よ。聞きたいこととは先日のことでしたか。はい」
「人間にしては...... ~ ......そんなつまらないことで呼び付けたのか? 流石に怒るぞ。キューンキューン」
「家畜が一匹もいーひんようになってもうて、うちも困っとったんどす。何とかならしまへんかね?」
「主殿。先日まで聖獣程度でしかなかった私にはお役に立てることが何も……誠に誠に申し訳ございません。このエリウスお望みとあらば」
「うるさいね」
「この、はっ。フォルティーナ様の仰せのままに」
「眷属ロイクよ。...... ~ ......バハムートはそれに拘束されておっったのであろう。バハムートは呼ばぬのか?」
「ロザリークロード、お前はいったい何を言ってるね。自身を良く視るね。お前が眷属だね」
「は?」
「僕凄い久々の……呼ばれたの初めてじゃないかな?
ここマーキングしておきたいから改めて名乗らせて貰うよ。
僕は葛藤と省思、苦悩を司る神イエレミーヤ。
これでも一応、上級神三級の神格だけどフレンドリーで構わないよ」
「お世話になっております。おかげ様で所属する神獣達の健康状態も頗る良く感謝しております。
私も影が薄くなって……薄いと常々感じておりましたので改めて名乗ります。
私はロイク様専属筆頭執事兼ルーリン・シャレット家終身家令(総支配人)兼、神獣カフェ・ドームココドリーロ終身オーナー兼名誉マネージャ兼代理ウェイター兼臨時ケアーテェイカーの神獣種神鰐類大鰐種クロコダイアン。
下級神三級の神格位を有しておりましたが、先程ロイク様より下級神一級を賜りましたので、下級神三級の神格位をロイク様にお預けし、現在は下級神一級の神格位を有しております。今後とも執事家令オーナーとして気張らず頑張らず気楽にやって参りますので宜しくお願い致します」
「最近忙しくて神だったことを忘れていましたわ」
地下0階の先にある温泉宿の前大女将で冬の女神プリュネ様じゃなかった、改め世界創造神様公認の俺の奥さん達の専属セルヴァント兼ルーリン・シャレット家筆頭セルヴァントキャピテーヌのウーメ様。
「私もです」
地下0階の先にある温泉宿の前女将で夏の女神バンブー様じゃなかった、改め世界創造神様公認の俺の許嫁達の専属セルヴァント兼ルーリン・シャレット家筆頭セルヴァントオフィシエのターケ様。
「私も」
地下0階の先にある温泉宿の前若々女将で春の女神オルキデ様じゃなかった、改め俺の家族の専属セルヴァント兼ルーリン・シャレット家筆頭セルヴァントプロキュルールのラーン様。
「え? 私は忘れて無かったわよ」
地下0階の先にある温泉宿の前番頭で秋の女神クリザンテム様じゃなかった、改めchefアランギー様の一番弟子兼ルーリン・シャレット家の副料理長兼間食責任者兼通常食材管理兼高級食材探求管理のキーク様。
貴重な時間をありがとうございました。