6-10 白光の夜の真相を求めて④【大黒柱】の記憶②
―――白夜の夜の怪事件の経緯。
詳細な時系列はタブレットが編集したから。
日時:10日(大樹)ー 00:07:57
記憶:ガルネス大寺院大黒柱
少し離れた闇の中に薄っすらと浮かび上がった光は、大黒柱へと近付いて来ているようだ。
――― 00:08:44
光の正体は、正門の記憶で見た、闇夜に紛れる気のないカラフルな集団が掲げる松明だった。
「オデスカル枢機卿猊下。何やら騒がしい集団がこちらに向かって来ているようです。如何致しますかな」
「た、松明、だと、……あ、あやつらは阿呆か馬鹿か何かおかしな者の生まれ変わりか? 最早この地は聖地ではないのですぞ。唯一の神、世界創造神様の御意思御意向を没却し我等が世界創造神創生教を涜聖した背教者共が巣窟なのですぞ」
「グチグチ五月蝿い男だね、向こうから来たって事はだよ枢機卿院の指示通り紅権鞠御門(正門)から無月の回廊を抜けて天中殺どきには間に合ったってことさね。この際、格好なんかどうでもいいよ。気にしていられる立場じゃないよ」
「お前達静かにしないか。水泡に帰し責任を負うのはお前達なのですよ。見つかったらどうするのですか」
「猊下は?」
「オデスカル枢機卿猊下!?……待、あとは待つだけですからな」
「そそそその通り。馬鹿でも阿呆でも、に、贄は贄。あとは発動に必要な地属性の魔力の到着を待つだけ。失敗はありえませんですぞ」
「期待していますよ」
――― 00:09:37
二十本もの松明を掲げ。ガシャガシャと武具を鳴らし。バタバタと足音を響かせ。
兎に角目立つ、闇夜に紛れる気のないカラフルな集団。
何故、この途轍もなく目立つ集団がドラゴラルシム竜王国の竜騎士隊に気付かれないのか疑問だ。
そして、気付かないのは非常に大きな問題だ。
カラフルな集団は大黒柱の手前(大穴側ではない方)に立つ次期枢機卿らしい大司教の前で立ち止まる。
松明の灯りのおかげで折角ハッキリ見えるのに、怪しい四人組は後ろ姿を晒すのみ。
「大司教猊下。教王庁警備局シュバルツ神都第四予備連隊第九臨時補佐分隊予備役招集小隊所属第一心得隊及び第二心得隊及び第三心得隊及び...... ~ ......及び第十三心得隊九十九名。枢機卿院の要請を受け教王院より馳せ参じました。私は心得隊の指揮を任されましたポーンゾウシン子爵家四男ベジヒア・ポーンゾウシン。こちらは副官のキルキシア」
「大司教猊下、お会いできて光栄であります。第十三心得隊の臨時隊長に就任しましたキルキシア・テル・プルブライと申します」
「ほうぉ―――、プルブライ教男爵家の方でしたか。……ライオシア卿は教王庁の方においでなのですかな?」
「父は神教王陛下のお傍を片時たりとも離れることはないでしょう」
「…………そ、そうでしたな。そ、それで、此度の件はライオシア卿からはどのように?」
「世界創造神様への感謝と神教王陛下への忠義を、国家のお役に立てる名誉をもって最後まで確実に遣り遂げろ失敗は赦されない。と。……数年ぶりに顔を合わせたのですが。父にしては珍しい物言いで送り出していただきました」
「そう、でしたか。いやはやいやはや、教男爵家の助力をいただけるとは、有難い限りです。教王院もやっと重い腰を…………おっと、これはこれは失礼を致しました。私は教院現第二十六席次期第二十三席枢機卿オデスカル。同志よ歓迎します」
「このベジヒア率いる心得隊にお任せください。必ずや大贄儀礼の間を奪還してみせましょう。大、猊下の大贄儀礼の間奪還のご英断に。敬礼!!」
敬礼と力強く言葉を発し姿勢を正したベジヒア・ポーンゾウシンという名の隊長と、挙手注目の敬礼をパラパラとバラバラに思い思いにとるカラフルな集団。
キルキシア・プルブライという名の副官は合掌し軽く頭を下げる。
「ふむ」
「「「うむ、うむ」」」
威厳を微塵も感じさせない怪しい四人組は、偉そうに頷いている。
後ろ姿しか確認できない状況なので何とも言えないが、リーダーのクレメンス・オデスカルだけは右手で答礼しているようにも見える。
右腕が少しだけ動いた気がする。
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それにしてもまさか、シュバルツの名前をこのタイミングで聞くことになるとはな。集団失踪に、こいつらが関わっているとみてまず間違いないだろう。
貴重な時間をありがとうございました。