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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
382/1227

6-8 白光の夜の真相を求めて④【大黒柱】の記憶①

見えない体の暗闇シーン。

セリフ多目を意識している私にはハードルが・・・。

――― 29:59:19


 ワイバーンありきの竜騎士隊と言ったところだろうか。

 二人一組二十四人の兵士達が暗闇の中を統率も灯りもなく駆け回っている。


 ドラゴは暗闇の中でも目がそれなりに見える。俺達ユマンよりはという注釈が付く程度らしいのでそんなに凄くないらしいが……。


 光る眼の位置と数と会話と足音で、兵士達が何処にいるのか正確に把握出来てしまえる状況だ。


 探している側なので問題はないと思うが探されている側には非常に都合が良い状況だ。


 その探されている側怪しい四人組はというと、あちらこちらで響いている兵士達の会話と足音に警戒しながら大黒柱の大穴側に体を密着させやり過ごそうとしているようだった。


 聞こえて来る声の距離から大黒柱の直ぐ傍に身を隠していることが窺えた。


 怪しい四人組のやりとりから判断するに、リーダーは旧教の次期枢機卿で今はまだ大司教のクレメンス・オデスカルという人物だと思われる。

 何処かで聞いた事があるようなないような名前だ。


 …………思い出せないということはそんなに重要じゃないってことだろう。


 怪しい四人組の唯一の女性は、ジュスティンヌという名前のようだ。クレメンス・オデスカルとは別の男性二人にそう呼ばれていたし間違いないだろう。


 しかし、女性の歳への拘りは…………なかなかに恐ろしいものがあるな。


 怪しい四人組の他二人に関しては今のところ情報は何もない。


 疑問は沢山ある。

 例えば、大黒柱は太くて立派だが、四人が身を隠せる程ではない。いったいどうやって身を隠しているのだろう。

 とか。

 例えば、贄が到着するとはどういうことだろう。

 とか、色々ある。


――― 00(30):01:33

 十日へと日が変わって直ぐ。


「いたか?」

「いや」


「そっちはどうだ?」

「こっちにはいないな。そっちに逃げたのではないか?」


「いや、あっちから来たが、こっちには来ていないな」

「穴に、は、ありえないな」

「ハッハッハッハッハそれってユマンのオリジナル行動自殺とかいうネタだろが」

「宙に浮けるか、空を飛べるか、縄を使うか、落ちても平気なくらい丈夫にできてるか」


「だめだ、こっちにはいなかったぞ。うん? いったい何の話をしてたんだ?」

「いやな、大穴に飛び込んだ可能性はないかな?ないな!と話していたんだが」

「フッ、俺達でもこの大穴に落ちたらただではすまんのだ。ターゲットは胡散臭い生臭爺さん坊主と取り巻きの爺さんと口の悪い老婆だって話だ。もう死ぬしかないだろうが」


「うーんうーんうーん、だ、誰うーん……ん」


「「「なんだ?」」」

「あっちから、鉄蛙を踏み潰したような呻き声が聞こえなかったか?」


「ザブングランジー、ゲルドアドラドア、ジェストヴォイズ、リーンドバスティン。喋ってないで足を動かせ足をっ!」

「「「「はっ!」」」」


 兵士四人に、少し離れ場所から力強く大きな声で指示を出す兵士一人。


「でも、隊長。大穴と柱しかない闇の時間の廃墟のいったい何処を探せっていうんですか?」


 力強く大きな声の持ち主は、兵士達の隊長だった。


「熱感知も匂い感知もぉ―――あ?」

「スンスン……これって腐臭じゃないか?」


「食べ掛けの肉を五日以上放置した時の臭いに近いがまだいけるだろう、これは」

「クンクン、クンクン。巧妙に隠しているようですが間違いありません死臭です。隊長っ、陛下に報告した方が宜しいのではないでしょうか?」


「ゲルドアドラドア。リーンドバスティン。ザブングランジー。ジェストヴォイズ。気付いたようだな」

「「「「はい」」」」


「死臭はあの柱の向こう...... ~」

「ちっ、ばれてしまったようですね。仕方ありません、手荒な真似は性に合わないのでしたくはなかったのですが、贄が気持ち良く贄れるよう、導く者としてお膳立てしてさしあげましょう。懲らしめてさせあげなさい」

「はっ! 枢機卿猊下の御心のままにですぞ」

「暴力からは憎しみしか生まれず。こんな簡単なことすら理解出来ぬ愚かなる者達には意味をなさず。愛こそ全て愛の素晴らしさを説いたところで意味をなさず。無情ですな。何もなさず、何もなせず。ですが、私も愚かなる者達を導く聖職者の端くれです。だからこそ、愚かなる者達には己の死を持って償う償いの機会を場を与えたい。そんな聖人を思わせる私の心は最早聖人そのものですな。あぁ~世界創造神様、善行を徳を積み過ぎる私をおゆるしくださいませ。……さて参りましょうかジュスティンヌ、私は正面の兵士を相手します、貴女は右から来る兵士を相手してください。任せても大丈夫ですかな?」

「あいつ、あいつだけは、アンタ達にも渡さないよっ」


 ザッ。と、怪しい四人が地面を蹴ったと思われる音が響く。


「~......側から、北から来ている。巡回の兵士達に大至急伝えろ。怪しい四人組は、大穴の北側だ。副長」

「はっ」

「お前は大穴を右周りだ」

「はっ」


「他の者は全員私と左周りだ」

「「「「「はっ!」」」」」


「な?」

「は、え?」

「ちょ、え?」

「はぁ?」


 ザザァ―――。と、それなりに重さのありそうな何かが地面を滑り擦れるような音が響く。


「「「「う、う………・…」」」」


 暗闇に、老人の。怪しい四人組の呻き声が微かに聞こえた気がした。


「私に続けぇー!」

「「「「「「おぉー!」」」」」」


 暗闇に、兵士達の大きな声と足音が響き渡る。


 そして、兵士達が慌ただしく駆ける音が足音が遠のいていく。



――― 00:03:01


 兵士達の足音が完全に聞こえなくなる。


「早くどかぬか。…………我々、世界創造神創生教に歯向かう程の連中だと聞いて期待していたのだがな。実に残念だよ。あの程度の羽虫を私は自ら相手にしようとしていたとは、実に残念だよ」

「さようですね、猊下」


「オデスカル枢機卿猊下。これはどういう事ですかな? おっとこれは失礼いたしました。このコートはオデスカル枢機卿猊下のコートでしたかな」

「まぁ良い。それよりもだ、分からぬか? 奴らは我々に恐れをなし、さもそれらしい理由を付け戦わずして撤退した。ただそれだけのことなのだが、ふん、口程にもない奴らよのぉー」


「ついに蛮族の真似事がと興奮していたのですが残念ですぞ」

「ふっ、若いな」

「猊下には負けますぞ」

「若いって私を褒めても何にもやらないからね。私の物は私の物さ。で、いつまで私の上に乗ってるつもりだい。さっさとおどきっ」

「ゲッ、……これは大変失礼しました。ジュスティンヌの……貴女のおかげで冷静になれましたぞ」



 余談だが、微妙過ぎる展開に皆必死で沈黙を貫いていた。

貴重なお時間をありがとうございました。

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