6-5 白光の夜の真相を求めて④【裏門】の記憶
―――白夜の夜の怪事件の経緯。
詳細な時系列はタブレットが編集したから。
日時:9日(闇)ー 29:38:21
記憶:ガルネス大寺院裏門
「うっぷ。うぇーい…………飲み過ぎちゃったんだなぁ~これがっ、うっぷ……うぃ……あぁ―――おぇ」
夜更け、怪し過ぎる一人の男が裏門を警備する兵士四人に嘘臭過ぎる千鳥足で近寄って来る。
正門の記憶で見たばかりの怪し過ぎる男? イヤ、時間的に無理がある。
「何だ酔っ払いか」
「そうだな、酔っ払いだな」
「好い気なもんだな」
「だな」
「おっ、おぉお、お勤めぇー、ごぅ苦労ざ、うっぷ、までありぁす。みにゃんにゃんざうっぷ……まは、ドドドドゥラゴラルシムリョーオーごぐの兵だいざ、うっぷ……まだじです、うっぷ、あぁー気持ちわり吐きそ……ちょっとここで失礼して、う、うっ、うぇ」
「お、おい。ここは邪教とはいえ寺院の裏門だぞ。やるなら、向こうの木の陰にしろ」
「む、向こうでず、うっぷ、おおぇ」
「それよりもだ、おい酔っ払い。どうして俺達がドラゴラルシム竜王国の栄えある竜騎士隊だと知っている」
「……う……っぷ、み、見れば……一目見れば誰でも直ぐに分かるわ、分かる? 位有名で、です。うっぷ」
「そうか」
「はい。おぇ」
「そ、そうなのか?」
「そうなのか?」
「俺達って意外に有名なのかもしれないぞ」
「だな」
「でもおかしくないか? 騎竜もいないのにどうして俺達が竜騎士隊だって分かったんだ?」
「そうだな、おかしいな」
「騎竜は目立たないように庭園に張った野営地で休んでるはずだしな」
「だな」
「……さ、先程、そ、うっぷ、そちらの兵隊さんが、竜騎士隊だと……いっぱい飲み過ぎちゃったんだなぁーもう、何だか難しいことは、覚えてましぇんっはい、ずびませんうっぷ」
酔っ払いの芝居が雑過ぎる怪し過ぎる男。
「言ったか?」
「言ったかもな」
「言ったな」
「だな」
引き続き騙され続ける兵士四人。
「それにしてもおかしな寺院だよな」
「何がだ?」
「そうか?」
「だな」
「だってさ、正門より裏門の方が大きいって、変じゃないか?」
「変なのか?」
「そうか?」
「だな」
「あ”ん(怒)!?そ、そんなこ……おぇ。ガルネス大寺院の正門はですね。教王陛下、神王家の御家族様方、枢機卿猊下、大司教猊下、教貴族閣下、世界創造神様によって宣託され現人神殿上人に成られた方々の為の門なのです。うっぷ。ここ裏門は世界創造新神様の御慈悲を我々のような下々の末端までぇ―――あ、おぇ、うっぷ、おぇ、の、飲み過ぎちゃって、何が何やら、……ここはぁ~何処でしゅかぁ~、うっぷ」
「足掻き省み今を必死に生きている者達の為の門、それが裏門という訳ですか。奥が深いですね」
「そうだな、奥が深いな」
「邪教だけどな」
「だな」
「あっ、お……ワイ、ワイバーン見てみたいなぁー、こ、この中にいるのぉー」
最早、酔っ払いの芝居などどうでも良いらしい。幼児退行した者を小馬鹿にするような雑な芝居を始めた怪し過ぎる男。
「おい、こら勝手に入るな」
「そうだな、勝手に入るな」
「吐き気はおさまったのか?」
「だな」
裏門を千鳥足で潜り抜けようとした怪し過ぎる男を取り押さえる兵士四人。
「……だ、ダメなのぉー、うっぷ。……で、でも僕、ワイバーン見たい、ワイバーン見たい、ワイバーン見たい、うぃ、あ…………吐きそ」
「ちょ、ちょっと待て、離れるから、ちょっと待て」
「そうだな、離れた方が良いな」
「離す。離すから、もう向こうの木の陰でしろとは言わん、その壁の陰で構わんから、もう少し我慢しろ」
「だな」
「うっぷ、わーい」
芝居が中途半端な怪しい男は、良く分からないキャラで押し切るつもりのようだ。
兵士四人に見守られながら、怪し過ぎる男は千鳥足で裏門を潜り抜け壁の陰に姿を消す。
「お、おいこら。そっちじゃない、外壁の方だ」
「そうだな、外壁の方だな」
「一般人を入れたらまずいよな?」
「だな」
「「「「連れ戻すぞ」」」」
――― 29:41:44
裏門を警備する兵士がいなくなる。
――― 29:43:18
闇夜に紛れるつもりはないようだ。光沢のある高級そうな白いローブを頭から被った物凄く目立った集団が旧教の祈りの言葉を大合唱しながら裏門へと列を成し歩み寄り侵入を開始する。堂々と裏門を潜り抜けたのは、二百十六人。
――― 29:51:41
遠くから話し声が聞こえて来る。
「満足したか?」
「うん、僕、満足した」
「ワイバーン見たの内緒だからな」
「はーい」
「そうか、そうか。俺達がドラゴだからドラゴラルシム竜王国の竜騎士隊の兵士だと思った訳か」
「うん、僕ね、見た瞬間に分かったよ。あっ、ドラゴラルシム竜王国のとっても強くて勇敢な竜騎士隊の精鋭さん達だってね」
「だな」
「だね」
怪し過ぎる男は、子供キャラに落ち着いたようだ。裏門を警備する兵士四人と打ち解け戻って来た。
「それじゃーね。僕、家向こうで近いから帰るね。バイバイ」
「そうか、近いなら安心だな」
「そうだな、向こうが何処かは知らないが近いなら安心だ」
「もうこんなに真っ暗なんだ、気を付けて帰るんだぞ」
「だな」
怪し過ぎる男の姿が見えなくなるまで手を振り続ける裏門を警備する兵士四人。
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余談だが、ドラゴラルシム竜王国の英雄で軍務大臣のドラコと部下二人は羞恥と怒りの表情を浮かべ言葉を失い震えていた。
貴重なお時間をありがとうございました。