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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-2 白光の夜の真相を求めて②

誤字脱字は後日訂正修正します。

 図柄は、九十九点九九%一致した。魔力陣全体の二十九%分だけでしかないが成果としては良い方だと思う。


 見落としている何かがあるはずだ。

 俺達は大贄儀礼の間を手分けして手当たり次第に調べた。


 【形状記憶】と【形状復元】が付与された大理石(マルブル)の祭壇。

 【自然魔素(まりょく)透過・極小】と【自然魔素放射・極小】が付与された魔銀石(ミスリル)製の偽聖杯。

 天井に大穴が開いた際に落下し散らばったと思われる色々。


 そして、衣類。装飾品。靴。各種作業用の工具や文房具。装備品。髭。髪。貴重品。タグ。


「この手綱と鞍は近くに落ちてる竜鎧と竜兜の国章から察するに竜騎士隊の物かな」


 天上に開いた大穴から空を見上げ、そして祭壇へと視線を移す。


 雲一つない空に傾き離れ始めた二つの陽。幾重にも降り注ぐ柔らかな斜光が魔力陣が施されていたという床より少し高い場所にあるマルブルの祭壇へと伸びていた。


 創造神様の神授神託を騙り傍若無人悪逆無道の限りを尽くし人心を惑わし続けていた世界創造神創生教。


 斜光が降り注ぐ祭壇は美しくて、そして神々しかった。


「皮肉なものだな。ってこういう時の為にあるのかもな……」

「……」


 エリウスの視線を感じ。視線を合わせると逸らされた。


 何か言いたいことでもあるのかもしれない。が、常日頃から常に感じていると断言できなくもないので気にせずスルーする。



 小一時間程、調べてみたが成果は何も無かった。


「魔力陣の二十九%が九十九点九九%の確率でパマリ家の分家の紋章と一致するってことしか分かりませんでしたね」

「「「はい」」」

「現場にいたにも関わらず何一つお役に立てず申し訳ございません」

「……」


 エリウスが何かを言いたそうにしている。スルーするのもかわいそうなので声を掛ける。


「エリウス。今日は静かですがどうかしたんですか?」

「……はい。私は陛下の盾です」

「あ―――そうですね」

 前にそんなこと言ってたな。


「今朝の話なのですが、日課の早朝トレーニングをしていると、フォルティーナ様が陽も僅かな早朝だというのに御見えになり」

「フォルティーナが起きてたんですか? へぇ~……天変地異とかないか。ハハハ」

「珍し過ぎて私も天変地異、いえ、自身の眼球を不肖にも疑ってしまいました」

「あぁ~それでか。あたしは睡眠朝食をこよなく好む女神だね。って、訳の分からない戯言(けいじ)をいつも宣ってるのに、今朝は元気におかわり三食完食した後ティータイムのスィーツを五人前以上食べてましたね。燃費の良さだけが売りだったのに遂に満腹中枢まで馬鹿になってしまったのかって……珍しく起きてただけだったんですね」


「……は、はい、珍しく覚醒していたのだと思います。そ、それでなのですが、トレーニングをしていると有難い御言葉をいただいたのです」

「ふむ」

 有難いねぇ―――……。


「エリウス、君は盾だね」

「は?」

「頭は大丈夫かね。いいかね、君はロイクの盾だね」

「はっ!」

「そして壁だね」

「か、壁ですか?」


 ヒュッ キーン


 フォルティーナが飛ばした小石をエリウスは素振り用の木の大剣で弾いた。

「エリウスッ!!!! 何をしているのです。貴男は壁なのですよ。壁が剣を振り石を弾きますか?」

「え?」


「壁が喋りますか? 考えるより感じなさい。つまり、最強の壁になるためには、壁の気持ち壁のそれにならなくてはいけないということだね。分かったかね」

「は?」


「それが、ロイクの盾。エリウス、君がロイクの最強の盾だという証。つまりはそういうことだね」


 ……相変わらず訳が分からん。

「つまり、フォルティーナに最強の盾は最強の壁で最強の盾になる為には壁を極めろって感じのことを言われたから今日は無言というか静かにしていたってことですか?」

「はい、陛下」


 う~ん。邪魔というかジワジワと来る地味な嫌がらせもここまで来ると最早才能だな。


「エリウス。エリウスが最強の盾になってくれるのは嬉しいです。剛毅木訥な姿勢も真摯で良いと思います。だけど、意思疎通というかコミュニケーションがあった上でじゃないと物理的な意味での最強止まりになってしまうと思いませんか?」

「は、はぁ……」


「物理なら結構何でも無かったことに出来るし、精神面で支えてくれる仲間が欲しい。ってのが本音です」

「…………心の盾、仲間ですか。……そういうことでしたらお任せください。このエリウス、陛下も仲間も皆の心を守る最強の盾になって御覧にみせましょう」


 フォルティーナの嵐からの地固め成功ってところか。


「然らば、先程より申し上げたかったことを。場の記憶を回収し確認した方が手早く確実ではないでしょうか。この場でしたら無傷の祭壇か偽の聖杯当りが宜しいのではないかと愚行致します」


「あ……」


 視線をエリウスからサラさんアリスさんテレーズさんサンドラさん、そして祭壇へと動かす。


 斜光に照らされ輝く真っ白なマルブルの祭壇と少し青みがかったミスリルの偽聖杯が、とっても眩しくて物凄く美しく見えた気がした。

本日も、貴重なお時間をありがとうございました。


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