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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
-スタシオンエスティバルクリュ編ー
37/1227

1-26 神獣カフェと、遊びの神様。

***********************

【タイトル】 このKissは、嵐の予感。

【第1章】(仮)このKissは、真実の中。

 1-26 神獣カフェと、遊びの神様(運の女神)

***********************

――― 東モルングレー山脈 中央部

――― 6月4日 13:05


≪ヒュゥ―――――――――― ゴゴゴゴゴッゴ ピュゥ――――― ゴゴゴゴ


 こんな所に、カフェなんて・・・


『それで、場所はここなのよね。次はどうするの?』


 待ってください。今、確認します。


 可視化:神獣カフェの紹介状の表と裏を表示 ≫


≪・・・表示しました。


≪ピュルルルルル ピュゥ――――― ゴゴゴゴゴゴ ビュゥ―――――――――


 えっとですね。紹介状を手に持ってると、見つけてくれるそうです。


『迎えが来るって事かしら?』


 さぁ~分からないです。


『この暴風は、風魔法で何ともなるのだけれど、高音と低音と残響音が耳障りで疲れるわ』


 そうですね。


『とにかく、早く見つけて貰いましょう』


 そうですね。


 神獣カフェの紹介状を取り出し ≫


≪・・・道具より神獣カフェの紹介状を取り出しました。


≪ピュルルルルル ピュゥ――――― ゴゴゴゴゴゴ ビュゥ―――――――――


 何も起こりませんね。


『そうね』



***********************

 R4075年06月04日(火)時刻13:10

***********************


≪ガチャ! カラーン カラーン 


 俺の目の前にドアが突然現れ、そのドアの向こうから二足歩行で歩く大きなワニが現れた。大きなワニは外の暴風に気付いたのか、怒鳴る様な大声で話掛けて来た。意外な程ダンディーな声で・・・


≪ピュルルルルル ピュゥ――――― ゴゴゴゴゴゴ ビュゥ―――――――――


「凄い風だぁっ!あぁ~取り合えず、ドアの中へ!」


 俺とマルアスピー様は、言われるがままドアの向こうへ移動した。



――― 神獣カフェ『ドームココドリーロ』


 中には、木と茶色を基調とした、清潔感溢れる落ち着いた空間が広がっていて、家具と観葉植物がセンス良く配置されていた。


「ロイで見かけたネコカフェみたいな所を想像していました」


「流石にそれは無かと・・・。神獣がネコみたいに店内を歩き回り、御客さんとじゃれ合ったりする姿を想像出来ないです。それに、神獣って御伽噺の中に出て来る精霊様や神様みたいな存在ですよね?」


「そうね。残念期待していたのに・・・」


 二足歩行のワニは、俺達の前までやって来ると、良く通るダンディーな声で丁寧に挨拶をしてくれた。


「神獣カフェ『ドームココドリーロ』へ、ようこそおいでくださいました。(わたくし)はオーナー兼マネージャ兼ウェイター兼ケアーテェイカー兼ココドリーロのクロコダイアンと申します」


「・・・えぇ・・・宜しくお願いします」


「ワニよね?」


「はい。ココドリーロのクロコダイアンと申します」


『ワニよね・・・』


 そうですね。


「初めてのお客様には、紹介状の確認をさせていただいております。右手に握り締めておられます紹介状を拝見しても宜しいでしょうか?」


「あ・・・どうぞ」


 俺は、紹介状を、クロコダイアンさんに渡す。


「紹介者様は、VVVVV(ヴイヴイヴイヴイヴイ)VIP会員様の世界創造神様ですね」


「だと・・・思います」


VVVVV(ヴイヴイヴイヴイヴイ)VIP会員様の御紹介ですので、ノーマルのVIPランクから開始させていただきます」


「ランクって何ですか?」


「世界創造神様から何もお聞きになっておられませんか?」


「はい」


「ドームココドリーロでは、初級の神獣カフェ10級『(ノーマル)ランク』。50年から100年の間に1000回以上通っていただいて9級『白黒(ゼブラ)ランク』。50年から100年の間に3000回以上通っていただいて8級『(ホワイト)ランク』。50年から100年の間に6000回以上通っていただいて7級『黄黒(ビー)ランク』。50年から100年の間に9000回以上通っていただいて6級『(イエロー)ランク』。200年間で26000回通っていただいて5級『赤黒(ルーレット)ランク』。300年間で39000回通っていただいて4級『(レッド)ランク』。400年間で52000回通っていただいて3級『青黒(カサネ)ランク』。精霊からの御紹介で2級『(ブルー)ランク』。神々からの御紹介で1級『(パープル)ランク』。世界創造神様からの御紹介でノーマルVIP『翠玉(エメラルド)ランク』。私の気分と偏見によりV・VIPへ昇格『(シルバー)ランク』。私の気分と偏見により昇格VV・VIP『(ゴールド)ランク』。私の愛と偏見により昇格VVV・VIP『白金(プラチナ)ランク』。私の愛と偏見により昇格VVVV・VIP『金剛石(ダイヤモンド)ランク』。幻のVVVVV・VIP『世界創造神様』となっております」


「尺度が違い過ぎますね。・・・それで、何が違うんですか?」


「10級から1級の会員様は、店内でのみ神獣達と戯れる事が可能となっております。VIP会員様は、店外での戯れも可能になってります」


「戯れ?」


「そうですねぇ~。人間種達の言葉にしますと、店内での戯れは回復や治癒や親睦を深める『癒し憩い』。店外のでの戯れは信頼を前提にした協力契約の関係【神獣召喚】ですかね」


「神獣召喚ですか・・・凄そうです」


「カフェよね?」


「御客様と神獣達が、戯れ楽しい時間を過ごす。疲れた心に憩いの一時を。ドームココドリーロはカフェでございます」


「メニューをお願いします。幾らなのか分からないと怖いですから」


「メニューですか・・・。残念ですがメニューはございません。また、当店のサービスは基本無料となっております」


「無料何ですか?」


「私は甘いお菓子と珈琲が良いわ」


「はい。お好みの子に、神気をチャージしていただく事で、基本無料となっております。えぇ~、甘いお菓子と珈琲ですね。ただいまお持ち致しますので、お好きな席で御寛ぎください」


 クロコダイアンさんは、店の奥へ歩き出す。


「チャージですか?」


 俺が話しかけると、その場で立ち止まり振り返りながら、


「神獣達の生命の源。食事でございます。・・・・・・基本無料なのですが、御利用いただくにあたり、サービス料を別途でいただいております」


「サービス料ですか?」


「はい。サービス料に関しましては、御注文いただきました甘いお菓子と珈琲を、先にお持ち致しますので、その後、説明させていただきます」


「ありがとうございます」


 クロコダイアンさんは、店の奥へ移動した。



「甘いお菓子って何が来ると思う?」


「クロコダイアンさんが作ってるんですかね?」


「う~ん・・・ワニよね!味覚が心配だわ」


「ワニですからねぇ~・・・」


「そうね」



「お待たせ致しました。当店のスペシャルブレンド『ドームココドリーロカフェ』と、たっぷりのメープルシロップに焦しバターの風味、温かいパンケーキ10段重ね。ほのかな酸味の果物。脂肪分控えめのホイップクリーム。当店の日替わりデザート『ドームココドリーロパンケーキ』でございます。お好みでメープルシロップとハチミツを更に上掛けしてお召し上がりください」


「凄いボリュームですよ。エクレアいっぱい食べた後で平気ですか?」


「これは、パンケーキというお菓子なのでしょう?平気よ」


「そういう意味じゃなくてですね。苦しくないんですか?」


「何を言っているの?エクレアとパンケーキは違うお菓子なのよ。まったく」


「そ、そうですね・・・違う食べ物ですね・・・」


 マルアスピーは、大きな口で、パンケーキを頬張る。


おいひぃー(おいしい)わよこれ!おいく(ロイク)も・・・一口食べますか?」


「俺は朝食とお茶でまで苦しいからいいや」


「そうですか」


 マルアスピーは、お菓子タイムを再開した。



「クロコダイアンさん。サービス料の件ですが」


「説明する前に」


≪コト コト


 クロコダイアンさんは、テーブルに2つ紅茶を置いた。


「これは、神域のハーブをブレンドしたハーブティーです。香りだけで味がありませんが、どうぞ」


「ありがとうございます」


 俺は、神域のハーブティーを口へ運ぶ。ローズにスリーズにパセリの様な香り・・・他にも柑橘系の香り・・・沢山の香りが広がった。


「何とも複雑な香りの紅茶ですね」


「香りだけで、驚く程に無味な紅茶です」


 俺は、1口飲んだ。


「鼻に広がる香りに対して、口の中はただのお湯ですね・・・」


「はい、神域で採れる食料は、この様に香りだけで味がしない物が多いのです」


「へぇ~」


「それでは、サービス料について御説明致します。あちらにレジカウンターがあります。レジの奥が雑貨コーナーになっておりまして、陳列しております商品を必ず1商品。金銭か等価の物で購入していだたき、それをサービス料として受け取っております」


「なるほど。等価の物で購入だと交換みたいな感じでしょうか?」


「当店と致しましては、等価交換を可能な限り希望致します。通貨はここでは使い勝手が悪い物ですから」


「神獣カフェで扱っている様な商品ですよね?俺が持っている物で等価な物って無いと思いますよ」


「先程お迎えに上がりました世界は、6000年前の記憶で曖昧ですが下界ですよね?」


「・・・たぶん下界なんだと思います」


「当店で等価購入の際に、最もレートの高い物が存在する世界ですので、コルト下界での等価商品の説明を致します。因みに、何か入用な道具や素材は御座いますか?」


「実は...... ......な、訳で、聖邪石を神獣石にする為に、麒麟の角が欲しいんですが、ありますか?」


「御座います。お持ち致しますので、少々お待ちください」


 クロコダイアンさんは店の奥へ移動した。


「ねぇロイク。折角だし、他にも見て行きましょうよ。下界には無い珍しい物が沢山あると思うのよね」


「もう食べ終わったんですか?」


「もうって、失礼しちゃうわ。私は早食いと大食いはしない事にしているのよ」


「・・・そ、そう・・・なんですか・・・?」


「えぇ~フフフッ。この珈琲凄いのよ」


「凄い?」


「甘くて、苦くて、酸っぱくて、しょっぱいの」


「珈琲って言うんですかね・・・それ・・・」


「スペシャルブレンド『ドームココドリーロカフェ』って言っていたわよ」


「そうですけど」



「麒麟の角をお持ち致しました」


 クロコダイアンさんが押して来た、目の前のワゴンには、大量の角が入ったカゴが4つ乗っていた。


「微妙に違う見たいなんですけど、これは?」


「麒麟の角です。こちらの細長い湾曲した物は頭に生えている角で、こちらの太く立派な角は額に生えた角で、こちらの小さくて丸みのある可愛らしい角は鼻に左右4本ずつ並んだ8本角です」


「この黄金(おうごん)に輝いている角も麒麟の角なんですよね?」


「こちらも麒麟の角です。一度も力を発動させず神気を蓄えたまま抜け落ちた額の角で、麒麟の神角です。麒麟の額の角は1年に一度生え変わりますので、神獣の角としては割と簡単に入手出来ます。4つとも麒麟の角として取引されている素材でして、先程のお話ですとどの角なのか判断出来ませんでしたので全てお持ち致しました。どの角をお買い求めになられますか?」


『良い機会ですし、4つともいただいたらどうでしょうか?』


 お金よりも等価の物での交換が良いらしんですよ。それ次第です。


『お金なら金貨(ゴールド)白金貨(プラチナ)で沢山持っているのに残念ね』


 白金(プラチナ)は貴重な鉱物ですが、銅や銀や金は山を掘れば比較的何処でもも手に入る鉱物で、価値は微妙なんです・・・柔らかく加工しやすい素材なので生活道具に定着してるんですよ。


『知らなかったわ。ピカピカ綺麗な物だから使っているのだと思っていました』


「それで、如何なされますか?」


「あっ・・・。等価交換の物品のレートを先に教えて貰えますか?」


「うっかりしておりました。私とした事が・・・それでは、売店のレジカウンターまで一緒に来ていただけますかな」


「はい」



――― 神獣カフェ『ドームココドリーロ』

――― 売店 レジカウンター


 クロコダイアンさんは、ワゴンから麒麟の額の通常の角を1本取り出し、レジカウンターの魔導具に角を翳し、魔導具を操作する。


≪ピィ――― ピィッ 


 魔導具の手前に取り付けられている表示板に、500と数字が浮かび上がった。


「こちらの麒麟の角を10本お買い上げいただくには、500Kgの生肉が必要になります」



「はっ?」


「ですから、生肉500Kgです」


「・・・生肉ですか?」


「はい」


「どういう事でしょうか?」


「御存じありませんでしたか?・・・獣や魔獣を解体する際に、食料として切り分ける部位がございますよね。その肉の塊で、熱の通っていない新鮮な肉の事です」


『ワニだし、お肉が欲しいのよきっと』


 ワニだしって・・・


「それは、分かります・・・あの生肉で良いんですか?


「生肉じゃないとダメなのです。コルト下界の生肉は絶品ですから」


「・・・それで、生肉の肉は、何の肉でも良いんですか?」


「新鮮な物にこした事はありませんが、少しばかり腐敗している程度でしたら平気ですね。ただし、生肉である事が絶対条件です」


「何の肉でも良い訳ですね・・・それなら、それなりに持ってます。珍しい肉なら、大陸亀や(ドラゴン)とかもありますね」


「ド、ド、ドラ、(ドラゴン)の生肉をお持ちなのですか。来たぁ~超乗客ゥ~~~!あっ・・・御見苦しい所をお店しました。忘れてください。(ドラゴン)の肉をお持ちの御客様には、こちらのボードで御説明致します」


 クロコダイアンさんは、コルクボードをレジ台の上に2つ乗せた。


≪コルクボード1の内容≫

***********************


 当店での、(ドラゴン)の名称


 ≪(ノーマル)≫ D


 若竜(ヤングドラゴン)(YD)(ドラゴン)(D)老竜(オールドドラゴン)(OD)



 ≪下位種・亜種(サブスピーシーズ)≫ S


 若竜(ヤングドラゴン)(SYD)(ドラゴン)(SD)老竜(オールドドラゴン)(SOD)



 ≪上位種(ハイスピーシーズ)≫ H


 若竜(ヤングドラゴン)(HYD)(ドラゴン)(HD)老竜(オールドドラゴン)(HOD)



 ≪古代種エインシェントスピーシーズ≫ A


 若竜(ヤングドラゴン)(AYD)(ドラゴン)(AD)老竜(オールドドラゴン)(AOD)

 

***********************


≪コルクボード2の内容≫

***********************


 (ドラゴン)の生肉の価値 早見表

 ※好みと偏見。外とは異なります※

 ※(ドラゴン)の生肉100gの価値※

 ※例SD300gなら、8×3で24Kg※


 SD() < (25) < HD(60) < AD(90)


 SYD() < SD() < SOD(10)


 YD(15) < (25) < OD(35)


 HYD(50) < HD(60) < HOD(70)


 AYD(85) < AD(90) < AOD(100)


***********************


「最高レートはコルト下界にのみ生息している。AOD『古代竜エインシェントドラゴン老竜(オールドドラゴン)』の肉なのです。100gで100Kg分の肉として取引が可能です」


「AODは持ってませんが、上位種と通常の(ドラゴン)亜種(下位種)なら、いっぱい持ってます。・・・・・・そうですねぇ~欲しい肉を選んで貰っても良いですか?」


「構いませんが、生肉はどちらに?」


「ちょっと待ってください」


 可視化:対象:神獣カフェ『ドームココドリーロ』のオーナー兼マネージャ兼ウェイター兼ケアーテェイカー兼ココドリーロのクロコダイアンさん。常に見える対象に指定して問題ないか?常時 ≫


≪・・・更新しました。表示します。


 表示:10倍:今回限り。場所:俺の目の前(前方)80cm。 発動 ≫


「ほうぉ~人間種にテレビジョンの様なスキルを所持する者が存在するとは、世界創造神様からの御紹介者様は、流石に他とは違いますね。・・・はて・・・まだお名前をお伺いしておりませんでしたね」


「俺は、ロイク・シャレット言います。宜しくお願いします」


「私は、ロイクの妻マルアスピー・シャレットです」


「御夫婦でいらっしゃいましたか。それでしたら、ノーマルVIP会員様の人間種ロイク様のカードに、家族会員様としてカードを精霊種マルアスピー様に発行致します。改めまして、神獣カフェ『ドームココドリーロ』へ、ようこそおいでくださいました。それで、生肉はどちらでしょうか?」


 表示:所持している食料:生肉 ≫


≪・・・表示しました。


 肉の映像と共に名前や部位や量が浮かび上がる。


「ロイク様。(ドラゴン)種の欄をお願い致します」


「分かりました」


 表示:(ドラゴン)種の肉 ≫


≪・・・表示しました。


 クロコダイアンさんの尻尾が左右に大きくバサバサと揺れている。


「おぉ~素晴らしい映像ですなぁ~・・・心が躍ります」


『ワニの容姿でワンちゃんみたい』


 あぁ~確かにそうですね。


『可愛い』


 でも、・・・声はダンディーですよ。


『フフフッ』


「ロイク様。飛竜(フライングドラゴン)の・・・・・・おおおおおおお、す、素晴らしい雌と雄の生肉が分けられているなんて・・・しかも内臓まで・・・・・・ロイク様ぁ~!」


「ど、どうしたんですか?」


「毎日。いえ、3日に1度・・・いえ2日に1度のペースで構いません。神獣カフェ『ドームココドリーロ』に通ってはいただけませんでしょうか?私何でも致します」


「は?はぁ~?」


(ドラゴン)種の生肉だけでもこの品揃えです。他にも多種多様な生肉を揃えておられると確信致しました。まさに生肉の伝道師。ミッショナリーブッシュリーです。僭越ながら、(わたくし)クロコダイアンはロイク様を主と仰ぎ、執事として一生を捧げる事に致しました」


「は?」


『まだ、家も無いのに、執事が出来たわね』


 意味が分からないんですが・・・


『アンカー男爵家、パマリ侯爵家に子爵家でしょう、ブオミル侯爵家にいたあれよ』


 それは、分ります。突然執事になったとか、ワニが執事っておかしいですよね?


『そうかしら、犬や猫が執事ならともかく、ワニなら別におかしくないわよ』


 そ、そうなんですか?・・・


「ロイク様」


「は、はい何でしょう?」


飛竜(フライングドラゴン)の雌の内臓でお願い致します。亜種ですが、通常の(ドラゴン)のレートで計算します。いやぁ~雌と雄を分け、しかもこんな超レアな素材を大量に。素晴らしいですなぁ~・・・・・・麒麟の角ですが......


***麒麟の角の説明***


 ≪麒麟の角≫


 【頭部の角】80cm~120cm

 ※頭部の左右に、細長く湾曲した2本の角※

 ※1~3年おきに切断※

 【レート】

 1本:生肉40Kg

 【在庫】511本


 【鼻に並ぶ角】6cm~10cm

 ※尖った鼻の左右に4本ずつ、丸みのある角※

 ※定期的に生え変わる※

 【レート】

 1本:生肉8Kg

 【在庫】2009本


 【額の角】30cm~60cm

 ※額の中央に、太く立派な1本の角※

 【レート】

 1本:生肉50Kg

 【在庫】300本


 【額の神角】60cm~70cm

 ※1年間神気を蓄えた角※

 1本:生肉500Kg

 【在庫】17本


***説明おわり***


...... 全部で、飛竜(フライングドラゴン)の雌の内臓240Kgです。端数はサービス致します」


「全部って、この角全部って事ですか?」


「はい、何本必要になるのか不明な状態ですので、等価で生肉240Kgになりました」


「全部譲って貰って大丈夫なんですか?」


「はい。是非、等価でお願い致します」


『ねぇロイク。私達は(ドラゴン)の肉や血は消費しますが、内臓は消費しませんし、交換した方が得だと思いますよ』


 それもそうですね。内臓の使い道が出来て良かったのかもしれません。


『そうね。フフフッ』


「クロコダイアンさん。それでは、240Kg分の生肉・・・内臓を渡します。何処に出すと良いでしょうか?」


「私の食事用の銀の丼(シルバーボール)がございます。3つ持って参りますのでお待ちください」


 クロコダイアンさんは店の奥へ移動した。


 あれ、今って何時だろう?


≪現在の時刻は、13:10です。


『へんねぇ~』


 そうですね・・・神獣カフェに入った時と変わってない様な・・・


『えぇ』


 クロコダイアンさんが戻って来た。


「この銀の丼(シルバーボール)にお願いします」


「大きな丼ですねぇ~」


「そうですか?私の一食分です。小さい方だと思いますよ」


「そうなんですね・・・」


 道具:素材:食料:生肉:飛竜(フライングドラゴン)の雌の内臓を240Kg取り出し ≫


≪・・・道具:素材:食料から、飛竜(フライングドラゴン)の雌の内臓を240Kgを取り出しました。


 銀の丼(シルバーボール)3つの中に、なかなかどうしてグロテスクな物体が大量に現れる。クロコダイアンさんの尻尾は左右に大きく揺れ動く。


「ロイク様。商品は、こちらです。どうぞお受け取りください」


 俺は、麒麟の角を大量にGETした。


「クロコダイアンさん。時間の感覚がおかしいみたいなんですが、ここと外は何か違うんですか?」


「時間、時刻の概念をお持ちでしたか。神獣カフェ『ドームココドリーロ』は、神域に存在しております」


『世界創造神様の世界よ』


 なるほど。


「ですので、眷属の神々が生活する神界。精霊が生活する精霊界。人間種達が暮らす下界。他亜空。様々な世界から御客様が来店します。其々の世界の時間の流れに合わせ神獣カフェ『ドームココドリーロ』を管理運営する事は非常に困難でございます」


「良く分かりませんが、だと思います・・・」


『分からないのに納得しちゃダメよ。フフフッ』


「ですので、世界創造神様のお力で、この神獣カフェ『ドームココドリーロ』でお過ごしになられた時間は、元の世界に戻った際に、経過していなかった事になっております」


「つまり、入った時間と出た時間が同じって事ですか?」


「左様でございます。私、そろそろ食事の時間にしたいと考えておりまして・・・」


「あぁ~・・・どうぞ。俺達は向こうの個室で神獣石を作ってます」



――― 個室


 俺とマルアスピー様は、神獣カフェ『ドームココドリーロ』の個室へ移動した。


「気になる事や物が沢山ありますが、今は神獣石を作ります」


「そうね」


 精霊聖・・・うん?聖邪石を取り出し ≫


≪・・・道具より精霊石・進化前を取り出しました。


「この聖邪石と、麒麟の角をどうすれば良いんだろう・・・」


「麒麟の角を聖邪石に」


≪トン トン


 マルアスピーが、麒麟の通常の額の角。麒麟の角の先端で、聖邪石を突くと麒麟の角は跡形も無く消えた。


「あら。角が無くなったわ」


「聖邪石の光が少し強くなった気がしませんか?」


「そうかしら・・・もう1本」


≪トントン


 角が消える。聖邪石の光が少し強くなる。


「もう1本」


≪トントン


 聖邪石は強い光に包まれる。暫くすると強い光は、青く透き通った石の中にそのままの輝きを閉じ込めた様に収まった。


「これ、石の中が陽の光の様に輝いているのに、外には光が漏れてないってどうなってるんですかね?」


「さぁ~?でも、麒麟の角3本で、神獣石になったみたいよ」


「・・・意外に簡単でしたね」


 俺は、神獣石をGETした。


「麒麟を探して、角を3本手に入れる手間が省けたのが大きいわ」


「そうですね・・・麒麟って何処に居るのかも分かりませんからね」


「下界ではないわね」


「・・・だと思いました。次は、マルアスピーが居るから簡単です。・・・泣いてください」


 神獣石を精霊石に進化させる為、次は、精霊の涙が必要だ。


「いやよ」


 あっさり拒否された。


「涙が必要なんです」


「悲しくないもの」


「そこを何とか、根性とか維持でお願いします」


「痛いのは嫌です。悲しいのも嫌です」


「それじゃぁ~どうするんですか?」


「私は悪くありません。笑わせてください。それでも涙は出て来ます」


「そんな事が出来るなら、俺はもっと楽しい人間として、世の中を明るく生きていたと思います」


「重いわよその発言。楽しくありません」


「楽しい話をした覚えはありません。・・・・・・仕方ありませんね。マルアスピー我慢してくださいよ」


 俺は椅子から立ち上がると、マルアスピーに腕を伸ばしながら近付く。


「な、何をする気?」


「大丈夫です。大丈夫ですから。痛くないですから・・・」


≪ムニュ ギュ―――


「にゃにしゅるのよ」


≪パコ


「いてっ」


「いきなり頬を抓る何て・・・」


「頭を叩かないでくださいよ」


「抓るから」


「あれ?どうして俺を叩けたんですか?」


「決まってるじゃない。私に酷い事をしたからよ」


「・・・そうじゃなくて・・・あぁ~今はいいや・・・・・・ん!今、良い方法を思い付きました。昔から人間に伝わる方法の1つで、大変疲れますが効果は絶大です。痛くありません。我慢してください。ですが、直ぐ終わるかはマルアスピー次第です」


 俺は、両手をマルアスピーの脇腹に伸ばす。次の瞬間。


≪コチョコチョコチョコチョ コチョコチョコチョ・・・・


 あれ?


「ねぇロイク。触りたいのなら、正直に言って貰えれば・・・」


「ち、違いますよ。・・・擽ったくないんですか?おかしいなぁ~それならもう一度」


≪コチョコチョコチョコチョ コチョコチョコチョ・・・・


「無理よ。私精霊なのよ。人間種達より神経が繊細に出来ている分。この程度の事には動じない身体なのよ」


「何ですか?その理屈・・・」


「でも、敏感な所は人間と同じよ。パフちゃんで実験したから問題ないわ!」


「何言ってるんですか?そ、そんな事、今問題にしてませんから・・・・・・あぁ~もう、マルアスピーはどんな時に涙を流したりするんですか?」


「そうねぇ~・・・・・」


「どうしたんですか?」


「何かしらね。くだらない事に体力を使ったせいか眠気が・・・」


「徹夜してたんですよね?」


「ベッドに横になったり、悪戯したり休むには休んでいたはずなのですが・・・フワァ~~」


「あ、涙!・・・マルアスピー動かないでください。」


 俺は、マルアスピーを抱きかかえる。


「え?何?」


 そして、人差し指で、マルアスピーの右目の目頭から涙を一滴、神獣石に移した。


「何、赤くなってるんですか?」


「何でも、ありません。もうぉ~・・・眠いだけです」


 彼女は頬を膨らませながら、胸の前で腕を組む。


 凝視・・・あっ・・・この距離だと谷間が浪漫が・・・


 彼女は眠そうにしながらも、優しく微笑んでいた。

 


「う~ん。ダメかも・・・一滴だけじゃ足りないのかなぁ~」


 現実は待ってくれない。神獣石は精霊の涙を与えたのにも関わらず反応しない。


「もう一度、欠伸して良いですよ」


「・・・何よそれ・・・ムードが台無しです」


「眠いんですよね?ムード何て気にせず、欠伸して良いですよ」


「もう眠く無いですぅっ!」


「その割には、眠そうですよ」


「・・・眠いけど目が覚めたんです!」


「滅茶苦茶ですね」


「良いのよ。フフフッ」



 マルアスピーが寝ちゃってから、涙を採取するしかないか・・・


「ちょっと、寝ている私に何する気なのよ」


 俺は、テーブルの上の神獣石を眺めながら思案していた。そんな、俺の腕にマルアスピーは夢と希望を押し付けながら寄り添っている。


「如何わしい事をするつもりはありません。気にせずどうぞ寝ちぇってください」


 彼女は俺の顔を覗き込む。


「ふ~ん・・・・・・馬鹿らしくなってきたわ。少し眠ります。悪戯する時は優しくお願いしますね」


「なっ・・・しませんから。そんな事」


「フフフッ。おやすみなさい」



 マルアスピーは、俺に寄り添いながら眠りに落ちた。


 しかし、どうした物かなぁ~精霊石にしないと次に進まないし・・・あっでも、ここに居る限り時間は進まない訳だし焦る必要はないのか・・・それなら、マルアスピーが起きてからもう1度涙を流して貰っても良かったのか!


 俺は、テーブルの上の神獣石を右手に取り、神授スキル【神眼】を意図的に上位発動させ、神獣石について読み解く事にした。


 精霊石って認識になってるみたいだけど、もしかして知らないうちに精霊石に進化しちゃったとか?


≪トントントン


「ロイク様。宜しいでしょうか?」


「どうぞ」


 クロコダイアンさんが、食事を終え、個室にやってきた。


「大きな精霊石ですねぇ~。食事をしている間に完成させてしまうとは、流石です」


「やっぱり、これって、精霊石ですよねぇ~?」


「立派な精霊石です。当店でも精霊石を取り扱っておりますが、3mm程の小さな精霊石です。それは、15mmから18mm位ありそうです」


「え?」


「15mmから18mmの大きな精霊石だと思いますよ。正確に計測致しますか?」


「ここの売店で精霊石って買えたんですか?」


「勿論です。売店に陳列してあります商品は全て売り物です。精霊石は3mmの物しかありませんが、1個生肉30Kg位だったと記憶しています」


 麒麟の角を買うより、精霊石を買うべきだったんじゃ・・・


「しかし、その精霊石は随分と輝きが独特です。麒麟の高貴な青。金剛石(ダイヤモンド)の様な光の屈折。精霊界で採掘される精霊石とは、質がかなり違う様です」


「もしかしてですが、精霊石って麒麟の角よりも割と簡単に手に入ったりしませんよね?」


「コルト下界で手に入る魔獣の核といったところでしょうか」


「それって、とても簡単に手に入るって事ですよね?」


「精霊界では簡単に手に入りますが、下界や魔界や神界では手に入れるが大変です。精霊界以外で精霊石を手に入れる為には、創造するしか無いですからね。創造の為には、神域か神界に存在する麒麟の角。精霊種の通常精霊以上の存在の涙。下界の水晶(クリスタル)金剛石(ダイヤモンド)。神気の他に、聖属性の清澄魔力が必要です」


「でも、ここで生肉40Kgと3mmの精霊石は等価購入出来るんですよね?」


「30Kgの生肉でお買い求めいただけます。・・・・・・神獣を愛する者が存在する限り、どの世界異界異空とも繋がる事が出来る。それが、神獣カフェ『ドームココドリーロ』です」


「・・・帰る前に、売店の商品を見て周っていいですか?」


「ええ勿論ですとも」


 神様。神獣カフェで麒麟の角じゃなくて、精霊石ってメールくださいよ・・・



「大きな精霊石に見惚れ忘れる所でした。ロイク様。会員カードをお持ちしました。奥様のカードも一緒にお渡ししても宜しいでしょうか?」


「は・・・はい」


「これが、神獣カフェ『ドームココドリーロ』のVVVV(ヴイヴイヴイヴイ)・VIPカードの金剛石(ダイヤモンド)ランクです」


「あれ?確かノーマルVIPでしたよね?」


「私の愛と偏見と執事としての忠誠心が、ロイク様はVVVV(ヴイヴイヴイヴイ)・VIPカードに相応しい会員様だと告げたのです」


「あ、ありがとうございます」


「それと、店の在庫の地神玉と水神玉と火神玉と風神玉と光神玉です。それぞれ3000個ずつあります。先程の生肉のスキル内に収納可能かと思いましたので、全部お持ち致しました。試供品ですので、遠慮なさらずお受け取りください」


「良いんですか?こんなに大量に」


「当店の御客様は、神々や精霊ばかりなもので、この手の試供品は増えるばかりで嵩張って大変なのです。6000年位前は人間種の御客様も数人いらっしゃられたのですが・・・ですので、全部受け取っていただい方が助かります」


「あ、ありがとうございます」


「それと」


「まだ何かあるんですか?」


「はい、神獣カフェ『ドームココドリーロ』に在籍しております子達の写真と詳細が書かれたデジタルデータです。先程のテレビジョンの画面の様な表示。生肉のスキルに取り付けていただきますと、家の子達の情報を見る事が出来ます」


「写真って、肉とかの絵の事ですか?」


「そうです」


「テレビジョンとか画面というのは、浮き上がる絵の事ですか?」


「先程の肉を映しだしたスキルをもう1度ここにお願い出来ますか?」


「はい」


 可視化:表示:10倍:今回限り。場所:俺の目の前(前方)80cm。 発動≫


「これは、テレビジョンという映像を映し出すスキルに類似しております。テレビジョンは映像を映し出す機能しかありませんが、ロイク様のスキルは、任意の場所に映像を映し出し、任意で可視不可視の設定が可能で、道具や他の能力を管理する事が出来る。センタースキルだと思われます」


「映像?センタースキル?」


「はい」


「画面に映像に写真。映像と写真という言葉は何度か、このスキルで聞いたり見たりしたので言葉は分かるのですが、もっと勉強する必要がありそうです」


「言葉は扱う者によって直ぐ成長し進化します。生活の一部として直ぐに溶け込む物です。直ぐに慣れます。それでなんですが、慣れていただく必要がある物がもう1つあります」


「このスキルの他ですか?」


「はい。始めての御客様には、どの子でも構いません、神気を1神獣にチャージして貰う事になっておりますので、1神獣選んでいただけますでしょうか?」


「マルアスピーが選んで・・・・・・って、寝てるんだった」



 えっと、このデジタルデータ(・・・・・・・)?っていう小さな板を、タブレットで撮影して。


≪カシャッ


≪・・・映像を更新しました。


 表示:更新した映像 ≫


≪・・・表示しました。


 大きな白鳥?あっ動き出した・・・凄い生きてるみたいだ。


「綺麗な映像再生ですね。私の家のテレビジョンより遥かに鮮明です。・・・おっと、それで、画面に記録映像として映し出されている神獣は『エテルネルスワン』という気立てが良く優しい子です」


「白鳥に見えますが、神域や神界に住む神獣何ですね」


「ロイク様は、金剛石(ダイヤモンド)ランクですので、13神獣まで同時に店外へ連れ出す事が可能になっておりますが、本日は1神獣で練習し慣れるだけに致しますか?」


「そうですね。良く分かっていないので、1神獣に神気をチャージし感覚を掴んでおきたいと思います」


「神気量によって、楽しみ方も変わりますので、その方が良いと思います」


「因みにですが、1神獣召喚しそれを維持する為には、どれだけの神気が必要なんですか?」


「店内で戯れるだけでしたら、チャージしていただくだけですので、神理石(しんりせき)1個分の神気で十分です。店外ですと、神域や聖域や精域や神界以外の場所で戯れるとして、常に神気を神獣に供給する必要がありますので、1神獣を24時間・・・あぁ~コルト下界は1日30時間でしたね。30時間戯れるだけで能力を発動させないのであれば、神理石3個分の神気位だと思います。能力を使いたい場合は1回発動させる度に、神理石1個から3個分の神気を追加で消費する感じです」


「あのぉ~クロコダイアンさん。今の話に1つ質問なんですが、神理石(しんりせき)って何ですか?」


「神気を秘めた石の事です。神気には属性がありませんので、1種類しか存在しません。神気を持った者にしか視認出来ませんし感知する事も出来ません」


「それの1個分の神気がどれほどの物なのか分からないんですが・・・」


「チャージを体験された方が早いですね」


「そうかもしれないです」


「エテルネルスワンを連れて来ても宜しいでしょうか?」


「お願いします」


 クロコダイアンさんは、個室を後にした。


 初神獣様だ。緊張するなぁ~・・・



≪トントントン


「エテルネルスワンをお連れしました」


「ど、どうぞ」


「失礼致します」


≪ガチャ


 クロコダイアンさんの後ろから、とてもスタイルの良いとても綺麗な女性が部屋へ入って来た。


「えっと、クロコダイアンさん。こちらの女性は?」


「ロイク様。彼女は、エテルネルスワンです」


「エテルネルスワン。こちらは、人間種でVVVV・VIP会員様のロイク・シャレット様です」


「ロイク様。エテルネルスワンです。宜しくお願いします」


 え?どうい事?


「・・・映像だと、大きな白鳥でしたよね?」


「あの姿は飛ぶ時専用です。普段はこの姿です」


 この綺麗な姿が本当の姿なんだ・・・


「そうなんですね」


「はい。人間種に似せ、世界創造神様に創造していただいたので、下界にとても興味があります」


「エテルネルスワンさんは、人間の世界だとかなりの美人さんです。1人で街を歩いたりしたら大変なことになりそうです」


「下界はそんなに大変ですか?」


「えっと・・・人間の男性が、エテルネルスワンさんに沢山言い寄って来るって言いたかったんです」


「何の為ですか?」


「そ、それは・・・目的は色々あると思いますが、お近付になりたい下心丸出しの・・・」


 話が続かないよぉ~・・・誰か助けてくださいよぉ~・・・



「さぁ~和んだ所で、早速チャージを試してみましょう」


「はい!」


 クロコダイアンさん。ナイスタイミングです。和んではいませんでしたが、ナイスです。


「ケアーテェイカー:クロコダイアン」


「エテルネルスワン、どうしました?」


「純流の神気を、人間種ロイク様から感じます」


「純流の神気をですか?」


「はい。傍に居るととても心地が良いです」


 エテルネルスワンさんは、俺に抱き着く。


「あの、何がどうなって、抱き着かれてるのか良く分からないんですが・・・」


「今、エテルネルスワンが、ロイク様の神気の系統や神気量を、どうやってチャージすると効率が良いのか、神気の受け取り方を確かめているところです」


「確かめる為に、抱き着く必要があるですか?」


「裸で抱き合った方が早いのですが、人間種のロイク様に、エテルネルスワンも遠慮したのでしょう」


「裸って・・・」


「ケアーテェイカー:クロコダイアン」


「エテルネルスワン、どうしました?」


「私は、神理石を1個貰う」


「あぁ~・・・そうでしたね。エテルネルスワンは、神理石を貰っていましたね。今回もそうしますか?」


「純流や本流の神気。そのまま欲しいと思います」


 エテルネルスワンさんは、俺から少しだけ離れると、上着を脱ぎ上半身だけ生まれたままの姿になった。


「どうしたんですか?」


「ロイク様。両腕を翼に見立てエテルネルスワンを後ろから抱き締めてください。そして、人間種の身体で言う所の胸を両手の掌で軽く掴んで、左手で神気を流し込み右手で零れ溢れ出て来そうになる神気を抑え込むイメージを頭に浮かべてください」


「え?・・・それって、エテルネルスワンさんの胸を鷲掴みにするって事じゃないですか?」


「ロイク様。もう少し優しく掴んでもチャージは出来ると思います。さぁ~チャージをお願いします」


 エテルネルスワンさんは、俺に背中を見せると、俺の膝の上に座った。


「ロイク様。後ろからで胸の場所が分かり難い様でしたら、向かい合ってでも可能です。手を交差させながらになりますので、流れの意識が少し難しくなり、チャージが上手く行かない場合もありますが、チャージが完了するまでの時間が少し長くなる程度です。店外に出ても入った時と同じ時間ですから、特に時間に関しては問題無いと思います」


 エテルネルスワンさんは、俺の右手を掴むと自身の身体に俺の右手を左の夢と希望に導いた。


「あっ」


 温かくて、や、柔らかい。


「まだ、ダメですよ」


「な、何が?・・・え?」


「ロイク様。まだ左手がポジションに着いてませんので、神気のチャージはまだ行わないでください」


「なるほど」


 俺の左手がエテルネルスワンさんの右の夢と希望に触れる。


「あっ・・・ハァ~ハァ~ハァ~お願いします」


「大丈夫ですか?」


「大丈夫です」


「ロイク様。神気のチャージをお願いします」


 あれ?考えてみたら、神気の発動の仕方なんて知らないぞ・・・


≪ムニュッ


 あぁ~いかん・・・神気に集中しないと。あぁ~でも、右手の・・・左手の掌の感覚が脳を支配する・・・見える。見て居ない見えない位置にあるはずのエテルネルスワンさんの大きな愛と希望が・・・・・・こういう時はマルアスピーの顔を思い出して、現実に・・・


『何でよ』


 あれ?


『私を想像するタイミングがおかしいわ?』


 起きたんですか?


『面白そうな事になっているでしょう。寝てなんか居られ無いわよ』


 怒らないんですか?


『どうして?』


 いや・・・何となくですが・・・


『ホラ、早く注いであげなさいよ。待ってるわよ』


 それが、神気ってどうやれば発動するのか・・・


『ロイクのマテリアル・クリエイトで、神気を発動すれば良いと思いますよ』


 あ、なるほど。流石、マルアスピー。頼りになります。それでは、神授スキル【マテリアル・クリエイト】神気・・・分からないから、適当に:1・左手から触れている対象に優しく緩やかに注入。右手は触れている対象から漏れ出そうとする神気を漏れ出さない様に対象の肌ギリギリに薄い膜を形成。漏れ出て膜に当たった神気を対象に再注入・・・こんな感じで良いかな?心象を強く描いて・・・発動 ≫


「あぁっ あ ・・・ あっ・・・凄いです・・・あっ・身体中が熱いです。あっ、あん・・・」


 エテルネルスワンさんが身体を小刻みに震わせる。


「大丈夫ですか?」


「わ、分りません。な・・・あっ・・・身体がぁん・あっ・・」


「ロイク様。手を離していただいて少し様子を見ましょう。まだ、2分も・・・えぇ~コルト下界では、2ラフンしか経過していないはずなのですが、エテルネルスワンの中に大量の神気が注がれた様なのです」


 俺は、エテルネルスワンさんの愛と希望から両手を離し、後ろから肩を抑え身体を支える。


「あっ・あん・・・あん・・・」


「おかしいですね。神気のチャージを止めたはずですよね?」


『溢れた神気を、再注入しているからかしら』


 でも、漏れない様にした方が良いみたいな感じでしたよ・・・


「あっあん・・・ロ、ロイク様ぁっ・・・」


「は、はい。何でしょうか?」


「か、あん・・・あっ・・・身体の・・・あっ・・・中に・・・入った・・・神気がぁっあっ・・・多過ぎて・・・」


「えっと、それでどうすれば?」


「エテルネルスワン。どうすれば良いのですか?」


「神理玉あっん・・・を・・・」


「神理玉に神気をチャージさせて、身体から抜く訳ですね?」


「あっ・・・はぁん・・・・い」


「今、持って来ます」


 クロコダイアンさんは、慌てて個室を後にした。


「ねぇロイク」


「何ですか?」


「これって、苦しいとは違うわよね?」


「あっ・・・あぁぁ~・・・」


「ですが、苦しそうに悶えてますよ」


「気持ち良さそうに見えるのだけれど・・・ねぇ~貴方、人化の神獣よね?」


「あん・・・あっ・・・はぁんい・・・」


「今、どんな気分なの?」


「この状況で、鬼ですね」


「私は精霊よ」


「・・・知ってます」


「き、気持ちぃ・・・あっ・・・よ、よす・・・あん・・・て・・・意識がぁっ・・・」


「ホラ、ごらんなさい。苦しんでないわ」


「は、はぁ~」


≪ガチャ


「エテルネルスワン!神理石です」


 クロコダイアンさんは、神理石をエテルネルスワンに渡す。


≪ホワァン


「今の一瞬で満タン?新品の神理石だったはず・・・エテルネルスワン。こっちと交換です」


「あっ・・・あん・・・」


 クロコダイアンさんは、エテルネルスワンさんから神理石を受け取ると、新しい神理石を渡した。


≪ホワァン


「何が起こっているのでしょうか」


 クロコダイアンさんは、一瞬で満タンになる神理石を手に困惑していた。



「楽しそうな事をやっているね。クロコダイアン。呼んだけど気付いて貰えて無い様だったからね。あたしの方から来てやったね」


「あっ、これはこれは、申し訳ありませんでした。御来店いただいたにも関わらず気付かず失礼致しました。彼のチャージで、エテルネルスワンが快感状態に陥っておりまして・・・」


「おぉ~何と素晴らしい事じゃないかね。惜しげも無く淫靡を女に提供するとはね。そこの・・・おや人間種じゃないかね?」


「え、あ、はい」


「あっ・・・あんあん・・・あっ・・・」


「艶めかしい・・・クロコダイアン。あたしが話をしている時はね。これも悪くないと思うのだが、ここにある神理玉を貰うね」


「どうぞ」


 ゴージャスで存在感が途轍もない美しい女性は、神理石に指を向けた。すると神理石が20個程箱から浮き上がる。女性は指をエテルネルスワンさんの方へ動かす。神気石はエテルネルスワンさんの身体の周りで静止すると、次々≪ホワァンと音を立てそしてその場から消える。消えた神理石は箱の中に出現し、箱の中の新品の神理石が消えエテルネルスワンさんの身体の周りに出現する。箱の中に出現した神理石は綺麗に陳列された状態だ。



「君は人間種なのに凄い神気だね。56個満タンにしちゃったね。この子、もう君の神気無しじゃ存在出来ない身体になってしまったね」


「エテルネルスワンさんがですか?」


 神理石に、神気を移し続ける事56個目。やっとエテルネルスワンさんの様子が普通に戻り、クロコダイアンさんは、ゴージャスな女性と俺に対し、只管頭を下げていた。


「そうだね。君の名前は何だね?」


「ロイク・シャレットと言います」


「つい最近、何処かで、聞いた名だね。・・・・・・あっ思い出したね。逃げた飛竜(フライング・ドラゴン)を狩ってくれた人間種だね」


「え・・・もしかして、遊びの神様ですか?」


「微妙に違うみたいだね。私は運を司る神、創造神が遊びの神って言ったかね?」


「そう書いてました」


「ハッハッハッハそうかね」


『騎士団を壊滅させた(ドラゴン)の飼い主って事よね?』


「そこ、コソコソ話は女の価値を下げるね。女は胸を張って堂々と生きてなんぼだね」


 聞こえてるみたいです。


「そこ、ヒソヒソ話は男の価値を下げるね。男は胸を張って堂々と生きてなんぼだね」


「一緒じゃないですか?」


「人間種いや人間小っちゃい事を気にしてちゃダメだね。ロイク。お前はその点問題なさそうだね。気に入ったね」


「はぁ~・・・あ、ありがとうございます」


「精霊に神獣に人間。好色なのが気に入ったね」


「はっ?」


「クロコダイアン」


「何用でございましょうか、運の女神様」


「さっきの神理石は、この店では使えないね」


「どうしてでしょうか?折角満タンになったので、神獣達のおやつや食事に利用しようかと思っていたのですが」


「純流の神気が幾重にも層を成し、普通の神理石の状態とは似ても似つかない、神理石になってるね」


「物凄い、神気で私も驚いております」


「この神理石で神気を受けた神獣は、ここに居る神獣白鳥の様に、ロイク無しでは存在出来ない存在になってしまうね」 


 俺は、運の女神様と、クロコダイアンさんの会話に割って入った。


「あの、俺の神気が何かまずい事しましたか?」


「ロイク。君は何も悪くないね」


「はい。ロイク様は、エテルネルスワンを神気を探し生きる放浪の呪縛から解放してくださったのです」


「と、言いますと?」


「君は、鈍珍(にぶちん)だね」


「えぇ~ロイクはとっても鈍いくて困ります」


「何ですか、マルアスピーまで・・・酷いですよ。・・・ところで、エテルネルスワンさんは、大丈夫なんでしょうか?先程からボーっとしている様ですが」


「始めて満たされ身体の力が抜けているだけです」


「ですが、上半身裸のままってのは気になります。服を着るだけでも着ましょう」


 俺は、エテルネルスワンさんの服をソファーから拾い上げると、彼女の腕に袖を通し服を着せた。


「なんだもう終わりかね。つまらないね。美女の巨乳で目の保養をしながらね。お礼の話を楽しんでいたのにね」


「お礼ですか?」


「竜の宝玉と精霊石があれば、面白い遊びが出来るね」


「うん?もしかして、陽が重なる時間に翳すって話ですか?」


「知ってるかね?」


「はい。神様からの指示で、その陽が重なる時間までに、精霊石と竜の宝玉を持って目的地に行く予定なんですよ」


「創造神だね?神様はあたしもこのクロコダイアンもそうだね」


「え?クロコダイアンさんも神様何ですか?」


「私は、一応ワニ種の神。クロコダイアンです。神と言っても、通常精霊程の力しかありません」


「ハッハッハッハ。そうだね。クロコダイアンは、百獣神の眷属だからね。百獣神は大地の女神と風の女神の眷属。この女神もまた息吹の女神の眷属だからね」


「運の女神様は眷属は居るんですか?」


「先日出来たね」


「始めて眷属が出来たんですか?おめでとうございます」


「嬉しいかね?」


「えぇ~おめでたい事ですから」


「喜んで貰えて良かったね」


「ねぇロイク・・・」


「どうしました?」


「眷属ってロイクの事よ」


「何言ってるんですかぁ~」


 俺は、運の女神に視線を向ける。そこには満面の笑顔で嬉しそうに頷く女神が居た。

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