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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーガルネス編ー(傍観)
369/1227

5-38 幼女姿の竜二人目と、いつもの脱線。

削ってしまった分をいつかまとめたいと思っています。

 解呪は直ぐに終わった。


 ユーコ様、あっおい様、ロザリークロード様に抑え付けられ身動きのとれない状態にあった巨大な竜は、フォルティーナに声すら抑え付けられ、大海原の上空に浮かぶただ巨大なだけの死にたいの竜でしかなかった。


 何の苦労も無く巨大な竜に近付き、フォルティーナ曰く如意宝珠、ロザリークロード様曰く竜玉に触れることが出来た。


 振れた瞬間、石畳に叩き付けられ砕け散るクリスタルのような音が轟きわたり、巨大な竜の内側から黒い靄が吹き出した。


 黒い靄が飛散し晴れると、小豆色の斑点模様が浮かび上がっていた焦げ茶色の如意宝珠、竜玉は、黄金色に輝く宝玉へと姿を変えていた。


 状況から見て、巨大な竜は大丈夫そうだ。


 ユーコ様、あっおい様、ロザリークロード様、フォルティーナから解放された巨大な竜が状況を理解するのに、時間はかからなかった。


 断片的にではあるが、見えたり聞こえたりしていたらしい。


・・・

・・


 巨大な竜は俺達の前で浮かんだまま、綺麗な土下座をきめ、何度も首を上げ下げしていた。

「あぁー女神方々様。感謝致します」


・・・

・・


 もう何度目だろう。感謝と謝罪の言葉を何度聞いただろうか。

「キューン、キューンだぞそれ。感謝するならまだ少しだけ人間のロイクにすると正解なんだぞ。おぉーロイクというのはこの下界コルトの管理を任されている」

「ユーコはんは少し黙っとって貰えまへんか?」

「な、なんでっ!?」

 ユーコ様それはですね。巨大な竜が感謝の言葉を口にする度に、俺の説明を繰り返しているからだと思いますよ。


 そろそろいい加減戻りたい。サクッと終わらせて帰宅したい。何とかならないかな。


 それとなく神様達の表情を確認する。


 何か当分無理そうな気がする。


 そんな時だった。無理そうな気がしたのは俺の気のせいだった。


「こないな場所で話し込むのもどうかとも思う。移動しまへんか?」

 え、あっおい様?

「そ、そうだな。移動した方がいいな。キューン、キューンだなそれ」

 な、ユーコ様まで!?

「我も確認せねばならぬことがある。茶でも飲みながら落ち着いて話せる場所を希望する。眷属ロイクに全て任せる」

 ろ、ロザリークロード様……は、いつも通りだ。


 ……お茶を飲みながゆっくり話せる場所?

 この竜と?

 ……いったい何処にそんな場所があると?

 仮に家に連れて帰るとしてだ。……う~む、家に入らないな。

 家に入る入らない以前に、大パニックに陥る未来しか想像できない。スカーレットで騒ぎを起こしたら怒られるのはフォルティーナのせいでも俺だ。今日はもう理不尽と正面から向き合いたくない。


「山一つ置いても平気そうな広い場所」

 どっかにないかなぁ~……。

「旦那様よ。悩む必要はない。戦闘モードBを解除」

「ロイクもリュシルもロクロ(・・・)ヨーコ(・・・)も悪狼神もついでにエリウスもいったい何をやってるね」

「フォルティーナ様。わ、私もですか!?」

「当然だね。エリウス。君は何の為にここにいるね。皆一蓮托生等しく責任を負う立場にいるね。つまりだね。君達にはアタシの貴重な時間に見合うだけの対価つまり金の話になってしま」

「五月蝿いぞ遊びの女神。聞いていなかったのか? ホントお前はキューン、キューンだぞ。悪狼神が移動すると提案し皆それに賛成したんだぞ。それにヨーコではないユーコだぞ」

「おい遊びの女神。ロクロとは我のことか?」


「うんうんだね。ロザリークロードは長過ぎて覚えられないね。お前はロクロで十二分だね。それにだね。アタシは気付いてしまったね。いいかね。皆とはいったい何の話だね。おかしな話だね。プップップップップ」


「おかしくないぞ。おかしいのはお前だぞ遊びの女神」

「おかしいおかしいと言う方がおかしいと昔から相場が決まってるね。つまりだね。アタシもロイクも賛成した覚えがないね。この話は矛盾だらけということだね」

 おいフォルティーナ。勝手に俺を痛い子側にしないでくれ。

「そうだね。リュシルもエリウスも賛成とは一言も言ってないね。分かったかね。トーコ(・・・)

 リュシルもエリウスも俺もまだ意見すら口にしてないのだが……。

「キュ、キューン、キューンでキューンだぞ……」


 呆れ顔のユーコ様は、会話が成立しないフォルティーナとの会話を断念してしまったようだ。


 ユーコ様。本当に申し訳ございません。フォルティーナの代わりに俺が謝ったところでどうしようもないので口にはしませんが、願わくば届け俺の謝意の心よ……。


「フォルティーナ様。大海原を駆ける潮風がちと痛い。故に妾としては離れたいと切に思うのだが、美しくもきめの細かい敏感肌の持ち主として知られるフォルティーナ様も妾と同じではないのか?」

「そ、の通りだね」


・・・

・・


 脱線し続けるフォルティーナを俺達は説得し続けた。


「あ、あのぉー女神方々様。このような場所で」

「うるさいね。パペットされてた竜は黙ってるね。良いかねアタシはここに来る前まで、来る前まで……あ…………白いトウモロコシを植えてたね」

「「「「「「「トウモロコシ!?」」」」」」」


 は? 何言ってるんだコイツ。


「そうだね。償いも見返りも要らないね。決めたね。今から皆にアタシの畑を手伝わせてやるね」

「「「「「「「はぁ~っ!?」」」」」」」


 パチン




―――東モルングレー山脈

スタシオンエスティバルクリュ・正面水上庭園

R4075年10月7日(邪)19:00―――


 フォルティーナのフィンガースナップの音が響くと同時に俺達は巨木に囲まれた土向き出しの平地に立っていた。


 周囲を見渡す。

 何となく見覚えがある景色だ。鬱蒼と茂る巨木の葉が揺れる度隙間からチラチラと見えるのは、あれって。

「本殿?」

「はい正解だね。ロイクに二千点だね。さて冗談はさておいてだね。ここは正面水上庭園つまりアタシの家庭菜園と言う訳だね。分かったかね。分かったなら返事するね」


 自由過ぎるだろう。神聖な公園を勝手に畑にしないでください。マジで……。


「君達はふざけているのかね。返事はどうしたのかね。良いかね。人の話を聞く時は耳だけでは足りないね。目と心臓もフルでアタシの話を聞くことこそが幸せを掴むコツだと言われているね」


「「「「「「「……」」」」」」」


「で、そこの竜っ!!!!」

「「は、はい」」

「ロクロ、お前はお呼びじゃないね。何勝手に返事してるね。うるさいね」

「ろ、ロイク。遊びの女神が我を虐める」

「そこっ! 幼女姿で調子に乗るのは自由だね。肩車されてるだけに……。あぁ―――なんだね。お前、元の姿に戻るね」

「うっかりしておりました。御見苦しい姿を申し訳ございませんでした。直ちに」

 

 カッ!!!!


 そういや肩車したままだったわ。って、えぇえぇ?

「旦那様よ。狼狽したような顔をしておるがどうかしたのか?」

 狼狽って、確かに目の前には狐と狼が神様だけどいるけど。って、そんなことはどうでも良い。山みたいに巨大だった竜の身体が発光しながらみるみる内に縮んだと思ったらあっという間に本日二人目の幼女の姿に……竜ってもしかして、

「ロザリークロード様、リュシル。竜って人化すると幼女姿になるんですか?」

「幼女姿が、神々しくもドメスティックであり優雅さと可憐さを惜しげもなくディスチャージする我のことであるならば否定はせぬ。邪竜の系譜に我を模した者がおるとすれば二、三竜くらいかの」

「旦那様よ。竜が皆幼女な訳があるか。考えずとも分かることではないか」

 って、ことはないのね。……だよな。


「我を模した者の一人が偶然にもここにおる先代のバハムートという訳だ」

「なるほど」


「妾は数人しか知らぬが皆妙齢な女子(おなご)であったと記憶しておる。故に、竜魔族(ファフニール)は雌のみの種族だと思っておった。勘違いであったか?」

「夜姫殿。御久しゅうございます。我等ファフニールは女より二回りも三回りも小さく力も虚弱で半分ほどしかない男を巣より外には出しません。ファフニールの恥をわざわざ外に知らしめる必要がありましょうか」

「虚弱な雄とはなるほどのぉ~……通りで見た事がないはずじゃ。ロザリークロード様は知っておったのか?」

「我は些細なことなど気にせぬ」


 知らない。って、ことか。


「猪口才な男よりも更に虚弱なモーヴェドラゴンの女とその女よりも虚弱な男からなるウェードカルンドーナは安定を求め一番ではなく二番、三番ではなく二番を選択する種族なのです」

 説明まだ続いてたのね。……フォルティーナがそろそろ限界に……あれ? 意外だ。静かに聞いてるよ……巨大な岩とか降ってこないよな。

「なるほどだね。実に面白いね。竜、許す。続けるね」


 何処に興味を持ったんだ? 面白いって何が?

 毎度のことだからと何度も何度も何度も何度も何度も考察を重ねてはみたが、……ダメだ。フォルティーナの捻じ曲がった感性を未だに理解できない。心の中に拒絶する俺がいる。


「あ、ありがとうございます。夜姫殿、異界の神と思われる女神より許可をいただきましたので続けます」

「許可などなくとも好きな時に言葉を口にして良いと思うが……まぁ良い、妾も少しばかり気になる故、続けるが良い」


・・・・・

・・・・

・・・

・・


「竜魔王の座を譲る際にこのルールを採用し一番ではなく二番を選択しました」

「うんうんだね」

「キューンキューンだぞ」

「あのぉー、畑はどないしたんどすか?」

「ほう。弱者は強者に従うを常とするではなく強者が弱者に従うを常とする訳か」

「邪竜の系譜は面白いのぉー。もう少しユーモアがあれば我としては百点であったぞ」

「うんうんだね」


 俺、本当に忙しいんですけど。早く家に帰ってやりたいことが沢山あるんですけど……。


「はい。妹はあらゆる面において兄に勝っておりました。ですので、あらゆる面において多大に劣っていた兄を竜魔王の座に据え、私達姉妹は流行りの喰い道楽ジャーニーに出たのです」


「食を追及する旅とはなかなかやるではないか。旦那様もそうは思わぬか?」

 これっていったい何の話なんだ? 食べるのが目的の旅の話で良いんだよな?

「えぇ……」


「うんうんだね。あのメアで食を追及するとは天晴な竜だね。決めたね。君達姉妹に食い道楽姉妹竜の称号を神授するね。今から大食い竜と名乗って良いね」


「そして私達姉妹はヴィスズの地で見つけた宿を食の至宝と位置付け、至宝の宿に滞在するようになったのです」

「なるほどのぉー。見えて来たな。我の眷属ロイクよ。我はこやつが哀れでならない。聞いて欲しい。我の願いを聞いて欲しい」

 見えて来たって何が? って、何を聞けと?

「……えっと、急ぎでなければ……はい」

「ふむ。流石は我の眷属であり夫となる男。嬉しく思うぞ。それではロイクにバハムートの妹の捜索と保護を命じる。期日は長過ぎては心配が募る。よって一億年位アバウト過ぎるか、一億年以内とする。心して励むが良い」

「い、一億年っ!? りょ了解しました。…………ところで先代のバハムートさんの妹さんの名前は何て言うんですか。探すにしても名前が分からないと無理が」

「ん? 旦那様よ。いったい何を言っておる。バハムートに名などない。先代か今上か姉妹か兄弟か親か子か。竜などその程度で十分ではないか?」

「え?」


「うんうんだね。話しもつまらなくなってきたね。それでは計画通りトウモロコシ畑で皆は汗を流すね。終わったら迎えに来るね」

「「「「「「「はぁ????」」」」」」」

「部屋で待ってるね」

 パチン


「行っちゃいましたね」

「「「「「「……」」」」」」


「なぁまだ半分は人間のロイク。解散しないか?」

「そうですね」


「うちはやりかけたことがあるさかい島に戻る」

「分かりました」


「眷属ロイクよ。バハムートに我の都を案内したい。連れて帰っても良いか?」

「都?」

「眷属の都は我の都」

 何だ、スカーレットのことか。……治安が良いとはいえ幼女が二人ってのはちょっとなぁ~。そうだ!

「ロザリークロード様も案内できる程詳しくないですよね。詳しい人を付けるんで、一緒に楽しむってはどうですか?」

「ふむ。楽しければ何でも良い。全て任せる」

「異界の管理者殿よ。かたじけない」

「いえいえ」


「のぉ旦那様よ。フォルティーナ様の指示を無視しても良いのか?」

「数日もしかしたら数年は大丈夫じゃないかな。ハハハ」

「ならば良いが」


「主殿!」

 主殿……。

 なるほど、エリウス、ナイスです。今日の仕事は終わり、二人が心配なら俺が案内すれば全て解決って事ですね。乗りましょう。


「エリウス。少し早いですが今日の公務は終了です。久々に街を歩きたい気分なんで、帰ったら手続きしておいてください」

「はっ!」


「良いのか?」

「リュシルはどうします? 島に戻るなら送りますが」

「……妾も今日は終いじゃ。島へは明日また行こうと思う。旦那様よ。バハムートの話も気になるが今の妾はスカーレットが気になってどうしようもない。故に妾も同行する。良いか?」


「えぇ。と言う訳、ユーコ様、あっおい様。俺達はスカーレットに戻ります。今日もお世話になりました」

「キューンキューンだぞ」

「ほな、さいなら。また会いまひょ」

「今日もお疲れ様でした。ではっ!」

ありがとうございました。

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