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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーガルネス編ー(傍観)
364/1227

5-33 浜辺の傍観者⑤

・・・・・・・


・・・・



「分かりました。と、言いたいところですが、ダメです」

「何故ですかっ!!」

「創造神様との約束を忘れたんですか?」

「クッ…………。で、ですが納得出来ません。ランドリートを通しての関与は許されたのに、どうしてこの地の民の命を救うための関与は許されないのですか?」


「サンドラ、君はいったい何を言ってるね。メアの民はコルトの民ではないね。メアの民の一部がコルトの民になったのはエグルサーラに定住を希望し移り住んだ瞬間からだね。腰掛石も分霊体に憑依され汚物化した躯の中に閉じ込められていたイーゴンの魂も分霊体に吸収されイーゴンの魂と共に閉じ込められていたスージーの魂も回収したね。ここからはコルトの民の自由時間だね。好きにやって構わない時間だね」


「世界創造神様の名を騙り神々様方の名を騙り旧教などという諸悪の根源を組織しこの世界を蹂躙し貶めた異世界の者達は救済されたというのに、騙され奪われ続けて来た我々には好きなように争い奪い合え……ですか」


「騙し騙されるのも利用し利用されるのも奪い奪われるのも支え助け合うのも自由だね。奪う側に鞍替えするのも奪われる側に鞍替えするのも個の自由好きにすれば良いね。何を学び何を理解し何を目的とするのか。豊かさとは金だけではないね。教養、愛情、時に厳格であることもまた豊かさだね。ようするにだね。豊かになるためにはある程度満たされている必要があるということだね。貧しさの中にある個に豊かさなの中にある個が理屈をこねても干上がった川、水のない湖、喉の渇きを癒すことはできないね。それにだね。ロイク」


「な、なんですか?」

 何だか良く分からない内容を急に振られても困るんですけど……。


「ここはアシュランスでもフィリーでもないね」

「ですね」

 あぁ~良かった。って、何を当然のことを……。


「分かったかね。サンドラ」

「この地がガルネス(神王国)であることくらい理解しています」


「それが分かっていればそれで良いね。ここはここに生きる個等の地、他所から来た(・・・・・・)豊かさを押し付けてしまっては今迄と同じだね」

「なっ!……異世界の。旧教と私達が同じだと言うのですかっ!?」


「当たり前だね。サンドラ、考えるね。アタシは常々思っているね。同じ水でもこっちの水は甘いね、あっちの水はもっと甘いね、だがだねあそこの水はちっとも甘く無くて若干微妙にほろ苦くもあり大人だね。アタシはそれで良いと思っているね。寧ろ面白いからそれで良いと断言するね」


「は? あ、あのフォルティーナ様。いったい何の話をされているのでしょうか?」


「サンドラ。フォルティーナは多様性の話をしているようなのだけれど、多様性の意味が分からないのであればロイクに聞くと良いわ」

「お、俺にですかっ!?」

 マルアスピーさんや無茶振りにも程が……。


 マルアスピーの表情を確認する。


 相変わらず読み難いが本気で言ってるなってくらいは分かる。


 何か最近、皆に振り回されるだけ振り回されて、俺の時間はほとんどないし。気のせいかなって考えないようにしてたけど、突然限界がやってきた。

 寝室を引っ越して一人の時間を増やしてみたはいいけど、実験や研究がしたかっただけで寝るための空間が欲しかった訳じゃない。


「ねぇ聞いてるのかしら?」


 ん? 呼ばれているような…………おおおっといかんいかん、思考をこっちに戻さなくては。

「はい、聞いてます。何も問題ありません」


「そっ良かったわ。それで新商品用に圧力釜で煮込んでいる悪気(あっき)が柔らかくなる頃なの。そろそろ帰りたいのだけれど、お願いできるかしら」

「おっ! マルアスピー、完成するのか? 本当に私の悪気がスィーツになるのか? 早く食べたいのじゃ~♪」


「性質は自然魔素(まりょく)に近いのだけれど、循環しないせいなのか安定も反発もしないの。闇や邪との相性は抜群なのだけれど口にするのは………………ねぇロイク」

「はい何でしょう?」


「エグルサーラに開発、ロイスピーの支店を出して欲しいのだけれど、お願いできるかしら」

「彼等で、悪気を使った商品を試したい。って、ことですよね?」

自然魔素(まりょく)を使った清涼飲料水の実験の許可を一回一回取る必要はないと言っていたわよね」

「はい」

「悪気をメア亜下界の存在に使う実験の許可を一回一回取る必要もないと思うのだけれど、フォルティーナはどう思うのかしら」


 そこは、フォルティーナに聞くね。


「あたしは、面白そうなら何でも良いね。それにだね。コルトやメアの循環に身を委ねる存在を精霊がいちいち気にする必要はないね。好きにやるね」


「そういう訳だから、ロイク、支店宜しくね。さぁっ、王都にメア亜下界のキャスパリーグが神王として潜伏していることも、ウェアウルフが団長として潜伏していることも、シーミアの王家一族が宰相として潜伏していることも、メア亜下界の血を多少なりとも受け継ぐ存在達がキャスパリーグに付き従っていることも、旧教が魔獣やヒュームをバーサク化やアンデッド化させ兵器として運用していることも、シュヴァルツがメア亜下界やプリフェスト下界と古代の魔力陣で繋がっていたことも全て伝えたわ、長い演説に付き合ったのよ、もういいわよね。帰りましょう」


「マルアスピー様。申し訳ございません。陛下、少しだけお時間をお願いします」

 サンドラさんと話をしていたリア団長が、神茶の入った茶碗を両手で包み込みながら、俺を呼んだ。


「俺は別に急いでないんで構いませんよ。気になることとか気になったこととか何でも言ってみてください」

「ありがとうございます。それでは、陛下の御考えをお聞かせください。竜王国の竜騎士隊の勇ましさは世界中に轟いています。ですが、先程のお話から察するに異世界の存在は、一人で三百の竜騎士隊を殲滅捕食出来てしまえるのではないでしょうか?」


「あっちでは弱い方のキャスパリーグのホノクレマでも、こっちではフライングドラゴンの小規模な群れくらいなら余裕らしいですからね」


「竜騎士隊の主戦力はそのフライングドラゴンなのですが……」


竜人(ドラゴ)の騎士とセットなんですよね? 地面に近付き過ぎず適度な距離を保ちながら戦えば何とかなるのかな?」


「確証はないのですよね?」


「確証はありませんが自信はありますよ。リュシルの話だと飛べない猫と狼と侯一族の猿はただの猫で狼で猿でしかないから向かって来たところで牙や爪が届かない限り雑魚だって。実際、キャスパリーグと同じ下卿でラミアのペトラネラさんやカゲユイマの村長さんと対峙してみましたが蛇だったり影だったりと多少の違いはありましたが、メア王と比べたら、まぁ~こんなもんかなって感じでした」


「ち、から、の基準が分からないのですが……」

「あぁ―――――確かに、分かり難いかもしれないですね。……そうだ。前にモーヴェドラゴンのジャンガヴァード事件がありましたよね。chefアランギー様が軍には情報を開示するべきだって、公開したはずなんですが、覚えてますか?」

「は、はい」


「彼が、もし仮にこっちの世界のドラゴンだった場合の話になってしまいますが、絶対王者。最強のドラゴンです。ドラゴンが一千や一万集まったところで蚊や蟻です。分かりますか?」


「ドラゴン一千匹一万匹以上の存在……ですか」


「認識としてはそんな感じで間違いないと思います。で、ペトラネラさんと村長さんは、彼よりちょっと強いかなってくらいですね」


「ちょっ、ちょっとですか……」


「ですが安心してください。キャスパリーグは下卿ですが、人魔族(デーモン)や下級種獣下等種より強い程度で無害だそうです」


「フライングドラゴンの小規模な群れくらいなら余裕なのですよね……」

「陛下。発言をおゆるしください」

「アヤ副団長も気になったことがあったら許可なんかいらないんでどんどん話してください」


「ありがとうございます。お聞きいたします。ガルネスには異世界の民や異世界の民の血が流れた民が残っているのですよね。主力部隊がなくなったとしても、彼等が兵士として残っている可能性はありますよね? 我々は彼等の力にかなうのでしょうか? 仮に彼等の力がデーモンや下級種?だったとします。それはどれほどの強さなのでしょうか?」


 おっと、質問攻め質問の嵐が来ましたか。これから戦う相手のことだし当然っちゃ当然か。

 う~む、コルトとメアのミックスがどれくらいいるかとか力の具合とかは流石に分からないや。濃いとか薄いとか四千年或いはそれ以上経ってるしなぁ~。

「兵士の中には濃度は分かりませんがメアの民の血が流れている者もいるでしょうね。どれくらいの強さかまでは個体差がかなりありそうなんで何とも……」


「旦那様よ。メアのことは(わらわ)に任せるが良い」

「お願いします」

 流石は俺のリュシル様。本気で助かります。助かりました。


「そこの二人」

「「はっ! リュシル王妃様」」


・・・

・・


「~ ......弱者は強者に狩られ喰われる。故にメアで争いとは日常、大小様々な衝突を繰り返し繁栄と淘汰を繰り返す。腕力や悪気での争いから頭脳や影響力での争いにシフトした王国であっても強さは正義として称えられる。ここまではよいか?」


「「はい」」


「力のルールは明快そのもの。妾の祖父国王サザーランド・ボナ・サザーランドを頂点に王族、七魔公、十二魔侯、上卿、卿、下卿...... ~ ......下級種、獣下等種。中には当然強い者も弱い者もおる故身分や階級だけで判断するのは正しくもあり間違いでもある。ここまではよいか?」


「「は……はい」」


「先日...... ~ ......とまぁー、旦那様は妾の祖父を簡単に往なしてしまったが、...... ~ ......そんなわけで、デーモンとはここコルトのドラゴンより少しばかり強い程度の力しかないと認識していれば良い。ここまではよいか?」


「「……はい」」


「下級種族とはメアの悪魔種族の最下位で下級悪魔...... ~ ......コルトの昔話に出て来る悪魔や魍魎の類はメアでは下等悪魔に分類される獣下等種...... ~ ......ヴィスズやデミの力を今迄意識したことがなかった故自信はないがヴィスズもデミもか弱い存在とはいえフライングドラゴンに遅れを取るとは思えぬ。...... ~ ......猫より強い狼や猿にも言えた話故難しく考えるだけ損だとは思わぬか?」


「……団長。兵士も私もアシュランス王国の軍人として恥じぬ戦いを心に誓っています。ですが、わ、私達はいったい何と戦うので…………」

「……副団長。わ、わ私達の敵は、フライングドラゴン、ドラゴン、それ以上の……存在」


「メアの人達を相手するとか想定してなかったんですが、家が建物への突入は先陣になったみたいで良かったですよ」


「私達が先陣?」

 目を見開き始めて聞きましたとばかりに驚きの表情を見せるリア団長。


「竜王から聞いてませんか? 総攻撃が始まったら、竜騎士隊は宙を飛び城壁を越え王都を攻撃します。各国の地上部隊は城壁城門を攻撃し破壊します。城門が壊れたら王都に突入し寺院や教会や王宮や軍の施設を占領します。突入は家に任せるって言ってましたよ」


「「え?」」


「何処が突入しても勝てますが、家以外だと戦死者の数がえぐいことになってたでしょうね。いやぁー、徹夜して支給した甲斐がありました。あっ、そうそう生死は気にしないからってメアの王様と話は済ませてあるんで。強いなって思うのがいたらバンバン倒しちゃって良いです。ですが、バーサク化した敵は出来るだけ気絶させ身柄を確保してください。戻せるかもしれないんで。アンデット化した敵はもう死んでるんでどうでもいいです。ヒュームの貴族はどっちでも構いません。神官巫女は神授の手前倒しちゃっても構いませんが情報が欲しいんで可能であれば確保してください。先程説明しましたが主力部隊はもう存在しません。シュヴァルツも姿と名が一致する者の身柄は既に確保してあるんで機能していません。俺達は創造神様との約束で見守るしかできませんが、事前に間引きもしたし支給もしたし若干無責任だとは思いますが、お膳立ては十分したつもりです。余裕で凱旋して未来に繋げてください。では、スカーレットで待ってます」


 神授スキル【フリー......

「終わったのかね。アタシは無駄話は嫌いだね」

≪パチン

 え?

ありがとうございました。

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