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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーガルネス編ー(傍観)
363/1227

5-32-2 異世界転移は、嵐の予感しかしない。続②

本編に早く戻したいと考え、イーゴンが生まれてから亡くなるまでのサイドストーリーを全てカットしてしまいました。二十万文字弱は流石に長すぎますよね……。

 計画は遂行された。


・・

・・・

・・・・

・・・・・


 遡ること十九年と一ヶ月と二十二日前。私達は知ってしまった。


 不確定で朧なる神去りし月の世界、メア。


 曖昧で空漠たる神去る闇の世界、メア。


 安定を求めこの世界コルトを侵食しては拒絶し拒絶しては侵食を繰り返す世界。偉大なるメア。


 私達は、私達が、偉大なるメアの侵食と拒絶に巻き込まれこの世界コルトに置き去りにされたことを知ってしまった。


 一年が、一万七千四百二十四日ではなく三百六十日であることを。

 一日が、二十四時間ではなく三十時間であることを。

 ……が、…………であることを。

 ……が、…………を。

 ~

 ……を。

 そして、この世界コルトには、悪気(あっき)が存在しないことを。


 絶対神様とは異なる至高の神、世界創造神様より白昼堂々齎された神授で理解した。



 神授が終わり目を覚ました私達の身体は、下級種族下級悪魔のヴィスズと良く似たユマンや下等な獣下と良く似たセリアンとそっくりなものへと劇的な変化を遂げていた。


 四千年から五千年後の近い将来、偉大なるメアへと健康な状態で帰還できるようにと、悪気の存在しない世界コルトに順応した身体を与えられたと、与えられた知識で理解はしていたが、理解することと受け入れることでは大きく意味が違う。


 種族や力の差で蔑み差別する時代は過去の物となっていたが、己の姿形が弱者のそれと瓜二つになってしまった事実をそう簡単に受け入れられる納得できる訳がない。

「種族の誇りがぁ~〇〇〇〇〇……」

「何故、絶対神様は〇〇〇〇〇……」

「何故、何も〇〇〇〇〇……」

 悲嘆にくれ死を選択する者も多かった。



 そん中、ガランニュースのホノクレマが声を挙げた。

「偉大なるメアの絶対神創造神ブレクトリガウフェルト様より天啓を授かった。

 ここコルトの絶対神世界創造神様より神授された(ちしき)を野蛮なるコルトの無知なる存在に広め導けと。

 導くため国を興せ教を興せと。

 自らを犠牲とし先頭に立ち偉大なるメアへと帰還するその日まで我々と無知なる存在を導く者となれと。

 ...... ~ ......天啓を授かった。

 当初、私はこの天啓を夢だと勘違いし不届きにも絶対神創造神ブレクトリガウフェルト様を冒涜する日々を重ねてしまいました。

 ですが、絶対神創造神ブレクトリガウフェルト様は、愚かな私の行動など全て御見通しだったのです。

 私が授かった天啓と同様の天啓を孤狼族(ウェアウルフ)のペーターゲッディー・テル・バーゲィンと猿魔族(シーミア)のゴンギーガァン・テル・エズヴェーネと怪女族(ラミア)のペトラネラ・ザド・ベルフェエルにも与えていたのです。

 彼等から天啓の話を聞かされた私は己の不甲斐なさを恥、心ならずも冒涜するに至ってしまった己の不信心さに我儘にも涙しました。

 私は己に課します。

 私は命ある限り己に課します。

 私はここに宣誓します。

 絶対神創造神ブレクトリガウフェルト様。ここコルトの絶対神世界創造神様。そして同朋の皆様。

 私達四人が授かった天啓と我々全員に与えられた神授の内容を真摯に受け止めこの命ある限り御意向御意志に従順であり続けると。

 この命ある限り同朋の皆様と共にあり続けると。

 そして無知で野蛮なるここコルトの存在達を正しく導くと...... ~ ......」


 程無くして、ガランニュースはガルネスへ、ランドリードスはランドリートへ、イタフリードスはイタフネスポートへ、トルネリードスはトルネスポートへ、ノーバーリードスはノーバースリート、ヴォルンニュースはヴォールポートへ、ヴァンリードスはヴァンネリートへ、ポヴォンニュースはポヴォーエスタへと名を改めた。

 ゲルン(ホノクレマの当時の通り名)は、正式にゲンベルジュン・ミビャユ・ザドテール・ホノクレマ、ホノクレマ一世を名乗り、興したばかりのガルネス神王国の初代親王に即位し世界創造神創生教の初代教王に就任した。


 ホノクレマは精力的に天啓を遂行していった。


 そして、リーファ十九年二月二十三日。

 イーゴン・テュブール正式名イーゴン・ザド・アドゥバスは討伐された。


 建国当初から天啓が虚言であることをペトラネラ・ザド・ベルフェエル様の証言で知っていた私や一部の者達。

 ホノクレマ達の虚言に付き合ってしまったのは、ホノクレマ達の考えに一定の理解を示し賛同してしまったからだ。


 神授によって知識を得てしまった私達は、残酷なまでに山積した課題を克服し乗り越えなくては、帰還のシナリオを歩み続けられないことを理解していた。対峙するシナリオが滅びのシナリオばかりだと理解していた。


 ホノクレマの言葉に賛同するのは当然の流れだった。


 ホノクレマは私達に言った。

「何もしてくれない絶対神様の天啓を利用し、今以上の団結を図りたい。私達に今必要なことは協力し合い支え合うことだから。

 帰還のためなら守るためなら喜んで絶対神様の罰を受ける。だから頼む、今は協力して欲しい。

 私にとって力を合わせて来た仲間は皆家族なんだ。家族が一人でも多く偉大なるメアに帰れるなら何だってする。

 家族の笑顔を私は守りたいだけなんだ。

 だからお願いだ、協力して欲しい」


 ホノクレマの暴走は天啓を口にした時から始まっていた。


 処刑と殺戮と破壊を繰り返し、追放と略奪と悲劇を積み重ね。騙りの国ガルネスは世界創造神創生教の下、瞬く間に強国へと伸し上がっていった。


・・・・・


 イーゴンの討伐も嘘の天啓によって遂行された。


・・・・・


 イーゴンの体内には、偉大なるメアとこの世界コルトを遠ざける不和の塊が眠っている。

 その塊は、一二諸侯区バフォメランド王国の秘儀によって生み出された反発と拒絶を引き寄せる不協和の象徴。

 その象徴は、メアへの帰還を遠ざけ私達に災いを齎す。


 イーゴンの体内に眠る不和の塊を取り出し、世界創造神創生教の祭壇を通し奉納せよ。

 然らば道は開かれる。


・・・・・


 教王ホノクレマの命を受けた世界創造神創生教の聖騎士隊と、神王ホノクレマ一世の命を受けた討伐隊によって、イーゴンは騙し討ちされた。


 イーゴンの体内には、絶対神様の天啓通り塊があった。


 取り出されるほんの一瞬だけだったが、確かに私も見た。

 塊は、漆黒の球体で悪意や欲望を内包し強力な悪気を纏っていた。


 聖騎士隊は、塊を回収するとイーゴンの亡骸をランドリート郊外の放牧地に放置し去った。


 数日後、ホノクレマによる嘘、新たな天啓によって、私は教子爵の爵位とテュブールの名と小さな領地を手に入れた。

ありがとうございました。

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