5-32-1 異世界転移は、嵐の予感しかしない。続①
―――ガルネス神王国・カルーダ湖畔域
カルーダ獣道落ち葉に埋もれたフォルカー邸
R4075年9月25日(風)22:30―――
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あの腰掛石放置してちゃマズいパターンの腰掛石だったんだ。後で本人に説明して回収だな。
それにしてもかなり強い個体もこっちに来て、
「のぉフォルカー。先と今の気絶の件には少しばかり食い違いがあるのは何故か?」
うん? 確かに微妙な違いはあったけど、フォルカーさんがどうやって気絶したかなんてどうでもいい。重要なのはこの先だ。
「リュシル。三つ子の話を早く聞きたいんで、気絶の話は後日もし興味が残ってたら聞くでも良いですか?」
「旦那様よ。妾は供述の食い違いに疑問を覚えただけで、旦那様以外で興味があるとすれば食事に温泉に夜、誰が最初に子をおっとこの話は……それにもう一人の妾の教育であろうか。故に...... ~ ......分かるか」
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―――水煙の大陸フィンベーラ
AR歴11985年息吹の春10月8日(光)
陽が昇り光の時間になって少し経った頃――――
「……あ…………」
知らない天井だ。
莚から体を起こし周囲を確認する。
外が明るい。ハァ~……これ夢じゃないんだ。……ここ何処だ? あれ? 何か体が重い、足が思うように動かない。
プルプルと震える足、フラフラと揺れる体。
グゥ―――――。
異様なまでの空腹感。
何かスゲェ―腹減ってる。
シャッ
「フォルカーさん。体拭きますますねぇー」
「うん?」
体を拭く?
「あっ! 立ってる。フォルカーさんが立ってる。せ、先生っ! フォルカーさんが立ってますじゃなかった。フォルカーさんが目覚めましたぁっ!」
「え、何っ!? お、おっと」
女性の叫び声に驚き莚の上に尻もちをつく。
「イテテテテ」
木の葉と蔓で作られたパーテーションを大きく開き入って来たのは、オウィスの女性だった。
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「おめでとうございますフォルカーさん。退院して良いですよ」
「は?」
「良かったですね。フォルカーさん。さぁ私達の家へ帰りましょう」
「は?」
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「レオナ、ミミリー、ペトラさん。ただいま」
思うように体が動かない私はオウィスの女に抱えられ、何の説明もないままにランドリードスにしては大きく立派な建物へと連れ込まれた。
「スージー。その人、フォルカーさん?」
「あ、そうだった。抱えてたの忘れてたわ。お見舞いに行ったら退院して良いって」
「そうなのね。フォルカーさん。退院おめでとうございます。私はスージーの姉のレオナと申します」
「あ、……わ、わたあ、れ、こ……えが……」
何が起こってるんだ? 声がちゃんと出ない。
≪トントントン
≪「失礼します」
≪ガチャ
「お姉様。お茶をお持ちしました」
また、オウィスだ。
「ミミリーありがとう」
「ドクダーミーというハーブを煎じた物です。体にとっても良いそうなので、お客様も是非どうぞ」
「あでぃ……が、ど……ざ、います」
木の板の床に敷かれた干し草の上に腰を下ろし、何が起こっているのか良く分からないまま、出されたお茶を飲んでいると。
≪バァッン!
「ウッツと溜め池の話をは良いとして、フォルカーが目を覚ましたと連絡があって、ウッツと急いでおぉフォルカー本当に目覚めたのだな」
「フォルカーさん心配しましたよ」
ドアを蹴破りもとい勢い良くドアを開け、ペトラネラ・ザド・ベルフェエル様とカゲユイマの男……村長様が、ランドリードスにしては大きく立派な建物のリビングに入って来た。
「そん……ざ、ま……ペ、ドラ、……ェル、ざ……わた...... ~ ......は、なに……お、ごで……」
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私は、噴水池の淵に後頭部を強打し噴水池に浮いているところを救助され百八十二日間も眠っていたらしい。
私の身にいったい何が起こったというのだろうか?
私は、ペトラネラ・ザド・ベルフェエル様とスージー・ザド・ヴィレーゼ様と結婚しているらしい。
私の身にいったい何が起こったというのだろうか?
私には、カイ、フェルス、イーゴン。三つ子の息子がいるらしい。
身に覚えがない。いったい私が何をやったというのだろうか?
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月日は流れ。リーファ十九年二月二十三日。
ありがとうございました。




