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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
-スタシオンエスティバルクリュ編ー
36/1227

1-25 エクレアと、精霊石。

***********************

【タイトル】 このKissは、嵐の予感。

【第1章】(仮)このKissは、真実の中。

 1-25 エクレアと、精霊石。

***********************

――― 東モルングレー山脈 中央部

――― 6月4日 13:00


≪ヒュゥ―――――――――― ゴゴゴゴゴッゴ ピュゥ――――― ゴゴゴゴ


 神様からいただいた紹介状に書かれている場所って、この辺りだと思うんだけど・・・


『ねぇ、ロイク。ここってどんなに頑張ったとしても、人間種達の力では無理そうよね」


 そうですよね・・・俺も、そう思います。


≪ピュルルルルル ピュゥ――――― ゴゴゴゴゴゴ ビュゥ―――――――――



 俺とマルアスピー様は、創造神様からいただいたメールに書かれていた場所。ブオミル侯爵領ロイの鉱山から62km程北上した大樹の森の中。東モルングレー山脈の中央部。南と北には10000m級の山々が連なる地。その北側に連なる山の中で一際高い山16000m級の頂上にいる。


 創造神様から届いた1通のメールの内容を達成する為だ・・・




≪時間は遡り。昨日の夜≫

――― ブオミル侯爵領ロイ

侯爵邸(領主館) 侯爵執務室

――― 6月3日 27:00


「ただいま、戻りました」


 俺は、フリーパスでブオミル侯爵領ロイの侯爵邸の侯爵執務室に移動した。


「おや!もう戻ったのかね?」


「えぇ。鉱山の坑道の魔獣達は数ばかりで直ぐに終わりました」


「そ、そうか・・・いやぁ~流石はロイク君だ!(ドラゴン)より弱い魔獣が14000匹位では、直ぐ終わってしまうかぁっ!ハッハッハッハ」


 ジェルマン・パマリ士爵様は、表情を引き攣らせながら笑う。


「英雄ロイク殿・・・」


執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)様。本物のアルヴァ・ブオミルさんはどうしていますか?」


「はい、今はぐっすり眠っておられます」


「そうですか。それは良かったです。・・・ところで、ブオミル侯爵家の皆さんはまだ隣の侯爵室ですか?」


「はい。ルシア様、ニーナ様、ブルーノ様。長官達の意見が・・・」


「ロイク君。政治と後継者の問題は、こういうものなんだよ。彼等の決断がどうであれ、私達には口を挟む権利は無い。例え、魔獣を殲滅し貴族領を救おうが、偽りの侯爵の正体を暴き貴族領を救おうがね」


「ブオミル侯爵家の事や、ロイの政治の事に口を出す気は元々無かったので気にしてはいなのですが・・・」


「ふむ。偽者のアルヴァ・ブオミルの件だね」


「はい。自分から進んで偽の侯爵に近付いた女性に関しては、自業自得だと思うので納得出来るのですが、自殺に追いやられたり処刑されたりした女性達やその家族。玩具にされ妊娠の可能性があるからと監禁されていた女性達。ヴェロニカさんやサンドラさん。被害の範囲が女性達とその家族や周囲の人間達に留まって居る為、内政や他貴族家や王都との問題程深刻な問題として扱われ無いのではと心配で・・・」


「被害者や被害者の家族を置き去りにするつもりは、彼等にも無いと思うよ。ただ、世の中は常に動き続けている。ブオミル侯爵領は、約3年間の空白をどう埋めるのか・・・これからだよ。それに、ロイク君は信じないかもしれないが、女性は私達男が思っている以上に強い。時に可憐で美しく妖艶で心を惑わすが、時に屈強で逞しく策士で心を悩ませる。男は常に受け入れて貰う側なのだよ」


「そうなんですか?」


「そうだろう?ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)


「わ、私ですか?」


「色々合っただろうと思ってね・・・・・・さてと、ロイク君。私達はまた明日ここに来るとして、コルトの私の屋敷まで戻るとしよう」


「そうですね。それでは、また明日の昼頃に伺います。ブオミル侯爵家の皆さんに宜しくお伝えください」


「はい。英雄ロイク様に、ジェルマン・パマリ子爵様」


「それでは」


 ジェルマン・パマリ子爵様は、右手を上げサヨナラのポーズを取る。


「俺が先に転位しますので、それでは・・・」


 【フリーパス】パマリ侯爵領コルトのジェルマン・パマリ子爵邸に移動≫



――― パマリ侯爵領コルト

ジェルマン・パマリ子爵様邸 客間(ゲストルーム)

――― 6月3日 27:20


「おかえり。ロイク!」


「おかえりなさいませ。ロイク様」


「ただいま。マルアスピーにパフさん」


「あと1つ仕事が残ってるんだよね・・・家主を」


 【召喚転位】対象:ジェルマン・パマリ。場所:俺の目の前のソファー。発動≫



 ジェルマン・パマリがソファーの上に現れる。


「う~ん。普段王都に居るのだが、帰って来たぁ~と思うのは何故だろうねぇ~ハッハッハっハ」


「昨日の朝はここに居ましたけど」


「ロイク君。それを言わんでくれ。ハッハッハッハ。しかし、転位がここまで快適で長距離移動が可能だと、屋敷を幾つも持っている事が馬鹿らしくなってくるな!」


「羨ましい話にしか聞こえませんよ。俺なんて、自分の家すら持ってない。親の家から独立出来ていない狩人ですよ」


「謙遜謙遜。大英雄様で、英雄の息子で、愛らしく可愛らしく美人な女性に囲まれ、しかも超が幾つも付く大金持ちらしいじゃないかぁっ!アリスから聞いたぞぉ~宝石をアリスにプレゼントしたそうじゃないか。これから大変になるぞぉ~・・・まっ!手始めにこの屋敷の事は自分の家だと思って自由に使ってくれて構わないし好きに家具を動かして良いぞ」


「そうでした。今日はこの屋敷をありがとうございました」


「ロイク君は、律儀と言うか少し鈍いというか・・・マルアスピーさんは頑張った様だな!」


「えぇ~」


「何の話ですか?」


「秘密の話よ」


「そう、秘密の話だ・・・・・・私はそろそろ休むとするよ。ロイク君達の部屋は聞いてるのかな?」


「はい。ジェルマン子爵様。ロイク様とマルアスピー様のお部屋の他に、私専用の部屋まで・・・」


「一緒の部屋の方が良かったのかい?」


「あ・・・いえ・・・御二人の邪魔はで、で、出来ませんから・・・」


「新婚だったね。ハッハッハッハ」


「それじゃ。失礼する。皆、おやすみ」


「おやすみなさいませ」


「おやすみなさい」


「良い夢を」



――― パマリ侯爵領コルト

ジェルマン・パマリ子爵様邸 客人用寝室

――― 6月3日 27:40


「マルアスピー様・・・マルアスピー」


「どうしたのよ。急に改まったりして」


「突然強くなって、今まで知らなかった世界を一度に沢山知って、分からない事が多いって改めて気付かされたんだけど、マルアスピーは人間の世界をどういう風に感じて受け止めているのかなって」


「フフフッ。そうねぇ~私は自分の目とロイクの思考や感覚。本で読んだ知識。それと味覚ね」


「味覚ですか・・・」


「人間種達が誇れる数少ない素晴らしい物の1つよ。味覚の追求は」


「食べ物の他にも誇って良さそうな事ってありそうですが・・・何だかマルアスピーらしくて笑いが」


「他にも考えてる事は沢山ありますよ。ですが、物事を難しく考え過ぎていると、自覚した時には食べ物やロイクの事を考えるだけで、心が温かな気持ちになります」


「俺って、食べ物と同じ感じで受け止められていたんですね」


「心に与える影響で言うなら近い物があると思うわよ・・・でも、パフちゃんやアリスという人間種に対しては、ロイクに思う感じとは少し違う感情があるみたい」


「男とか女の違いってやつですかね?」


「どうなのかしらね?良く分からないわ。けれど1つだけハッキリしている事があるの」


「なんですか?」


「それはですね・・・・・・秘密です」


「なんですかそれ」


「フフフッ。時が来たら教えます。今は秘密です」


「時が来たらって・・・あれ?ここ数日、後でって、いっぱい約束してませんでしたか?」


「えぇ~沢山したわ」


「まだ就寝するには早いですし、約束を果たしていきましょう」


「ロイクって、たまに子供みたいよね」


「親父みたいにガキじゃないです」


「そうかしら・・・義理の御父様(おとうさま)の若い時と、とても似ていると思うのだけれど」


「・・・まぁ~親子ですからね。マルアスピーとお母さんも似てる感じみたいじゃないですか」


「そうね。さぁ~まずは・・・」


「どうしました?」


「魔法の練習の約束と、指輪の約束と、他に何かまだ果たされていない約束はありましたか?」


「順を追って思い出すしかなさそうですね」


「えぇ~」


「約束とは違うけど、空飛ぶ海豚(イルカ)のタマゴと、神獣カフェ紹介状の事も気になりすが・・・まずは、俺のスキルで作った金剛石(ダイヤモンド)の指輪から始めましょう」


「はい↑!」


 【タブレット】起動≫


≪WELCOME (女の子の可愛い声)


***********************

 R4075年06月03日(水)時刻27:45


  解体作業が完了しています。


***********************


 可視化:道具・素材・金剛石(ダイヤモンド)を表示 ≫


≪・・・表示しました。


 俺と、マルアスピー様は、俺の顔から30cm程離れた場所に、映し出される映像を顔を近付けながら確認していた。


***********************

 R4075年06月03日(水)時刻27:46


 ≪金剛石(ダイヤモンド)




  50ct100個   100ct100個

 ―――――――――   ―――――――――




 150ct100個   200ct100個

 ―――――――――   ―――――――――




 250ct100個   300ct100個

 ―――――――――   ―――――――――




 400ct100個   500ct100個

 ―――――――――   ―――――――――


***********************


「ねぇ、ロイク。浮いている絵では、大きさが分かり難いわ」


「それもそうですね。大き過ぎると邪魔ですよね?」


「えぇ」


「それなら、50、100、150、200、250ctを1つずつ取り出しますね」


 俺が、絵に触れようとした瞬間。


≪道具より、金剛石(ダイヤモンド)50ct1個、100ct1個、150ct1個、200ct1個、250ct1個を取り出しました。


「あれ?」


「取り出そうと考えながら会話をしていたから共鳴反応したのね」


「なるほど。マルアスピー左手を出してください」


「左手?」


「はい」


 マルアスピー様は、俺に左手を差し出した。俺は自分の左手に彼女の左手をそっと乗せ、右手で金剛石(ダイヤモンド)を1つずつ彼女の薬指に当てながら確認する。


「どう思います?」


「良く分からないわね」


「大きさ云々以前の問題の様な気がします」


「問題?」


「はい。雪の様に白くて透明感があて、絹の様に柔らかくてとっても 婉美(えんび)ですよね?」


艶美(えんび)?そうかしら・・・」


「はい、 婉美(えんび)だと思いますよ。金剛石(ダイヤモンド)が目立たないんですよね」


「あぁ~~~!」


「急にどうしたんですか」


「アリスという人間種にも同じ事を話ていました」


「あれは、白い肌で黒い髪の彼女には、どの色だったか忘れましたが、選んだ石が合わないって話てただけですよ」


「ふ~ん。まぁ良いわ・・・私に似合う石は灰鉄礬柘榴石デマントイドガーネットだと分かっています。最高の指はその時にお願いするわ。今は、いつも身に付けていられる様に、一番小さな物でお願いしても良いかしら」


「分かりました。それなら、この50ctの金剛石(ダイヤモンド)で、指輪を作ります」


「ありがとう!楽しみだわ」


 指輪のレシピを表示 ≫


≪・・・表示しました。


***********************

 R4075年06月03日(水)時刻27:57


 ≪デザイン―カット―≫




 ラウンド        オーバル

 ブリリアント      ブリリアント

 ―――――――――   ―――――――――



 マーキース       ペア―・シェープ

 ブリリアント      ブリリアント

 ―――――――――   ―――――――――



 ハート・シェープ    オールド

 ブリリアント      ヨーロピアン

 ―――――――――   ―――――――――




 シングル        プリンセス     

 ―――――――――   ―――――――――




 ラジアント       エメラルド     

 ―――――――――   ―――――――――


 ≪神授レシピ特典≫




 82面ラウンド     144面ラウンド

 ブリリアント      ブリリアント   

 ―――――――――   ―――――――――


***********************


「何か・・・沢山出て来ました」


「そうねぇ~・・・・・・・・・このハートの形か、144面が良いわ」


「この144面ラウンドブリリアントって、真ん中が大きく光って見えるみたいです。どっちにしますか?」


「考える時間が欲しいわね」


「どうぞ」



***********************

 R4075年06月03日(水)時刻29:50

***********************


「決めたは!ロイク。迷う事なんて無かったのよ。神様からの特典144面よ。絶対これよ」


 ・・・2時間近く絵と睨めっこしてたくせに


「10ラフン()位よ。フフフッ」


「おかげで、魔力の細分化調整の練習が出来たので良いんですけどね。えっと、144面で金剛石(ダイヤモンド)を加工するとして・・・」


≪・・・アームデザインとセッティング方法を選択してください。


***********************

 R4075年06月03日(水)時刻29:52


 ≪アームデザイン≫




 ストレート       

 ソリティア       ウェーブ

 ―――――――――   ―――――――――




 Sウェーブ       ハーフエタニティ

 ―――――――――   ―――――――――




 フルエタニティ     サイドエタニティ

 ―――――――――   ―――――――――


 ≪セッティング≫




 立て爪         カテドラル     

 ―――――――――   ―――――――――




 伏せ込み        挟み留め     

 ―――――――――   ―――――――――




 ベゼル         テンション   

 ―――――――――   ―――――――――




 レール留め       彫り留め   

 ―――――――――   ―――――――――

***********************


「え・・・」


「考える時間が欲しいわね」


「・・・そうですよね・・・ど・・・う・・・ぞ」



「マルアスピー。もう4日(火)ですよ。続きは起きてからにしたらそうですか・・・?」



「俺、先に寝ますからね」



「おやすみなさい」



***********************

 R4075年06月04日(火)時刻06:02

***********************


 俺は、カーテンの隙間から僅かに零れ、部屋へと刺し込む陽の光が顔に当たり目が覚めた。


 ・・・


「もしかして、ずっと起きてました?」


「えぇ~・・・」


「それで、決まったんですか?」


「えぇ~・・・」


「大丈夫ですか?」


「えぇ~とっても晴れやかな気分よ」


「そうですか・・・それは良かったです」


「そうね」


「それで、リングと石の止め方でしたよね?どれを選んだんですか?」


「フッフッフッフ。私が選んだ物はこれと、・・・これよ」


 マルアスピー様は、フルエタニティデザインのリングを指差し。次に、立て爪のセッティング方法だった。


「えっと、フルエタニティで、立て爪ですね」


「えぇ~」


≪・・・素材を選択してください。


「げっ!・・・まだ、何かあるみたいですよ」


「ここで引き下がる訳には行きません」


「後で、良いんじゃないかなって・・・」


***********************

 R4075年06月04日(火)時刻06:10


 ≪アーム素材≫




 白金(プラチナ)100%      チタン

 ―――――――――   ―――――――――




 (ゴールド)100%       桃金(ピンクゴールド)

 ―――――――――   ―――――――――




 黄金(イエローゴールド)         橙金(オレンジゴールド)

 ―――――――――   ―――――――――




 (シルバー)100%     

 ―――――――――


***********************


 マルアスピー様は、浮かび上がった絵を一目見るなり即決した。


白金(プラチナ)100%で!」


≪最終確認画面です。


***********************

 R4075年06月04日(火)時刻06:11


 ≪消費素材≫


  神授スキル【マテリアル・クリエイト】

 により生成。


 金剛石(ダイヤモンド)50ct : 1個

 金剛石(ダイヤモンド)0.3ct : 96個

 白金(プラチナ) : 4.6g


 ≪使用レシピ≫


 指輪のレシピ


 ≪使用スキル≫


 【マテリアル・クリエイト】

 【上位加工・全】レベル10

 【上位加工・万能】レベル10

 【装備者指定限定付与(リュニックファタリテ)】レベル10


 金剛石(ダイヤモンド)のフルエタニティリングの

 制作を実行しますか?≪YES/NO≫


***********************


「えっと・・・って、マテリアル・クリエイトで素材準備出来ちゃうみたいですよ」


「あら・・・ねぇロイク」


「・・・はい」


「そらなら、金剛石(ダイヤモンド)ではなくて、灰鉄礬柘榴石デマントイドガーネットの方が、私嬉しいわ」


「で、・・・ですよねぇ~・・・」


「えぇ~」



≪トントン


「ロイク様。マルアスピー様。朝です。お湯をお持ち致しました・・・・・・」


 パフ・レイジィーからの次の反応が無い


「あれ、どうしたんでしょう?」


「変ねぇ~・・・入って良いわよ」


「は、はい・・・入っても大丈夫でしょうか?」


「えぇ~」


「それでは、失礼致します」


≪ガチャ


「お湯をお持ち致しました・・・」


「おはよう。パフさん」


「おはよう」


「こちらに置いておきますのでお使いください。足りない時は隣におりますので、言っていただければ直ぐ貰って参ります」


「分かったわ」


「それと、マルアスピー様。朝食の後のデザートの時間ですが、エクレアと言うお菓子と紅茶だそうです」


「エクレア?」


「はい。シュー生地とチョコレート。シューの中にカスタードクリームとハニーホイップにガナッシュクリーム等が入ったお菓子なんだそうです」


「色々なお菓子があるのね。パフちゃん。とっても楽しみね」


「はい」


「さぁ~ロイク。エクレアというお菓子が私達を待っています。急ぎましょう」


 マルアスピーはパジャマを勢い良く脱ぎ捨てる。


「マルアスピー様!ドアが開いてます裸はダメです」


「どうして、ロイクとパフちゃんしかいないのだから、特に問題ありませんよ」


「そ、そうですけど・・・って、問題ですぅ~!」


 凝視・・・


『フフフッ。触っても良いのよ』


 ・・・・・・



――― パマリ侯爵領コルト

ジェルマン・パマリ子爵様邸 談話室

――― 6月4日 8:00


 朝食を済ませた俺は、マルアスピー様。パフ・レイジィー。アリス・パマリ。マリア・パマリ。ジェルマン・パマリと、ジェルマン・パマリ子爵邸の談話室で、エクレアと紅茶を楽しみながら談笑していた。


「パフちゃん。こっちのエクレアも美味しいわよ」


「はい。マルアスピー様」


「2人は本当に美味しそうに食べるねぇ~。家の料理人(シェフ)が見たら喜ぶだろうね」


「そうですわね」


「パティシエという人が作ってるんじゃ無いんですか?」


「パティシエ!」


 マルアスピー様が、俺とジェルマン・パマリ子爵様の話に反応する。


「家は王都モルングレーとコルトに屋敷があるだろう維持するだけで大変でね。それに、騎士団の任務で不在にしている事が多い。料理人(シェフ)菓子職人(パティシエ)は必要に応じて執事が手配してくれているんだよ。召使(セルヴァント)も必要最小限で雇っている」


「なるほど」


「こっちの、ちょっと苦いエクレアも美味しいわよ。パフちゃん」


「苦いのは私ちょっと・・・」


「大丈夫よ。こっちの甘いのと比べて少し苦いだけだもの」


「マルアスピーさん。そのほろ苦いエクレアは、上掛け用のチョコレートにコーヒーが少し入っているの」


「飲むコーヒーですか?」


「はい。そして、白い甘いエクレアは、チョコレート似ていますが、チョコレートではなくてミルクを煮詰めて作った物なんですよ」


「チョコレートの風味がしないと思っていましたが、なるほど・・・」


「そして、そのパウダーがたっぷり振りかけてあるエクレアは、上掛けのチョコレートにココアパウダーをたっぷりかけた物で、少しビターな大人な甘さと香りが癖になります。シュー生地が少し黒いエクレアがありますよね」


「はい」


「それは、生地にそのココアパウダーを練り込んだ物を焼いているそうです。生地が大人な味に仕上がっています。中にはクカスタードリームだけではなく、チョコレートのチップが混ぜられたチョコレートクリームも入っています。私の一押しはこのエクレアです」


「アリスさん。貴方は凄い人だったのですね。エクレアというお菓子も、クレープも苺飴も何て種類が多いのかしら・・・」


「私は食べる専門で作る事は出来ませんけどね」


「知識は大切よ。ねっ、ロイク」


「・・・そうですね」


「そ、そうですわよね。知識は大切ですわよね。はい」


 どのエクレアも美味しいや。


 俺は、色んな種類のエクレアと紅茶をゆっくり楽しんだ。



「ロイク君。昼食を済ませてから、ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸(領主館)に行こうと考えているのだが、それで構わんかね?」


「えぇ。俺はいつでも構いません。昼食なんですが、食事を毎回お世話になる訳にもいきませんから、コルトのレストランか食堂で済ませますので、昼食を済ませてから、このお屋敷の客間(ゲストルーム)にお迎えに上がります」


「気にする必要はないんだが、そのへんはロイク君に任せるよ」


「はい。俺は部屋に戻って、道具の整理の続きをします」


「私達も若干仕事が残っているので、一旦失礼するよ」


「マルアスピーとパフさんは・・・・・・まだ、ここに・・・居ます・・・ね」


「えぇ!」


「アリスさん。マルアスピーとパフさんをお願いします」


「分かったわ」


「それじゃ。俺も失礼します」



――― パマリ侯爵領コルト

ジェルマン・パマリ子爵様邸 客人用寝室

――― 6月4日 9:00


 可視化


≪You've Got Mail (女の子の可愛らしい声)


 メールを表示 ≫


≪・・・表示しました。


***********************

 R4075年06月04日(火)時刻09:01


 差出人:KAMIsama

 宛先 :Roiku Charrette

 件名 :とある地へ


 大樹の大陸【ゼルフォーラ】、

 東モルングレー山脈中央部、

 南北を10000m級の山々に挟まれた地。

 東西は9000m級の断崖の地。

 西の眼下には、モルングレー、サーフィス、

 大火山と一枚大岩の大利【ベリンノック】。

 東の眼下には、コルト、マルアスピー、

 サンガス、フォーラム、ルフィーラ。


 東西25.2Km

 南北6.1Km


 平地(台地)の草原。


 中央。真上に2つの陽が重なる15時。

 眷属、遊びの神より贈られた、

 【竜の宝玉(スフェールドラゴン)・黄】と、

 【精霊石】を重なりし陽に翳せ。


 探すのが面倒だと思うので、

 正確な座標を教えます。


 東モルングレー山脈南端から北へ、

 61.64Km

 東西の崖から

 ちょうど真ん中12.6Km


 宝玉と石の翳し方にルールはありません。


***********************


 これって、神様からの指示?


『指定されている場所で宝玉と石で何かをすると言い訳ね』


 重なる時間15時には、指定された場所で石を翳す必要があるので、早めに待機していた方が良さそうです。


『そうね。今何時ですか?』


 今は、9:05です。


『まだ余裕ね。エクレアを食べてから、部屋に戻るわね』


 食べてからって、ずっと食べてますよね?


『ええ・・・』


 ・・・太りますよ。


『いっぱい運動をしているし問題無いわ』


 分かりました。昼食もエクレアにしましょう!


『良いわね。それ』


 あ・・・いえ、冗談です・・・



 精霊石って、昨日のあれだよな・・・


 精霊石を取り出し ≫


≪・・・道具より精霊石を取り出しました。


 俺は、精霊石を右手で持ちながら、中を覗き込んでいた。


≪・・・精霊石についての予備知識。


 ん?予備知識?


***********************

 R4075年06月04日(火)時刻09:15


 現在所有している精霊石は、

 まだ精霊石ではありません。


 【魔石】→【大魔石】→【賢者石】


 これらは、通常の魔力を帯びた石です。


 【聖邪石】→【神獣石】→【精霊石】


 これらは、自然魔素による魔力を帯びた石です。


 現在所有している精霊石は、

 正式にはまだ【聖邪石】です。

 

 【神獣石】に進化させましょう。


 必要な物は、麒麟の角。

 入手方法は、神獣カフェの売店で購入。

 購入方法。神獣達と触れ合いの時間を楽しみ、

 神獣カフェの売り上げに貢献。


 【精霊石】に進化させましょう。


 必要な物は、精霊の涙。

 入手方法は、妻マルアスピー・シャレット。

 入手手段。泣かせる。


 15時までに容易しましょう。


***********************


「はぁ~?」


 俺は、思わず声に出してしまった。


『面白そうね』


 急がないと、間に合わないかもしれませんよ。


『大丈夫よ。神獣カフェへの行き方を確認しておいてね』


 分かりました。


『エクレアを食べたら、部屋に行くわね』


 まだ、食べるんですね・・・


『えぇ~』


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