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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーガルネス編ー(傍観)
358/1227

5-28-18 異世界転移は、嵐の予感しかしない。⑱

 な!? 何っ! も、もう嗅ぎ付けて来やがった、ちくしょう。

 誰もいなかったはずの私の真横(右)にオウィスの男が突然姿を現した。

 男の狙いはディンブルだ。こ、こうなったら。このまま勢いに任せてこの場を離脱するしかない。

 悪気『兎ダッシュ』≫

 瞬時に決断し力を使った瞬間だった。

 な、なぬっ!! ちょ、ちょっと待って兎は急に止まれな、ちっくしょう。

「師匠ぉ―――」

 進行方向を塞ぐように鳥魔族(コルニクス)の男が姿を現し私に向かって走ってくるではないか。

 こうなったら飛び越えて。

 悪気『兎。

「バープっ! 師匠ぉ~!!」

 な、後ろ?

 今さっき通過したばかりの真後ろから突然声が聞こえ慌て力の使用をキャンセルし後方を確認する。

 モーヴェシープ! やばい挟まれたっ! い、いったいいつの間に。

 あのオウィスは陽動だったのか。やられた。初めからこれが狙いだったんだ。

 冷静になるんだ冷静になるだフォルカー。冷静になって活路を見出すんだ。

 お前なら出来る。やれば出来る子だってお祖母ちゃんとお祖父ちゃんが言ってたじゃないか。

 まずは前方の魔鳥だ。……ジャンプしなくて良かった。空中戦では分が悪い。後方の悪羊と陽動の魔羊は、二対一か……ダッシュしていて良かった。接近戦では分が悪過ぎる。

 詰んでないか?

 この状況で兎に何が出来る?

 ……そうだっ!! 鼠と猫だ。鼠も兎もそんなに変わらない。鼠に出来るんだ兎に出来ない訳がない。

 うぉぉぉぉ―――――。こ、こうなったら狼にだって噛み付いてやる。兎舐めんなよこらぁぁぁぁぁぁぁ。

 今だっ!

 右に向かって進路変更。

 悪気『兎ダッシュ』≫

 瞬時に決断し力を使った瞬間だった。

 なっ! 新手がっ!

「あ、良かった。レオナ、ミミリー無事だったのね」

「スージー、ミミリー。怪我は無い?」

「お姉様、私は平気です。ここはいったい」

 進行方向を塞ぐようにオウィスの女が三人も姿を現した。

 えええい、こうなったら無理矢理右から左に方向を。

 間に合えぇぇぇ―――。

 石畳に着いたばかりの右足が再び地面を離れようとするが太ももと脹脛に力を入れ踏ん張り右足が地面から離れるのを阻止。悲鳴をあげる膝と踝。ミシミシと嫌な音が聞こえるが今はそれどころではない。

 前方(右)へと流れる上半身を背筋腹筋側筋腕も肩も腰も上半身全てを使い後方(左)へと捻り左足を前方ではなく後方へ踏み込めば離脱完了だ。

 ぬおぉぉぉ――――。


―――


「キャ―――」

 ミミリーが当然悲鳴をあげた。

「ミミリー落ち着きなさい。大丈夫よ。大丈夫だから。ここが何処か分かれば帰れるから。ね、ねミミリー」

 ミミリーを優しく抱きしめ心に強く誓う。もう逃げない。

「レオナ後ろ見て」

「後ろ?」

「お、お姉様。見てはいけません。憂いた兎が池に飛び、飛び込んだだけです」



「おい、おめぇー大丈夫か?」

「師匠。知り合いですか?」

「いや、兎に知り合いはいねぇーはずだ」


「師匠、ギード無事で良かった」

「バープ。これ、おめぇーの知り合いか?」

「師匠冗談きついですよ。家畜に知り合いとかいる訳ないじゃないですか」


「バープさん。中立協定で鼠と兎が食べられなくなったって言ってませんでした?」

「それ天然物の話しな」

「喰うんじゃねぇーぞ」

「師匠。勘弁してください。いくら私が道楽だからって他人様(ひとさま)の家畜を襲って食べたりはしません」

「冗談だよ冗談」


「この兎、肌艶といい髪の毛並みと良い上物ですよ」

「師匠、ギード。この兎ですが、お礼が期待出来ます持ち主に届けましょう」

「いや待てバープ。こんな兎よりも、まずは店ってここ何処だよ!?」

「師匠、今頃ですよ、それ」



 振り返ると、仕立て屋の店主とお弟子さんが、綺麗な噴水の赤く染まった池にうつ伏せで浮いているクニークルスにしては弱くモーヴェバニーにしては強い奇妙な力を感じる兎の男を前に話し込んでいた。

ありがとうございました。

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