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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーガルネス編ー(傍観)
357/1227

5-28-17 異世界転移は、嵐の予感しかしない。⑰

・・・・・

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 力を使っても平気な人と平気じゃない人。

 輸魔力で助かる人と助からない人。


 魔力を与えられても命を落とす人ばかりだった。一度目は助かっても、二度目で三度目で命を落とすのはザラで、事態を重く見た指導者達は表向き輸魔力を禁止した。


 ただ、中央以外の七つの集落では、何度目でも助かる不思議な現象が度々報告されていて、救える命を前に禁止が表向きなのにも頷けた。


 そして、大っぴらには言えないが、昼飯を準備してくれたアングイスの女ことディーナさんと、ガラクタを鑑定してくれるはずだったアングイスの女ことアッシさんは、不思議な現象の当事者だった。

 二人は、ペトラネラ・ザド・ベルフェエル様から定期的に輸魔力して貰い、ディーナさんは三十三年強、アッシさんは十四年強も何事もなく暮らせているそうだ。

「来たばかりでどうせ話す相手もいませんが、そんな大事なことを私に話してしまって良かったんですか?」

「はい。フォルカーさんはあの女将さんに見初められた人なので話をしても良いと判断しました」

 あぁ―――なるほど、あと五日の命だからか。



 ここランドリードスは、七つの集落の中で一番新しく、四年前の大地震では最も被害を受け、中央から集落を放棄し合流するようにと言われていた。

 だが、カゲユイマの男こと村長とペトラネラ・ザド・ベルフェエル様が放棄に反対し居を構え続けたことで放棄は立ち消えした。

 因みにカゲユイマの男の名前は、ギュンター? クルト? ケルト? オズマ? ウッツ? どれが本当の名前か分からないそうだ。何となく敬意をもって村長様と呼ぶことにした。


 中央ことガランニュースには、下卿でキャスパリーグのホノクレマ一様。下卿で孤狼族(ウェアウルフ)のバーゲィン様。他に数名の下卿がおられるそうだ。


 下卿で力を使っても平気な人は、ホノクレマ一様とバーゲィン様と村長様とペトラネラ・ザド・ベルフェエル様の四人だけだと言われているそうだが、信用出来ない中央の話なので誰も鵜呑みにはしていなとか。


 下卿以上の強者は過去に一人だけおられたが、狂ってしまい最後にはお隠れになってしまった。

 母なるメアよりこの世界にやってきた初期のメンバーは夜女族(リリス)の集団で百三十人。

 彼女達は、王国領ユーノ市の地方公僕で慰安旅行の為、同じく王国領クーサ市の地方公僕温泉宿舎を訪れ、脱衣所から大型露天風呂へと移動した瞬間、この世界に裸で立っていたそうだ。

 千年程経った今、初期のメンバーは散り散りになり、中央には一人しか残っていないそうだ。

 お隠れになられた強者は彼女達の後にこの世界にやってきた、卿の狼魔族(グレイキアス)だったとも、卿の猫魔族(エイムバトラー)だったとも言われているそうだが、当時を知る人が少なく正しいことは何も分かっていない。


 初期メンバーのリリス様達は散り散りになった。隠れたとか死んだとかじゃなくて散り散りになった。う~む、何かが引っかかってるようなぁ~……忘れよう。



 下卿の一人、ホノクレマ一様が主導し実現させた、全種族平等社会は、互いに尊重し合い自主的に協力し合う社会。

 平等ではあるが、中央に権力が集中している為、微妙な軋轢が生じているとかいないとか。


 アルナブでは数億年以上も前に名誉通貨記念通貨化し利用出来なくなった嫌がらせ通貨ディンブル。

 ここではディンブルで買い物が出来る。

 中央がディンブルの使用を突然認め、率先して食料や素材と交換し始めたおかげらしい。

 中央に良い印象を持てずにいたが、これに関しては好感が持てる。


 何故かって、それは、私の兎の穴には、祖母から誕生日のお祝いに貰った漆黒貨が一枚。大学の激辛大蒜早食い大会で優勝し貰った深紫貨五枚と深藍貨五枚と白藍貨一万枚。高額貨幣が放り投大事にしまってあるからさ。

 ここは半分だけ地獄だと思っていた。そしてそれは私の勘違いだった。残り半分の半分も地獄だった。


 もし取り出していたのが漆黒貨だったら間違いなく奪われていた。見せたのが白藍貨で良かったと自身の行動を褒めつつ、そっと白藍貨を兎の穴に仕舞い込む。

「フォルカーさん私の話聞いてましたよね? 力を使う時は」

「誰にも見られていないことを確認してから使う」

「分かってるならそうしてください。屋台通りは」

「人が多いから特に注意が必要」

「分かってるなら」

「今から気を付けます」



 他にも色々と話してくれていたようなのだが、私の耳にはディンブルとしか聞こえず、心は既に名もない小躍りから激しいブレイクダンスへとシフトしていた。


 アッシさんが戻って来たので、ディーナさんとアッシさんにお礼を言い、抑え切れない喜びを爆発させ二人を力強くハグし、風の様に軽やかな足取りで店を後にした。


 花の群生地を目指し、軽やかなツーステップ兎ジャンプで南へ南へ噴水広場を颯爽と突っ切ろうとした時だった。

ありがとうございました。

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