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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーガルネス編ー(傍観)
353/1227

5-28-13 異世界転移は、嵐の予感しかしない。⑬

 ドンドンドンドンドンドンドンドン

 ドンドン

 ドン

 ドンドンドン

「おはようございます。フォルカーさん、起ぎでらが? 朝まだぁ、(むが)えに()だだ」


 ドンドンドンドンドンドンドンドン

「おはようございます。フォルカーさん、村長に頼まれでむがえにぎだだ」


「のわぁっ!!!! なっ、なっ何!?」

 物凄く大きな音が審議小屋内に響き渡り莚から飛び起きる。


 ドンドンドンドンドンドンドンドン

「おはようございます」

「お、起きてます。起きてます」

 どうやら、カゲユイマの男の代わりに力の加減も分からない誰かが起こしに来てくれたようだ。

 瞬間的に、戦争が頭を過ったよ。


 ドンドンドン

「フォルカーさん、村長に頼まれでむがえにぎだだ」

「今開けます。今開けます。今開けますからもうドア叩かないでください」



 起こしに来てくれたのは、警備隊に所属するモーヴェボアのチョタケさんという力の加減が分からない言葉のちょっと面白い男だった。


 今日の強制労働は陽が重なった頃合いを見計らって作業場に来いと言われているとチョタケさんに説明し、二人で花の群生地へとやって来た。


「うわぁ―――――、(すげ)綺麗などごろだな。こんなどごろがあっだんだな」

「私も昨日連れて来て貰って、昨日の今日なのに来たいと思ってしまったくらいです」

 花食べてないし。


「それでは私は群生地の方に用事がありますので、チョタケさんはそこの腰掛石にでも座って待っててください」


・・・

・・


 うっめぇ、マジうっめぇ。この花うっめっ。


 モグモグモグモグモグモグモグ



「フォルカーさぁ―――ん! 陽ィ―――重なっだぞぉ―――」


 うん?

 モグモグモグモグモグ

 腰掛石に腰掛けたチョタケさんが何か言ってるな。

 が、

 モグモグモグモグモグモグモグ

 うん。美味い!!


「フォルカーさぁ―――――ん!!! 重なっだがら作業場さ行ぐぞぉっ!!!!!」


 おっ! もう昼か。早いなぁ~……まだ、朝食食べてるのに。

 モグモグモグ


「フォルカーさぁ―――――――――ん!!!!!」


 チョタケさんって、力だけじゃなく声も加減出来ないんだな。煩いし急いで戻るとしよう。



 作業場へ向かい歩いていると。

「チョタケさん、フォルカーさん探しましたよ」

「なんがあっだだが?」

 カゲユイマの男に深々と頭を下げ挨拶をし視線を合わせない様心掛ける。

 私は強制労働を強いられる身、静かに黙って指示に従うのみ。ここには美味しい花が……草と藁がある。


「チョタケさんも見てしまいましたか」

「すげぇーなあれ。オラ、感動しだぁっ!!」

「少しだけ声のヴォリュームを落として貰えますか。感動の余り加減がおかしくなってます」

「おっ、わりがっだなっ、気ィー付げるがら許しで欲しぇ、なっ、なっ、許しで貰えるが?」

「許します許します。目の前にいるのですから、そんなに大きな声で謝っていただかなくても聞こえています。怒っている訳ではありませんので、チョ、チョタケさん落ち着いてください」


 ここはまさに地獄だ。腹が空いたらその辺に生えてる草を食べれば良い。辺り一面に御馳走が生えている。空腹でひもじい思いをすることもない。

 誰にも必要とされていないし誰の役にも立ってそうにないが特に気にするようなことでもない。居場所がないだけで今さらって話だ。知り合いは一人もいない訳だし同族もいまのところ見かけていないし。


 強制労働だけが一日の予定を立てる際の足枷になっている。脱走するか。いや、ここから逃げて生きて行ける気がしない。外には獣のくせに強者とか分けの分からない生き物がうじゃうじゃいるみたいだし。

「フォルカーさん?」

 そうそう、このカゲユイマの男も……。

「フォルカーさん! 作業場に到着しましたが」

 お! 話し掛けられたら即肯定。或いは即返事。

「はい」



 カゲユイマの男とチョタケさんを見送り、棟梁の下に労働開始の挨拶をしに行く。


「来たな。婆の店に行って昼飯買って来い!。後は昼飯休憩だ。空が赤くなったら勝手に帰って良いぞ。 おらっさっさと行きやがれ!」



 屋台通りには屋根のない店が四軒。どの店の店先にも見た目お婆さんが立っていた。


 仕方なく一軒ずつ声を掛けて回る。


「こんにちは、大工の作業場から来たのですが、昼飯ってここであってますか?」

「あいよ。準備出来てるよ」


 二軒目か。絶対神様のおかげだな。

 お婆さんは私の前に手を出し何かを待っている様だ。

 握手だろうか?


 手を取り握手してみる。

「ありがとうございます。棟梁達がお腹を空かせて待っているので、それでは」

「ちょ、ちょっとアンタ、まだ交換が済んでないよ。金目の物、金でも良いからさっさっと交換する物出しなよ」


 はて? 昼飯を交換する? 物々交換(買い物の仕方)くらい何百何千何万とやって来たから草を咀嚼するレベルで自然に熟せるが、棟梁から交換する物なんて受け取ってないぞ。


「それでアンタ、いつまで手を握ってるつもりなんだい」

「おっと。これはこれは、手を握ったついでに挨拶だけでも先に、私は昨日、あっ一昨日か、一昨日ここにやって来ましたクニークルスのフォルカーと申します。やれそうなことがなくて、大工の棟梁のところで強制労働することになりました。改心だったかな? 取り合えず更生するまでは棟梁の下にいることになったので、宜しくお願いします」

「強制労働? 棟梁のところでかい?」

「はい」

「……あの男はまったくもぉー。フォルカーとか言ったかね」

「はい。フォルカーです」

「仕事が終わったら村長に言っておいてあげるから、もう少しだけ我慢するんだよ」

 我慢? え? 取り得ず。

「はい」

「それで、手を放して貰う為には私も挨拶した方が良いのかね?」

 え、えっと……、お婆さんはどう見ても強者じゃないけど、カゲユイマの男とはかなり親しい間柄にあるようだし、ここは素直に従っておいた方が良さそうだ。

「そ、それでお願いします」

ありがとうございました。

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