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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーガルネス編ー(傍観)
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5-28-10 異世界転移は、嵐の予感しかしない。⑩

 真っ暗でほとんど何も見えない審議小屋の床に敷かれた莚の上に寝転がり、うつ伏せになったり仰向けになったり大の字になったり体を伸ばしたり、草を咀嚼しながら今日一日を反芻する。


「うわっ、これ藁だ、ぺっ、ペっペっ、って、あれ? けっこういけるかも……スゲェ―なここ藁まで美味いよ。もう半分地獄ってことで良いんじゃ」


 そろそろ寝るか。


 審議小屋の開けっ放しになった入り口付近を見る。


 流石に閉めた方が良いよな。でも、閉めたらここまで戻ってこれなさそうだし、草も藁も食べるまで区別がつかなくなりそうだし、う~ん。



 入口の手前に寝床を引っ越しさせ勢い良くドアを閉める。

「本当に真っ暗だ。何にも見えないや」


 本当に美味しい草だよなぁ~…………。


 藁も草と違った風味があって美味しいよなぁ~。ちょっと喉が渇くけど、草を食べれば問題無いし。何も見えないだけで本当地獄だよここはっ!!


 これで魔力欠乏症の心配さえなければなぁ~……彼等ってやっぱり死んじゃうんだよな。…………そもそも魔力欠乏症って精神とか身体の維持に必要な魔力(ロイクは悪気と呼称)が不足するから起きる訳で、力を使った後回復が追い付かないのが原因のはず。半分地獄と思われるここは消費した魔力が回復しない。そんなことある訳ないか。


 カゲユイマの男は使っても平気だって言ってたし。他にも何人も平気な人がいるみたいな口ぶりだったし、平気だったから暴れ回った人もいたみたいだし………………あ!? 暴れ回ったり、幾ら使っても平気な人から分けて貰えば良くね?


 そうだよ。魔力には属性とか無いんだから誰からでも輸魔力出来るだろう。皆で目指せメアって協力してるらしいし余ってる人が分ければ良いだけだろう。

 私ですら気付けたのに何で皆気付かないんだ?

 明日、それとなく伝えるとしよう。


 疑ってはいなかったが絶対神様の御言葉は本当だった。青い空。二つの陽。生命力に満ち生い茂る植物。地獄絵巻の内容にそっくり過ぎるこの世界。どう考えても地獄にしか思えない。天気が良い日は陽が地平線の彼方に沈む際に必ず空が燃え世界が赤く染まる世界。

 そんなに明るくはないが陽が沈んだ後、空一面に無数に広がる小さな灯も結構幻想的だし。

 アジアルがないとか言われた時は、『え? いつ起きればいいの?』とかって考えたけど、ここは陽が昇るとかなり明るいし空が青い時に起きて、沈んだら寝れば良いだけだし考える必要なんてなかった訳だ。


 それに、陽が沈んで暗くなると集落の外はかなり危険みたいだし。動き回るのは明るい時だけで十分だと思う。

 日中でも怪鳴豚とか鋸栗鼠くらいの獣はそこら中にいるらしいけど、捕食されるのはヴィスズとか力の使い方が下手な子供くらいなものだろう。ひ弱な私でも流石に怪鳴豚とか鋸栗鼠に捕食される程弱くはない。


 気になるのは、暗くなると森や草原を獲物を求め俳諧する強者な獣二匹だ。

 棟梁の話では、特徴がキャスパリーグに似てるってことだったけど、私としてはティグリスやモーヴェタイガーの特徴に良く似ていると思う。大型の猫って言われたら普通虎とかでしょう。

 それに透明だけどカラフルな斑模様で手足のない細長い胴体の獣って何?

 透明なのにカラフルとか言うから、どういう顔したら良いのか分からなくて、棟梁の顔がちょっと見れなかった。

 誤解は直ぐに解け、どっちも遭遇しないよう絶対神様に御祈りすることにした。


 腕、脚、尻尾がぶっとい、牙、口、耳、手が大きなキャスパリーグ。それってもうキャスパリーグじゃない。

 私の知ってるキャスパリーグは、降伏したからといって安易に背中を見せない様に気を付け、調子の良い良く回る口に騙されない様に気を付け、興味のないふりをしつつ視線を逸らさず睨む様で睨まない様に気を付けてさえいれば勝手に何処かへ去って行く種族。

 卿種最弱の中級種底辺レベルの力しかない種族。

 もし仮に、棟梁の話の通りキャスパリーグに似てるなら気にする必要もないだろう。

 だが、ティグリスやモーヴェタイガーぽい気がするからやっぱり遭遇しないよう最善の注意を払うべきだろう。


 赤、黄、緑、茶、紫、黒と絶妙なカラフルさの斑模様で細長い胴体に手足なし。それって、カラフルなだけで普通に蛇ですよね?

 え? 小型のものでも体長が十メートル以上もある?

 その獣本当に獣なんですか? 私の強者センサーにビンビン来るのですが……。

 は? 透明になって待ち構えていたり、奇襲を仕掛けてきたり、巻き付いてきたり、噛み付いてきたり、全身麻痺の毒攻撃を仕掛けてくる?

 麻痺性のある毒攻撃を持った攻撃力の高い好戦的な捕食者。それってもうただひたすらに強者だ。


 ブルッ。

 何か怖くなってきた。もう一回お祈りしておこう。


 寝そべり草を咀嚼しながら絶対神様に『遭遇しませんように』と祈りを捧げる。


 やっぱり美味い。




 さて、明日も強制労働が待ってるしそろそろ寝るか。そういえば明日は再建した噴水がどうこう言ってたな。


 確か、四年前の大地震で倒壊した噴水だったかな。……分からないなぁ~噴水何て後でも良いだろうに。そんな物直してる余裕があるなら屋根の無い食堂(屋台)とか屋根の無い作業場(青空公共広場)、窓の無い審議小屋(普段は物置)、大部屋しかない診療所、草を積み大きな葉っぱを乗せただけの長屋とか先に手をつけるべき場所があるだろうに……。

ありがとうございました。

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