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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーロイ編ー
35/1227

1-24 精霊魔法を知る物と、母と息子。

***********************

【タイトル】 このKissは、嵐の予感。

【第1章】(仮)このKissは、真実の中。

 1-24 精霊魔法を知る物と、母と息子。

***********************

――― ロイ駐屯騎士団事務所(オルドルロア) 監察官執務室

――― 6月3日 21:41


「突然、転位で入室して申し訳ありません。ジェルマン・パマリ子爵様と監察官さんに協力して欲しい事があります」


「ふむ。先程聞こえた貴族領軍の広域合図に関係している事かね?」


「それも含めてお願いします」


「監察官。どうやらここロイで何かが起きている様です。・・・少し休憩にしませんか?」


「監察官としては、英雄殿の頼みとあっては断れません」


「ロイク君。それで、どんな事かな?」


「まず、先程の貴族領軍私兵隊の広域合図ですが、ロイの総合案内所(ランセニュマン)所長(チィーフ)が、身柄を拘束されていたはずの侯爵邸から逃亡し、商人商家協会(アフェールギルド)に潜伏しているという事で、貴族領軍私兵隊のほぼ全てが出動し、商人商家協会(アフェールギルド)を包囲しました。あれは突入部隊への突入開始の合図の様です。爆発音は、鉱山の坑道内に大量の魔獣が出現し、火災が起き火薬が爆発したからだそうです。鉱山労働者は皆速やかに避難した為、命を落とした者は居ないそうです」


「なるほど、全てロイの市街地で起こっている訳か・・・それで私達は何をすれば良いのかな?」


「ジェルマン・パマリ子爵様は第3師団の団長として、監察官さんは駐屯騎士団の団長代行として、俺と一緒にアルヴァ・ブオミル侯爵様に会っていただきたいのです」


「ブオミル侯爵にかい?」


「はい」


「それで、会ってどうするんだね?」


「駐屯騎士団再編に伴い名誉の戦死を遂げた駐屯騎士団団長の後任が決まるまで、監察官さんが団長の代行を務めるという挨拶と、第3師団の駐屯の挨拶とか、何か適当にお願いします」


「目的は別にあるって事だね」


「はい」


「その位お安い御用だ。どのみち、ブオミル侯爵には会って、直接伝えなくてはいけない事があってね。調度良いタイミングだよ。ハッハッハッハ・・・それに、第3師団もパマリ家もロイク君には借りや恩が沢山あるからね」


「それでは、皆さん休憩にしましょう。報告会議は団長殿と私が戻り次第再会という事で宜しくお願いします。食事や仮眠は今の内に済ませておくいてください」


 俺は、報告会議に参加していた第3師団と駐屯騎士団の団員達と軽い挨拶を交わした。ジェルマン・パマリ子爵様は同じ第3師団所属の妻マリア・パマリさんと何か込み入った会話をしている様だった。


「マリアっ!」


「どうかしましたか?」


「例の話だなのだが、やはりブオミル侯爵の動向が気になる、アリス・・・?・・・?」


 ジェルマン・パマリ子爵様は、キョロキョロと周りを見まわす。


「ロイク君。アリスの姿が見えない様だが一緒ではないのか?」


「えっとですね。アリスさんは、ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様と、他数人でコルトの町のジェルマン・パマリ子爵様の御屋敷に居ます」


「家に居るのか?・・・・・・そうか」


「はい」


「転位移動したのだろうと察しは付くのだが、まだ慣れていないせかい、流石に驚いたわ」


「普通はそうですよね。皆、驚きますよね」


「まぁ~、コルトに居たのね」


「コルトなら安心だ!これで、気兼ね無くブオミル侯爵邸に行けるわ」


「何かあったんですか?」


「何とも腹立たしい内容の手紙がブオミル侯爵から届いてな。行けば分かる事だよ。・・・監察官。ロイク君!行くとしましょう」


「そうですね」


 俺と、ジェルマン・パマリ子爵様と、ロイ駐屯騎士団監察官の3人は、監察官執務室からロビーへ移動した。ロビーでは、倉庫でお世話になった憲兵隊の隊長が机を水拭きしていた。



「監察官様。会議お疲れ様です。中央騎士団第3師団団長ジェルマン・パマリ子爵様もお疲れ様です。あれ?英雄ロイク名誉団長様も監察官執務室におられたのですか」


「ちょっと、色々ありまして・・・隊長が掃除ですか?」


「今は猫の手も借りたい程に人手不足ですから。おっ!そうでした。監察官様。先程連絡鳩が運んで来ました手紙の確認をお願い致します」


「連絡鳩か・・・どれ」


 監察官は、俺が連絡鳩23羽でロイ中に飛ばした手紙を、憲兵隊隊長から受け取ると内容を確認する。



「なるほど、英雄殿が先程話していた内容とほぼ同じ様です」


「それと、この手紙の後にもう1通手紙が届きました。こちらは王国軍ブオミル領本部に届いた手紙を書き写した物です」


「王国軍本部にまで手紙が届いたのかね?」


「その様です」


 監察官は、二枚目の手紙も確認する。


「これは、魔獣討伐への協力要請ではないか」


「はい。それでお待ちしておりました」


「ふむ・・・」



――― 移動中の馬車の中

――― 6月3日 22:00


「なるほど、侯爵邸の地下にルシア・ブオミル前侯爵第二夫人や、前侯爵の三男で嫡出子のブルーノ・ブオミルが、幽閉監禁されていたという事だね」


「はい」


「しかも、現侯爵は噂通りの人間で、女性とりわけ10代の若い女性達を好み、彼女達を玩具の様に扱い、逆らう者は容赦無く処刑していた訳か・・・しかも、現侯爵に抵抗する反対派の正統主義派のリーダー的存在、エーギンハルト・ヘンデル士爵は実は最初から現侯爵側で、反対派を欺き私利私欲を追求していた。エーギンハルト・ヘンデルには疑わしい所が多くあって、正統後継者だった前侯爵の長男ロラン・ブオミルの死に関わっている可能性が高い」


「前侯爵様の長男の件に関しては、推測でしかありません」


「あくまでも可能性だとして、その根拠は、ブルーノ・ブオミルが拘束された際のエーギンハルトの証言と、ロイク君が助け出したブルーノ・ブオミル本人から証言が異なっている事。ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人の証言と、エーギンハルトの証言が異なっている事。そして、魔獣の不正取引時の代金の問題。ロイク君やアリスに対する不敬罪どころでは済まない、大罪人極悪人かもしれないな、この男は・・・」


「英雄殿。私はロイに赴任して2年目なので、前侯爵の治世下でのロイを知りません。また駐屯騎士団の憲兵隊は公では、王国軍の貴族領本部勤務の兵士として身分を偽っておりますので、政治関連にはどうしては疎くなってしまいます」


「監察官さんや憲兵隊の皆さんは、身分を隠して生活しているんですね」


「非番の日に若い女性に対する侯爵の横暴を目撃したという話も何度か聞きました。王国軍の駐屯所では、被害にあった者やその家族から相談される事も多いそうです」


「う~ん。現侯爵の一連の行動から、侯爵は1日の大半を女遊びに費やしている事は良く分かった。そして、内政軍務司法の舵取りは政治に興味の無い侯爵に群がっている者達が行っている。、エーギンハルト・ヘンデルの様に陰で悪だくみをしている者達も大勢居る様だ。侯爵を表立って支えている者達の腹の底が気になるところだ。・・・何か腑に落ちない。何かを見落としている気がするのだが・・・」


「はい、俺もそれが気になって、侯爵にもう1度会って確かめたい事が、あるんです」


「と、言うと?」


「侯爵は非嫡出子です。前侯爵が生前現侯爵を法的に養子として向かい入れていたなら、創生教会に戸籍の管理情報があるはずなんです。ですが、俺のスキルでは見つけ出す事が出来ませんでした。王都の中央議会に養子にしたという報告書が提出された記録も無い様でした」


「うん?ロイク君のスキルはそんな事まで出来るのかい?」


「情報に不正アクセスている訳では無いので、犯罪には成らないと思いますが、正式な手続きを経て入手した証拠ではない為、アルヴァ・ブオミル侯爵様を訴追し爵位を剥奪する決め手にはなりません。ですので、アルヴァ・ブオミル侯爵様本人にもう1度会って、ステータスを確認しようと思ったのです」


「世界創造神創生教会が管理する情報にアクセスする事は、王国法で禁止されていない。親子関係や家系図系譜を調べるだけの事に、いちいち国が規制する必要は無いからね。それで、現侯爵のステータスを確認してどするつもりだね?」


「そこなんです。昨日出入管理手続きの際に、最新の魔導具を体験しました。その時は便利な物があるんだなぁ~と感心しただけだったのですが、考えてみたら貴族階級の者は両親や伴侶の名前を、魔導具で確認出来る訳ですよね」


「あぁ~確かにそうだが」


「あの魔導具は、創生教会が管理する世界中の人間種の戸籍情報な訳ですよね?・・・養子縁組して居なければ、アルヴァ・ブオミル侯爵様の母アイシェ・ブオミル様が未婚のまま出産した、非嫡出子のアルヴァ・ブオミル侯爵様は、魔導具の結果に前侯爵アーマンド・ブオミル様の名前は無くて当然ですよね?」


「なるほど。・・・だが、確かめるのは非常に難しいと思うぞ。相手は侯爵位を持った者だからね」


「魔導具を使わなくても俺のスキルで確認する事は出来るのですが、それではその場に居る人達への証明が出来ず説得力に欠けます。養子縁組していないと分かった時点で、魔導具で身分確認を強制的に強行しようかと考えています」


「随分、大胆な作戦という力押しだね・・・。だが、今のロイク君の話を聞いて、疑問に思っていた事が何と無くだがね、分った気がするよ。ブオミル侯爵は侯爵位を継承してから3年程経つが、王都への報告や中央議会への出席はまだ1度も無い。自領の中であれば領主権限で何とでもなるだろうが、王都への入出管理手続きは無視出来ない。ロイク君の推測はもしかすると・・・」


「団長殿。英雄殿。一門(いちもん)を潜ります。ここからは慎重に行きましょう」


「確かに。何やら騒がしい様だが・・・」


 俺は、後ろの小窓を開け御者に確認する。


「隊長。外が騒がしい様ですが、何かあったんでしょうか?」


 御者台に座り馬車を操縦している。今は御者の憲兵隊隊長と、警護の為に同行した憲兵隊の隊員6人は、慌ただしく確認の作業を行う。



侯爵邸(領主館)の警備部の警備隊も、鉱山坑道の魔獣殲滅の為に出陣する様です」


「そうでしたか・・・」


「本腰を入れて殲滅作戦を開始した様だね」


「思っていた以上に、坑道に兵士が集まっているみたいです」


「4000匹以上の魔獣だ。ロイの貴族領軍私兵隊は約16000人規模だとして、全軍で当たらなければ対処仕切れないと判断したのだろう」


「侯爵邸の警備が手薄になってくれて助かるのはこちらなんでが」


「ん?・・・・・・ハッハッハッハ。そういう事か!なるほどな」


「団長殿、なるほどとは?」


「いやなに・・・後で分かります。そうかっ!さて、監察官では無く、ロイ駐屯騎士団団長代行殿と呼び慣れておくとしますかな。ハッハッハッハッハ」


 どうやら、ジェルマン・パマリ子爵様には全部バレたみたいだ。戦いばかりだと本人は言っていたが、なかなかどうして頭の切れる人だ。



――― 侯爵邸(領主館) 迎賓の間(ゲストルーム)

――― 6月3日 22:40


 王族専用御門は通れない為、ぐるっと回り正門を通り一門を通り貴族専用の入口から侯爵邸に入った俺と中央騎士団第3師団団長ジェルマン・パマリ子爵様と、ロイ駐屯騎士団臨時の団長代行と、駐屯騎士団憲兵隊隊長と部下6人は、直ぐに侯爵邸(領主館)迎賓の間(ゲストルーム)へ通された。


 アルヴァ・ブオミル侯爵様は席を外している為、迎賓の間(ゲストルーム)に来るまでの間、ロイ侯爵邸領主館専属の執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)が、俺達の相手をしていた。挨拶が終わると、簡単な世間話をし和やかなムードで時間は流れていた。



「英雄殿。アルヴァ様が昼食に招待したと仰っておられたので、料理を準備しお待ちしておりましたが、夕食に招待したのをアルヴァ様は勘違いなされたのでしょうか?」


「招待ですか?アルヴァ・ブオミル侯爵様から昼食や夕食の招待を受けた覚えはありませんが・・・」


「・・・・・・そういえば、先日アルヴァ様に会われた際に、アルヴァ様と奥方様方が贈物をいただいたそうで、主が英雄殿への慣例を知らず失礼致しました。後ほど、ブオミル家から慣例に従いご挨拶致しますのでお収めください」


「慣例ですか・・・」


「ロイク君。領主や国王陛下には太古の昔から伝わる慣例があってね。英雄を当主自ら招待した際には、持て成す仕来りがゼルフォーラ王国には残っているのだよ」


「微妙な仕来りがあるんですね」


「まぁ~領主にも国王陛下にも悪気は無い。あくまでも先人達が始めた慣例に従っているだけな訳だからね」


「そうですね」


「ところで、中央騎士団第3師団の団長殿は、英雄ロイク殿とかなり親しい様ですが」


「はい。英雄殿は、私達第3師団の名誉団長でもあるのです」


「何と、英雄ロイク殿は、王国が誇る中央騎士団の名誉団長も務めておられるのですか。素晴らしい」


「成り行きでなっただけでして、王都に行った事もありませんから・・・」


「成り行きだけで、団長には成れません。まして、英雄と呼称される存在には成れません。英雄ロイク殿の生まれ持った宿命なのでしょう」


「どうやら、彼女は英雄に異常な憧れを持った人の様だね・・・」


「何となくですが、マリアさんやダリアさんやアリスさんを見ている感じです」


「あぁ~そうだねぇ~・・・・・・意外に多いんだよ。バイル信者は」


「そうなんですか?」


「コルトやロイの様に内陸部の街よりも、海沿いの街の方が凄いかな」


「へぇ~」



≪コツ コツ コツ コツ


「アルヴァ様がお見えになられました」


「うん?英雄が来たと言うから、てっきりアリスも居ると思ったのに・・・何だ僕が来た意味が無いじゃないか!」


 アルヴァ・ブオミル侯爵様は、アリスさんの名前を口にしながら、迎賓の間(ゲストルーム)の侯爵専用の椅子まで移動し腰掛けた。彼の後ろには男の魔術師が1人同行していた。


 俺達が軽く礼を済ませると、執事家令アンタンダントヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)は俺達の紹介を始めた。


「アルヴァ様。王国軍王都中央騎士団第3師団団長殿です」


「始めまして、ブオミル侯爵様」


「ロイ駐屯騎士団臨時団長代行殿です」


「始めまして、ブオミル侯爵様」


「そして、改めて紹介させていただきます。王国軍王都中央騎士団第3師団名誉団長、英雄ロイク・シャレット様です」


「昨日は挨拶も早々に侯爵邸を後にし申し訳ありませんでした。アルヴァ・ブオミル侯爵様」


「護衛として、駐屯騎士団憲兵隊隊長以下憲兵隊隊員6名が控えております」


「そうか・・・それで、僕を呼んだのは、挨拶する為だけか?僕は忙しいんだ」 


 俺は、アルヴァ・ブオミル侯爵様のSTATUSやJOBの確認を開始した。


「ブオミル侯爵様。貴族領軍私兵隊よりロイ駐屯騎士団に、魔獣殲滅作戦への協力要請がありました」


「ふむ」


 ・・・どういう事だ???


『あら?・・・その人間種は何者なのかしらね?』


 おかしいですね・・・


「駐屯騎士団は、ドラゴン討伐の際に3051名の団員を失いました。現在私や憲兵隊の隊員を含め105名のみです。騎士団事務所(オルドルロア)の警備と魔獣殲滅両方に兵士を割く余裕が御座いません。協力要請に応えたいのはやまやまですが、現状を考え誠に残念に思いますが、お断りする為に参りました」


「そうか。構わんさ。105人で何が出来る。それで、話は終わりか?僕はやる事がある。下がって良いぞ。あっそうだった。士爵家の英雄。昨日一緒に居たアリスを僕に譲れ」


「はっ?」


「僕は細かい事は気にしない。爵位をくれてやるからどうだ!」


『フフフッ。本当に直球の分かりやすい動物よね』


 それ以前のアリスさんは、猫や犬じゃありませんよ・・・


『何者なのか分からない目の前の人間種にとっては、雌とか雄とか生物の繁殖行動の対象にしか映っていないのかも』


 本当に動物レベルです。


『・・・フフフッ』



「ロイク君。どうだ?」


「あぁ・・・はい。突拍子も無い話の展開で思考が止まりかけました」


「私も内心苛立ちを隠すのに必死な状況だよ・・・あれが、父上と同じゼルフォーラ王国が誇る5侯の1人なんだと思うと、実に嘆かわしい。それで、あいつは?」


「それが、変なんです」


「変?」


「はい」


「何が変なのかね」


「あそこに居るのはアルヴァ・ブオミル侯爵様なんですよね?」


執事家令アンタンダントもそう言っていたしな」


「ジェルマン・パマリ子爵様。話をして時間を稼いでください。もう少し調べてみます」


「わ、分った。だが出来るだけ早目に頼むよ。・・・・・・ブオミル侯爵様。先日いただいた申し入れという名の脅迫文について、2・3確認したい事がございます。いただきました手紙を持参致しました。侯爵の名を騙る不届き者による陰謀の可能性もありますので、手紙の確認をお願いします。執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)よ、手紙はこれです。どうぞ」


 執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)は、ジェルマン・パマリ子爵様に近付き手紙を受け取る。


「お預かり致します」


 可視化:ブオミル侯爵領ロイ侯爵邸の見取り図を表示≫


≪・・・表示しました。


 俺。ジェルマン・パマリ。監察官。憲兵隊隊長。憲兵隊隊員6人。アルヴァ・ブオミル。執事家令(アンタンダント)。男の魔術師を表示≫


≪・・・表示しました。


 ・・・そういう事か。そうなると、アルヴァ・ブオミル侯爵の名を騙る目の前のヤスという男は、いったい何者なんだ?



「アルヴァ様。この手紙の内容はまるで、ブオミル家とパマリ家の友好関係を、根底から覆そうとしている悪意その物です」


 手紙の内容を確認した執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)は、驚愕し声を張り上げアルヴァ・ブオミル侯爵の名を騙るヤスという男に意見を述べた。


「そうなのか・・・」


「はい、これはパマリ侯爵家へ宣戦布告しているも同じです」


「い、いったいだ、誰がこの様な手紙をパマリ家へ送ったのだ・・・さ、探し出して処刑しろ!」


「かしこまりました。警備部へ後ほど指示しておきます」


「任せたぞ」



 ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人やブルーノ・ブオミル様を召喚転位した際に、侯爵邸を表示したけど、アルヴァ・ブオミル侯爵様が侯爵邸に居てもおかしくないから気付けなかった。


『かなり、面白い事になっている様ね』


 かなり、凄い展開になりそうです。


『侯爵の母親は何処に居るのかしら?』


 母親ですか?


『えぇ』


 ・・・母親かぁ~・・・折角だし、探索してみます。


 アイシェ・ブオミルを検索≫


≪・・・該当者は0人です。


 え?


『愛人だったのでしょう?』


 なるほど。それなら、アイシェを検索≫


≪・・・・・・・・・アイシェによる該当者49621人。内ゼルフォーラ王国に11774人です。


 随分多いな?


『フフフッ』


 う~ん・・・目の前のヤスって名前の男を息子を、条件に加えて検索してみるか。


 アイシェ。ヤスと言う名の息子がいる。ヤスのJOBに母系継承の召使(セルヴァント)があるから、JOB・inh(インヘリタス)召使(セルヴァント)がある女性。を検索≫


≪・・・・・・該当者129人。内ゼルフォーラ王国に31人です。


 ゼルフォーラ王国の31人に限定


≪・・・該当者は31人です。


 目の前の男は29歳だから、母親が16歳で出産したとして現在45歳。40歳を超えて出産したって話を聞いた事が無いから現在69歳より若い女性に限定してみるか・・・45歳以上69歳以下の女性。を検索≫


≪・・・該当者は3人です。


「ジェルマン・パマリ子爵様。今から、1人の男性と3人の女性をここに呼びます」


「分かった。結局、今はどうなっているのかね?」


「俺にも良く分かりませんが、これでハッキリすると思います」


「そうか。頼んだよ」


「はい」


 俺は、侯爵の椅子に腰掛けるヤスという名の男のSTATUSを改めて確認し、迎賓の間(ゲストルーム)に居る全員に聞こえる様に大きな声で話した。


「ブオミル侯爵家に仕える家臣の皆さん。そして、アルヴァ・ブオミル侯爵様いえヤスさんに、会わせたい方がいます。今から俺の魔術でその人達をここに呼びます。彼等は怪しい人達ではありません。俺が保障します。決して危害を加えない様にお願いします」


「英雄ロイク殿。何をなされるおつもりですか?」


「まぁ~見ててください。執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)様」


「ロイク君大丈夫なのかね?」


「任せてください。それでは」


 【召喚転位】対象:表示中のアイシェさん3人と、侯爵邸の地下に居るアルヴァ・ブオミルさん。場所:俺の後ろ。発動≫


 3人の女性と1人の男性が俺の後方に出現する。男性は、痩せこけ手首や足首には縛り付けられた跡が残っていた。


 そして、俺は、ヤスという名の男の眉が僅かに動いたのを見逃さなかった。


「えっと、貴方の名前は、アルヴァさんですね」


「そうです・・・部屋に居たはず・・・ここは?貴方は?」


「俺は、シャレット士爵家のロイクと言います。ここは、ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸の地下ではなく、迎賓の間(ゲストルーム)です。今から、回復と治癒の魔術を貴方に施します。栄養が不足している様なので、栄養満点の回復薬も1本渡します。ゆっくり飲んでください」


「あぁ・・・ありがとう・・・・・・僕は救い出されたのか?」


 赤マムシドリンク1本。取り出し。


≪・・・赤マムシドリンク1本を道具より取り出しました。


「そうですね。ここの地下で拷問されたり、閉じ込められる事は無いと思います。・・・まずは、これをゆっくり飲んでいてください。それと、確信に変わりましたので、今から俺が良いと言うまで誰も動かないで貰えますか?」


「ロイク君。この人達はいったい誰なんだね」


「今、説明します。ちょっと待ってて貰えます」


「あぁ~」


 精霊聖属性下級魔法【ベネディクシヨン】レベル1の1000分の1自然魔素:清澄聖属性・発動≫


「あ・・・傷が痕が消えた・・・」


「さてと、ここに3人のアイシェさんがいます。1人はコルト町の衛星集落から無理矢理移動させました。1人はロイの西側の貴族領民地区から無理矢理移動させました。1人はロイの下級貴族居住地区から無理矢理移動させました。そして、この3人のアイシェさんの中にアーマンド・ブオミル前侯爵様と関わりの深い方がいます」


「アルヴァ様・・・御母上アイシェ様は既に亡くなていると、仰っておれましれたはずですが・・・」


「そ、そうだ。ぼ、僕の母はとっくの昔に死んだんだ」


「英雄ロイク殿。これは、何の真似ですねか?」


 俺は、執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)様を無視して話を続ける。


「この男性は、侯爵邸の地下5階からここに呼びました。偶然にもアルヴァ・ブオミルさんらしいです。不思議ですよね?侯爵の椅子に座っているヤスさん。貴方はいったい何者なんですか?」


「英雄ロイク殿。無礼ですよ!・・・おふざけは品の良い物にしていただきたい」


「アイシェさん。あそこに居るヤスさんも、ここにいるアルヴァ・ブオミルさんも、STATUSを確認する限り、2人とも母親の名前が同じアイシェというそうなのですが、心当たりはありませんか?」


 下級貴族居住区から移動させたアイシェさんが目を背け床に視線を落とす。


「どうやら、貴方が俺の目的のアイシェさんの様ですね。無理矢理呼び出した上に、この様な状況で本当に申し訳無く思っています」


「は・・・はぁ~・・・」


「ですが、このままあの男の茶番に付き合っていたら、ブオミル侯爵領もブオミル家も領民達全員がどうなってしまうのか、どうやら何派も何も全員が騙されていたみたいですから」


「あ・・・」


「それに、貴方の息子の1人兄が、息子の1人弟を拷問し監禁していた事実を、母親なら知っておくべきだと思い呼び出しました」


「・・・」


「どうして黙っているんですか?アイシェ・ヘンデルさん」


「ヘンデルと言いましたか?」


「はい、執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)様。俺のスキルで彼女のSTATUSを確認したところ、アイシェ・ヘンデル士爵第五夫人と認識出来ました」


「ロイク君。まさか・・・彼女は、エーギンハルト・ヘンデル士爵の奥さんなのかね?」


「そうみたいですね」


「ロイク君。これはいったい?」


「ヤスさん。彼女アイシェ・ヘンデルさんを知っていますね?」


「な、何を・・・僕はこの女なんか知らないぞ」


「ヤス・・・」


「士爵家の夫人程度が、僕の名前を呼び捨てにするな・・・不敬罪だ不敬罪。皆、見ただろう聞いただろう!この女を捕まえて処刑しろ・・・今直ぐ処刑しろ」


「ヤス・・・お前は・・・」


「うわ!また呼んだ。さっさとこの女を捕まえろ!今直ぐ処刑しろ・・・皆処刑だ!僕はアルヴァ・ブオミル。ブオミル侯爵領領主アルヴァ・ブオミル侯爵だ」


 ブオミル侯爵家の警備隊の動きがおかしい。


「な、何をしている。命令だ命令。さっさと捕まえろ!」


「【ブロウ】・・・【ウィンドプリズン】」


 ヤスという名の男の後ろに控える男の魔術師が、アイシェ・ヘンデルさんに風属性の下級魔術を2つ発動させた。精霊聖属性下級魔法【サンミュール】レベル1の1000分の1自然魔素:清澄聖属性・発動≫


 男の魔術師が放った風魔術は発動と同時に消滅した。


「な、何故発動しない・・・」


「な、何をやっている。ロック。お前は風魔術使い何だろう。さっさと何とかしろ」


「はっ!はい・・・」


「忠告しましたよね?危害を加えると!闇属性魔術【レストリクシオン】≫」


 精霊闇属性下級魔法【【レストリクシオン】レベル1自然魔素:清澄闇属性・発動≫


「どうした、さっさとやれ!」


 ロックと呼ばれた男の魔術師は動かない。


「その魔術師は、俺の魔術で暫く動けないと思いますよ。ヤスさん」


「な、何だと・・・」


迎賓の間(ゲストルーム)を警備する者は、アルヴァ様をお守りしなさい」



「どうしたのですか、アルヴァ様を今直ぐお守りしなさい」


 警備の兵士達は誰1人、執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)様の指示には従わず動かなかった。執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)様は状況が理解出来たのだろう。剣を抜き、俺とヤスの間に移動する。


「警備の者は、私と共に不敬を繰り返すこの者達を取り押える。受付の担当官は警備隊を今直ぐここへ集めなさい」



「何をしているのですか・・・」


 誰1人その場を動こうとする者は居なかった。


執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)様。貴方ももう分かっているのではありませんか?・・・そうですよね?」


「なっ・・・」


「それに、皆さんには動かないでくださいって忠告しました。そこの魔術師は危害を加えるとなという約束も破りましたので、やりたくは無かったのですが仕方なく束縛の魔術で拘束しました」


「ロイク君」


「大丈夫ですよ。ジェルマン・パマリ子爵様と監察官さん。それに憲兵隊の皆さんに、アイシェさんに本物のアルヴァ・ブオミルさんは何もしなくて良いですから」


「武器を迎賓の間(ゲストルーム)の入り口の兵士に渡してある。戦いになったら、こちらが圧倒的に不利な状況なのだよ」


「俺が居ない場合は限りなく不利な状況だと思いますが、ここに居る警備の人達のレベルは、高い人で20程度です。大丈夫ですよ。戦いになりませんから。まっ見ててください」


「い、言わせておけば、我々は侯爵邸(領主館)警備部警備隊!大恩あるブオミル侯爵家に対して許さない。英雄だか何だっか知らんが、ふざけやがってぇっ」


「おい。止めろ1人で突っ込むなぁっ!」


 執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)様の静止を無視し、迎賓の間(ゲストルーム)の入り口から、剣を両手に構えた1人の若い兵士が叫びながら突撃して来た。


「おや、威勢の良い若者が居る様だね」


「そうですね。残念です」


 精霊闇属性下級魔法【レストリクシオン】レベル1自然魔素:清澄闇属性・発動≫


 突撃していた若い男は、前のめりに倒れ動かなくなった。


執事家令(アンタンダント)ヨン・ライアン家臣女の男爵(バロネス)様に、侯爵邸の皆さんごめんなさい。皆さんは俺との約束を破りました。侯爵邸に居るブオミル侯爵家に仕える人全員に魔術を発動し自由を奪いました。身体に害はありませんから安心してください」


「ロイク君。これは?」


 ジェルマン・パマリ子爵様は、周りを確認し俺に質問した。


「もう何だか面等になって来たので、俺達以外を、恐怖状態で束縛拘束しました」


「そ、そうなんだね・・・」


「動けない人達が大勢いる状態なので、侯爵邸に居る全ての人を、ここに呼びます。その方が安全ですし、証人は多い方が良いですから」


「そ、そうだね・・・」


 【召喚転位】対象:ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸に居る全ての人間・場所:ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸の迎賓の間(ゲストルーム)・発動≫


 300人強の人間が、迎賓の間(ゲストルーム)に姿を現した。重臣達に奥様方に召使(セルヴァント)料理人(シェフ)に、監禁状態にあった女性達に、愛人達・・・そして、怪しい男が1名。


「何だ?私は鳩小屋に居たはずだが・・・」



「近くからの転位とはいえ・・・物凄いね。これは・・・」


「慣れてください。って、あれ?貴方はどうして動けているんですか?」


 俺達以外は自由を拘束したはず?全身をローブで覆い隠す怪しい男は普通に動き喋っていた。


「お前は何だ?」


「俺が質問してるんだけどなぁ~・・・」


「【イグニス】≫」


 怪しい男は、火属性の中級魔術を発動させ、俺へ飛ばす。


≪フワッ


 大きな炎は俺にぶつかる直前、聖属性の結界によって無効化され消滅した。


「お前、何をした?」


「質問は俺がしてるんだけど・・・」


 精霊聖属性魔法【テルールパンセ】レベル1の100分の1自然魔素:清澄聖属性・発動≫


「な、何だ・・・身体が動かん・・・」


 1の100分の1だと、この人・・・何者なんだ?


『ねぇ、ロイク。その人間種なのだけれど、何か変よ!貴方から伝わって来るイメージが変なの』


 え?


「お前・・・これは、精霊魔・法・・・」


 精霊魔法を知っている者?


「確認しておきたい事が出来ました。貴方を拘束します」


 精霊聖属性魔法【テルールパンセ】レベル1の50分の1自然魔素:清澄聖属性・発動≫


「退くぞっ!ゴアァ・・・」


「いや、まだだ、こい・・つ・・・の・・・」


「グググッ・・・聖属性だと・・・一旦、退く・・・ぞぉ・・・」


「退く・・・」


「いや」


 聖属性の恐怖状態でも完全に動きを抑え切れていないみたいだ・・・それに、誰と話をしてるんだ?4人5人?声が幾つも聞こえるんだけど・・・


『やっぱり変だわ』


「誰と話してるんですか?貴方は何者ですか?」


「【アニマ】」


 男は、風属性の上級魔術を発動させ、迎賓の間(ゲストルーム)の中に風の嵐を巻き起こした。


「あの状態で魔術を?・・・な、何を考えてるんですか・・・皆が・・・皆さん今結界を張ります」


 精霊聖属性下級魔法【サンミュール】レベル1の1000分の1自然魔素:清澄聖属性・発動≫


 男が発動した上級魔術の風の嵐は、迎賓の間(ゲストルーム)に居る300人強の聖属性の結界に触れる度、少しずつ無効化され消滅した。嵐が収まるまで2ラフン()はかかっただろう・・・


「あぁ~部屋が凄い事になっちゃったじゃないですか・・・あれ?」


「ロイク君。君が我々に結界を張った一瞬の隙を付いて、あの男ならローブだけを残し消えた様だよ」


「・・・」


 どういう事だ?加減していたとはいえ、聖属性の魔法で恐怖状態にしていたはずなのに・・・


『ロイク。今からそちらに行きます』


 分かりました。後は全貌を明らかにし解決するだけですし、皆を呼びます。


『お願いするわ』


 はい。【召喚転位】対象:マルアスピー・シャレット。パフ・レイジィー。アリス・パマリ。ロメイン・バトン。リック・マケイン。ルシア・ブオミル。ニーナ・ブオミル。ブルーノ・ブオミル。ツヴァイ。ドライ。ゼクス。アハト。イーリス。ヴィンデ。ブルーメ。パルメ。場所:ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸の迎賓の間(ゲストルーム)・発動≫


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