5-23 ランドリート⑧ ~悪気・参~
我が家ではデジュネ。世間では、昼食、ランチ、中食、小食と呼ぶのが一般的。
そう今日は昼にとるはずの食事をまだ食べていない。
フォルティーナに巻き込まれた俺達は、今も絶賛巻き込まれ真っ最中である。
―――ガルネス神王国・西ガルネス神平原
ランドリートの町・四つの肥溜め池付近
R4075年9月25日(風)19:18―――
フォルティーナは、創造神様から罰を与えられていたはずなのだが……。神様次元を気にしていてもしょうがない。考えたところで、気にしたところで、聞いたところで、何一つ解決なんかしない。解決したためしがない。
フォルティーナは、俺の神授スキル【タブレット】に機能を勝手に追加した。対象の認識ガードを解除し最高品質で精密走査する『スキャン』と、スキャンした情報をコルト下界の理仕様に互換変換する『コンバージョン』という二つの機能だ。
最後の一人をコンバージョンしているところに、ただならぬオーラを纏った尋常ではない靴下の様な形状をもった間違いなく汚物でしかないだが何故か心安らぐ未知なる存在を発見したと連絡が届いた。
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肥溜め池の前に集まったランドリートのノルテールノーンと俺達は、フォルティーナの正面で跪く騎士三人と正座し額を地面に押し付けるエロ猫家主こと不敬なキャスパリーグを見守っていた。
次はいったい何が始まるのか。何も聞かされていない状況では、他に手立てがない。やれることがない。
「神フォルティーナ様。こちらが、池の底で発見しました未知なる物体でございます。どうぞ」
「お前はふざけているのかね? いいかね、あたしへの奉献がサザーランドの片足の靴下とは良い度胸だね。一万歩譲っても欲しく無いね。良く考えるね。それは何処にあったね」
「こ、肥溜め池の中です……」
「その通りだね。それで、これは何だとあたしは教えたね」
「く……つ下……で……す」
青褪めては冷や汗を流し震える騎士ミチュマチュ。
彼の姿を見ていて思った。彼はもう俺達の仲間だと。
「分かれば良いね。あたしは無駄な時間を無駄に生きることこそ人生だと、人生の潤滑油はだね無駄の中にしか存在しないと説いても良いのではないかと思う時があるね」
「さ、……流石で……ございます。か神……フォルティーナさ……ま……」
騎士ミチュマチュ、そこは適当に流すところで、このままだと脱せ、
「うんうんだね。良いかね。そもそも」
んぁぁあああ―――もうっ!!!
「それは汚いね。そんな物を欲しがるのは持ち主くらいだと相場が決まってるね」
騎士ミチュマチュが両手の手のひらで掲げている汚物。
心の底から二度見を拒否したいがこのままでは話が進まないだろう。仕方なく汚物を視界に入れる。
ないわぁ~。
…………って、あれ?
さっきからフォルティーナは、あれをメアの、
≪「旦那様よ。あの汚物は、妾の御祖父様の靴下なのか?」
≪「って、言ってましたね」
≪「フォルティーナ様故」
≪「真実なんだと思います。迷惑や嫌がらせは盛大ですが虚偽やギャンブルには煩いですからね」
≪「御祖父様の靴下が、しかも片足だけランドリートにあるのは何故か?」
≪「さぁ~?」
≪パチンッ
「「「「「……お、おおぉぉぉ―――っ!!!」」」」」
リュシルとレソンネで話をしていると、フォルティーナのフィンガースナップの音が響いた。そして音を追いかけるように、沢山の感情を孕んだノルテールノーンの皆の声が耳に聞こえて来た。
ありがとうございました。