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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーガルネス編ー(傍観)
330/1227

5-21 ランドリート⑥ ~悪気・壱~

・・・・・・・・・・


・・・・・・・


・・・・



「......というわけなんです。で、戻って来てからも疑問が増えまして、フォルティーナが言っていたメアからの流れ人って、ランドリートの住民のことですよね?」

「当然だね。良いかねロイク。そもそも」

「で、あっおい様が仰っていた爾後の民も、ランドリートの住民ですよね?」

「その通りどすえ」

「参考までに一つお聞きしますが、あっおい様の近いの定義ってどんな感じになってます。時間とか距離とか何となくで良いんで教えていただけませんか?」

「そうどすなぁ~。せいぜい五分あっ五ラフンでっしゃろか。それ以上やと、気持ち遠いな思いますえ」


 ……う~む。五ラフン。五ラフン。……それって距離にするとどの位だ? さっき、ユーコ様はランドリートからここまで跳躍二回で移動した。前は三回だったって……それって時間にするとどの位だ?


「お前達はいったい何を言ってるね。時間? 距離? 五ラフン? それ以上だと遠い? ハァ~ンッ!! それにだね。あたしは神だね。そのあたしを無視するとは良い度胸だね。……お前達には再教育の場が必要だと気付いてしまったあたしに感謝する時が必ず訪れるでしょうだね」

≪パチン


・・・

・・


―――ガルネス神王国・西ガルネス神平原

 ランドリートの町:大豪邸二階の広い部屋

R4075年9月25日(風)14:30―――


 フォルティーナのフィンガースナップの音が響いた瞬間、俺達はランドリートの中央に鎮座する絢爛豪華な大豪邸の二階の広い部屋へと移動していた。

 リュシルと俺がさっきまで腰掛けていた応接用のソファーが置いてある家主の部屋だ。


「なっ!!! おわっ……ま、……またお前達………な、………何の、次は何の用だ」

 執務椅子から転げ落ちそうになりながら仁王立ちし尊大な態度で取り繕う家主。


 家主から伝わって来る感情は間違いなく恐怖。王族としての見栄なんだろうけど大したもんだ。


「こっちは絶賛今取り込み中で忙しいね。黙ってるね。……あぁ―――ロイク、あれは何だね。変なのが混ざってるね」

 フォルティーナは、目配せしながら大きな声で俺に問うた。

 そこまであからさまだと目配せの意味ない……。


「お、女の分際で王族のわ、私に向かって黙れだと」

「うるさいね」

≪パチン

「ギャァ――――――――――――――――――――アガガガガルゥアガガガガガガ…………」



 あっおい様、ユーコ様、ハイジィーさん、フォルティーナ、リュシル、そして俺は、執務椅子に腰掛けたまま気絶する家主を放置し、応接用のソファーに腰掛けている。


 俺の右隣りにはフォルティーナが左隣りにはリュシルが腰掛け、正面上座にはあっおい様、その右隣りにはユーコ様が左隣りにはハイジィーさんが腰掛けている。


 漆塗りの高そうな応接用のテーブルの上には、神茶と工房ロイスピーの菓子が並んでいる。


「あぁ~落ち着くねぇ~」

 フォルティーナは両腕を頭上に伸ばしニヤニヤと残念な表情を浮かべながら、主張する男の浪漫を俺に押し付けている。


「あ、あのぉー、アシュランス国王王妃両陛下……これは。えっと、今はいったいどんな状況になっているのでしょうか?」


 事態を全く呑み込めていないハイジィーさんに質問された。

 だが残念なことに俺もこの状況を把握し切れていない。

 こういう時は、迷わず素直に聞くに限る。という事で、

「フォルティーナ。ハイジィーさんを連れて戻った俺達をもとの場所に戻したってことは何か意味があるんですよね?」

「遊びの女神。私も聞きたいぞ。茶と菓子で寛ぐのはやぶさかではない。だが未だ訳を聞いていないぞ。悪狼と私を屋外に強制召喚した挙句、ランドリートに転移移動したのは何故だ。さっさと言わないと本気で怒るぞ」

「何を怒っているね。答えを直ぐに知りたがる。気持ちは分からないでもないね。だがだね。だがしかしだね。考えるね。思考そっちのけで知り得てしまった情報に何の意味があるね。全く無いね。無価値そのものだね。思考し悩み苦しんだ挙句の果てに何も得られなくても良いね。その過程にこそ意味があるね。分かったかね」

「それで、ここに俺達を戻した理由は何ですか?」

「私達を強制召喚し転移移動した理由は何だ。早く言わないと怒るぞ」

「私は今どういう状況にいるのでしょうか?」

「のぉ~旦那様よ。この茶なのじゃが味を、葉をかえたのか?」

「これ最高級品の神茶どすなぁ。……久々どす。久々に口にしたで」


 ここに来てもう一つ気になることが……。ハイジィーさん。この状況。


 俺は、えらいことになっている家主へと視線を移す。


 家主えらいことになってしまってますが。

 ハイジィーさんは姫様の侍女さんですが。

 家主盛大に叫んでたのに誰も来ないのですが。

 執務室や応接室で何て言うかそのちょっと臭ってはいけない……トイレと言いますか……あぁーはい。


「クンクン、クンクン。臭うのぉ~。あのエロ猫、トイレの躾からであったか。旺盛に越したことはないが、下がだらしない猫は迷惑この上ない。旦那様もそうは思わぬか」

 家主の名誉はどうでも良いが、何となくあえて口にしなかった言葉を……。ここは適当にはぐらかすとしよう。

「そ、そうですね。ところで迷惑って普」

「彼の類の排泄物には植物を枯らす効果がある。故に百害あって一利なし。知らなかったのか?」

 通に犯罪ですよ。攫たり脅したりって迷惑とかそういう問題じゃないですよね。って、言わなくて良かった。下って、そっちでしたか。


「あれ臭いね」

≪パチン

≪キャァ~~~~ え? 何? 臭っ!!! 急に臭い殿下がぁ~~~

 フォルティーナのフィンガースナップの音が響くと、家主の姿が部屋から消え、扉の向こう側、隣の部屋から女性達の悲鳴や罵詈が聞こえて来た。


 家主の名誉はどうでも良かったが、ここまでしなくても…………。

ありがとうございました。

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