5-18 ランドリート⑤ ~情報~
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ガルネス神王国のお姫様には学習能力が無いのかMっ気が有るのか。
リュシルを挑発するわ、挑発するわ。話を聞かないわ、聞かないわ。
根気強く二〇ラフン程質問し続けてみたが、「リリスの分際で!」「命令に従いなさい!」「目的を言いなさい!」「解放しなさい!」と声を荒げ繰り返すばかりでてんで話が進まなかった。
話を遮られまくしたてられていては何時までもこの状態が続いてしまう。
仕方なく、神気スキル【時空牢獄】(内から外への干渉は視覚のみ、外から内への干渉は視覚と聴覚のみ)で彼女を拘束することにした。
押し掛け、家主と付き人を拘束した挙句の果てに怪我までさせたとあっては一大事になりかねない。もう遅いような気もしなくもないが、これは俺の心の問題だ。ちょっとだけ反省と謝罪の意もあり急いで拘束した。
身の安全と命の保障。誰もが持つ最低限の権利だよね……。
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―――12:50
「姫様と家主が怪猫族ってことは、ガルネス神王国の王族はキャスパリーグってことですか? はいなら首を縦に、いいえなら首を横に一度降ってください」
「……」
姫様は、見えない壁を激しく攻撃し続けている。
怒りで声が耳に届いていないや。さて、こうなると次はどうしたものやら……。
「のぉー旦那様よ。良いか?」
「どうかしましたか?」
「愚劣極まりなく耳障りであったメス猫がこの上なく目障りで妾には耐えられそうにない。分かるか?」
その気持ち痛い位分かります。ですが……今は我慢するしかないんです。今は。でもこのままリュシルを放置したら…………宜しくないな。……そうだ!
「リュシル、例えばですけどぉ―。……例えば、俺が、良いよ。って、言うまで目を瞑ってるってのはどうですか?」
「ん!?……わ、妾は嬉しく思うが良いのか? ここは旦那様が言う人前ぇ―――あぁ!?……猫二匹、牛虎悪人、兎一匹。……言う通りにする故、激しく求めてくれるか?」
ん? ……何か勘違いしてる? あ、でも目閉じてくれたみたいだしこのままでいいや。
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姫様が疲れて動かなくなるまで放置すること三〇ラフン。
余談だが、目を瞑ったリュシルを放置出来たのは六ラフンだけだった。
「旦那様よ。焦らされるのも悪くはないのだが、聴覚をくすぐられ刺激的で官能な世界に手招きされてかなわぬ。故に、妾を放置し兎と戯れるのはそこまでして貰えぬか」
え?
―――13:20
「......ハイジィーさんの自然血族だけってことですか?」
「その通りです。アシュランス国王王妃両陛下」
「不思議なこともあるものよのぉーウンウン。兎魔王の民は鼠魔王の民同様質より量の多産と安産に秀でた種族のはず。故に兎魔族を見かけたら周囲に二〇は居ると思え、悪兎族を見かけたら一〇〇以上は居ると思え。幼子でも知るメアのあるあるなのじゃが……誠に九人しかおらぬのか?」
「はい」
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姫様の付き人の女性の名前はハイジィー。種族はモーヴェバニー。
姫様を放置している間に、自己紹介を済ませ、情報を交換していたのだが、にわかには信じがたい内容が幾つかあった。
騎士三人......”騎士チュイチョイ、種族は悪虎族。騎士ムンペトンペ、種族は悪牛族。騎士ミチュマチュ、種族は悪人族。騎士ミチュマチュはヴィスズだが三人の中で悪気の数値が一番高い。”......にも同じ質問をしてみたが、ハイジィーさんとほとんど同じ内容だった。
彼等は、永遠なる祖国よりこの世界へと渡りガルネス神王国を興した気高きノルテールノーン。まぁ~、彼等は建国後に生まれた第三世代らしいが。
因みに、ノルテールノーンとは......
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ガルネス神王国の身分制度
神王(所謂、国王や王や皇帝や帝)
教王(世界創造神創生教=旧教の最高指導者)
(神王が兼ねる場合が多い)
神王族(神王の一族。所謂、王族)
――― 神民 ※不文律※ ―――
教侯爵(神民の枢機卿を含む)
教伯爵(神民の大司教を含む)
教子爵
教男爵
神王族教外戚(神民の神王族外戚)
神民
・神民と呼称されることは無く、
【ノルテールノーン】と呼称される。
・建国の民、立国の民。
・身分は王民の貴族神官より遥かに高い。
☆彼等の主張は置いといて、ようするに☆
・コルト下界の人間属五種族に
化けたしたメア(亜)下界の悪魔種族。
中にはそのままの姿で暮らす者もいる。
・メア下界へ帰(戻)れず、
コルト下界に在留する悪魔種族。
・メア下界へ帰(戻)る気の無い、
コルト下界に在留する悪魔種族。
・生まれも育ちもメア下界で、
コルト下界に入界した当事者は、
第一世代と呼称される。
・生まれも育ちもコルト下界で、
ファーストノーンを両親に持つ世代は、
第二世代と呼称される。
・生まれも育ちもコルト下界で、
セカンドノーンを親に持つ世代は、
第三世代と呼称される。
・第四世代以降はノーンと呼称される。
――― 王民 ※成文法※ ―――
神王族外戚(非神民)
侯爵 or 枢機卿
伯爵
準伯爵 or 大司教
子爵
準子爵
男爵
準男爵 or 司教 or 司祭長
騎士爵 or 司祭 or 助祭長
――↑貴族 ※神官は非貴族だが同等※
――↓一般
準騎士爵 or 助祭
騎士見習い or 修道士
上級国民
国民
――↑一般
――↓奴隷
美質奴隷 ※価値の高い奴隷※
・特殊奴隷
・賃貸奴隷 ※日雇いの奴隷※
・従属奴隷
・労働奴隷 ※軽犯罪奴隷※
一般奴隷 ※価値のある奴隷※
・特殊奴隷
・賃貸奴隷
・従属奴隷
・労働奴隷
悪質奴隷 ※価値の低い奴隷※
・重労働奴隷 ※国の管理下に置かれる※
・兵役奴隷兵 ※国の管理下に置かれる※
※詳細はどこかで※
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......神王一族に次ぐ身分とされ貴族神官よりも遥かに高貴な不文律なんだそうだ。
彼等の国の身分制度に気になるワード奴隷の存在があったが、今は彼等がどうしてコルト下界で平然と生活出来ているのかの方が重要だ。
結果的に、この町ランドリートとランドリートに暮らす住民達と彼等について多くの情報を得た訳なのだが、その中でも重要そう克信じがたい情報が次の五つだ。
一つ目は、悪気の存在しないコルト下界で、メア下界の悪魔種族達が平然と暮らせているのは何故なのか?
悪魔種族の多くは体内の悪気が枯渇した時点で動けなくなりやがて衰弱し息絶える。弱ったモーヴェドラゴンを視たばかりなので、悪気と衰弱の関係性はそれなりに理解しているつもりだ。
勿論、上位の悪魔種族の中には、自然の力の循環自然魔素の邪属性や闇属性、呪いや毒、他者の負の感情悪意や邪念を体内に取り込み悪気に変換し補給できる者や、悪気が枯渇した状態で活動できる者もいるが、これはあくまでも特殊なケースでありそう多くはない。
では何故、ランドリートでは可能なのか?
付け加えるなら、ランドリート以外にもこのような場所が存在するのか?
回答は、「ランドリートは奇跡の地だからです」「ノルテールノーンのみに世界創造神様の奇跡が神授され恩恵を享受出来るのです」「ランドリート以外にこのような場所は存在しません」「神王国内に存在する奇跡の地はランドリートのみだと断言出来ます」だった。
メア下界の絶対神で多くの名を持つ邪を司りし生と死の女神ナナンフェルテリーナ様の名前は一度も出て来なかった。
旧教の総本山があり旧教が国教であり旧教の教王は神王か神王一族。絶対神が世界創造神に挿げ替えられていたとしてもおかしくはないとは思うのだが……。
≪「メアへの帰界叶わず心が荒んでしまったのであろう。抗い生き延びようとする姿勢は美しく素晴らしいと褒め称えたいところだが、手段が解せぬ。何故に邪神などを崇め縋ったのか」
邪神ねぇ~。創造神様のことを邪神扱いするのメア下界くらいですけどね。まぁ~、
≪「たぶんですよ。メア下界に帰れないイコール邪の女神ナナンフェルテリーナ様に見捨てられたと考えたんじゃないかなと。それに邪の女神ナナンフェルテリーナ様がお隠れになってかなり経っていたんですよね?」
≪「御祖父様がメアを託されたのは、御祖父様が成人するかしないか頃だと爺やから聞いたことがあるが、興味が無かった故、微妙な御祖父様に信託してまでお隠れになられた絶対神様の顛末を妾は知らぬのじゃ。爺やに聞きに行くか?」
≪「そのうち気が向いたら……聞きに行く…かも。えっと、彼等に確認しておきたいことがまだあるんで、一旦この話は終わりましょう」
二つ目は、そのままの姿で違和感無く生活している者もいるそうだが、ヒューム属五種族の姿に化ける能力を彼等が所持しているのは何故なのか?
人族と小人族にしか神授スキルは神授されない。色々と例外も見受けられるが、これは一応、コルトの理でもある。
そして、幾つか存在するヒューム属五種族の姿に化けるスキルは全てバースデイスキル。
メア下界の悪魔種族が所持しているとなると異例も異例例外というより作為を感じてしまう。
「生まれたばかりの子供ですら所持しているので、そういうものだと思っていました」
「え?」
神授スキルって一六歳以上にならないと。……あれれ?
「海よりも深く空よりも広い世界創造神様の愛情に支えられている限りノルテールノーンを永遠に不滅なのです」
「は、はぁ~……」
答えになってないし。
回答は、「世界創造神様の愛情が具現し享受出来るのです」「擬態は生まれたばかりの子供ですら持っている固有スキルです」「固有の初期スキルが珍しいのですか?」だった。
世界創造神様の愛情の深さと大きさについて詳しくはなったが、結局、何も分からないままだった。
「「「「ノルテールノーンは世界創造神様の子供なのですっ!!!」」」」
≪「こ奴らはいったい何を申しておるのか? メアの存在は絶対神様によって創造されし至高の賜物。故に、皆等しく優れた力を継ぎ切磋琢磨する。力弱き者は力強き者に従い、知有る者は知無き者を従える。力であれ知であれ強者は」
長くなるやつだ。これ。仕方がない。
≪「それはそうと、今の話だと、ファーストノーンと呼ばれる世代の悪魔種族達は、どこでどうやって何がどうなって擬態の能力をスキルを手に入れたんですかね?」
≪「聞かずとも最早答えは分かっておるではないか。世界創造神様の恩恵だ愛情だと宣ってくれるのではないか?」
≪「何かそんな気がして来ました。ハハハ……まぁ~、一応念の為に聞いてみますね」
「ファーストノーンの皆さんは、最初から擬態を持っていなかったと思うんですが、今は持ってるんですか?」
「気高きノルテールノーンの偉大なるファーストノーンの御方方は、世界創造神様より神授されし試練を」
「一人の犠牲も出すことなく余裕で乗り越えられ、不届きにも世界創造神様を驚かせてしまわれました」
「世界創造神様は天より大地へと光を走らせ大地より天へと闇を這わせ光と闇の帳を御造りになられました」
「光と闇の鬩ぎ合いは三日三晩続き、下された神授は戒禁ではなく希望でした」
「交互に訪れる光の支配と闇の支配。気高きノルテールノーンの偉大なるファーストノーンの御方方の御体に」
「「「「希望の光が飛び込んだのはその時です」」」」
「「「「刮目せよ」」」」
「ノルテールノーンの繁栄が始まった瞬間を」
「音が聞こえます」
「「「「耳を澄ませよ」」」」
「それは、ノルテールノーンの瑞光を刻む音」
「それは、ガルネス神王国を賛称する民の声」
「待つ者がいます」
「「「「声高らかに宣言せよ」」」」
「我等は」
「気高き」
「我等は」
「気高き」
「「「「ノルテールノーン」」」」
・・・えっと、これは、何かな? 式典とかでやるサクラ呼び掛けみたいな?
「今のは?」
「ガルネス神王国副神王補佐代行殿下が守護騎士、世界創造神創生教聖騎士ミチュマチュがお答え致します」
定期的に名乗りを上げるのはこの国の仕様か何かなのか?
「……お願いします」
「幼等教育時の必須科目です」
「……もう少し詳しくお願いできますか?」
「お答え致します。世界的にも有名な歴史文学でしたのではしおり過ぎました。申し訳ございませんでした。神王国では幼等教育時の必須科目として神王国建国記第一章ノルテールノーンの気高き風を学びます。今のは子供達にも人気の高い冒頭の件を最もポピュラーな形で表現したものです。実は、この冒頭には物凄い秘密が隠されているのです。それは、気高きノルテールノーンの偉大なるファーストノーンの御方方が、擬態の力を世界創造神様より神授していただいた瞬間です。巧みに隠されているのには訳があるのです。それは、他の者達からの妬みを回避する為だと語り継がれています」
「へ、へぇ~……」
歴史文学ですか。聞いたことないや。……突っ込みどころ満載過多で思考が止まりそうだ。ハハハ。
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三つ目は、スキル【イヴァリュエイション】の完全耐性を所持しているのは何故なのか?
「不思議なことに教会の魔導具で私達ノルテールノーンを解析すると文字ではなく絵が表示されてしまうのです」
「必ず絵が表示されるので、ノルテールノーンの証明にはなるのですが、これでは身分証が作れません」
「そこで開発されたのが、神王国と世界創造神創生教が連帯保証人となった教貴族カードです」
「ノルテールノーンは不文律ですが他国ではそうもいきません」
「ですので、解析や鑑定を回避する為に、身分の確認や詮索が免除される貴族特権の行使が可能な一枚教貴族カードが生まれたのです」
なるほどね。絵ですか。あれは絵であってたのか。
教貴族カードが開発された経緯は分かったけど、肝心の完全耐性についてはサッパリですよ。……ん! 見て理解出来る身分カードがある。スキルチェックが可能ってことになるのか?
「何方でも構いませんので、教貴族カードの記録内容を見せていただけませんか?」
「「「「えっ?」」」」
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「騎士様のステータスやスキルを開示する訳にはいきません。ですので、わ、私のを御見せ致します。私でお許しくださいませ」
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ハイジィーさんの教貴族カード(身分カード)を受け取り確認した。
「普通ですね」
「はい。そのように作られているそうです」
≪「どれどれ、ほうぉー、悪魔種族にも関わらず誠に神授スキルを持っておるわ【イヴァリュエイション・完全耐性】【擬態】【隠蔽の情】【プリペアの心・極】。称号は【越えし者】か。数値は下の下、頼りなくはあるがいと面白い故、連れて帰ろうと思う。良いか?」
≪「……姫様の付き人みたいだし許可を取ってからにしてくださいよ。それと。本人の意思が最優先ですからね」
≪「ふむ。メス猫は愚か故に人の話を理解出来ぬ。妾の望みは叶わぬ…………何とかならぬのか?」
無視で良いよな。
「この【プリペアの心・極】ってどんなスキルなんですか?」
「……初期スキルは、ノルテールノーンであれば皆知っておりますので、この状況ですし御教えすることは出来ますが、成長過程で神授していただいたスキルは簡単に他人に話していけないものでして……すみません。はい」
「それならそれで構いません。無理に見ようとか聞こうとか思ってませんから安心してください」
≪「備える、整える、……何かを準備したり整備したりするスキルの極まったものが【プリペアの心・極】だとは思うが、どう考えるか?」
≪「そうだとは思うんですが、情報が無いんで何とも言えないです」
回答は、「世界創造神様の優しさが具現し享受出来るのです」「完全耐性は生まれたばかりの子供ですら持っている固有スキルです」「固有の初期スキルが珍しいのですか?」だった。
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四つ目は、リュシルの魔眼、半神具の魔導具【MRアイズ】、俺の神眼、神気スキル【タブレット】の検索機能ですら看破不可能な神授スキル【隠蔽の情】だ。
まず初めに、回答は、「世界創造神様の惻隠が具現し享受出来るのです」「隠蔽の情は生まれたばかりの子供ですら持っている固有スキルです」「固有の初期スキルが珍しいのですか?」だった。
「このスキルのおかげで擬態が完成します」
「隠したいと思うだけで自分自身を隠蔽することが出来ます」
「慣れるとこんな使い方も可能になります」
騎士ムンペトンペは、腰の剣を抜くと腕を伸ばし剣を頭上に構えた。
「見ていてください。ハァ―――ッ」
おっ! MRアイズは確り綺麗に映し出しているが、これは凄い。
「剣が消えましたね」
「私は愛用のこの剣でしか出来ませんが、器用な者になると自分の体よりも大きな武器を消すことも出来ます」
不可視化とも違うし面白いかも。これって、高度な認識阻害をかなり無駄遣いしてて、実に良いかも。
≪「身分カードでステータスとスキルを見てしまうと、信じるしかないですよね?」
≪「カードそのものに【隠蔽の情】や【プリペアの心・極】が干渉し……妾の考え過ぎやもしれぬ。旦那様が気にするようなことではない故、忘れてくれるか」
≪「それは俺も考えました。心配してくれてありがとうございます。ただ、俺達を騙すとしたら彼女ではなく、ガルネス神王国や旧教だと思います。悪意を前提にカードを発行したなら、偽装や隠蔽や認識阻害ではなく最初からフェイクの情報を真実として記録するでしょうから」
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五つ目は、怪我や過労程度であれば、ランドリートの町で二、三日静養するだけで完治回復するのは何故なのか?
「ノルテールノーンの人だけなんですか?」
「はい。気高きノルテールノーンのみに与えられた世界創造神様の奇跡です」
「奇跡ですか」
「はい。奇跡です」
……これも奇跡とかで片付けられてしまうのか?
「ノルテールノーンには三ヶ月間ランドリートでバカンスを楽しむ権利があります」
「そうなんですね」
「神王族の離宮のお館様は、神王族による三ヶ月毎の交代制になっています」
「家主が三ヶ月毎に代わるんですか?」
「その通りです。今回のように滞在する神王族が二人以上居られる時には、上位の御方がお館様を御務めになられます」
「そうなんですね」
「ここランドリートは、私達ノルテールノーンの聖地なのです」
「神王都は快適なのですが……」
「ですが?」
「……せ、世界一快適だと思っております。ガルネス神王国副神王補佐代行殿下が守護騎士、世界創造神創生教重騎士ムンペトンペに他意はございません」
「そうなんですね」
どうやら、悪魔種族達がランドリートで生活出来ている理由は、彼等のスキルや体質ではなく、ランドリートにあるようだ。
それに、この件は、リュシルと俺の二人でどうにかできる次元じゃない。
神授スキルは神様の領分。俺達にどうこうできるような代物じゃない。
chefアランギー様。ロザリークロード様。……この辺りのことに詳しそうだったしユーコ様に聞いてみるのもありか。
メア下界の下位悪魔貴族、下卿のリリスにカゲユイマ。そして、ガルネス神王国の王族を名乗るキャスパリーグ。
上級悪魔、上級種族の羊魔族に猿魔族に鳥魔族に犬魔族に猪魔族。
中級悪魔、中級種族のモーヴェバッファローにモーヴェタイガーにモーヴェバニーに悪羊族に悪烏族に悪犬族に悪猪族。
下級悪魔、下級種族のヴィスズ。
ランドリートは小さなメア下界。……これって、成立しちゃってるよなぁ~。
回答は、端的にまとめると、気高きノルテールノーンだから。で、あってると思う。
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―――13:22
「もしかしてですが、ハイジィーさんの家族は皆王都ガルネスに住んでたりしませんか?」
「祖父は、神王陛下より、水煙の聖域大瀑布ガルネスを見守る地、西ガルネス神森林のカルーダ湖畔域ポヴォーエスタ南街道の支道カルーダ獣道の道地主を任された教子爵で、祖母は祖父の「妻達をまとめて欲しい、お前だけが頼りなんだ」という言葉を信じ、祖父と一緒に暮らしています」
「ランドリートには?」
「雪が降り始める秋の終わりに二日間程、雪が溶け花が咲き始める春の初めに二日間程、年に四日間しかランドリートに滞在しないので、皆それに合わせて四日間だけでも一緒に過ごせるように日程を調整しています」
「四日間だけって大変ですね」
「はい。父も母も、叔父も妹達も、勿論私もですが、本当に心配しています」
「妹さんが四人いるんですよね?」
「はい」
「叔父さんは結婚されていないんですか?」
「叔父は伯爵家の令嬢と結婚していたそうなのですが先立たれてしまい。それ以降、妻を娶っていないそうです。子供達にも孫達にも先立たれてしまい曾孫達の世話になるような歳でもないからと、ランドリートを中心に放浪生活を送っています」
悪魔種族って寿命が長いんだったっけ。
「九人って言ってましたよね。叔父さんの子供、子孫達は」
「叔父はセカンドノーンですが妻が王民でしたので、子供達には気高きノルテールノーンは生まれなかったそうです」
「なるほど」
「家は父も母もセカンドノーンです。兄二人姉一人弟一人は母と同じモーヴェシープのサードノーンで、私と妹四人は父と同じモーヴェバニーのサードノーンです。家族の中に秘密が無くて良かったと子供の頃からずっと思ってました」
「なるほど」
モーヴェバニーの兄弟は妹が四人。モーヴェシープの兄弟は四人。ホントは九人兄弟な訳か。母はどの国でも偉大だなぁ~。
「旦那様よ。旦那様が兎と戯れる姿は愛らしくて良いのだが、いったい何の話をしておるのか? 今はあれが問題ではないのか?」
リュシルは、姫様へと視線を流した。
「おっと」
忘れてたよ。
「も、申し訳ございません。アシュランス国王王妃両陛下。お許しくださいませ」
ハイジィーさんは、五体投地で謝意を示している。
う~ん。それたまにやる人がいるんですが、謝ってるように見えないんだよなぁ~。手を伸ばしてうつ伏せで横になってるようにしか見えないのは俺だけ?
「ハイジィーさん。姫様の拘束を解きます。暴れ出さないようにお願い出来ますか? 騎士の皆さんも協力してください」
「はい」
「「「はっ!」」」
「終わったら、大瀑布ガルネスの話をまたお願いしますね」
「わか、畏まりました。アシュランス国王王妃両陛下」
ありがとうございました。