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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーガルネス編ー(傍観)
316/1227

5-8 執務室の傍観者③

―――アシュランス王国王都スカーレット

 グランディール城・国王執務室

R4075年10月7日(無)11:20―――


 マルアスピーとサンドラさん二人の会話が噛み合っていない様に聞こえているのはきっと俺だけなんだ。


 試練の話なのか許可の話なのか家族の話なのかレベルの話なのか。いったい何の話をしているのやら……。


「ロイク様。先遣隊が到着しました」

「おっ!それじゃ俺達も行きますかっ!!!」

 サラさんのナイスな報告に大げさに反応し便乗する。


 それにしても早いな。予定では、

「私達の参戦は認められてはいなのですよね。戦地に宜しいのでしょうか?」

 視界内に表示させた時間を確認していると、アリスさんが顔を覗き込むように話し掛けて来た。

「えっと、竜王が叱咤激励する横で適当に相槌を打っていれば良いらしいんで、問題無いと思います。相槌を打ちに行くだけですからね。しっかしぃ―――合流は、十二時の予定でしたよね?」

「はい。陛下。連合国家フィリー遠征軍の本隊(主力部隊)と支隊(先遣隊)の合流は、ひとふたまるまるで間違いありません」

 瞬時に応えてくれたのは、サンドラさんだ。

 どうやら、マルアスピーとの噛み合わない会話を切り上げ、静かに傍観するという今の俺達に出来る最善に戻って来てくれた様だ。

 静かに。は、言葉の綾でしかないのだが。ハハハ。


「ロイク様マルアスピー様。非戦闘員の私達が大勢で押し掛けたりしたら、皆さんの邪魔になってしまうのではないでしょうか?」


 パフさんは、マルアスピーの空になったティーカップに当たり前の様に紅茶を注ぐと、アリスさんと重複した質問を口にした。

 数少ない常識人(・・・)。そう、彼女は我が家に於いて基調な常識陣(・・・)の一人だ。

 因みに、独断と偏見になってしまうが、パフさん、バルサさん、カトリーヌさん、この三人が俺の中では常識人だ。

 

「パフパフ。新鮮な魂を食べられる機会は少ないのじゃぁ~、もはや行くしかないのじゃぁ~」

「はて、もう一人の(わらわ)よ。妾達は挨拶だけのはず。程無くしてここに舞い戻って来る故、捕食の時間など無いはず。そうは思わぬか」

「そ、そうなのかっ?それは困るのじゃぁ~、嫌なのじゃぁ~~~…………決めたっ!私は行っても意味無い方に賛成するのじゃぁ~~~パフパフと併せて、はい二票なのじゃっ!!!」

「えっ、えっと、わ、私もですか?」

「おうなのじゃぁ~、頑張れなのじゃぁ~。パフパフなら出来るのじゃぁ~」

「え!? ええぇぇ―――」

「えええぇぇぇ―――では無いね。良いかね。パフパフ、お前はもう既に引き返せないところまで来てしまっているね」

「わ、私がですか?」


 どうやらトゥーシェにとって戦地とは食事をするところらしい。そう言えば以前見たな。鮮度は不明だが、美味しそうにパクついてる姿を……。

 あれれ? 魂って食べられたらどうなるんだ? う~んむ、まっ、いいか。今考える事じゃないし。

 さてと、

「待たせるのもなんなんで行きましょう。トゥーシェとパフさんはここに残るなら残るで構いませんがどうしますか?」


「おぅなのじゃぁ~」

「え、えっ、えっと……」

 パフさんはどう反応したらよいのかかなり困っている様だ。

 俺とトゥーシェ。トゥーシェとマルアスピー。マルアスピーと俺。俺達の表情を交互に窺いアワアワオドオドしている。


「妾はもう一人の妾も連れて行くべきだと思うぞ。旦那様も同じ考えであろう。違うのか?」

「嫌じゃっ。私はパフパフに賛成した。ここに。行かないのじゃぁ~」

「えっ、え、ええぇぇ」


「もう一人の妾よ。理由も無く外出出来る絶好の機会故、ここに残るより良いと妾は考えたのだが……残念、……勿体ないとは思わぬのか?」

「い・や・じゃないのじゃぁ~。最初から行く気満々だったのじゃぁ~。パフパフだけここに残っていればいいのじゃぁ~」

「え? えええぇぇぇ?」


 うん。実に家らしい……な。うん。まとまったみたいだし、それでは、

「それじゃ行きましょう」

「ロイク。君に聞きたいね」

「って、何ですか? 今、どういう状況か分かってますよね?」

「あたしは神だね」

「そうですね」

 何を今さら……。

「あたしは常々思っていたね。神は安い存在であってはいけないね」

「そ、そうですね」

 ……もうかなり遅いと思うが。

「でだね。考えたね」

「そ、そうですか。分かりました。それじゃ行きましょう」

「ロイク。君は聞いていたのかね」

「えぇ」

「何をだね。まだ何を話して無いね」

 ……ダメだこいつ。ちっとも状況を理解してない。

「フォルティーナ様。現地では立っているだけなのです。立っているだけなのであれば時を有効活用しその際にこの続きを話してみては如何ですかなっ。はい」

 いや、それはまずいでしょう。竜王や聖王や海洋王が叱咤激励している横でそれは……。

「おっなるほどだね。アランギー、君もそろそろ分かる神になってきたみたいで嬉しいね。うんうんだね。そうと決まれば、ロイク。何をしてるね。今すぐ移動するね」

 ……こ、こいつぅ~。落ち着け俺ぇ~……。落ち着けぇ~。


「それでは行ってきます。chefアランギー様は引き続き執務を宜しくお願いします」

「余り宜しくされたくはないのですが、宜しくされましょう。はい」


「あっ! 忘れてたね」

≪パチン

「グ、ギャァ―――――――」


ありがとうございました。

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