1-19.1 暴走する欲望と、女達の本音と建前①
作成2018年3月16日
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【タイトル】 このKissは、嵐の予感。
【第1章】(仮)このKissは、真実の中。
1-19.1 暴走する欲望と、女達の本音と建前①
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――― ロイの侯爵邸 侯爵の趣味部屋
――― 6月2日 20:40
時間を少し戻し、ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸の一室、アルヴァ・ブオミル侯爵が女性達との時間を楽しむ目的だけの為に作らせた趣味の部屋。侯爵邸で働く女性達からは凌辱の監獄と呼ばれている部屋。
***本音の代償薬の詳細説明***
【効果効能】
①あれが2割から3割大きくなる。
②男女の時間、女性の心の中の声が聞こえる。
③【HP】の最大値が2倍になる。
※JOBがNBTしか無い者は効果無し※
④【DEX】の最大値が2倍になる。
※JOBがNBTしか無い者は効果無し※
⑤気が弱い男性が使用すると心成し自信を持つ。
【創造神様は認めていない後遺症】
①使用後に殺生を1回行う度、聞こえる声が増える。
最初は3人の声。2回目以降は3乗で増える。
※例:1→3→27→19683※
※JOBにBTorLBTを所持する者には効果無し※
②①に関わるだけで①と同様の結果になる。
③4回①②を行うと、男性の心の中の声も聞こえる。
④5回①②を行うと、使用者は消滅する。
【予備知識】
①打消し薬【謝罪の強制薬】を3日以内に飲むと、
本音の代償薬の効果は無くなる。
***本音の代償薬の詳細説明おわり***
幸いと言うべきだろう、アルヴァ・ブオミル侯爵は本音の代償薬を使用した直前であり、まだ誰も殺していない。誰かを殺す命令も出していなかった。
成人したての16歳から19歳の女性達6人と、彼は彼が作らせた侯爵邸の趣味の部屋のベッドに横たわり、本音の代償薬の効果を実感しながら、己の性欲を満たすべく只管快楽を貪り続けていた。
一対一の時間では無く、一対六の時間であった為、本音の代償薬本来の効果を、彼はまだ知らずにいた。
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・
――― ロイの侯爵邸 夕食の間
――― 6月2日 24:03
2つの陽が沈み、夕食の時間。アルヴァ・ブオミル侯爵はいつものに様に、60平方m程ある夕食の間で1人食事をとっていた。1人といっても執事家令が後方に控え、給仕の為に召使長や召使が黙々と仕事をしたいた。
「おい。ヨン!僕のタマゴの黄身はシットリさせろと、前に言わなかったか?」
「アルヴァ様。召使長へ徹底するよう申し付けてあります」
「だったら、これは何だ?バサバサだぞ。僕の喉を詰まらせて殺すつもりかぁっ!」
「召使長。こちらへ来て、説明しなさい」
「はっはい!」
召使長は作業の手を止め、慌てて執事家令の元へ移動する。
「アルヴァ様のタマゴのお好みはなんでしたか?」
「半熟茹でのタマゴの先端を予めナイフで切り取り、スプーンで1・2度軽く掻き混ぜてから、トリュフ塩で味を調え、エッグスタンドでお出ししております」
「今日のタマゴを確認しましたか?」
「はい。料理担当では無い料理人達で、料理の安全と状態の確認をし、いつもの様に給仕の召使が責任を持て、アルヴァ様へお出し致しました」
「召使長。貴方は、貴方や料理人達のミスでは無く、アルヴァ様が間違っていると断言する訳ですね?」
「な、そんな!滅相も御座いません」
「確認してからお出ししたと申したではありませんか」
「そ、それは・・・」
「召使長」
「はい。アルヴァ様」
「料理人達をここへ呼べ」
「かしこまりました。至急、料理を担当しました料理人を連れて参ります」
「召使長」
「は、はい」
「お前は、目だけではなく、耳も悪いのか?あぁ~顔もかぁっ!ワッハッハッハッハ」
「アルヴァ様。申し訳ございません」
「何故、謝る?悪い物は仕方ないだろう?ハッハッハッハッハ。頭を下げている暇があったら、料理人達を全員ここに連れ来い!今直ぐだぁっ」
「かしこまりました」
召使長は夕食の間を後にすると、厨房まで全速力で走った。
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――― 6月2日 24:15
料理担当の料理人3人と、非番の為料理の確認を担当した料理人14人が、アルヴァ・ブオミル侯爵が腰掛ける席の横に、前列料理担当3人、後列14人で整列していた。
「アルヴァ様。本日の夕食を担当しました料理人3人と、他の料理人14人を連れて参りました」
「召使長。今日の給仕を担当した召使に、ナイフを持ってこさせろ」
「か・・・かしこまりました」
召使長は、給仕が控える夕食の間のドアの外へ移動し、給仕を担当した召使にナイフを持って来る様に指示した。
「アルヴァ様。指示致しました」
「そっか。それで、このタマゴを担当したのは、誰だ?答えろ!」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「アルヴァ様が、質問されていらっしゃるのです。答えなさい」
執事家令のヨンは、料理担当の料理人3人に命令する。
「た、担当したのは、わ、わ、私です」
「アルヴァ様。この者が料理を担当したそうです」
「処刑しろ」
「しょ、処刑ですか?」
「そうだ」
「アルヴァ様。侯爵邸より放逐致します。彼はまだ21歳です。命だけはどうかお助けくださいませ。御慈悲をお願い致します」
「お前は何だ?」
「えっ・・・は・・・あぁ・・・」
「何だと聞いている。・・・・・・。ヨン!お前は何で、こいつは何様だ?」
「はい。アルヴァ様。私は、ブオミル侯爵家ロイ侯爵邸専属の執事家令の、ヨン・ライアン家臣女の男爵です。彼は、召使長のポップ様です」
「あぁ~そうだったな。ポップ様だった。忘れていたぞ・・・ポップ様の命令には従わないとなぁ~・・・」
「ナイフをお持ち致しました」
「ん?調度良い所に来た。オードリーだったな持って来い」
「はっ・・・はい」
給仕を担当した召使は、銀の盆に綺麗に並べられた銀製のナイフを、慎重に慎重にアルヴァ・ブオミル侯爵の前まで運んだ。
「ポップ様ぁ~!そこの男の命を助けると、僕に何か良い事があるんですかぁ~?あぁ~↑」
「そ、それは・・・」
アルヴァ・ブオミル侯爵は、目の前の召使が持つ銀の盆から、銀製のナイフを一本手に取った。
「ポップ様は、偉いんだからさぁ~。僕が何をしようと思ってるか分かるよねっ!」
アルヴァ・ブオミル侯爵は立ち上がると、召使長の正面まで歩み寄ると、銀製のナイフを召使長の目の前にチラつかせながら、耳の近くに顔を近付けた。
「これって、銀のナイフでさぁ~。毒だったり呪いを解く魔術が付与されているんだよねぇ~。弱い奴なら死んじゃうらしいよぉ~・・・僕はあいつが魔獣か魔物に見えるんだけどぉ、気のせいなのか分からないから、お前が刺して確かめてくれるかなぁ~?召使長のポップ様しか頼める人がいなくてさぁ~」
「わ、私は・・・」
召使長は恐怖の余り、身体中から汗を吹き出す。
「うわっ!お前、何だ?匂うぞ・・・汚いなぁ~・・・」
「も、申し訳ございません。アルヴァ様」
「お前はもういいや。・・・ヨン。ポップ様は御帰りだ。明日からは新しい召使長が必要だ手配しておけ」
「かしこまりました」
「もう行けっ!」
「は、はい・・・」
先程までは召使長だった男は、夕食の間から立ち去った。
「あぁ~あ。刺して確かめてくれる人を、もう1度決めないとぉ~・・・・・・おい、オードリーこっちに来い」
「は、はい」
「盆はデーブルにでも置いておけ!ナイフを持って来い」
「は、はい」
給仕を担当した召使は、銀製のナイフを片手に握りしめると、アルヴァ・ブオミル侯爵の傍まで恐る恐る歩いた。
「オードリー。お前に、この男(料理人)の未来を決めさせてあげよう」
「え?」
「ヨン」
「はい、アルヴァ様。この男とこの女とお前以外は、作業に戻らせて良いぞぉっ!それと僕の部屋を綺麗にしておけ」
「かしこまりました」
「アルヴァ様の寛大な御処置に感謝し、持ち場に戻りなさい」
「アルヴァ様。誠に申し訳ございませんでした。今後、この様な事を2度と起こしません様、細心の注意を心掛け職務に励みます。寛大な御心に感謝致します」←(16人の料理人)
夕食の間を、16人の料理人達は後にした。
「オードリーィ~~」
「は、はい」
「この男の心臓を刺すか。右手の指を切り落とすか。あれを切り落とすか。それとも・・・」
「それとも?」
給仕を担当した召使は恐る恐るアルヴァ・ブオミル侯爵に確認する。
「俺の趣味部屋でお前が俺に奉仕するか。この男とその家族、お前の家族が処刑されるか。好きなのを選んで良いぞぉ~」
「えっ・・・?」
「オードリーィ~!お前ぇ~・・・この男と結婚するそうじゃないかぁ!」
「え・・・」
「この男と結婚するんだろうぉっ!こいつとぉっ!」
「ヒィッ」
アルヴァ・ブオミル侯爵は、タマゴ料理を担当した料理人に銀製のナイフを向け、狡猾的な笑みを浮かべながら、給仕を担当した召使の頬を舐めた。
「アランだったな。お前はどうしたい?」
「・・・」
「どうしたい?って、僕が聞いたら直ぐに答えろよぉっ!」
「アルヴァ様が、質問されていらっしゃるのです。答えなさい」
「は、はいぃ~↑・・・わ、私はど、どうなってもか、構いません。か、か彼女は関係ありません。彼女にはて、手を出さないでください。お願いします」
「彼女ぉ~?彼女はお前の彼女なのかぁ~あぁ~↑?」
タマゴ料理を担当した料理人は、目を逸らし俯き震えていた。
「なぁ~教えてくれよぉ~アラ~~ン」
「た、タ、タマゴの事は謝ります。ですから、お願いします。お願いします」
「オードリーはお前の何だ?」
「・・・」
タマゴ料理を担当した料理人は答えない。
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アルヴァ・ブオミル侯爵は、給仕を担当した召使の後ろに回り込むと、小さな声で彼女に囁いた。
「...............お前次第だ」
給仕を担当した召使は小さく頷いた。
「そうか分かってくれたか。嬉しいよ僕は!アランだったかな。今日の仕事はもう良い君は帰って良いぞ」
「は・・・はい」
「ホラ、許してやる行け」
「あ、ありがとうございます」
タマゴ料理を担当した料理人は、夕食の間を後にした。
アルヴァ・ブオミル侯爵は、執事家令に歩み寄ると、小声で指示を出す。
「僕の趣味部屋に彼女を招待した。準備させろ!」
「かしこまりました」
「それと、あの男は魔獣の餌にでもしておけ」
「か、かしこまりました」
「僕は、食事を続ける。食事を済ませたら部屋へ行く。オードリーィ~君のおかげで皆無事に済んで何よりだ。ワッハッハッハッハ」
「料理を持ってこさせろ」
「かしこまりました。・・・召使いえ。オードリー様。アルヴァ様の御部屋へ御案内致します」
「は・・・はい・・・」
「アルヴァ様。オードリー様を御部屋へ案内して参ります」
「うん。僕はタマゴを食べて、次の料理を待つ事にする」
「かしこまりました」
「次の料理の指示も厨房に申し付けておきますので御安心ください」
「うん」
・
・
・
――― ロイの侯爵邸 侯爵の趣味部屋
――― 6月2日 25:00
「あ、あ、あ」
『アラン・・・ごめんなさい』
「煩いぞ!僕の前で別れた男の名前を言うなぁっ」
「あ、・・・えっ? あ、 あ」
『え?何?』
「オードリーィー~。何?も無いだろうぉ~僕の子を産む女が、こんな時に他の男の名前を呼ぶのは、流石の僕も許せないなぁ~約束したじゃないか!・・・破ったらぁ~~~ハッハッハッハ」
『逆らったら殺される!ど、どうしよう・・・助けてアラン!』
「あぁ~?お前ふざけてるのか?」
「わ、私は何も!」
『殺される』
・
・
・
「・・・そんなに殺して欲しいのか?あぁ~↑?」
「わ、私は何も!」
『こ、殺される。助けてアラン!』
「あああああ。もういい止めだ止めだ。おい!召使」
「はい」
「僕は、寝室で休む事にした。彼女達を呼んでおけ」
「かしこまりました」
「それと、ヨンに、この女はもう不要だと伝えろ」
「かしこまりました」
・
・
・
――― ロイの侯爵邸 朝食の間
――― 6月3日 7:30
「おい」
「は、はい。アルヴァ様」
「今、何か言ったか?」
「い、いえ」
『馬鹿よねオードリーも。クスクス』
「そっちのお前か?」
「ア、アルヴァ様。私は何も申し上げておりません」
『びっくりしたぁ~』
『何?あれ?』
「誰だ、喋って良いと言った覚えは無いぞ!誰だ?」
≪ガチャ
「アルヴァ様。朝食をお出ししても宜しいでしょうか?」
「ヨン。何故お前が、召使長の真似をしている」
『お前は、馬鹿なのか?ポップ殿を解雇したのはお前だろう。仕事ばかり増やしおって』
「後任の召使長の選任は、召使の朝の勤めを終えてから予定しております」
「ヨン・・・お前っ!」
「アルヴァ様。如何なさいました?」
「い、いや何でも無い・・・?」
『あぁ~ヨン様がお可哀想。あんな子作りしか出来ない馬鹿の子守り。私だったら耐えられないわ』
『男爵家の御当主様が、給仕だなんてお可哀想』
「誰だ?誰が馬鹿だふざけるお前達!」
「アルヴァ様。如何なされたのですか?」
『次は、何をしでかすつもりだこの馬鹿は?』
「お、お前は・・・僕を馬鹿と言ったな!」
「な、何を仰っておられるのですか?」
『どういう事だ?』
「誰だ、誰だぁ~!お前達皆処刑だ!処刑だぁ~」
「アルヴァ様。落ち着いてください。誰も何も話ておりません。朝の勤めを果たしているだけです」
『何を言い出すだ、この馬鹿は・・・付き合いきれん』
「な・・・な・・・」
≪ガチャ
「お料理をお持ち致しました」
「順次、お出しする様に」
「はい」
≪カチャッ
「君。気を付けなさい」
「も、申し訳ありません執事家令様」
『急にオードリーが居なくなって、徹夜で仕事してるのよ!ふざけないで欲しいわ』
「オードリーが居なくなったのか?」
『え?声に出てた?』
「ヨン」
「はい。アルヴァ様」
「オードリーはどうした?」
「アルヴァ様より、趣味部屋を担当しております召使に、彼女はもう不要との御指示がありましたので、半年後に妊娠の確認を済ませ放逐する予定になっております」
『この馬鹿がお前のせいで、侯爵館の維持費がどれだけ、女達に消えていると思っているんだ』
「ヨン。維持費が何だ?」
「は?私は、その様な事は申し上げておりませんが」
『なんだ、こいつ』
「・・・今日は気分が優れん。食事は止めだ。趣味部屋に行く。お前で良いヨン、僕の相手をしろ!」
「わ、私ですか?私は今年33歳で、アルヴァ様の相手にはふさわしくありません」
『ふざける。お前に抱かれる位なら死んだ方がましだ』
「ヨン。お前もそんなに死にたいのか?」
「な、何を仰っておられるのですか?」
『何だこいつ?』
『何?ヨン様に何て事言ってるの?何なのあの馬鹿は』
『朝から子作り?はぁ~お盛んっていうよりまるで鼠か兎ね』
『アーマンド様。どうして、こんな馬鹿に爵位を?』
「な、何なんだお前達は・・・あぁ~~~」
『何?次は奇声・・・勘弁してよぉ~朝から疲れるわぁ~』
『次は何が始まったの?』
「アルヴァ様。大丈夫ですか?直ぐ、医者を呼びます」
『何なんだこの馬鹿は』
「医者を呼べ」
「は、はい」
「ぼ、僕に触るな。お前達僕に近付くな・・・」
「アルヴァ様?」
『何なんだこいつは、馬鹿だとは知っていたが、ここまで愚かだとは・・・』
『何よあれ、一人で騒いじゃって』
『結婚が決まってたオードリーを、一刻の快楽の為の玩具にして、遊び終わったらゴミの様に捨てて・・・』
『あんたのせいで、何人の女性が人生を踏みにじられて、亡くなったと思ってる?』
『この馬鹿のせいで、皆不幸よ・・・医者何て呼ばなくて良いわよ』
『死ね』
『居なくなれば良いのに』
「う、うわぁ~~~~」
「アルヴァ様?」
アルヴァ・ブオミル侯爵は、趣味部屋へ走った。
――― ロイの侯爵邸 侯爵の趣味部屋
――― 6月3日 07:43
「な、何なんだ。あいつらは確かに喋っていなかった。あの声は何だ?僕を妬む者の呪いか何かか?」
≪コンコン
「医務局長様をお連れしました」
「うん。ヨンそこに居るか?」
「はい。アルヴァ様」
「医務局長だけ入れろ。それと、呪いに詳しい魔術師達を数人集めてここに連れて来い」
「はい」
≪ガチャ
「アルヴァ様。如何なされたのですか?」
「何でも無い。疲れているだけだ。少し休めば楽になるだろう」
「血圧も体温にも異常は見られない様ですな。分かりました、この薬を飲んで少し眠ると良いでしょう」
「あぁ~。分かった」
「それでは、私はこれで失礼致します」
「あぁ~」
・
・
・
――― 6月3日 08:20
「アルヴァ様。お休みでしょうか?」
「いや、起きている。何だ」
「魔術師達を連れて参りました」
「入れ」
≪ガチャ
「侯爵邸の警備を担当しております魔術師の中で、呪いに詳しい者はこの3人との事です」
「そうか」
「おい、お前達。僕はおかしくなってはいない。朝食の少し前だ。突然、頭の中に沢山の声が聞こえて来た。これは気のせいではない」
「アルヴァ様。今もその声は聞こえているのでしょうか?」
「いや、今は落ち着いている」
「左様ですか・・・」
「頭の中に聞こえるという声は、同じ声では無いのですね?」
「あぁ~何度か聞いた覚えのある声。それにヨンの声に似た声も聞こえていた」
「私の声ですか?」
「あぁ~。僕を馬鹿だと罵り、死んだ方がましだとな」
「私が、その様な事を?在り得ません。私はブオミル侯爵家の家臣女の男爵として、ブオミル侯爵家の執事家令として、この身をブオミル家に捧げる覚悟でおります」
「あぁ~」
「アルヴァ様。私は魔法陣や魔導具を使った呪いが専門です」
「それで?」
「はい、アルヴァ様の現在の状態ですが、魔法陣や魔導具による外からの悪意。呪いは一切感じられません」
「そうか」
「私は、闇属性を所持する数少ない魔術師です。アルヴァ様の御身体の中の呪い闇属性を確認したいのですが、皆を部屋から退出させていただけますでしょうか?」
「あぁ~構わん。全裸になる訳ではないだろう?このまま続けろ」
「は、はい。少し身体の中に違和感を感じると思いますが、私の魔力がアルヴァ様の御身体の中を流れているだけです。害はありません。闇魔術【Lire malédiction source ramasser influence sentir】」
「く、苦しいぞ」
「御身体の何処か一箇所。目立たない様に直接かけられた呪いがあったとしても、これで確実に見つけ出せます。我慢してください」
「あ・・・あぁ~」
「【Lire malé diction source ramasser influence sentir】」
「ぐぅ」
・
・
・
「直接かけられた呪いもありません」
「そうか。それでは、アルヴァ様は呪いを受けてはいないのですね」
「はい」
「アルヴァ様。ヨン様。私は空間への干渉を感知する事が出来る風属性の魔術師です。この部屋には、外部からアルヴァ様へ干渉しようとしている魔力の流れはありません。念の為、朝食の間の確認をしたいと考えています」
「そうですね。アルヴァ様。この者に朝食の間の感知をやらせて宜しででしょうか?」
「ヨン。お前に任せる」
「かしこまりました。それでは、私は、この者と朝食の間の確認に行って参ります。そこの闇魔術師よ、アルヴァ様の御身体に何かあったらどうなるか分かっているな!」
「執事家令ってのも大変なんですね。ヨン様。大丈夫ですよ。流した闇の魔力は全部吸い出しますから」
「任せたぞ」
「はい」
「それでは、アルヴァ様。朝食の間の確認に行って参ります」
「あぁ」
・
・
・
「【absorption sentir influence ramasser source malé diction Lire 】」
『おかしいなぁ~・・・こいつなら呪いとか普通にかけられてると思ったんだけど』
「うん?何か言ったか?」
「え?私は、呪文の詠唱中でしたから、何も・・・」
「【absorption sentir influence ramasser source malé diction Lire 】」
『頭に声が聞こえるって、もしかして・・・』
「あい、何なんだ!お前ぇっ・・・あ、いや・・・呪文を唱えているし、お前な訳が・・・」
「アルヴァ様。魔術師が魔術を扱っている最中は、失敗しない為にも、どうか話かけたりしないでいただけますでしょうか?」
「あぁ~・・・」
『もしかして・・・』
『こいつ、本当に馬鹿だったんだな・・・お前の為に魔術を施してるのに、邪魔してどうする気だ』
「おい、馬鹿とは何だ。邪魔だと?」
『何で?』
「私は何も喋ておりませんが」
「何なんだいったい!」
「アルヴァ様。現状を正確に把握する為、ヨン様達の状況を確認して来ますので、御1人でお待ちになっていてください。医師より処方さています、お薬を飲んでお休みになった方が良いかもしれません」
『薬を飲んで薬を飲んで薬を飲んで』
「煩い、何度も言うな、薬を飲めば良いのだろう」
『薬を飲んで......』
「煩い早く行け」
「は、はい。行くわよ」
「私もか?」
「そうよ」
「分かった」
・
・
・
――― ロイの侯爵邸 朝食の間
――― 6月3日 9:30
ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸の朝食の間では、執事家令のヨン・ライアン家臣女の男爵と、男性の魔術師1人と、女の魔術師2人。4人が集まり話をしていた。
召使達は、アルヴァ・ブオミル侯爵が朝食を中止事もあり、朝食の間には既に居ない。
「......侯爵は、頭の中に声が、本当に聞こえているという訳ですね」
「はい。ヨン様」
闇魔術を得意とする女の魔術師は、他の3人に気付いた事を話終えた。
「近くに居る私達の考えている事が、何故か頭の中に聞こえている・・・医局長が診察した時は、落ち着いていたと聞きました。常に聞こえている訳ではないと考えて良いものでしょうか?」
執事家令のヨン・ライアンは、3人に確認する。
「魔法陣や魔導具を用いた形跡も無く、直接呪いをかけられた可能性も無し。遠くから念話の様なスキルで侯爵に干渉している形跡も無い。いったいどういう事なのでしょうか?」
魔法陣を用いた魔術が得意な女の魔術師は、返答ではなく質問を返した。
「俺の風魔術は空間を把握する物です。魔力が少しでも流れた時点で、蜘蛛の巣の蜘蛛の様に俺には分かります。アルヴァ侯爵様の部屋に、空間を把握する為の魔術を残したままにして来ましたが、アルヴァ侯爵様がお前達2人の考えている事が聞こえていると、お前達が感じた時も魔術の発動や魔力の流れは無かった」
風魔術を得意とする男の魔術師もまた、執事家令のヨン・ライアンの確認に対し、返答しなかった。
「魔術師に聞くのは変かもしれないが、これは呪いや魔術ではなく、スキルだとしたらどう思う?」
「スキルですか?」
「そうです。近くに居る者の考えている事が分かるSENSE・SKILLが、適正十分として身に付いたとしたら?」
「日頃、年端もいかない女達と、愛の追求に励んでおられる侯爵様がですか?」
闇魔術が得意な魔導士は、執事家令のヨン・ライアンの考えを、真っ先に否定した。
「1つ良いか!」
「何か分かりました?」
風魔術を得意とする魔術師が、3人に切り出した。
「いや、分った訳では無い。確証は無いが確かめてみる価値がある事だ。朝の朝食が始まる少し前に、アルヴァ侯爵様は突然今の状態になった。頭の中に声が聞こえている時と聞こえていない時の、状況の違いは何かと考えてみましたが、医務局長が居た時と俺が居た時だけ聞こえていなかった」
「現時点ではそうなりますね」
執事家令のヨン・ライアンは即答する。
「ヨン様。つまり、アルヴァ侯爵様は男が近くに居る時は、周りの人間の考えている事が、分からない伝わっていないと仮説出来ます」
「それは私も考えた。だが、確かめる方法が危険過ぎて、どうしたら良いか思案していた」
≪トントン
「なんだ」
「執事家令ヨン様。少し話したい事があります。御時間はありますでしょうか?」
給仕を担当した召使オードリーが抜けた為、徹夜明けで今朝の給仕担当を勤めた召使だ。
「どうかしましたか?」
「はい・・・」
「入りなさい」
「ありがとうございます」
「昨日の件でございます」
「昨日の件とは何ですか?」
「はい、召使オードリーが、アルヴァ様よりお情けを受けた際、婚約者の名前や、殺される。怖い。助けて。等の言葉を何度も口にした事で、怒りを買い解雇される事になったと聞きました。ですが、アルヴァ様の趣味部屋を担当する召使達が話していたのですが、突然叫びだし、激高し怒鳴り散らしていたのはアルヴァ様で、召使オードリーは、婚約者の名前も何も話ていなかったそうです」
「ヨン様。今の話が事実だとすると、アルヴァ侯爵様は昨日の夜の時点で、今の状態になっていた事になりませんか?」
「ですが、それではその後の、アルヴァ様と御寵愛組との状況。今日の朝食前の突然のあの状態の説明が付きません」
「今の話は分かりました。貴方は仕事に戻りなさい」
「はい。執事家令ヨン様」
理解出来ないアルヴァ・ブオミル侯爵の現状に、4人は頭を抱えるしか無かった。
・
・
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――― ロイの侯爵邸 侯爵の趣味部屋
――― 6月3日 9:50
≪トントン
「アルヴァ様。こちらだとお聞きしました。いらっしゃいますか?」
「うん?何だ!」
「昨日の士爵の件で御報告しに参りました」
「士爵?」
「アルヴァ様からの夕食の招待を無視した2人です」
「おぉ~すっかり忘れていたぞ。それで、アリスがどうした?」
「はい、士爵とその妻と使用人。そして、アリス・パマリは、騎士団の馬車で騎士団事務所を出発。商人商家協会に入ったそうです」
「うん?あの男には嫁がいるのか?」
「はい」
「どんな感じか分かるか?」
「騎士団事務所に潜入している者の話では、とてもスタイルの良い目を見張る様な美少女との事です。使用人もまた発育途上ではあるそうですが美少女との事です」
「なるほど・・・あの男に美少女が3人は多いな!・・・要らんだろう・・・」
「は、はぁ~・・・それで、士爵の件は如何されますか?」
「女達が気になるなぁっ!・・・お前とエーギンハルトに任せた。アリスを僕の物にした暁には、お前達を子爵か伯爵にしてやる」
「はっ!」
「次、ヘマをしたら、その時は処刑すると、私兵隊の本部にいるエーギンハルトに伝えておけ」
「はぁっ!」