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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーロイ編ー
30/1227

1-21 正統性と権力、そして8匹の魔獣達。

作成2018年3月12日

***********************

【タイトル】 このKissは、嵐の予感。

【第1章】(仮)このKissは、真実の中。

 1-21 正統性と権力、そして8匹の魔獣達。

***********************

――― 街乗り用の馬車の中

――― 6月3日 14:00


「このまま、奴隷商地区に留まって居てもどうしようもないので、一先ず俺の転位魔術で、商人商家協会(アフェールギルド)協会長(ギルドマスター)(ルーム)へ移動しましょう」


「名誉団長殿は、転位魔術も扱えるのですか?」


「はい。それで、俺やパーティーメンバーの彼女達が先に移動する事になります。少しだけ遅れて2人も転位移動します。慌てず待って居てください」


「分かりました」


「はぁっ!」


「ロイク様。騎士団の馬車はどうなされるおつもりですか?」


「おっと、忘れてました。アリスさんありがとうございます」


「いえ」


 俺は馬車の小窓を開け、御者台に座る御者に指示を出した。


「御者さん」


「はい、ロイク様」


「俺達は、憲兵隊に拘束されたという嘘の情報の為に暫く身を隠します。今から転位魔術で移動しますので、御者さんは空の馬車を騎士団事務所(オルドルロア)まで走らせ戻ってください。その際に、目立つ様に大通りをわざと通ってください」


「了解しました」



「それでは、行動開始です」


 ブオミル領ロイの商人商家協会(アフェールギルド)を表示。念の為、協会長(ギルドマスター)(ルーム)に人がいたら青で表示。


≪・・・表示しました。


 誰も居ないみたいだ。【フリーパス】移動≫



――― 商人商家協会(アフェールギルド) 協会長(ギルドマスター)(ルーム)

――― 6月3日 14:10


 マルアスピーを中心に半径5mの地図と、パフさん、アリスさん、ロメインさん、リックさんを表示。


≪・・・表示しました。


 【転位召喚】対象:表示中の者全員・場所:協会長(ギルドマスター)(ルーム)発動≫


 俺の目の前に、マルアスピー様、パフさん、アリス、ロメイン、リックさんが出現した。


「おぉ~・・・私の仕事部屋です」


「名誉団長殿。私は、何度か転位の経験がありますが、吐き気も眩暈も一切しないのは初めてです」


「ジェルマン・パマリ子爵様にも同じ事を言われましたが、そんなに違いますか?」


「転位魔術を扱う術者のレベルにもよるらしいですが、10日間寝込んだ団員も居たと聞きました」


「転位の度に10日間も寝込んで居たら大変ですね」


「なので騎士団では緊急時を考慮し、幹部クラスには転位移動の訓練が、義務付けられていると聞いた事があります」


「そうなんですね。・・・さて、マルアスピーと俺は、これからルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様に会いに行って来ます」


「え?ロイク様。マルアスピーさんも御一緒にですか?」


「はい。挨拶を理由にするので、彼女が居てくれた方が良いと考えます」


「た、確かにそうですわね」


「アリスさんには、気絶したままのパフさんをお願いします」


「分かりました」


「ロメインさん商人商家協会(アフェールギルド)の協会員であっても、本当に信用出来る人以外には、極力見られない様にお願いします」


「ロイク様。分かっています」


 ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人を、探索検索。表示。


≪・・・・・・該当者1名。表示しました。


 マルアスピーは、俺とタブレットの間に顔を入れ、タブレットを覗き込む。


『あらっ。本当に、侯爵邸の中に居るのね』


 本当にって、俺を疑ってたんですか?


『疑ってはいないはわよ。ただ自分の目でも確認しておきたかったの」


 ま、良いですけど。しかし・・・これは、予定が大きく変わりますね。


『そうね』


「ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様は侯爵邸に居るようです」


「何ですと!ロイク様、それは本当でしょうか?」


「はい。俺の警戒索敵探索調査の神授スキルで、ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様を探してみたところ、侯爵邸に居る事が分かりました」


「それでは、騎士団の憲兵隊に私を告発したのはいったい誰なんでしょうか?」


「そうですね。それでも2択に変化は無いと思います。ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様側の誰かか、アルヴァ・ブオミル侯爵様側の誰かでしょう」


 ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様を中心に半径500mを見取り図で表示。


≪・・・表示しました。


 ついでに、アルヴァ・ブオミル侯爵様を赤色で、周囲の人間を青で表示。


≪・・・表示しました。


「どうやら、ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様は、侯爵邸の地下5階に居るみたいです」


 これは、幽閉されていると見て間違いないか。・・・待てよ?もしかして・・・。ブルーノ・ブオミル様を探索検索。表示。


≪・・・該当者1名。表示しました。


 やっぱりだ。・・・それなら。


『フフフッ。面白い事を考えたわね』


 名案だと思ったんですが・・・


『えぇ~名案よ』



「作戦を変更しました」


「ロイク様。変更と言いますと?」


「ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様と、ブルーノ・ブオミル様を、ここに転位で呼びます」


「はぁ~?」


「名誉団長殿はそんな事まで出来るのですか?」


「ロイク様・・・」


「アリスさんには、後で色々説明します」


「わ、分かりました。絶対ですよ」


「えぇ~」


「さて、そこのソファーに移動させますので、ロメインさんは協会長(ギルドマスター)用の執務専用椅子に移動してください」


「は、はい」


【転位召喚】対象:ルシア・ブオミル、ブルーノ・ブオミル。場所:目の前のソファー。発動≫


 商人商家協会(アフェールギルド)協会長(ギルドマスター)(ルーム)のソファーに、2人は出現した。


「え?な、何が起きたの・・・です・・・か?」


「お?お、御母様」


「ブルーノ。無事だったのですね!」


 2人は、突然の再会を、俺達が周りに居る事にも気付かず、喜びあった。




――― 商人商家協会(アフェールギルド) 協会長(ギルドマスター)(ルーム)

――― 6月3日 14:36


「シャレット士爵家のロイク殿。私達親子を救い出してくれた事、心より感謝致します」


「ロイク様。母を救い出していただき、何とお礼を伝えれば良いか、嬉しさの余り言葉が出て来ません・・・」


「まさか、御二人が侯爵邸の地下に、捕らわれの身になっておられたとは・・・」


「ロメイン。私達が無事である事を、直ぐエーギンハルトに伝えてください。一刻も早くニーナに伝えねばならない事があります」


「それが・・・エーギンハルトは、こちらにおられますロイク様とアリス・パマリ様を、所長(チィーフ)の権限を使い不当拘束しようとした為、不敬罪でアルヴァ・ブオミル侯爵に身柄を抑えられています」


「な、なんと・・・」


「御母様、どういう事でしょうか?」


「どういう事と言いますと」


「はい、兄上の手の者によって拘束され幽閉されたあの日。エーギンハルトも私と一緒だったはずなのですが・・・」


「エーギンハルトから聞いた話と違います。あの日、エーギンハルトが貴方との約束の場所へ行くと、護衛の兵士が8人無残に殺され、貴方は連れ去れた後だったそうです。ロイの希望の星である貴方の行方が知れずとあっては、侯爵に対し組織的な抵抗が難しくなります。貴方が連れ去れた事は、一部の者を除き伏せられる事になりました」


「ルシア様、ブルーノ様。残念ですが、エーギンハルトは侯爵に繋がっていたと、考えるべきでしょう」


「あの男の無礼な態度は、そういう事だったのですね」


「アリスさん。どうい事ですか?」


「つまりですね、あの男は性根が腐り切ってるという事です」


総合案内所(ランセニュマン)所長(チィーフ)がアルヴァ・ブオミル侯爵と繋がっているなら、総合案内所(ランセニュマン)から侯爵邸に身柄を移された時点で自由の身ですよね?」


「奴め最初から侯爵側だった可能性があるな・・・」


「こうなってくると、俺達を貶めようとした者を特定しやすくなりました」


「ロイク殿?」


「もう少しすると昼食です。ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様とブルーノ・ブオミル様が居なくなった事に、気付くと思います」


「私達が侯爵邸から抜け出しているとは、考えないはずです」


「そうなると、所長(チィーフ)を味方だと思い込み、居場所を知られているブオミル家の者の身が、非常に危険な状態だと言えます」


「ニーナ様の事ですね」


「そうです。ロメインさん」


「私達の無事もそうですが、ニーナにこの事を知らせる術がありません」


「ロイク様。何とかなりませんか?」


「ルシア様も、ブルーノさんも、冷静に考えてください。ロイク様は御二人をどのようにして救い出したのか」


「あっ」←(ルシア、ブルーノ親子)


「そういう事です。ロイク様なら何とかしてくださいますよ。ねっ!ロイク様」


「もともと、所長(チィーフ)とニーナ・ブオミル様をここに移動させる予定でしたからね。所長(チィーフ)に関しては居場所だけ把握しておきましょう」


 ニーナ・ブオミルを探索検索。表示。


≪・・・該当者1名。表示しました。


 あぁ~なるほど・・・ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様の名前を騙り、俺達を奴隷商地区に呼んだのはニーナ・ブオミル様だったのか・・・


「ニーナ・ブオミル様をここに呼びます」


「ロイク殿お願い致します」


「ロイク様。姉上をお願いします」


 【転位召喚】対象:ニーナ・ブオミル。場所:ルシア・ブオミルの目の前。発動≫


 ニーナ・ブオミル様が、ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様の目の前に現れる。


「いいか!魔・・・じ・・・えっ?な・・・ここは?」


「ニーナ」



「御母様。御母様なのですか・・・。ブルーノまで・・・どうして?ここは何処ですか?」


「ここは、商人商家協会(アフェールギルド)協会長(ギルドマスター)(ルーム)」です。ここにおられるロイク・シャレット殿の魔術で、お前をここに呼んでいただきました」


「あ、・・・貴方が、英雄ロイク殿ですか?」


「何か・・・英雄って呼ばれてるみたいですね・・・」


「私は、ロイク殿や他の方々に謝罪しなくてはいけない事があります」


「ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人の名前を騙り、俺達を奴隷商地区に呼び出した事ですか?」


「・・・既にお分かりになっておりましたか」


「気付いたのは、ついさっきです」


「ロイク様?ルシア様の名を騙り私達を呼び出しのは、ニーナ様だったのですか?」


「ロメインさん。ニーナ・ブオミル様が何処に潜伏していたか、想像出来ますか?」


「いえ・・・」


「鉱山の出口近くにある坑道に、潜伏していた様です」


「鉱山にですか」


「はい。ニーナ・ブオミル様は、俺達と本当に接触したかった様です」


「そうなりますと、私達を魔獣調教の協力者だと告発した者は、侯爵側という事になりませんか?」


「でしょうね。街に魔獣を引き入れた罪を俺達に被せ、逮捕拘留するつもりだったのでしょう。アリスさんを自分の物にするのが、アルヴァ・ブオミル侯爵の狙いだったと考えて間違いないでしょう」


「魔獣やニーナさんではなく、私ですか?」


「アルヴァ・ブオミル侯爵は側近達に政治を丸投げし、地位を笠に着て自身は肉欲に溺れていた訳ですから」


「なっ・・・」


「ロイク殿。私をここへ移動させた魔術から察するに、魔獣の居場所を御存じですよね?」


「えぇ~」


「名誉団長殿!魔獣達は何処に居るのでしょうか?」


「それはですね・・・高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)達はですね。・・・強力な睡眠魔術で眠った状態で、3重の檻の周りに強力な結界を張った状態で、とっても安全な場所にいます」


「それは何処しょうか?」←ニーナさん


「それは、ここです」


「え?ここですか?」←ニーナさん


「ここぉ~?」←リックさん


「そうです。商人商家協会(アフェールギルド)の金庫の中です」


「あぁ~っ!確かに安全な場所です」←ロメインさん


「ロイク様。どういう事でしょうか?」←アリスさん


「アリスさん。さっき金庫の中に入った時、ロメインさんが言ってたじゃないですか。『商人商家協会(アフェールギルド)の金庫は、金庫の大きさこそ違いますが、どの街の金庫も防音防火防魔術が施されていて、協会長(ギルドマスター)が所持する主鍵(マスターキー)と暗証番号か、副協会長等の部下3役が持つ副鍵(サブ―キー)3つ同時と彼等に毎日伝えられる暗証番号13桁3人分が無いと開ける事が出来ない。間違って内側に取り残されてしまうと、誰かが気付き外から開けて貰わない限り中からは絶対に出られない』って」


「それは聞いていましたが・・・それですと、鍵が無くてもロイク様のスキルがあれば、自由に出入り出来る事になってしまいませんか?」


「そうなってしまいますね。ですが俺は、この国でも有数の資産持ちです。ロメインさんなら内緒にしてくれますよね?」


「あ・・・え・・・あ・・・はい」


「ロメイン。ロイク殿の件は、ここにいる者達だけの秘密にしましょう。このスキルのおかげで、私達はまたこうして無事に集まる事が出来たのです」


「はい。ルシア様」


「さて、エーギンハルト士爵の件で、俺達の計画は大きく変更になります」


「はい」←皆


「それで、今後」


『ねぇ~ロイク』


 ど、どうしました?


『お腹が空いたわ』


 え?・・・もう、そんな時間ですか?・・・・・・現在の時間は?


≪15:10です。


 あぁ~・・・先に昼食と休憩にしましょうか?


『はい。お昼を食べてから、仕事が良いです』


 分かりました。


「これからの動きですが、皆さん、もう昼ですし、食事を済ませ身支度を整えてから、改めて次の計画を立てませんか?」


「そうですわね。ブルーノは2年強。私も1年以上幽閉されていた訳ですから、お湯で身体をゆっくり清めたいですわ」


「この街で、今自由に動き回る事は、賢明とはいえません。そうですね・・・アリスさん!」


「はい。ロイク様」


「アリスさんの実家。ジェルマン・パマリ子爵邸を、使いたいのですが良いでしょうか?」


「私の許可なんて必要ありませんわ。ロイク様、御自由にお使いください」


「ありがとうございます。それでは、皆さんコルトにあるアリスさんの実家に移動しましょう。・・・魔獣達も一緒に大丈夫ですかね?」


「結界の中で眠っているのですよね?」


「はい」


「それでしたら、問題無いと思います」


「ちょっと、待ってください。名誉団長殿。ロイからコルトまで何Kmあるか御存知ですよね?」


「だいたい106Kmだったと」


「そうです。街の中で転位するのとは訳が違います」


「リックさん。大丈夫です。俺の転位は特別なんですよ」


「吐き気も眩暈もしないのは分かりましたが・・・100Km以上をこの人数ですよ」


「リックさん。ロイク様の能力は、常人ではなく英雄の物なのです」


「しかし、ロメインさん・・・」


「さっさと移動して、食事と休憩にしましょう。皆さん!」


 マルアスピーを中心にこの部屋に居る全員を表示。この建物の金庫に居る魔獣を表示。


≪・・・表示しました。


 【フリーパス】:コルトのジェルマン・パマリ子爵邸の客間(ゲストルーム)。移動



――― ジェルマン・パマリ子爵邸 客間(ゲストルーム)

――― 6月3日 15:15


 【転位召喚】:対象・タブレットに表示中の者全員。場所:俺が居る客間(ゲストルーム)。発動≫


 マルアスピー・シャレット。パフ・レイジィー。アリス・パマリ。ロメイン・バトン。リック・マケイン。ルシア・ブオミル。ニーナ・ブオミル。ブルーノ・ブオミル。5m強の高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)8匹が、子爵邸の客間(ゲストルーム)に出現した。



 そして、皆、思い思いに、昼食や休憩。身支度にお喋りを楽しみ始めた。


 俺はというと、高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)客間(ゲストルーム)に居ては、落ち着かないという意見に押され、子爵邸の庭に木箱を8個移動させた後、リックさんから1匹ずつ名前付きで、眠ったままの高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)の紹介を受けていた。


「名誉団長殿。この眠りの魔術はかなり強力な物の様です。こいつらが目覚める頃をある程度把握しておきたいのですが、夕方には目覚めますか?」


「起こした方が良いのですか?」


「こいつらは魔熊(オプルス)です。余り長く眠りに付かせると、冬眠明けの(メドヴェージ)と同じで、全てを忘れ一心不乱に食欲を満たそうとします。頭は悪く無いのですが、食欲優先の一匹狼(マーベリック)(メドヴェージ)ですけどね」


「それなら、魔術を解除します」


「ありがとうございます。一匹ずつお願いします」


「分かりました」


 精霊聖属性魔法【リベラシオン】自然魔法:清澄聖属性レベル1・発動≫


 高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)が1匹目覚める。


「ドライウルス起きたか?」


≪ウゴォ~ブヒィ


闇炎牙狼(オプスキュリテ)の3匹分の脅威って聞いていましたが、案外大人しいですね」


「いつもはもっと暴れて大変なんですが・・・」


「そうなんですね。次、起こしますよ」


「はい」


 精霊聖属性魔法【リベラシオン】自然魔法:清澄聖属性レベル1・発動≫


≪ウゴッブヒィ―


「アハトウルス調子はどうだ?」


 あれ?


「ふと、思ったんですが、リックさんのレベルで、高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)は無理がありませんか?」


「倒したり討伐したりは無理ですが、魔獣使いとしての調教スキルを活用すれば、自分より強い魔獣とも少しはコミュニケーションが取れます。こいつらの場合は、子供の頃から人に飼育されていたらしく、食欲を優先した行動を取らせない限り、かなり安全です」


「なるほど」


 試しに、【オペレーション】発動≫・・・リックさんのJOB・inh(インヘリタス)魔獣使い(まじゅうつかい)】を記憶っと。俺にJOB・cho(チョイス)魔獣使い(まじゅうつかい)】を複写。出来た・・・可能みたいだけど、JOB・inh(インヘリタス)魔獣使い(まじゅうつかい)レベル10(上限)≪神託継承≫って、神様からのおつげで継承したらレベル10って良いのかなぁ~・・・


「あれ?」


「名誉団長殿。どうしましたか?」


高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)の頭の上に、一瞬だけど、黄色い輪の様な物が見えた気がして・・・」


「黄色い輪ですか・・・名誉団長殿は、上位の魔獣使い様でもあったのですね!」


「え?」


「私の曾祖父も上位の魔獣使いだったそうです。その曾祖父が一族に残した、魔獣使いとしての心得の書に、魔獣を使役する際の判断として、頭の上に微かに感じる色を参考にせよ。と、あるんです」


「なるほど」


「何も感じ無い様であれば調教は諦めろ。何となく赤を感じたなら己を未熟と思え。何となく白く感じたなら更に己を磨け。深緑なら10回に1回。緑なら5回に1回。黄緑なら3回に1回。黄なら100%だと」


 邪獣や聖獣との関係に似てるみたいだけど、どうなんだろう?


「リックさんは、高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)をどうやって調教してるんですか?」


「実は、使役は成功していません」


「使役ですか?」


「はい。なので、可哀想ですが檻の中に入れてあります」


「使役出来無いと檻に入れた方が良いって事ですか?」


「使役出来ていないという事は、指示に従わないって事ですから」


 あぁ~なるほど。


高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)は、食欲さえ満たされていれば、こんな感じなんですよね?」


「はい」


 俺のレベルなら、使役可能そうだし試しにやってみよう。


「リックさん。もう1つ確認ですが、使役はどうやれば出来るんですか?」


「使役ですか。魔獣の額に手を当てて、従うか従わないか問いかけ、魔獣が従った場合は従ったって分かります」


 俺は、ドライウルスと呼ばれていた高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)の額に右手の掌を置いた。


「名誉団長殿。こいつらは、あの闇炎牙狼(オプスキュリテ)よりも強いんですよ。流石に使役は無理だと思います」


 俺と友達になるかならないか?従うかだったっけ?


『ト・モ・ダ・チ・ア・ソ・ブ』


 え?マルアスピーの声じゃないし・・・まさか、高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)


「何だか分からないけど、友達遊ぶとか言われたんですが・・・どうしましょう」


「え?えぇ~~~!使役出来ちゃったんですかぁ~!」


「たぶんですが」


「一応、確認しましょう。大丈夫そうなら檻から出すという事で、どうでしょうか?」


「そうですね。それで、何をすれば良いですか?」


「お座り。お手。伏せ。この3つです」


 犬みたいな事をやらせるだけで良いのか・・・


「お座り」


 高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)は座った。


「お手」


 高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)は、俺が差し出した手に、そっと手を置いた。


「伏せ」


 高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)は、床に伏せた。


「従ってますね・・・討伐対象レベルの魔獣を使役している魔獣使い何て、聞いた事がありませんでしたが・・・英雄とは噂以上の存在だったんですね。それでは」


≪ガッ


「あれ?」


≪ガッ


「おかしいな・・・」


「リックさん。結界魔術が施してあるので、聖属性を所持している者しか中へ干渉出来ません。解除は俺しか出来ないと思います」


「聖属性ですか・・・転位だったり呼び出しの召喚の様な魔術だったり、使役だったりと凄過ぎて・・・」


「実は、まだ改良の余地ありの結界何ですよ」


「改良ですか?」


「そうなんです。人に施すと俺でも解除出来なくて、強さにもよりますが半日から3日、自然消滅するまで結界が消えないんです」


「結界ですから消えなくても問題無いと思いますが」


「それが・・・意思や思考を持った者を結界は通しません。握手もハグもキスも・・・男女のあれも・・・お預けになってしまうんですよね・・・。この魔術を施した村人や兵士達から、まぁ~色々言われました」


「命あっての事ですから、言わせておけばいいだけです。名誉団長殿は人の命を救うという尊い事を成し遂げただけです」


「リックさん。ありがとうございます。そう言っていただけると、性に飢え血走った野獣の様な男達のあの目も・・・」


「野獣の様な目ですか!」


「はい。・・・あくまでも人間相手の時の話です。無機物に対しては解除も自由自在何です」


 精霊聖属性魔法【リベラシオン】自然魔法:清澄聖属性レベル2・発動≫


「もう開きますよ」


≪ガチャ


 高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)は、辺りを確認しながらゆっくり檻から出た。途中立ち止まり、リックさんの臭いを確認していたが、俺の横まで来ると、地面に伏せの状態で落ち着いた。


「大きな犬みたいですね」


「夢を見てるみたいです」


「子供の頃に人間に掴まってしまってこの状況なんですよね?」


「前の飼い主が、正統主義派に権利を売った際に提出した、生き物愛玩協会(シュシュギルド)の認可書には、生後1ヶ月から3ヶ月の時に、愛玩登録されたと書かれていたそうです。私はこいつらを魔術使いとして調教する様に、正統主義派に雇われただけで、実のところ何がどうなっているのか分かっていません」


「それは、追い追い分かる事でしょう。まずは、高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)を下らない人間の騒動から解放してあげましょう」



――― ジェルマン・パマリ子爵邸 庭

――― 6月3日 15:40


「凄い・・・圧巻の光景です。名誉団長殿」


「確かに、この大きさの魔獣が8匹は、存在感がありますねぇ~」


「はい」


 高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)は雄4匹雌4匹。その中で、雌は2匹が姉妹(双子)だと分かった。雄の名前は、リックさんがネーミングしたままにした。


「ツヴァイ。ドライ。ゼクス。アハト」


≪ガアゥ~ブヒィ ←ツヴァイ(6歳)


≪ウゴォ~ブヒィ ←ドライ(4歳)


≪ウガァ~ブヒィ ←ゼクス(4歳)


≪ウゴッブヒィ― ←アハト(3歳)


「イーリス。ヴィンデ。ブルーメ。パルメ」


≪ガウ~ ←イーリス(5歳)


≪ガウァ~ ←ヴィンデ(4歳)


≪ガァ~ウゥ~ ←ブルーメ(3歳)双子


≪ガァ~オゥ~ ←パルメ(3歳)双子


高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)って何が好物なんですか?」


「生肉だと思います・・・ですが、前例もありませんし、使役していたいと記録がありませんから。実際はどうなんでしょう?」


 聞いた方が早いか。・・・ツヴァイ。ドライ。ゼクス。アハト。イーリス。ヴィンデ。ブルーメ。パルメ。もし分かったら、好きな食べ物を教えて。


『ト・モ・ダ・チ・ア・ソ・ブ』


『ア・ソ・ブ』


 遊びは後で。甘い物は好き?


『キ・ロ・イ・ア・マ・イ・ミ・ズ』


 きろい甘い水・・・黄色い甘い水かっ!って、何だそれ?


「リックさん、黄色い甘い水って聞いて連想する食べ物ってありますか?」


「ビタミンCが溶けた回復水(ポーション)。オレンジジュース。他に何かありますかねぇ~・・・」


『ロイク』


 うん?マルアスピー・・・どうしたんですか?


『黄色い甘い水って、ハチミツの事よ』


 ハチミツですか。


『ええ。前に妖精達が、ハチミツの事を黄色い甘い水って、話しているのを聞きました』


 なるほど。助かりました。


『コルト湖の畔の警備兼居住者確保ね』


 ハハハ。なるほど・・・者って(メドヴェージ)ですけどね。


『コミュニケーション能力が高くて、素行の怪しくない者であれば誰でも良いのよ』


 そうですね。


「リックさん。ハチミツの事みたいです」


「高価な物が好物だったんですね」


「今は手持ちに無いので、そのうち何か良い方法を考えます」


「交易商でも、ハチミツはなかなか持ち歩かないです」


高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)の使役が俺になってしまったので、ニーナ・ブオミル様に話をして権利を何とかする必要がありますよね?」


「そうですね」


「先に、ニーナ・ブオミル様の所に行って、この件を話しておいて貰えますか?俺は、ハチミツ以外の餌を与えてから客間(ゲストルーム)に行きます」


「分かりました」



『セリューさん。ロージャンさん。ちょっと良いですか?』


『ロイクどうした?』


『うん?』


高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)の大人になりかけの子供を8匹。使役する事になったんですが、ハチミツ以外に何を食べるか知ってますか?』


高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)って、魔熊(オプルス)種のか?』


『はい』


魔熊(オプルス)種の中では、最上位種で知性もそれなりに高いはずだぞ』


『ハチミツは聞き出したのですが』


『兄者。あいつらは、毒茸なら何でも食べるぞ』


『そうなのか?』


『あぁ~魔熊(オプルス)が生息する山は、闇属性の濃い山にも関わらず、茸だけは毒を持った茸が極端に少ない。人間達がそんな話をしていたのを聞いた事がある』


『毒茸が好きらしいぞ』


『今度、普通の茸と試してみます。ありがとうございました』


『ロイク。先日、お前が狩った竜の肉を少し、俺達に分けてくれないか?』


『沢山ありますから、少しと言わず、いっぱい貰ってください』


『竜の肉が沢山あるかっ!凄いなぁ』


『先日、亜種を含めて21匹狩りましたから』


『竜の肉は、聖獣や邪獣のステータスやスキルを強化する。感謝する』


『いえいえ。また連絡します。肉は後で影に入れておきます』


『あぁ』


『おぉ』


「ツヴァイ。ドライ。ゼクス。アハト。イーリス。ヴィンデ。ブルーメ。パルメ。俺は、用事で離れるから、ここで大人しくしてるんだよ。分かったね」


≪グゥガガァ~ ←8匹



――― ジェルマン・パマリ子爵邸 客間(ゲストルーム)

――― 6月3日 16:30


 俺達は、客間(ゲストルーム)に置かれた大きなテーブルを囲み、今後の動きについて話合っていた。


「ニーナ・ブオミル様。魔獣の件ですが、エーギンハルト士爵は魔獣の事を知っていましたか?」


「当然です。『魔獣を使い侯爵邸を奪取。非嫡出子の侯爵位の不当継承など誰が認める物か。ブオミル侯爵領の侯爵位は正統後継者であるブルーノ様。御1人の物。不当継承のアルヴァから取り戻すぞぉ~!』と、正統性を説き強硬意見を主張していたのは、エーギンハルトです」


「魔獣を不正な方法で購入し、奴隷商地区に隠したのはエーギンハルトですね?」


「はい。5月に入った頃です。資金が集まったとエーギンハルトから連絡があり、私達は戦力になる魔獣を、伝手を使い探し始めました。そして、戦闘能力だけなら討伐対象レベル3相当の高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)を8匹を入手する事に成功したのです。神が我々に味方してくれたと皆で喜び合いました」


「なるほど。因みに、取引額は幾らだったと言っていましたか?」


「違法ルートでの取引だった事もあり、前の所有者とエーギンハルトだけで話を進め、1匹1億NLだったと聞いています」


「名誉団長殿」


「リックさん、どうかしましたか?」


「俺っ・・・私は、前の所有者から、高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)を引き渡される時に立ち合い、餌のやりかたや調教のコツを確認しました。その際に、手に余っていた高山闇爪大魔熊(オンソンルバルス)を、1匹3000万NLで引き取って貰った。ロイは豊な街だなと話をしました」


「奴め・・・最初から侯爵側に付いていた上に、正統主義派(せいとうは)からは、活動資金を横領していたのか」


「ロメイン。エーギンハルトは、夫アーマンド前侯爵が士爵として取立、総合案内所(ランセニュマン)所長(チィーフ)に任命しました。私はエーギンハルトをずっと忠臣だと思い信じて来ました」


「ルシア様」


「御母様。エーギンハルトは私達を欺いただけではありません。アルヴァの横暴によって苦しめられているロイの住民達をも欺いて来た事になります。つい先ほどまで、私も真実を知らず、エーギンハルトを拘束させた英雄ロイク殿が、どちらの味方なのか図り兼ね、直接話をし確かめる必要があると決断し、御母様の名を騙り接触を試みたばかりです」


「ニーナ・ブオミル様は、騎士団憲兵隊にも、貴族領軍私兵隊にも、密告はしてないなのですよね?」


「切り札である8億NLもした魔獣を、軍に渡してしまっては、今までの努力が水の泡になってしまいます」


「迎えの者に、わざとロイの中を迷走させたのは、ニーナ・ブオミルさんの指示ですか?」


「商家の馬車を、騎士団の馬車が追い駆け、列を成して移動している時点で目立ちます。その様な指示を出す事はありえないです」


「なるほど。エーギンハルトの他にも、侯爵側の人間が紛れ込んでいるようです」


「そんな・・・」


「ロイク様。アルヴァ侯爵をロイク様の力で何とかしていただけませんか?」


「申し訳ありませんが、スキルや力を使って、人の法を曲げる気はありません。王国の法律とブオミル領の条例に従い、事実を判断するつもりです。自分達の安全と、周りの命は優先するつもりですが、これでも一応貴族家の人間です。他家の継承問題に口を出すつもりはありません」


「ロイク様。その通りです。私達はあくまでも、私達を貶めようとした者を確かめ、どの様に対処すべきか行動しているに過ぎません。エーギンハルト士爵に関しては明確な罪状がありますから、このままにしておくつもりはありませんが・・・」


「そうですね」


「ロイク殿。アリスさん。現時点で明確な罪に対してのみで構いません。どうか御助勢をお願い致します」


「ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様。頭を上げてください。継承の正統性や後継者の問題に口を出すつもりはありませんが、火の粉は払うつもりですし、目の前で行われる蛮行愚行罪を見逃す気はありません。それに、アルヴァ・ブオミル侯爵様から接触してくるはずです」


「ロイク様にですか?」


「ロイク殿にですか?」


「はい、ルシア・ブオミル前侯爵第二夫人様。それにアリスさん」


「ロイク様。どうしてですか?」


「アルヴァ・ブオミル侯爵様にシャレット家から贈物として渡した本音の代償薬(ペエージェドゥ―)に悩まされるいるんじゃないかなと・・・」


「あれは薬ではないのですよね?」


「飲むと一生涯続く効果がある。スキル付与に近い神具みたいな物ですからね」


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